ケラトリバチ科のアカオビケラトリ Larra amplipennis (Smith)
2005.7.24 随分前の写真ではあるが,ようやく種の同定ができたので紹介する。
当時,マリーナ河芸の北に池と松並木と空き地があった。いろんな生き物が暮らしていた場所。楽しみいっぱいの自然観察ポイントであった。
このアカオビケラトリはマサキの葉上で死んでいた。
この辺りには,きっと彼らの幼虫の餌となるケラも住んでいたのだろう。
今は,みんな埋め立てられてしまった。
新訂原色昆虫大図鑑Ⅲによると,ギングチバチ科のケラトリバチ亜科に属し,アカオビトガリアナバチの別名で「体長16~18㎜。黒色で,腹部第1~3環節は赤褐色ないし暗赤色である。本州・四国・九州・奄美大島から知られ,土中に営巣,ケラを幼虫の餌として狩る。」とし,追記に「和名と学名は,アカオビケラトリ Larra amplipennis (Smith)。琉球列島では北琉球をのぞき広く分布する。」とある。
神奈川県のレッドデータブック2006では絶滅危惧1類に選定されている。「南方系のアナバチ」で,ギングチバチ科に属するとしたアカオビケラトリの生息環境について,「ケラを狩って幼虫を托す。したがって,多少とも湿地に近い平地に見られる」と説明している。私が出会ったのも,まさにそういう環境であった。
「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年)によると, 福井県では本種を日本海側の北限となる分布限界種として,B(県レベルで重要なもの)ランクに区分し,「海岸や河川敷の開発が進み,ケラが生息する砂地が激減し,本種も絶滅の危機にある.保護対策としてはケラが生息する自然のままの砂地を確保することが望まれる.」と保護対策の必要性を訴えている。
また,同書によると,ケラトリバチ科のアカオビケラトリは「日中,土や砂の中に生活しているケラを巧みに追い出し,一時麻酔をして動きを止め,卵を産み付ける.しばらくして,麻酔から覚めたケラは砂の中に潜る.卵からかえった幼虫はケラの体を食い終えて,その近くで繭を作り,約1 ケ月後に成虫となる.一般に狩り蜂は巣を作って獲物を貯えるのであるが,本種は巣を作らず,巣坑をもったケラに卵を産み付ける珍しい習性を持った蜂である.南方系の蜂で個体数も少なく,7 月から9 月にかけて,海岸や河原の砂地やアリマキのついている葉の上に姿を現す.」などと解説している。
『鈴鹿市の自然』によると,6月中旬に鈴鹿川の河川敷で記録されており,三重県内から初めて記録された種で,「ケラを狩り,地中に穴を掘り営巣する。本州・四国・九州・台湾に分布している」と解説されている。科はギングチバチ科としている。
九大の昆虫目録によると,アナバチ科のケラトリバチ亜科で,学名はLarra (Larra) amplipennis (F. Smith, 1873),アカオビケラトリの分布は「本州・四国・九州・奄美大島・西表島・台湾・フィリピン・タイ」としている。
私が標本にしたこの個体は三重県で2番目の記録となる。
この種が土中に巣を作るのか作らないのか,現在は何科に属しているのか,分らないことばかり。