(前回からの続き)
前回、わたしたちはもっと素直に原油価格の低下トレンドを歓迎し、そしてこれがいっそう加速されるような働きかけをしていきたいところ、と綴りました。しかしそれは「日本」にはいえることであっても、現状の「アベノミクス日本」にいえることではありません・・・というより後者にとって原油安はむしろ脅威だから、その価格はいまよりもっと高くなってくれないと困る、ということになります。
このあたり本ブログでは何度も綴っていることですが、その最大の理由は、アベノミクスが「カブノミクス」(取り柄は「株のみ」:私的造語)と表現できるほど内外の株・・・を筆頭とするリスク資産の価額上昇を目に見える成果にしたがっているから。ここでは株やジャンク債などとともに原油もまた(最大の出し手が日銀になっている?)超低金利マネーを借りて行うリスク投資の対象として、プライスが上がってほしいアイテムの一つになっているわけです。であれば、ガソリン代が上がって苦しい、みたいな国民生活へのダメージは目もくれず(?)、アベノミクス各位が原油高≒株価高を志向するのはもっともでしょう・・・?
上記も含め、近年の原油価格はその需要と供給・・・ではなく、その投機のオンオフが最大の変動要因となっています。そのあたりを裏付けるのが「逆オイルショック」。2014年夏にピークを打った原油価格がそれ以降、急激に下がったのは、こちらの記事等に書いたとおり、上記スイッチがオフになったため、すなわち石油投機マネーの供給源であった米FRBの量的緩和策(QE)が終了となる見通しが強まったためです(実際の終了は同年10月末)。ということは、いま当時とは逆に金融は再び緩和モードに入っている―――FRBが金融引き締めを断念し(って、それは不可能だとようやく悟り?)、利下げ、そしてQE(第4弾)再開が間近?となった―――現在、原油価格もまたこの瞬間のダウ平均(2万8千ドル台!)並みに史上最高値付近に達していてもおかしくはありません・・・
・・・が、そうはなっていないわけです。たしかに原油価格は、直近の株価と歩調を合わせて?上昇し、1バレル60ドル台に乗ってきました・・・が、それはダウがいまより4割も低い1万6千ドル台だったころに同100ドルを超えていた(2014年夏頃)のと比べると、いかにも迫力不足?といった感じ。このへんは、せっかくマーケットがかつてのようなリスクオンになってきたのに、原油価格だけがこれについていってくれない~(泣)、とサウジアラビア(同80ドル以上希望)、ロシア(協調減産不可能)、アメリカ(同100ドル以上必須?)、そしてなぜか石油自給率ほぼゼロ%の「アベノミクス日本」(ガソリン代リッター200円以上渇望?)までが切なくなってしまう?ところでしょう・・・
個人的に、こうして原油価格が緩和的な金融政策の下でもなかなか上がらなくなった原因が、米シェールオイルをはじめとする世界的な原油の過剰生産という実需面にあることに興味を感じますね・・・