Altered Notes

Something New.

「名車再生!クラシックカー・ディーラーズ」の面白さ

2020-01-11 18:37:00 | 放送
名車再生!クラシックカー・ディーラーズというテレビ番組がある。簡単に紹介すると、「中古車を入手してきちんと整備した上で転売して利益を出すプロセスをお見せする番組」である。

もちろん車好きな方々ならば既知の情報であろうが、ご存じない方なら「そんなもの、面白いのか?」と疑問に思われる向きもあろう。しかしこれが面白いのだ。

まず番組名だが、英国本国での原題は『Wheeler Dealers』である。ホイーラーとは車輪だがディーラーと合わせると自動車の販売店・業者といった意味になる。

扱う車種はおおよそ1950年代~2000年代まで幅広い。日本でクラシックカーというと古色蒼然としたそれこそT型フォードのような車を連想するかもしれないが、そこまで年代を遡るものではない。欧米の車が中心ではあるが、日本車の扱い回数も少なくない。日産フェアレディZ、スズキ・ジムニー、ホンダ・シビック、マツダ・RX7、レクサスなど我々にも馴染みのある車種も少なからず登場する。

「面白い」と前述したが、その面白さとは車の売買担当のマイク・ブルーワーとメカニック担当のエド・チャイナ(シーズン1~13)またはアント・アンステッド(シーズン14~)たちの発言や振る舞いが自然なエンターテインメントとして成立しているからであり、それを支える番組スタッフの演出と編集のセンスに依るところが大きい。雰囲気は常にポジティブで自動車への愛情が根底にある事が実感でき、番組全体が軽快なリズムで流れてゆく。(前掲の画像はマイク・ブルーワーとアント・アンステッド)

車の買付~車のレストア~車の転売という一連の流れが一種のショーとして捉えられていて、出演者は自然に無理なく視聴者を楽しませながら一連の流れを進めてゆく。これが実によくできている。例えば車のメカニズムに詳しくない人が見ても飽きることはない。レストアの工程で難度の高い専門用語が出てきても、判らないなら判らないなりに楽しめるようにできているからだ。話の流れが理路整然としていてスムーズに進行するのである。また、マイクとエドまたはアントのやりとりも楽しいし、マイクに依る車の買付や転売の際の相手との駆け引き(価格交渉)も面白い。

ちなみに、日本にも自動車をレストアする番組はあるが、本当に車好きな人にしかアピールしないような内容で、出演者も視聴者を楽しませる意識はあまり見られないことが多い。演出も地味で下手な場合がほとんどである。出演者はただ車のレストア作業を淡々と進めるだけであって番組をショー(エンターテインメント)として捉えている感じはしない。根本的な意識のあり方がまるで異なるのである。番組製作者も出演者も視聴者にどう見せるのか・どう楽しませるのか、という意識は残念ながら見えない。また、仮にエンターテインメントを意識したとしても日本人がそれをやると過剰な盛り上げ等によってかえって視聴者が引いてしまいかねない。だいたい不自然な演出や振る舞いになってしまうケースがほとんどだからである。

話を戻そう。

マイク・ブルーワーは全話に一貫して出演しているが、初代メカニックのエド・チャイナはシーズン1から13までの出演となっている。(*1) エド・チャイナは車好きではない人には「走るソファー」の製作者としてご存じの方も居るのではないだろうか。TVニュースで紹介されたことも一度や二度ではない。シーズン14から参加しているメカニックはアント・アンステッドである。

英国の番組なので本拠地は英国だが、エド・チャイナ在籍時の末期に米国西海岸に本拠地を移した。現在のシリーズでも米国に本拠地を置いて活動している。

ご存じなかった方は是非一度ご覧になっていただきたい大人向けの楽しい番組である。




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<2022年10月21日:追記>
メカニックのアント・アンステッドはシーズン16で降板し、シーズン17からは元F1メカニックのマーク・エルヴィス・プリーストリー (Marc "Elvis" Priestley)が出演している。



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(*1)
このエドが出演していたシーズンは「エド時代」と呼ばれて…いるかどうかは定かではない。