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2023年1月23日 弁理士試験 代々木塾 特許法29条の2

2023-01-23 05:00:09 | Weblog
2023年1月23日 弁理士試験 代々木塾 特許法29条の2

(同前)第二十九条の二
 特許出願に係る発明が
 当該特許出願の日前の他の特許出願又は実用新案登録出願であつて
 当該特許出願後に第六十六条第三項の規定により同項各号に掲げる事項を掲載した特許公報(以下「特許掲載公報」という。)の発行若しくは出願公開又は実用新案法第十四条第三項の規定により同項各号に掲げる事項を掲載した実用新案公報(以下「実用新案掲載公報」という。)の発行がされたものの
 願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲若しくは実用新案登録請求の範囲又は図面
(第三十六条の二第二項の外国語書面出願にあつては、同条第一項の外国語書面)
 に記載された発明又は考案
(その発明又は考案をした者が当該特許出願に係る発明の発明者と同一の者である場合におけるその発明又は考案を除く。)
 と同一であるときは、
 その発明については、前条第一項の規定にかかわらず、特許を受けることができない。
 ただし、当該特許出願の時にその出願人と当該他の特許出願又は実用新案登録出願の出願人とが同一の者であるときは、この限りでない。

〔解説〕
(1)29条の2の規定の趣旨
 (a)先願の明細書等に記載されている発明は、特許請求の範囲以外の記載であっても、出願公開等により一般にその内容は公表される。したがって、たとえ先願が出願公開等をされる前に出願された後願であってもその内容が先願と同一内容の発明である以上さらに出願公開等をしても、新しい技術をなんら公開するものではない。このような発明に特許権を与えることは、新しい発明の公表の代償として発明を保護しようとする特許制度の趣旨(1条)からみて妥当でない。

 (b)審査請求制度(48条の2)を採用したことに伴うものである。すなわち、審査は原則として出願審査請求順に行われることになる。
 そのためある出願を審査する段階において先願が出願審査の請求がされていなければその先願の特許請求の範囲は確定しない。審査の処理が終了するまで特許請求の範囲は補正により変動するからである。したがって、先願の範囲を特許請求の範囲に限定しておくと、先願の審査処理が確定するまで後願の審査ができないこととなる。
 そこで、補正により特許請求の範囲を増減変更することができる範囲の最大限である出願当初の明細書等に記載された範囲の全部に先願の地位を認めておけば先願の処理を待つことなく、後願を処理することができる。

(2)「特許出願に係る発明」
 「特許出願に係る発明」とは、特許付与を求める発明、すなわち、審査対象である特許出願の特許請求の範囲の請求項に記載された発明を意味する。
 特許請求の範囲について適法な補正がされたときは、補正後の特許請求の範囲に記載された発明を意味する。

(3)「当該特許出願の日前」
 (a)特許出願の日を基準として先後を判断する。
 「日前」とは、「日以前」とは異なり、その日を含まずに、その日よりも前の日を意味する。
 したがって、同日出願には、29条の2は適用されない。

 (b)「当該特許出願の日」

(ア)特許出願が分割又は変更の特許出願である場合において、出願時遡及の要件を満たすときは、「当該特許出願の日」は、もとの出願の日である(44条2項本文、46条6項)

(イ)特許出願が実用新案登録に基づく特許出願である場合において、出願時遡及の要件を満たすときは、「当該特許出願の日」は、基礎とされた実用新案登録出願の日である(46条の2第2項)

(ウ)特許出願がパリ条約の優先権の主張を伴う特許出願である場合において、優先権の利益のある発明については、「当該特許出願の日」は、先の出願の日である(パリ条約4条B)。

(エ)特許出願が国内優先権の主張を伴う特許出願である場合において、国内優先権の利益のある発明については、「当該特許出願の日」は、先の出願の日である(41条2項)。

(オ)特許出願が国際特許出願であるときは、「当該特許出願の日」は、国際出願日である(184条の3第1項)。

(4)「他の特許出願又は実用新案登録出願」
 (a)「他の特許出願又は実用新案登録出願」とは、29条の2の引用例となる出願を意味する。

 (b)「他の特許出願又は実用新案登録出願」が分割又は変更の出願であるときは、出願時は遡及しないため、「他の特許出願又は実用新案登録出願」の出願日は、分割の日又は変更の日である(44条2項ただし書、46条6項)。
 分割又は変更に係る出願の明細書等にもとの出願に含まれていない新規事項が追加がされた場合に、分割又は変更の要件を判断しないで、29条の2の引用例とするために、出願日を遡及させないこととしたものである(44条2項ただし書、46条6項)。

 (c)「他の特許出願」が実用新案登録に基づく特許出願であるときは、出願時は遡及しないため、「他の特許出願」の出願日は、実用新案登録に基づく特許出願の願書を提出した日である(46条の2第2項ただし書)。
 出願時を遡及させないのは、分割等の場合と同様の趣旨である。

 (d)「他の特許出願又は実用新案登録出願」がパリ条約の優先権の主張を伴う出願であるときは、優先権の要件を満たす発明については、「他の特許出願又は実用新案登録出願」の出願日は、最初の出願の日である(パリ4条B)
 パリ条約4条Bにより、優先期間内にされた出願によっては、不利な取扱いを受けないこととされているからである。

 パリ条約の優先権の主張の効果として、出願日の遡及を認める見解もあるが、一般には消極的立場をとっている。
 昭和45年改正においても、パリ条約の優先権の主張があっても出願日は遡及しないものと解し、出願公開や補正制限の期間の起算点については第1国出願日であることを明定した。
 ところが、29条の2についてはなんら規定していない。そこで、48条の3と同様に、パリ条約の優先権の主張を伴う出願についても、現実の日本の出願日を基準とすべきではないかとの疑問が生ずる。
 しかし、パリ条約の優先権の主張の効果については、パリ条約4条Bの規定があることに留意しなければならない。
 すなわち、パリ条約4条Bによれば、パリ条約の優先権の主張の効果として、最初の出願の日からパリ条約の優先権の利益を享有している後の出願の日までの期間内に生じた事実によりその後の出願が不利な取扱いを受けることがないこと及びこの事実によっては第三者になんらの権利も発生させることができないことになっている。したがって、パリ条約の優先権の利益を享受している出願は、パリ条約の優先権の基礎となっている第1国出願の後に出願された願書に最初に添付した明細書又は図面に開示されていた発明であって出願公開等がされたものであることを理由として拒絶されたり、特許後においてその特許が無効とされることはない。
 また、パリ条約の優先権の利益を享受している出願が出願公開等がされた場合において、日本国におけるその出願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載されている発明であって、パリ条約の優先権の基礎となっている第1国出願の出願書類の全体中に記載されているものについて、第三者の出願が当該第1国出願後出願公開等がされるまでの間に提出されているものであるときは、その第三者の出願は優先期間中に生じた事実であるのでなんらの権利も取得できず、拒絶され、特許後においてはその特許が無効とされる。これらの関係は、39条の場合と同様である。

 (e)「他の特許出願又は実用新案登録出願」が国内優先権の主張を伴う出願である場合の取扱い
 甲が特許出願Aをした日後に、乙が特許出願Bをし、その日後に、甲が特許出願Aに基づく国内優先権の有効な主張を伴う特許出願Cをした場合における乙の特許出願Bの審査においては、29条の2の他の特許出願には、41条2項は適用されないため、甲の特許出願Cは乙の特許出願Bに対し後願となり、29条の2の先願とはならない。この場合は、41条3項により、甲の先の特許出願Aが29条の2の先願となる。
 41条2項は、特許出願に係る発明、すなわち、特許請求の範囲に記載された発明のみについて適用があり、明細書又は図面に記載された発明については適用がないので、29条の2の先願について41条2項を適用することは不合理である。なぜなら、29条の2の先願は、特許請求の範囲に記載された発明のみならず、明細書又は図面の記載された発明についても後願排除効を有するものであるのに対し、41条2項は、特許請求の範囲に記載された発明のみに適用され、明細書にのみ記載された発明には適用されないからである。

(5)「当該特許出願後」
 当該特許出願前に出願公開等されたときは、新規性がないとする拒絶理由に該当し(29条1項3号、49条2号)、29条の2を適用するまでもない。

(6)「特許公報(以下「特許掲載公報」という。)の発行」
 先願の特許出願について、出願公開前に特許権の設定の登録がされ、特許掲載公報が発行された(66条3項)場合には、出願公開がされないため(64条1項)、出願公開されず、「特許掲載公報」が発行された場合にも、29条の2の適用の対象とすることとした。

(7)「出願公開」
 通常は、先願について特許掲載公報の発行前に出願公開(64条1項)がされる。
 (a)出願公開時に先願の特許出願が特許庁に係属していれば足り、その後に先願の特許出願が取下げ、放棄、却下になっても、29条の2の適用において影響を受けない。

 (b)先願の特許出願について出願公開の請求(64条の2)があったときは、その後に先願の特許出願を取下げても、必ず出願公開がされ、29条の2の引用適格を有する。

 (c)後願の特許出願について特許権の設定の登録があった後に、先願の特許出願について出願公開された場合は、29条の2違反であるとして、特許異議の申立ての理由となり(113条2号)、特許の無効の理由となる(123条1項2号)と解される(裁判例)。
 後願の特許出願について特許権の設定の登録があった後に、先願の特許出願について出願公開された場合にも、後願の特許発明は、新しい発明とはいえず、29条の2により拒絶すべきものと解されるからである。

(8)「実用新案公報(以下「実用新案掲載公報」という。)の発行」
 実用新案登録出願については、出願公開制度がなく、実用新案掲載公報の発行(実14条3項)が唯一の開示手段である。

(9)[願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲若しくは実用新案登録請求の範囲又は図面]
 明細書等は、出願当初のもので、補正後の内容は含まない。
 訂正審判又は訂正の請求による訂正後の内容も含まない。
 願書に最初に添付した明細書等とは、まさに願書に最初に添付した明細書等を意味し、その後の明細書等は含まれない。

(10)「(第三十六条の二第二項の外国語書面出願にあつては、同条第一項の外国語書面)」
 「他の特許出願」が外国語書面出願の場合には、外国語書面に記載した発明と同一発明についての後願を排除することができる。
 外国語書面の翻訳文に記載されていなくても、外国語書面に記載されている発明であれば、後願を排除することができる。

(11)「記載された発明又は考案」
 特許実用新案審査基準によれば、「記載された発明又は考案」とは、記載されている事項及び記載されているに等しい事項から把握される発明又は考案(実質同一の発明)をいう。
 当該特許出願の請求項に係る発明と、先願の他の特許出願等の当初明細書等に記載された引用発明とを対比した結果、以下の(i)又は(ⅱ)の場合は、両発明は「同一」である。 
(i)当該特許出願の請求項に係る発明と引用発明との間に相違点がない場合
(ⅱ)当該特許出願の請求項に係る発明と引用発明との間に相違点がある場合であっても、両者が実質同一である場合
 実質同一とは、当該特許出願の請求項に係る発明と引用発明との間の相違点が課題解決のための具体化手段における微差(周知技術、慣用技術の付加、削除、転換等であって、新たな効果を奏するものではないもの)である場合をいう。

(12)「(その発明又は考案をした者が当該特許出願に係る発明の発明者と同一の者である場合におけるその発明又は考案を除く。)」
 当該特許出願の請求項に係る発明の発明者が、先願の他の特許出願等の当初明細書等に記載された引用発明の発明者又は引用考案の考案者と同一の場合は拒絶しない。自分が発明したものによって拒絶されることがないようにしたものである。

 以下の(i)及び(ⅱ)のいずれの場合にも該当しないときは、他の出願の発明者等と、当該特許出願の請求項に係る発明者とが同一とはいえない。
(i)各々の願書に記載された発明者の全員が表示上完全に一致している場合
(ⅱ)各々の願書に記載された発明者の全員が表示上完全に一致していない場合であっても、実質的に判断した結果、発明者全員が完全同一である場合

 原則として、その願書に記載された発明者を、当該特許出願の請求項に係る発明の発明者であると推認する。
 他の出願の発明者又は考案者についても同様に推認する。
 ただし、例えば、明細書中に別の発明者が記載されているような場合は、願書に記載された発明者以外の者について、発明者であると推認する。

 発明者が同一であるとの主張を裏付ける証拠(他の出願の発明者の宣誓書等)が出願人から提出された場合に、発明者が同一ではないとの推認が覆され得る。

(13)冒認出願
 真の発明者の出願に対しては、冒認出願は、発明者が同一であるため、29条の2の引用例にすることができないが、第三者の出願に対しては、発明者が同一ではないため、29条の2の引用例とすることができる。

 甲が、発明イを完成したが、乙が甲から発明イを盗用して特許出願Aをした。乙の特許出願Aの日後、甲が発明イについて特許出願Bをしたときは、甲の特許出願Bは、発明イの発明者は甲で同一であるので、乙の特許出願Aを引用して29条の2により拒絶されることはない。
 乙の特許出願Aの日後、丙が独自に完成した発明イについて特許出願Cをしたときは、発明者は、甲と丙で異なるため、丙の特許出願Cは、乙の特許出願Aを引用して29条の2により拒絶される。

(14)29条の2ただし書
 「当該特許出願」の時にその出願人と「他の特許出願又は実用新案登録出願」の出願人とが同一の者であるときは、29条の2により拒絶されることはない。

 自分が出願したものによって拒絶されることがないようにしたものである。
 一般的には、明細書の発明の詳細な説明の欄に記載したが、特許請求の範囲に記載しなかった発明については、出願人はその発明について特許を請求しない、いいかえれば公衆に開放するという意思であるとみられるが、中には必ずしもそういう場合だけでなく、その出願の特許請求の範囲に記載された発明の説明にどうしても必要なために明細書の発明の詳細な説明の欄に特定の技術を記載し、その特定の技術については後日別に出願して特許権を得たいというものがある。このような場合には、後に本人が出願すれば特許が受けられるようにしないと困るので、その旨を規定した。
 また、他人が発明したものを見てそれと関連のある技術を開発し、それを特許請求の範囲として出願し、他人の発明を自分の発明の説明のために明細書に記載している場合にも、その他人が後に出願した場合は、拒絶しないこととした。

 以下の(i)及び(ⅱ)のいずれの場合にも該当しないときは、出願人が同一であるとはいえない。
(i)各々の願書に記載された出願人の全員が表示上完全に一致している場合
(ⅱ)各々の願書に記載された出願人の全員が表示上完全に一致していない場合であっても、実質的に判断した結果、出願人全員が完全同一である場合
(例:出願人の改称、相続又は合併があって、当該特許出願の出願人と、「他の特許出願」の出願人とが表示上は一致しなくなった場合)

(15)事例問題1
【問題】
 外国語書面出願Bが、外国語書面出願Aを引用して特許法第29条の2により拒絶されるのは、どのような場合であるか。
 ただし、外国語書面出願Bについて適式に出願審査の請求がされているものとする。また、外国語書面出願A及び外国語書面出願Bは、分割又は変更に係るものでもなく、実用新案登録に基づく特許出願でもなく、いかなる優先権の主張も伴わないものとする。
【解答】
 外国語書面出願Bが外国語書面出願Aを引用して29条の2により拒絶されるのは、以下の要件を満たす場合である。
 第1に、出願Bが出願Aの後願であること(29条の2)。
 第2に、出願Bの後に出願Aについて出願公開又は特許掲載公報の発行がされたこと(29条の2)。
 第3に、出願Bに係る発明が、出願Aの外国語書面に記載された発明と同一であること(29条の2)。
 第4に、出願Bに係る発明の発明者が、出願Aの外国語書面に記載された同一発明の発明者と異なること(29条の2かっこ書)。
 第5に、出願Bの時に、出願Bの出願人が出願Aの出願人と異なること(29条の2ただし書)。

(16)事例問題2
【問題】
 甲は、靴の発明イを独自に完成したので、靴の発明イについて特許出願Aをした。
 その日後、乙は、靴の発明イを独自に完成したので、靴の発明イについて特許出願Bをした。
 その日後、甲は、特許出願Aに基づく国内優先権の有効な主張を伴う特許出願Cをした。特許出願Cの願書に最初に添付した明細書には靴の発明イと靴の発明ロが記載されている。
 特許出願Cの日後、特許出願Aは出願公開されることなく取り下げられたものとみなされた。その後、特許出願Cについて出願公開がされた。
 乙の特許出願Bの審査において、甲の特許出願Aを引用して特許法第29条の2の規定により拒絶されることがあるか。
 ただし、特に文中に明示した場合を除き、出願は、分割又は変更に係るものでもなく、実用新案登録に基づく特許出願でもなく、外国語書面出願でもなく、国際出願でもなく、いかなる優先権の主張も伴わないものとする。
【解答】
 甲の出願Aは出願公開がされることなく取り下げられたものとみなされているので(42条1項)、甲の出願Aが直接29条の2の先願となることはない。
 しかし、甲は出願Aに基づく国内優先権(41条1項)の有効な主張を伴う出願Cをし、後の出願Cの最初の明細書に記載された発明イは先の出願Aの最初の明細書にも記載されているので、発明イについては、後の出願Cが出願公開(64条1項)されたときに先の出願Aについて出願公開されたものとみなして、先の出願Aが、その日後の乙の出願Bに対して、29条の2の先願となる(41条3項)。
 出願Aの当初明細書等に記載された発明イの発明者は甲であり、出願Bに係る発明イの発明者は乙であり、発明者は異なる(29条の2かっこ書)。出願Bの時に、出願Bの出願人は乙であり、出願Aの出願人は甲であり、出願人は異なる(29条の2ただし書)。
 よって、乙の出願Bに係る発明イは、甲の出願Aを引用して29条の2により拒絶される(41条3項)。

(17)29条の2と39条の差異
 (a)第1に、規定の趣旨の面からの差異は次のとおりである。
 すなわち、29条の2は、後願の出願後に出願公開された先願の当初明細書等に記載された発明と同一発明の後願に特許を与えることは不合理であること及び出願審査請求制度(48条の2)の採用等による要請に基づくものである。
 これに対し、39条は、36条5項、37条、70条1項に従い、しかも後願の出願時点においては先願に開示されている発明は秘密状態にあったことを重視する観点から二重特許を排除するという要請に基づいている。

 (b)後願を排除することができる範囲はどこまでかという観点からの差異がある。
 29条の2は、「出願の日前」と規定していて、同日出願には適用がない。29条の2が適用になるのは、先願の最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載されている発明に対してである。
 39条は、同日出願についても適用され(39条2項)、先願の特許請求の範囲に記載されている発明についてのみ適用がある。

 (c)後願を排除することができない場合は何かという観点からの差異がある。
(ア)29条の2は、先願が特許掲載公報の発行も出願公開等もされていない場合については、後願を排除することができない。
 39条は、先願が出願公開等がされなくとも後願を排除することができる。

(イ)29条の2は、先願が出願公開等がされている以上、その後に先願が放棄されたり、取り下げられたり、却下になっても、後願を排除することができる。
 39条は、特許出願が取り下げられたり、放棄されたり、却下されたり、特許出願について拒絶をすべき旨の査定若しくは審決が確定したときは、後願を排除することができない(39条5項)。

(ウ)29条の2は、後願の出願時において後願と先願の出願人が同じ場合は、適用がない(29条の2ただし書)。
 39条は、先願と後願との出願人が同じでも、適用がある。

(エ)29条の2は、先願と後願の発明者が同じ場合には、適用がない(29条の2かっこ書)。
 39条は、先願と後願の発明者が同じでも、適用がある。

 なお、29条の2と39条は、後願を排除するという機能について見れば、同一事件に重複して適用することができる場合があり得るが、いずれを用いて後願を拒絶するかは、審査官の自由である。


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