田中川の生き物調査隊

平成12年3月発足。伊勢湾に注ぐ田中川流域の自然と生き物を調べ、知らせる活動をしています。三重県内の生き物も紹介します。

アカオビケラトリ雌

2010-02-03 | ハチ目(膜翅目)
アカオビケラトリ雌
ケラトリバチ科のアカオビケラトリ Larra amplipennis (Smith)

2005.7.24 随分前の写真ではあるが,ようやく種の同定ができたので紹介する。
当時,マリーナ河芸の北に池と松並木と空き地があった。いろんな生き物が暮らしていた場所。楽しみいっぱいの自然観察ポイントであった。
このアカオビケラトリはマサキの葉上で死んでいた。
この辺りには,きっと彼らの幼虫の餌となるケラも住んでいたのだろう。
今は,みんな埋め立てられてしまった。

新訂原色昆虫大図鑑Ⅲによると,ギングチバチ科のケラトリバチ亜科に属し,アカオビトガリアナバチの別名で「体長16~18㎜。黒色で,腹部第1~3環節は赤褐色ないし暗赤色である。本州・四国・九州・奄美大島から知られ,土中に営巣,ケラを幼虫の餌として狩る。」とし,追記に「和名と学名は,アカオビケラトリ Larra amplipennis (Smith)。琉球列島では北琉球をのぞき広く分布する。」とある。

神奈川県のレッドデータブック2006では絶滅危惧1類に選定されている。「南方系のアナバチ」で,ギングチバチ科に属するとしたアカオビケラトリの生息環境について,「ケラを狩って幼虫を托す。したがって,多少とも湿地に近い平地に見られる」と説明している。私が出会ったのも,まさにそういう環境であった。

「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年)によると, 福井県では本種を日本海側の北限となる分布限界種として,B(県レベルで重要なもの)ランクに区分し,「海岸や河川敷の開発が進み,ケラが生息する砂地が激減し,本種も絶滅の危機にある.保護対策としてはケラが生息する自然のままの砂地を確保することが望まれる.」と保護対策の必要性を訴えている。
また,同書によると,ケラトリバチ科のアカオビケラトリは「日中,土や砂の中に生活しているケラを巧みに追い出し,一時麻酔をして動きを止め,卵を産み付ける.しばらくして,麻酔から覚めたケラは砂の中に潜る.卵からかえった幼虫はケラの体を食い終えて,その近くで繭を作り,約1 ケ月後に成虫となる.一般に狩り蜂は巣を作って獲物を貯えるのであるが,本種は巣を作らず,巣坑をもったケラに卵を産み付ける珍しい習性を持った蜂である.南方系の蜂で個体数も少なく,7 月から9 月にかけて,海岸や河原の砂地やアリマキのついている葉の上に姿を現す.」などと解説している。

『鈴鹿市の自然』によると,6月中旬に鈴鹿川の河川敷で記録されており,三重県内から初めて記録された種で,「ケラを狩り,地中に穴を掘り営巣する。本州・四国・九州・台湾に分布している」と解説されている。科はギングチバチ科としている。

九大の昆虫目録によると,アナバチ科のケラトリバチ亜科で,学名はLarra (Larra) amplipennis (F. Smith, 1873),アカオビケラトリの分布は「本州・四国・九州・奄美大島・西表島・台湾・フィリピン・タイ」としている。

私が標本にしたこの個体は三重県で2番目の記録となる。
この種が土中に巣を作るのか作らないのか,現在は何科に属しているのか,分らないことばかり。

オオムカシハナバチ雄

2010-02-03 | ハチ目(膜翅目)
オオムカシハナバチ♂
キク科のセイタカアワダチソウに訪花するムカシハナバチ科のオオムカシハナバチ♂ Colletes perforator Smith

2008.11.20 晩秋の田中川干潟で出会ったハナバチがこのほど同定できたので紹介する。

加藤 真.2006によると,「日本南部で晩秋に活動するハナバチとしてオオムカシハナバチが知られているが,(中略)晩秋のキク科植物との結びつきが深い(Ikudome 1989)」

原色日本昆虫図鑑(下)によると,オオムカシハナバチは「体長約12㎜。黒く,全体に黄白色毛を密生しているが,腹部ではやや疎らであり,第1~5腹節背後縁には灰白色毛による横帯がある。前伸腹節三角状部はあらい網目状の彫刻がある。分布:本州・四国・九州;旧北区。」とある。また,同図鑑によると,ムカシハナバチ科は「粘土質の地面に孔道をつくり,営巣する。大群になることはあるが孤独性生活で,孔道内部はニカワ質の液で薄い膜をはる。花粉媒介者として有益なものである。」などという。

日本生態学会全国大会 ESJ55(2008) 講演要旨に掲載されている「オオムカシハナバチの雄間闘争での体サイズへの温度の影響」(九州大学の楢崎裕美・粕谷英一)には,
「オオムカシハナバチColletes perforatorのような土中に営巣する単独性のハチでは、オスが先に羽化することが多く、オスが巣穴の出口付近で羽化して出てくるメスを待ち構えて交尾するという交尾様式が見られる。その際に、1個体のメスに複数のオスが集まって団子状の塊を形成して争うことがある。このような物理的接触を伴う激しい雄間闘争では、体サイズが大きいオスほど有利で高い交尾成功を得ると考えられている。」などとある。

九州大学の日本産ハナバチ類画像データベースの中に日本産ハナバチ類の科および属の画像検索表があり,それによると,日本産ムカシハナバチ属の特徴は,「体に毛が多い。メスの脚には発達した花粉運搬毛があり、後脚腿節の下面に花粉槽を形成する。前翅の亜前縁室は3個ある。複眼の内側上部にある顔孔は広い。」

参考文献
Ikudome, S. 1989. A review of the family Colletidae of Japan (Hymenoptera: Apoidea). Bulletin of the Institute of Minami-Kyushu Regional Science 5: 43-314.
加藤 真.2006.周防灘長島における海岸植物の訪花昆虫相.日本生態学会中国四国地区会報60:21-27
オオムカシハナバチ♂

オオムカシハナバチ♂