(前回からの続き)
そんな中央銀行の金融緩和策を容認する一方で、大多数の一般市民の声を聞き入れて「さとり(差取り)=格差是正」を進めようというのなら、やはり政府が政策的に動くしかないでしょう。
具体的には、財政基盤を強化するにあたって、その赤字を中銀の「財政ファイナンス」で安易に埋めようとするのではなく(一方でデフレ推進や逆進性というマイナス面を持つ消費増税だけを行うのではなく・・・これは日本のこと)、担税力のある富裕層に応分の負担を求めていく、つまり最高税率の引き上げなどによる所得税や資産税・相続税の増税を進めて歳入の強化と不均衡是正を図る、といったことなどです。
はたして、本稿前段でご紹介したアメリカやフランスなどの国々が、金融緩和という「麻薬」が効いている間に、「さとられたくない(差取られたくない)」人々の「さとり(差取り)」回避策などによる反撃(?)をかわしながら、こうした「さとり(差取り)」政策をどこまで推進していけるのか、注目していきたいと思います。
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【日銀の金融緩和策について補足です】
以上は「さとり(差取り)」回避的な面を強く持つ欧米中銀の金融緩和について述べたものです。これに対して日銀の金融緩和の目的はそれらとはだいぶ異なります。
それは本質的には円のマネタリーベースを拡大して円安(外貨高)を促そうという「円安誘導による外需狙い」であって、円売り外貨買い為替介入のような性格を持つもの(何度もしつこく指摘してすみません)。一方で欧米中銀の金融緩和策のような「財政ファイナンス」的な意味合いは強くはありません。以前から書いているように、現状、日本政府は普通に国債を発行して(外国マネーに頼らなくても、国内の!)金融市場から財政資金を低い金利で十分に調達することができるので、日銀のこうした財政支援的なオペに頼る必要は無いということです。
このあたり、「さとり(差取り)」のテーマから少し外れてしまいましたが、欧米中銀の金融緩和策に加えて日銀のそれまでも「財政ファイナンス」であるという見方が一部にあるようなので、あえてそれとは異なる個人的な解釈を付記してみました。
(続く)