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「さとり(差取り)」に向かう世界⑦(差取り回避策:消費増税)

2013-01-15 00:00:44 | 世界共通

(前回からの続き)

 外国への資産移転や移住のほか、富裕層の「さとり(差取り)」回避策として有効なのは、とくにわが国においては「消費税の増税を訴えること」ではないでしょうか。

 「増税なのにどうして『さとり(差取り)回避』なのか?」と問われそうですが、そのわけを以下に記していきたいと思います。

 現在、巨額の財政赤字を抱えるわが国などの先進国では税収の拡大が求められています。こうしたなか、アメリカやフランスといった国々は、本稿でご紹介したように、所得税や相続税の最高税率やキャピタルゲイン税率の引き上げといった、富裕層をおもなターゲットにした課税強化を進めています。

 これに対し、わが国では「財政を立て直さなければならない、そのためには税収を増やす必要がある」ところまでは両国と同じですが、ご存知のとおり、税収増加の手段として真っ先に挙げられるのが「消費増税です。以前「消費税軽減税率の適用を要求する新聞のエゴイズム 」でも書いたように、新聞をはじめとする主要メディアがこぞって(?)増税を唱えるのは、数ある税金のなかでも唯一この消費税だけ、といってもいいくらいではないでしょうか。誰にとっても増税は辛いはずなのに、なぜ消費税に限って日本ではこんなに増税人気(?)があるのか・・・。

 消費増税がこれだけ主張される最大の理由は、法人税や所得税などと比較すると消費税には景気動向にそれほど左右されずに安定した税収が見込めるというメリットがあるためでしょう。たしかにそのとおりと思います。

 しかし消費税には、消費を冷やすというデフレ効果があるほか、「さとり(差取り)=格差是正」の観点からも重大な欠陥があります。それは「逆進性―――同じモノやサービスを買った場合の税相当負担額がお金持ちもそうでない人も同じ額になる、といったことです(税込価格105円のリンゴの同負担額は両者ともに5円ですが、その担税感の重みは「月とすっぽん」のはず・・・)。

 一方、富裕層にとって消費増税は次の点からメリットとなりえます。逆進性については上述のとおり、消費税負担額が生活保護層などと同じ金額ですむことになります(お金持ちにとっては担税感が軽い)。そして重要なのは、財政再建の手立てとして消費増税が前面に出てくれば、所得税の最高税率や相続税の引き上げがその陰に隠れ、富裕層増税が回避あるいは軽減される可能性が高まること。つまり「消費増税で買い物の際に支払う金額は多少は増えるかもしれないけれど、所得税や相続税の増税でガッポリ国に持っていかれるよりは・・・」ということです。

 といったようにみてみると、わが国では「消費税を増税せよ」という訴えこそ、富裕層の「さとられない(差取られない)」ための、つまり増税の脅威から自らの資産を保全するための方便となっているように感じられるのです。先にあげた新聞等のメディアが一斉に「財政健全化=消費増税」を主張する背景には、こうした富裕層の思惑があるのかな、などと想像したりしています。

 さて、このような消費増税をいわば「隠れ蓑」とする富裕層の「さとり(差取り)」回避策ですが、この先どこまで続けられるかは不透明といえそうです。本稿前段でご紹介したバフェット税」に代表されるように、富裕層への課税を強化しようという気運が世界的に高まっていることに加え、わが国でも所得税や相続税の増税等が検討されたり主張されたりするようになってきました。すでに「社会保障と税の一体改革」で政府がこれらを進めているほか、日本維新の会や民主党などの主要政党が資産課税の強化をマニフェストに掲げたりしています。

 こうじた情勢のもと、誕生して間もない自民党・安倍政権は、所得税の最高税率を現行の40%から45%に引き上げるほか、相続税のほうも相続遺産から差し引くことができる基礎控除額を引き下げて課税対象を拡大する方向で検討を始めたもようです。「さとり(差取り)=格差是正」の観点からは望ましい方向性ですね。今後、同政権が、消費増税実行の是非を含めた「さとり(差取り)」にどのようなスタンスで臨むのか・・・。その大胆な金融政策と財政政策の今後と合わせ、期待を持って見ていきたいと思います。

(続く)

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