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Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

名もなき者 A COMPLETE UNKNOWN

2025-03-03 | 映画(な行)


◼️「名もなき者 A COMPLETE UNKNOWN/A Complete Unkown」(2024年・アメリカ)

監督=ジェームズ・マンゴールド
主演=ティモシー・シャラメ エドワード・ノートン エル・ファニング モニカ・バルバロ

エンドクレジットでLike A Rolling Stoneを聴くのは2度目だぞ。前は…そうだ、みうらじゅん原作の映画「アイデン&ティティ」だ。ミュージシャンの主人公が迷った時にディランと呼ばれる人物が現れて、彼に気づきを与えてくれる。あの映画を観て、ボブ・ディランの「追憶のハイウェイ61」を買って聴いたんだった。

「アイデン&ティティ」に引用されたように、僕らよりも上の世代の方々にはボブ・ディランに並々ならぬリスペクトがある。僕ら世代には、We're The Worldの最後にダミ声で歌ってる姿が初ディランという人も多いもの。代表曲「風に吹かれて」はプロテストソングとして世界中で歌われた。浜田省吾の「路地裏の少年」の歌詞に出てくるように、覚えたての「風に吹かれて」を窓辺で歌い、国の未来を語り合ってたんだ。

「名もなき者」公開2日目に参戦。映画館には年配の方が目立った。あとはシャラメくん目当ての若い女子たち。

映画は若きディランがヒッチハイクして、尊敬するウディ・ガスリーが入院する病院にやって来るところから始まる。出自がどうとかそういう伝記映画めいた描写はバッサリ捨てて、発揮し始めた才能とエネルギーを音楽にまっすぐ注ぎ込む姿が映し出される。フォークシンガー、ピート・シーガーのバックアップもありディランは注目を集める。フォークという音楽ジャンルの救世主のように受け入れられたのだ。

だがいきなり彼の自作曲が受け入れられた訳ではない。新人のデビューはカバー曲中心という音楽界のしきたりに封じ込められたディランの1stアルバム(1960)。そういえばサイモン&ガーファンクルの1stアルバム(1964)にもポール・サイモンの自作曲は4曲だけだ。しかも同年に発表されたボブ・ディランの「時代は変わる」が収められている。当時のディラン楽曲がフォークというジャンルで大きな存在で、世に求められていたかがよくわかる。

ステージで共演するジョーン・バエズから「あんたはカバーばかり」と言われる始末。そんなバエズと深い仲になるディラン。まだ作りかけだった「風に吹かれて」を部屋で二人で歌う場面が素敵だ。もう一人の恋人シルヴィとの二股恋模様。社会派フォークの貴公子と持ち上げられた後、4枚目のアルバムがラブソング中心になったのもこの時期。

「時代は変わる」をフォークフェスで歌い、観客が共に歌い出す場面は感動的で、社会派フォークを求める聴衆に即座に受け入れられる様子として描かれ、象徴的でもある。それだけに映画のクライマックスとなる1965年のニューポートフォークフェスの場面が、対照的で際立つ効果をもたらしてくれる。フォークに従来の型を求める頑なな聴衆と古くからのスタッフから、ディランに向けられるヘイトと敵意の中。歌われるのはLike A Rolling Stone。多くの聴衆から投げかけられたのは罵声だった。

音楽のジャンルは今や多様化していて、それぞれのファンがいる。その一方で演奏形式や使用する楽器はボーダーレスになっている。だからこれを観る若い世代にはエレキに持ち変えるくらいで何が悪い?と不思議に思うかもしれない。

映画で描かれた1960年代は、エレキギターを手にした英国人がチャートを席巻していた時代。その変化に柔軟になれなかった人たちがいたという背景をこの映画で知るのは大切なことだ。それだけディラン楽曲の影響は大きかったということだし、エンタメに限らず世の中には不寛容が今も昔も溢れているということでもある。

パンフが60年代のボブ・ディランを知る上でこの上ないガイドブックになっている。買ってよかった!。シルヴィを演じたエル・ファニングはディラン楽曲が好きで、そのきっかけを作ったのはキャメロン・クロウ監督だそうだ。クロウ監督は85年にリリースされたディランのコンピ盤「バイオグラフ」の解説を手がけている。僕が初めてディラン楽曲に向き合った頃のアルバムだ。そしてクロウ監督は「バニラ・スカイ」で、ディランの2ndアルバム「フリーホイーリン」のジャケット(「名もなき者」では撮影シーンが登場)を再現してみせた。「バニラ・スカイ」のあの場面を観たくなった😊

ティモシー・シャラメがディランの歌声を真似て全曲歌っているのも素晴らしい。サントラと合わせてディランにも是非触れて欲しい。






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