週刊浅草「江戸っ子瓦版」 -のんびりHiGH句な日々-

文学と食とRUNの日々を、PHOTO5・7・5で綴るエッセイ♪

はじまりのうた ♪ と ONCEダブリンの街角

2015年08月29日 | ★映画★



 
 また映画の話し

 目黒の小さな映画館で、二本立てを観た。

 二つとも、ジョンカーニー監督の作品だ。

 最初は、全米でも単館系から俄かに広まった話題のはじまりのうた。


 摩天楼ニューヨークが舞台だ。


【サンバの音熱過ぎ去りし虫の声】哲露






 掴み、キーラナイトレイ(グレタ役)の掠れた声音がいい!

 静かな出だし、ギターのたよりない旋律が聴かせる。

 ネタバレになるが、この冒頭シーンが複層的に撮られ、演者の視点と心の動きの変化を捉えているのが見事。

 ジョンカーニー監督の才能だろう。

 キーラは好みの女優だが、ギター片手に本格的な弾き語りを聴くのは初めて。

 気のせいだろうか、いつものスクリーンより自然体な印象を持った。

 ハリウッドにしては低予算だから、こうした気取りのなさが醸されるのだろうか。





 ニューヨークのローカルな街角で、アルバム用の録音をしていくのだが、これがカッコいいんだね。

 恋人役デイヴには、グラミー受賞のロックバンド、マルーン5のボーカル、アダムレヴィーン。

 アカデミーこそ取れなかったが、ボーカルにさすがの貫禄をみせている。楽曲はきっとラジオでも耳にしたことがあるはず。

 そして、大好きなキーラ以上に輝いていたのが、ダン役のマークラファロ。

 かつての名プロデューサーも今ではどこにでもいる呑んだくれのオヤジ。

 成り上がった感じの彼のジャガーがニューヨークを疾走するシーンに胸が踊る。

 ビリークリスタルの剽軽さ、ウォルターマッソーの酔っ払いのお惚けを想い出す。

 マーク曰く、ウェインコインをお手本にしたという。

 ウェインは、ザ・フレーミングリップスのシンガー。

 モシャモシャ頭と奔放さがうまく映像に活かされている。

 ユーチューブで聴いてみた。

 緩い感じのボブディランって感じで、自由な空気を感じられる。

 ホームレス寸前のダン、堅実な人生から転落したグレタ、成功へ上り詰めた挙句彷徨うデイヴ。

 憧れの彼のために背伸びするダンの娘バイオレット、一度の裏切りから乾いた関係の妻ミリアムも好演。

 とにかくストーリーの構成、キャスティング、楽曲、どれもが心地よい。

 個人的には、グレタの心の友、スティーブ役のジェームズコーデンの配役がお気に入りだ。

 彼がいい繋ぎになり、映画の質が保たれている。





 恋、裏切り、親子の葛藤と絆、男女の複雑な関係、努力、成功、落ち目、友情、 ニューヨークの風、そして極上の音楽。

 その心地よい音の中に、役者ごとの物語が、絶妙なバランスで描かれている。 

 女性には男の僕からみても可愛らしいグレタのファッションも見もの。

 気丈で一本気な彼女がこんな格好をしていたらイチコロだわ。

 ギャップ効果ってヤツさ。





 久しぶりに、気分の晴れる104minだった。

 グレタは何よりも真っ直ぐでセンシティブ、ダンの男っぷりはキュート。

 同じ曲を、2本のジャックで聴きながら街を行くダンとグレタのシルエット。

 なんて、粋な演出なんだ。

 とにかくこのムービーのセンスを観て欲しい。

 原題は[Bigin Again]、読んで字の如く、もう一度始めるってこと。

 俺も今からまた始められるってことかな。

 20代の頃のように、何も恐れることなく、知らない国を一人旅したくなった。

 こんなに音楽への愛が溢れる映画って久しくなかったよ。

 何度も観たい。

 そんな作品に出会えるって人生も捨てたもんじゃないな。






 はじまりのうたの、ジョンカーニー監督の出世作

 こちらは暗いよ(笑)

 さすがアイルランド、ダブリン。

 北の街に立つ30代のストリートミュージシャン、グレンハンサード。

 彼の歌を熱心に聴く、チェコの移民マルケタイルグロヴァ。

 花売りで生計を立てている彼女の唯一の愉しみは、楽器店でピアノを弾く時間。

 掃除機の修理をきっかけに、急速に近付く二人。





 台詞も最小限で、カメラワークはアマチュアのような親しみを憶える。

 お金をかけなくても、こんなにじんわりと心に沁み入る作品ができるって素敵だ。

 何かを置き忘れてきたような想いに、私自身も胸を締め付けられる。

 U2のような迫りくるグレンの声はときに過剰を感じたが、

 一人夜のダブリンの街で歩きながら歌う、マルケタの旋律はノスタルジーな悲しみを誘う。

 寒々しいアイルランドの荒海、

 アマチュアながら、プロのスタジオエンジニアを魅了し、徹夜で仕上げたデモCDの完成を祝って、

 浜辺でフリスビーをするシーンがとても映像的で素敵だ。

 暗く、哀しみ満ちた作品だけど、心に迫る何モノかがある。

 完璧でないありふれた日常は、ハッピーだけでもなく、哀しみばかりでもない。

 家にこもりがちな、ダブリン的厳寒の季節に、オススメの一作だ。





 20代の始め、一人でスコットランドに降り立った。

 本場の安いスコッチ、テイクアウトの中華、バグパイプの音、エジンバラ城、寝台の出会い。

 二度と戻らない青春。

 たまらくなく退屈で、たまらなく孤独でいたあの頃。

 いろんなことを思い出したよ。

 ミュージカルでない、こんな楽曲だらけの映画もいい

 
 



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