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「さとり(差取り)」に向かう世界⑧(差取り回避策:金融緩和その1)

2013-01-17 00:02:50 | 世界共通

(前回からの続き)

 本稿⑥、⑦では、富裕層の「さとり(差取り)」回避策として、資産家をターゲットにした課税強化から逃れようという動き、および消費増税の容認による資産増税の緩和狙いという、「税金」に関連するものを取り上げてみました。

 そのほか、本来の目的とは違ったところで、じつはこうした「さとり(差取り)」回避的な要素を強く持つ、いま世界経済でたいへん流行している(?)政策があります。それが「金融緩和策

 本ブログでたびたび書いているように、2007年の米サブプライム問題顕在化以降、欧米の中央銀行はさまざまな金融緩和策を実施しています。アメリカの連邦準備制度理事会(FRB)は一連のQE(Quantitative Easing:量的緩和、現在は第3弾を実施中!)、そしてヨーロッパでは欧州中央銀行(ECB)がLTRO(Longer-Term Refinancing Operation:3年物資金供給オペ)とかOMT(Outright Monetary Transactions:国債購入計画)といった金融市場への低利資金供給策を続けています。

 詳細は省きますが、これらの金融政策の本質は「財政ファイナンスといえるでしょう。各種バブル崩壊後の借金負担を軽くするため、アメリカも欧州(とくにPIIGS諸国)も金利を十分に低い水準に維持する必要があります。一方、これら諸国の多くは経常赤字国であるうえ、住宅ローン破綻リスクやソブリンリスクが高まるなかでマーケット任せでは金利は下がりません。そこで欧米中銀が行ったのが上記の横文字オペレーションを通じた金利の低め誘導。名前は違えど、やっていることはほぼ同じ。つまり「大規模な国債等の買い入れ=財政ファイナンス」です。

 こうした金融緩和策ですが、富裕層の「さとり(差取り)」回避の観点から考察すると次のようなメリットが浮かび上がってきます

 はじめに指摘できるのは、中銀等による財政ファイナンスによって資産増税のプレッシャーが和らぐ可能性が高まること

 つまりこういうことです。重債務国にとっては、中銀が国債を買い入れて財政をファイナンスしてくれれば国債利回りは低下(価格は上昇)するし財政資金も手にすることができます。これによって財政再建の手綱が緩み、富裕層の所得や資産に対して課税を強化しようという動きも止む・・・。こうした傾向は、先般EUおよびIMFから新たな融資約束を勝ち取ったギリシャや、上記OMTによる支援を近々(?)ECBに要請しそうなスペインなどのPIIGS諸国などで今後は顕著になっていくだろうと見ています。

 しかしこの「財政ファイナンス」はいわば麻薬。中銀等に国債を買ってもらえば上記のように束の間の(?)心地良さが訪れます。しかしこれに依存しすぎるとインフレや金利の高騰という苦しみがやがて襲ってくるということです。真の意味で財政を立て直し、経済基盤を強化するためには、やはりこの麻薬依存から脱却し、強い決意で「さとり(差取り)」(富裕層増税など)とか産業振興策などを進めなければならないはずですが・・・。はたしてすでに相当な「麻薬依存症」に陥っているギリシャなどのPIIGS諸国等にそんなことができるのかどうか・・・。

 そして金融緩和は富裕層、とりわけ低金利の緩和マネーにアクセスすることができる人々に莫大な利益をもたらすチャンスを提供します

 現状の先行き不透明な欧米経済で、いくら金融緩和を行って市場に低利資金を供給しても、金融機関や大手企業の多くは企業融資や設備投資などの本業を進めることはせず、この資金を借り受けて少しでも利回りの良い債券や商品等に投資して利ざやを稼ぐという「キャリートレード」に走るばかりではないでしょうか。このトレードが成功すれば、これら企業等の経営者や投資家といったお金持ちは大いに潤います。こんな取引ができるのは低利マネー借り入れでレバレッジを効かせることができる人々に限って許される特権です。しかもこれにしくじった場合でも・・・金融危機発生!→政府が公的資金を金融システムに投入・中銀が問題金融機関に特別融資等を敢行・・・などと政府や中銀がその失敗をしっかりフォローするので、個人の経営責任が問われることはほとんどありません・・・。

(続く)

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