実用新案法 10条
(出願の変更)
第10条
第1項
1項は、特許出願を実用新案登録出願に変更することができる旨を規定しています。
変更の要件は、次のとおりです。
・出願人
特許出願を実用新案登録出願に変更することができるのは、変更時における特許出願人です。
変更時の特許出願が共同出願である場合には、共有者の全員で変更しなければなりません。10条1項の「特許出願人」とは、全員一致を意味すると理解されています。準用する特許法14条本文においても出願の変更は全員でしなければならないと規定していますが、出願人同一の要件は、10条1項で読むことになります。
変更時において、もとの特許出願の出願人と変更に係る実用新案登録出願の出願人が完全に一致していれば、出願人の要件は満たすことになります。
変更時に出願人が不一致の場合には、変更後の出願人名義変更届を提出しても、出願人同一の要件を満たすことはありません。
変更時に出願人が不一致の場合には、準特18条の2の規定により、変更に係る実用新案登録出願は却下されることになります(方式審査便覧15.20)。
・変更できない特許出願
以下の特許出願は、実用新案登録出願に変更することはできません。要するに、一度実用新案登録に基づく特許出願をした場合には、どのようなルートを経由しても、実用新案登録出願に変更することはできないことになります。
・実用新案登録に基づく特許出願
・実用新案登録に基づく特許出願を分割した新たな特許出願
・実用新案登録に基づく特許出願を意匠登録出願に変更し、さらにこの意匠登録出願を特許出願に変更した場合の特許出願
・特許庁に係属していること
変更時においてもとの特許出願が特許庁に係属していることが必要となります。したがって、取下げられた特許出願、放棄された特許出願、却下された特許出願は、実用新案登録出願に変更することはできません。
・時期的制限
第1に、特許出願について拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があった日から30日を経過した後は、実用新案登録出願に変更することはできません。例えば、特許出願について拒絶査定不服審判を請求したところ、特160条1項により差戻し審決がされ、審査において再度拒絶査定がされた場合には、最初の拒絶査定ではありませんので、もはや変更はできないことになります。
第2に、特許出願の日から9年6月を経過した後も、実用新案登録出願に変更することはできません。つまり、特許出願の日から9年6月を経過した後に、最初の拒絶査定謄本の送達があったとしても、もはや実用新案登録出願には変更することができないことを意味します。特許出願の日から9年6月としたのは、実用新案権の存続期間が出願日から10年であり(15条)、登録には6月程度の期間を要しますので、9年6月経過後の変更を認めても実益がないと判断したからです。
・内容的制限
出願の変更とは、出願内容の同一性を維持しつつ、出願形式を他の形式に変更する手続をいいます。したがって、変更に係る実用新案登録出願の願書に添付した明細書等に記載された事項は、もとの特許出願の出願当初に記載された事項の範囲内であることが必要とされます。この要件は、出願時の遡及効が認められるための要件となります。
特許実用新案審査基準によれば、次のようになります。
第1要件として、変更出願に係る明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面に記載した事項が、変更直前の原出願に係る明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内にあることが必要です。
第2要件として、変更出願に係る明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面に記載した事項が、原出願に係る出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内にあることが必要です。
ただし、原出願に係る明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができるときにする変更出願については、第2要件が満たされていれば、第1要件が満たされることは必要とされません。原出願において補正ができる時期であれば、原出願において補正をしたうえで、変更出願をすることができますので、そのような補正を省略してもよいとする趣旨です。
第2項
2項は、意匠登録出願を実用新案登録出願に変更することができる旨を規定しています。
変更の要件は、次のとおりです。
・出願人
意匠登録出願を実用新案登録出願に変更することができるのは、変更時における意匠登録出願人です。その他は、1項と同様です。
・変更できない意匠登録出願
以下の意匠登録出願は、実用新案登録出願に変更することはできません。要するに、一度実用新案登録に基づく特許出願をした場合には、どのようなルートを経由しても、実用新案登録出願に変更することはできないことになります。
・実用新案登録に基づく特許出願をし、さらにこの特許出願を意匠登録出願に変更した場合の当該意匠登録出願
・実用新案登録に基づく特許出願をし、さらにこの特許出願を意匠登録出願に変更し、さらにこの意匠登録出願を分割した場合の当該分割に係る新たな意匠登録出願
・特許庁に係属していること
変更時においてもとの意匠登録出願が特許庁に係属していることが必要となります。
・時期的制限
第1に、意匠登録出願について拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があった日から30日を経過した後は、実用新案登録出願に変更することはできません。
第2に、意匠登録出願の日から9年6月を経過した後も、実用新案登録出願に変更することはできません。
解釈は、1項と同様です。
・内容的制限
出願の変更とは、出願内容の同一性を維持しつつ、出願形式を他の形式に変更する手続をいいます。したがって、変更に係る実用新案登録出願の願書に添付した明細書等に記載された事項は、もとの意匠登録出願の出願当初の願書の記載又は願書に添付した図面等に記載された事項の範囲内であることが必要とされます。この要件は、出願時の遡及効が認められるための要件となります。
特許実用新案審査基準によれば、次のようになります。
第1要件として、変更出願に係る明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面に記載した事項が、変更直前の原出願に係る願書の記載又は願書に添付した図面等に記載した事項の範囲内にあることが必要です。
第2要件として、変更出願に係る明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面に記載した事項が、原出願に係る出願当初の願書の記載又は願書に添付した図面等に記載した事項の範囲内にあることが必要です。
ただし、原出願に係る願書の記載又は願書に添付した図面等について補正をすることができるときにする変更出願については、第2要件が満たされていれば、第1要件が満たされることは必要とされません。原出願において補正ができる時期であれば、原出願において補正をしたうえで、変更出願をすることができますので、そのような補正を省略してもよいとする趣旨です。
第3項
3項は、出願の変更の効果を規定しています。すなわち、出願の変更の要件を満たす場合には、変更に係る実用新案登録出願は、もとの出願時にされたものとみなされることになります。
ただし、所定の規定の適用においては、出願時を遡及させることが適切ではありませんので、遡及させないこととしています。
変更に係る実用新案登録出願が3条の2又は特許法29条の2の先願として引用される場合には、出願日は遡及しません。変更に係る実用新案登録出願に新規事項が追加される場合は否定できません。この場合は、変更の要件を判断すれば出願時が遡及しないことになるのですが、引用例の変更の要件を判断することは審査の迅速を阻害することとなります。そこで、変更の要件を満たす場合も満たさない場合も画一的に引用例とするために、出願日を遡及させないこととしたわけです。
8条4項の国内優先権の主張の手続を引き継ぐときには、変更時を基準として手続をすることができることになります。
準特30条4項の手続を引き継ぐときも、変更時を基準として手続をすることができることになります。
準特43条1項の手続を引き継ぐときも、変更時を基準として手続をすることができることになります。
準特43条2項については、4項で読み替えて準用しています。
第4項
準特43条2項の優先権証明書の提出については、「最先の日から1年4月以内」とあるのは、「最先の日から1年4月又は実用新案法第10条第1項若しくは第2項の規定による出願の変更に係る実用新案登録出願の日から3月のいずれか遅い日まで」と読み替えて適用することになります。
第5項
5項は、出願変更のもう一つの効果について規定しています。すなわち、出願の変更があったときは、もとの特許出願又は意匠登録出願は、みなし取下げとなります。
出願の変更は、出願形式を他の形式に変更したうえで、権利取得を図る制度ですので、もとの出願については特許庁の係属を解除するために、みなし取下げとしたものです。
5項の規定は、変更出願の意思表示をした場合に適用され、後日、変更の要件を満たさないことが判明したとしても、もとの出願のみなし取下げは確定しており、復活することはありません。
第6項
1項ただし書の30日の期間は、特許出願についての拒絶査定不服審判の請求期間が特許法4条の規定により延長されたときは、その延長された期間に限り、延長されるものとみなす旨を規定しています。
この30日の期間は、拒絶査定不服審判を請求するか、出願の変更をするか、の判断期間となりますので、審判請求期間として30日の期間が延長された場合は変更の期間も延長されたものとみなすこととしています。
第7項
6項と同様に、意匠登録出願について拒絶査定不服審判の請求期間が準用する特許法4条の規定により延長されたときは、その延長された期間に限り、延長されるものとみなす旨を規定しています。
第8項
特許法44条4項と同様に、特許出願を実用新案登録出願に変更した場合における書類のみなし提出の効果を規定しています。
適用がある書類は、8条4項の書面、準特30条4項の書面、準特43条1項及び2項の書面です。
もとの出願においてこれらの書面を提出しているときは、変更に係る出願において何も意思表示をすることなく、これらの書面が実用新案登録出願の出願と同時に提出されたものとみなされることになります。
第9項
8項と同様に、意匠登録出願を実用新案登録出願に変更した場合における書類のみなし提出の効果を規定しています。
(出願の変更)
第10条
第1項
1項は、特許出願を実用新案登録出願に変更することができる旨を規定しています。
変更の要件は、次のとおりです。
・出願人
特許出願を実用新案登録出願に変更することができるのは、変更時における特許出願人です。
変更時の特許出願が共同出願である場合には、共有者の全員で変更しなければなりません。10条1項の「特許出願人」とは、全員一致を意味すると理解されています。準用する特許法14条本文においても出願の変更は全員でしなければならないと規定していますが、出願人同一の要件は、10条1項で読むことになります。
変更時において、もとの特許出願の出願人と変更に係る実用新案登録出願の出願人が完全に一致していれば、出願人の要件は満たすことになります。
変更時に出願人が不一致の場合には、変更後の出願人名義変更届を提出しても、出願人同一の要件を満たすことはありません。
変更時に出願人が不一致の場合には、準特18条の2の規定により、変更に係る実用新案登録出願は却下されることになります(方式審査便覧15.20)。
・変更できない特許出願
以下の特許出願は、実用新案登録出願に変更することはできません。要するに、一度実用新案登録に基づく特許出願をした場合には、どのようなルートを経由しても、実用新案登録出願に変更することはできないことになります。
・実用新案登録に基づく特許出願
・実用新案登録に基づく特許出願を分割した新たな特許出願
・実用新案登録に基づく特許出願を意匠登録出願に変更し、さらにこの意匠登録出願を特許出願に変更した場合の特許出願
・特許庁に係属していること
変更時においてもとの特許出願が特許庁に係属していることが必要となります。したがって、取下げられた特許出願、放棄された特許出願、却下された特許出願は、実用新案登録出願に変更することはできません。
・時期的制限
第1に、特許出願について拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があった日から30日を経過した後は、実用新案登録出願に変更することはできません。例えば、特許出願について拒絶査定不服審判を請求したところ、特160条1項により差戻し審決がされ、審査において再度拒絶査定がされた場合には、最初の拒絶査定ではありませんので、もはや変更はできないことになります。
第2に、特許出願の日から9年6月を経過した後も、実用新案登録出願に変更することはできません。つまり、特許出願の日から9年6月を経過した後に、最初の拒絶査定謄本の送達があったとしても、もはや実用新案登録出願には変更することができないことを意味します。特許出願の日から9年6月としたのは、実用新案権の存続期間が出願日から10年であり(15条)、登録には6月程度の期間を要しますので、9年6月経過後の変更を認めても実益がないと判断したからです。
・内容的制限
出願の変更とは、出願内容の同一性を維持しつつ、出願形式を他の形式に変更する手続をいいます。したがって、変更に係る実用新案登録出願の願書に添付した明細書等に記載された事項は、もとの特許出願の出願当初に記載された事項の範囲内であることが必要とされます。この要件は、出願時の遡及効が認められるための要件となります。
特許実用新案審査基準によれば、次のようになります。
第1要件として、変更出願に係る明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面に記載した事項が、変更直前の原出願に係る明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内にあることが必要です。
第2要件として、変更出願に係る明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面に記載した事項が、原出願に係る出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内にあることが必要です。
ただし、原出願に係る明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができるときにする変更出願については、第2要件が満たされていれば、第1要件が満たされることは必要とされません。原出願において補正ができる時期であれば、原出願において補正をしたうえで、変更出願をすることができますので、そのような補正を省略してもよいとする趣旨です。
第2項
2項は、意匠登録出願を実用新案登録出願に変更することができる旨を規定しています。
変更の要件は、次のとおりです。
・出願人
意匠登録出願を実用新案登録出願に変更することができるのは、変更時における意匠登録出願人です。その他は、1項と同様です。
・変更できない意匠登録出願
以下の意匠登録出願は、実用新案登録出願に変更することはできません。要するに、一度実用新案登録に基づく特許出願をした場合には、どのようなルートを経由しても、実用新案登録出願に変更することはできないことになります。
・実用新案登録に基づく特許出願をし、さらにこの特許出願を意匠登録出願に変更した場合の当該意匠登録出願
・実用新案登録に基づく特許出願をし、さらにこの特許出願を意匠登録出願に変更し、さらにこの意匠登録出願を分割した場合の当該分割に係る新たな意匠登録出願
・特許庁に係属していること
変更時においてもとの意匠登録出願が特許庁に係属していることが必要となります。
・時期的制限
第1に、意匠登録出願について拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があった日から30日を経過した後は、実用新案登録出願に変更することはできません。
第2に、意匠登録出願の日から9年6月を経過した後も、実用新案登録出願に変更することはできません。
解釈は、1項と同様です。
・内容的制限
出願の変更とは、出願内容の同一性を維持しつつ、出願形式を他の形式に変更する手続をいいます。したがって、変更に係る実用新案登録出願の願書に添付した明細書等に記載された事項は、もとの意匠登録出願の出願当初の願書の記載又は願書に添付した図面等に記載された事項の範囲内であることが必要とされます。この要件は、出願時の遡及効が認められるための要件となります。
特許実用新案審査基準によれば、次のようになります。
第1要件として、変更出願に係る明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面に記載した事項が、変更直前の原出願に係る願書の記載又は願書に添付した図面等に記載した事項の範囲内にあることが必要です。
第2要件として、変更出願に係る明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面に記載した事項が、原出願に係る出願当初の願書の記載又は願書に添付した図面等に記載した事項の範囲内にあることが必要です。
ただし、原出願に係る願書の記載又は願書に添付した図面等について補正をすることができるときにする変更出願については、第2要件が満たされていれば、第1要件が満たされることは必要とされません。原出願において補正ができる時期であれば、原出願において補正をしたうえで、変更出願をすることができますので、そのような補正を省略してもよいとする趣旨です。
第3項
3項は、出願の変更の効果を規定しています。すなわち、出願の変更の要件を満たす場合には、変更に係る実用新案登録出願は、もとの出願時にされたものとみなされることになります。
ただし、所定の規定の適用においては、出願時を遡及させることが適切ではありませんので、遡及させないこととしています。
変更に係る実用新案登録出願が3条の2又は特許法29条の2の先願として引用される場合には、出願日は遡及しません。変更に係る実用新案登録出願に新規事項が追加される場合は否定できません。この場合は、変更の要件を判断すれば出願時が遡及しないことになるのですが、引用例の変更の要件を判断することは審査の迅速を阻害することとなります。そこで、変更の要件を満たす場合も満たさない場合も画一的に引用例とするために、出願日を遡及させないこととしたわけです。
8条4項の国内優先権の主張の手続を引き継ぐときには、変更時を基準として手続をすることができることになります。
準特30条4項の手続を引き継ぐときも、変更時を基準として手続をすることができることになります。
準特43条1項の手続を引き継ぐときも、変更時を基準として手続をすることができることになります。
準特43条2項については、4項で読み替えて準用しています。
第4項
準特43条2項の優先権証明書の提出については、「最先の日から1年4月以内」とあるのは、「最先の日から1年4月又は実用新案法第10条第1項若しくは第2項の規定による出願の変更に係る実用新案登録出願の日から3月のいずれか遅い日まで」と読み替えて適用することになります。
第5項
5項は、出願変更のもう一つの効果について規定しています。すなわち、出願の変更があったときは、もとの特許出願又は意匠登録出願は、みなし取下げとなります。
出願の変更は、出願形式を他の形式に変更したうえで、権利取得を図る制度ですので、もとの出願については特許庁の係属を解除するために、みなし取下げとしたものです。
5項の規定は、変更出願の意思表示をした場合に適用され、後日、変更の要件を満たさないことが判明したとしても、もとの出願のみなし取下げは確定しており、復活することはありません。
第6項
1項ただし書の30日の期間は、特許出願についての拒絶査定不服審判の請求期間が特許法4条の規定により延長されたときは、その延長された期間に限り、延長されるものとみなす旨を規定しています。
この30日の期間は、拒絶査定不服審判を請求するか、出願の変更をするか、の判断期間となりますので、審判請求期間として30日の期間が延長された場合は変更の期間も延長されたものとみなすこととしています。
第7項
6項と同様に、意匠登録出願について拒絶査定不服審判の請求期間が準用する特許法4条の規定により延長されたときは、その延長された期間に限り、延長されるものとみなす旨を規定しています。
第8項
特許法44条4項と同様に、特許出願を実用新案登録出願に変更した場合における書類のみなし提出の効果を規定しています。
適用がある書類は、8条4項の書面、準特30条4項の書面、準特43条1項及び2項の書面です。
もとの出願においてこれらの書面を提出しているときは、変更に係る出願において何も意思表示をすることなく、これらの書面が実用新案登録出願の出願と同時に提出されたものとみなされることになります。
第9項
8項と同様に、意匠登録出願を実用新案登録出願に変更した場合における書類のみなし提出の効果を規定しています。