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「さとり(差取り)」に向かう世界②(アメリカ編その2)

2013-01-05 00:01:35 | アメリカ

(前回からの続き)

 実際、こうした格差社会を形成しているアメリカでも「さとり(差取り)」を意識した動きが見受けられるようになってきました。

 たとえば現在「財政の崖」の関連で議論されている「ブッシュ減税」の失効などはその代表例でしょう。かりに予定どおり(?)同減税が失効したとすると、先に述べた所得税の最高税率は39.6%に、そしてキャピタルゲイン税率のほうも最高で20%くらいに引き上げられることになっています。

 まあ感覚的にはこれによって不均衡是正が大きく進むようには思えませんが、アメリカ社会が「さとり(差取り)」に踏み出すというインパクトは小さくないと思っています。個人的にはオバマ政権が議会共和党などの一部の反対論や慎重論を抑え、このブッシュ減税を終わらせて財政健全化と格差是正に早急に着手することを期待しているのですが・・・。

 と、ここまで書いていたら、アメリカから「財政の崖」回避のための関連法案が可決・成立する運びとなったというニュースが飛び込んできました。これによれば同法案は、世帯年収が45万ドル超の富裕層には減税をやめて、所得税率を39.6%に引き上げるほか、キャピタルゲイン税率を現行の15%から最高23.8%まで高める、などといった内容を含んでいます。

 一方で大きな焦点となっていた連邦債務上限の引き上げについては今後に持ち越しとなっており、オバマ政権と議会とくに共和党との間でしばらくは激しい戦いが続きそうです。もっとも富裕層増税が決まり、「さとり(差取り)」がほんの少しだけ前進しました。これを機に、オバマ政権がどこまで「さとり(差取り)」を実行していけるか、注目していきたいと思います。

 アメリカの「さとり(差取り)」を感じさせるもうひとつの例は、富裕層の一部から自分たち富裕層にもっと課税せよ!という声が聞こえてきたこと

 先月、有名な投資家であるウォーレン・バフェット氏は、同じ投資家ジョージ・ソロス氏などの20名あまりの資産家とともに共同声明を発表し、米議会に対し、遺産税における一人当たりの控除額を512万ドルから200万ドルに減らすほか、最高税率を現行の35%から45%超に引き上げるよう要請しました。この声明にはカーター元大統領も署名しているとのことです。

 バフェット氏は以前から富裕層への優遇政策の廃止を主張しており、具体的には年収100万ドル以上の富裕層に30%の最低実効税率を課す「バフェット税(バフェット・ルール)」を提唱しています。さらに世界各国に対して投機目的の国際金融取引に対する税制(通称「ロビンフット税」)の導入も訴えています。このあたりは金融資本主義が格差拡大を助長するというネガティブ面を持っていることを強く意識した提案といえそうです。

 異様なほどの貧富の差が社会を蝕んでいる一方で、本来ならば「さとられたくない(差取られたくない)」側のバフェット氏のような富裕層から、こうした「さとろう(差取ろう)」という提言が出てくるところがアメリカの奥の深さ。上記のバフェット・ルール等には富裕層がおもな支持基盤である共和党などから反対論などが出ているようですが、一方で民主党員の70%超が、そして共和党でも半数近い党員がバフェット税導入を支持しているようです。今後、バフェット氏への賛同者がどこまで増え、そして富裕層への課税強化などを含む格差是正策がオバマ政権によってどこまで打ち出されるのか、注目されます。

 「財政の崖」が迫るなか、今年、アメリカではこの「さとり(差取り)」がもっとも熱い論争のテーマとなるだろうと予想しています。

(続く)

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