麒麟琳記〜敏腕Pの日々のつぶやき改題

還暦手前の身の回りのこまごま。
スポーツや映画演劇など。

第三帝国の恐怖と貧困

2015年03月19日 | 鑑賞
東京演劇アンサンブル
創立60周年記念公演3
『第三帝国の恐怖と貧困』は
とてもエレガントな仕上がり。
そして猛烈にアンサンブルらしい舞台だ。

構成・演出の松下重人が大きな仕事をした。

生え抜きの選手を適材適所に配し、
札束にものを言わせて補強する
ビッグチームにジャイアントキリングを
喰らわせるプロのクラブ。
セレクションで生徒を集めた強豪校に
チーム一丸で番狂わせを起こす公立校。

そんなチームの清々しさ、力強さを
3時間の舞台からひしひしと感じた。

22日まで。拠点のブレヒトの芝居小屋。
必見の「演劇」だ!

※※※

広渡常敏という巨人の育んだ劇団の、
節目の年の演出を担ったのは、
小森明子、公家義徳と松下の三人。

2006年に逝った広渡の「思い」を、
それぞれに継承し、また新味を加え、
ドイツの戯曲三本に取り組んだ。
おっと。
演劇は一人の力では紡げない。
「猛烈にアンサンブルらしい」と
書いたが、劇団力が半端ない集団だ。
今回の『第三~』でも如何なく発揮され、
そこに身震いし、また少々笑った。
それはTEEが持つあるコケティッシュさ。

本来の「艶かしい」「蠱惑的」ではなく、
日本的な解釈「ユニークな可愛らしさ」
「独特なキュートさ」としての
コケティッシュさに微笑む場面が沢山あった。

1945年にベルトルト・ブレヒトが発表。
タイトルからも明確な内容だ。
「70年前の戯曲だが今を射抜く舞台」
と謳い文句では書かざるを得ないし、
実際、確かに現在の日本を照らしてはいる。

東京演劇アンサンブルという「個性」から
その「表明」のボルテージは強く、
観客の中には違和感を覚える人もいよう。
ただ、そんなことは。
太陽が東から昇るように明らかで、
そんな目と60年堂々と対峙してきた劇団だ。

やや遠回りになったけれど。
社会的であり、告発的である芝居の、
その先というか、凌駕して余りある
「ひとつの演劇」としての魅力に
めちゃめちゃ溢れた総合芸術として
松下版『第三~』は素敵だな~と、
個人的に思いました・・・とさ。


コメント
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