
◼️「女と男の観覧車/Wonder Wheel」(2017年・アメリカ)
監督=ウディ・アレン
主演=ケイト・ウィンスレット ジャスティン・ティンバーレイク ジュノー・テンプル ジェームズ・ベルーシ
満たされない、持て余された感情が映画の中に充満して、渦を巻いている。登場人物の誰もが抱えているどうしようもない不安。ポスターにも使われている、西日が射し込む居心地の悪そうな部屋。遊園地という日常から離れた楽しげな場所に隣接してるのに、そこで暮らす彼らの生活は決して心躍るものではない。日々は繰り返すけど何も変わらない。乗ってる間は日常と違う景色が見られても、再び同じ場所へと戻ってくる観覧車みたいに。
主人公ジニーの日常を狂わせたのは、再婚相手ハンプティの娘キャロライナが、ギャングの夫から逃れて頼ってきたことだった。最初は突き放していたのに、娘を更正させようとするハンプティ。火遊びを繰り返す息子のリッチーに手を焼くジニーは、満たされない日々の中で、海水浴場の監視員ミッキーとの不倫関係を続けていた。そこへ現れたキャロライナが、次第にミッキーに興味を示し始めたことから、人間関係が狂い始めていく。
ウディ・アレン映画に登場する人々は、幸せになりたいのにうまくいかない不器用な大人たちだ。この映画も然り。でもこれまでのアレン映画なら、不器用な主人公のストッパー役だったり、冷静な判断ができたりする誰かがまだ周囲にいたように思う。だけど「女と男の観覧車」は、主要な登場人物はみんなどうしようもなさを抱えている。不倫相手の若い監視員との将来を夢見ているジニーも、決別したはずの娘を盲目的に可愛がってしまうハンプティも、男に懲りないキャロライナも、訳ありなキャロライナに傾いてしまうミッキーも。男も女も、一度転がり始めたら歯止めの効かないどうしようもなさを抱えてる。そして2018年はウディ・アレン自身も現実社会でバッシングを受けた。ウディ先生の映画に触れる度に、男と女について考えさせられる。
映画のラスト、息子チャーリーが再び浜辺で火遊びをして炎を見つめる。彼もまた満たされない一人。無言の少年の思いは語られない。大人なんてみんな消えちまえばいいのにみたいな気持ちがあるのだろう。でもね、少年。世の中には燃やしても燃やし尽くせないものもあるんだ。それが男と女ってもんなんだよ。ヴィットリオ・ストラーロのカメラがとにかく美しい。