(前回からの続き)
先述のような事情から、利上げは時期尚早―――これが米FRBの本心でしょう。そしてこれがしばらく(ずーっと?)、つまりFRBが利上げしそうでしない状態が続いていく、というのが個人的な予測です。これまた前回綴ったように、もはやアメリカ経済は金利上昇に耐えられそうもないからです。
だからといって自信なげに「わがステイツは利上げができる環境にない」なんて本音をプライドの高いアメリカ様が口にするわけにはいきません。そこでFRBとしては、利上げしない理由を自国にではなく、パッとしない世界経済のほうに見出そうとするような気がします。とくに欧州・・・ギリシャ金融支援の行方を含めた欧州情勢に不確実性があるために、同支援の新しい枠組みが決定され、欧州経済の着実な成長が確認できるようになるまで利上げには慎重であるべきだ、なんて感じ・・・。
もちろん本当のところはそんな欧州リスクが自分たち自身を傷つけるから。つまり、へたに利上げをして株価や債券価格が下落し(金利が上がり)始めていたところでギリシャがデフォルトでもしたら、利上げ&欧州発リスクオフのダブルパンチで資産効果が著しく失われ、前記のような景気後退と金融不安がアメリカを襲いかねないからです。したがって欧州のせいで、ということにしてFRBは、「いま」は利上げしない、という「いま」を6週間おきに開催されるFOMCで繰り返していくことに・・・なるのではなかろうか、と予想するわけです。
足元では米国債価格が急激に下がっています。今月3日、ドラギECB総裁のボラティリティー発言(市場は高いボラティリティーに順応する必要があるという趣旨の発言)などを受けて欧州各国債と米国債の双方が売られ、アメリカの長期金利(10年物国債利回り)はわずか3営業日で24bpも上昇して2.36%程度と、年初来高値に達しました。ここでもしギリシャとEU債権国との間に支援合理が成立したりしたら株価には支援材料でしょうが、この地合いだと米国債への逃避需要が減って長期金利はさらに上がるかも・・・。といった具合で、どのみち(リスクオンでもオフでも)FRBとしては利上げに神経質にならざるを得ない市場環境といえそう。ということもあり、少なくとも今月のFOMCでの利上げはないでしょう・・・(?)
とはいえ、FRBはいずれどこかで利上げしないわけにはいきません。本稿前段で書いたように、利上げを見送れば見送るほど、利上げ時の悪影響は大きくなるからです。すでに十分に利上げのタイミングが遅れているので(まあ利上げが事実上、不可能だから仕方なかったわけだけれど・・・?)、「双子のバブル」(株&債券)軟着陸を図るにはアメリカだけの手には負えません。そこで、誰かにアシストしてもらおう、と無理矢理(?)日本がこれに付き合わされることになったわけですが・・・