完全に月遅れになりましたが、8月号の書評です。
特集は学園都市線電化をキーにした札幌の通勤電車。
近代的な高架複線を51型客車くずれのPDCが闊歩するという奇景も6月から電化され、10月には完全電車化で終了するのですが、この機会を逃せば特集されるかどうかも怪しい学園都市線(札沼線)がメインと言う、これもある意味異色な特集です。
(PDCが闊歩する:新琴似にて。2011年)
札幌近郊の各駅探訪と合わせて、普段あまり取り上げられない視点での特集なので読みごたえがありました。ただ、強いて言えばJRがメインなので地下鉄などへの言及が薄く、決して軽くはないバス交通が事実上オミットでは地域の交通と言う意味では一部をなぞったにすぎません。
「通勤電車」ということでやはりロングシート礼賛がお約束ですが、仙台地区での701系からE721系へのクロスシート回帰を踏まえたらどう評価すべきか。混雑を考えると、ロングシートで詰め込みの対応になびきたくなるのでしょうが、快速「エアメ[ト」でも混雑が著しいという現状は、輸送力不足そのものであり、それを詰め込みで対応するというのは数年前の留萌本線での「濡れ衣」積み残し事件とその後の対応と相似形です。
ロングシートを正当化する基準もどんどん甘くなっており、今号ではロングシートでも構わない乗車時間が30分を超えてきました。
札樽間のように観光需要が少なくないところに詰め込み主義では、本来定時性、速達性とも劣る高速バスに一定のシェアを残すことになるでしょう。
要は混雑時の遅延対策と言う意味ではデッキ付と言う問題「だけ」をまず除去すればよかったのであり、721系8次車のようにデッキ無し転クロという選択肢がなぜ取れないんでしょうね。
(721系8次車。2011年)
近郊駅乗り歩きについては、銭函で張碓海岸の断崖を越えたここまでが小樽市と言う「怪」も解説してほしかったですし、銭函とセットでほしみ止まりへの言及も、ほしみ開業前は星置発着(ただし銭函中線折り返し)と、銭函で折り返すが制約上1つ手前まで、と言う機械的延長をもっと強調して見てはどうだったか。
江別の寂れっぷりにしても、元急行停車駅と言いながら、そもそも「かむい」と夜行急行だけ停車という中途半端な状態でした。
あとは新千歳空港の観察はよく見ている印象ですが、Kitakaを前面に押し出すのはステマっぽいですね。東京から取材できたんだったらSuicaを持ってるでしょうから、わざわざカードを購入せずとも、手持ちのSuicaで乗れますから。
吉見氏の「札幌都市圏の交通」は地元北大大学院の教授らしい視点ですが、やはりというか軌道系への過度の評価もあるわけで、LRT構想への過分な期待と、道路整備へのネガティブ評価はいただけません。それと、新千歳のハブ化については、トランジット需要だけで賄えない限り、新千歳発着の国際線、それもビジネスクラス以上の需要がしっかり根付いていないといけませんが、観光需要だけでは話になりません。
ちなみに紹介事例の中の地下鉄福住駅の交通広場設置計画ですが、同駅にはもともと立派なバスターミナルがあり、地域・気候上の問題から内地のような交通広場でなく、密閉型のバスターミナルでの対応が主流の札幌都市圏において、何をしたいのでしょうか。
(地下鉄駅直結の福住バスターミナル。2011年)
そして結論での一極集中への反論ですが、北海道だけでなく北東アジア全体で見よ、と言うのは開き直りでしょう。その伝で行くと、東京だって世界全体で見たら、と一極集中のさらなる進行を肯定できますし。
特集以外はまずお馴染みの曽根教授による「鉄道技術のあり方を問う」ですが、技術論もさることながら、サービスの画一化、高速性能の追求低下への厳しい批判が目立ちます。
要は経営第一の「安全運転」と技術進歩、サービス向上が二律背反の関係にあることに他ならないのですが、鉄道が使われているとはいえ、通勤や用務利用がメインで積極的選択に見えないことに危機感を感じているわけです。
新幹線については経済性を重視した700系批判がメインですが、500系に押し付けた座席数の縛りにしても、300系以降の新しいルールに他ならないわけで、こうした一時点を基準にするということは、それ以降のイノベーションの放棄に容易につながるわけで、ホームドアの導入が下手をしたら1944年の63系のドア位置で将来も固定化してしまうようなものでしょう。
次いでのと鉄道能登線。2005年の廃止区間の訪問ですが、個々の列車を見たら2連、3連としっかり利用がついていたのに廃線の憂き目と言うまさかの結末を迎えた路線です。
(縄文真脇駅。2004年)
結局、七尾線区間も含めて金沢からのアプローチが乗り換えてさらにフィーダーにと言う面唐ュささが先に立つことと、地道に侵食している北鉄バスの特急バスがそれなりに整備されていることも理由にあるはずですが、そう言った考察はしていないようです。
(帰りは宇出津・真脇特急バスで金沢まで2時間20分。2004年)
最後に、悪文で読む気もしない「日本縦断ローカル線」ですが、観光列車「いさぶろう」「しんぺい」の紹介も良いんですが、「普通列車」ですから地元利用も少ないですがあるはずです。文中では「時たまある」と言う乗務員の弁を紹介していましたが、指定券がないと木のベンチシートにご案内、ということに何の疑問も抱いていないのはどうなんでしょうね。
(簡易お座敷車になっていた「いさぶろう」 1999年)
これってJR九州の観光列車施策の一番の歪みが出ているシーンだと思うんですが。
同名の列車がキハ31で設定されていた時は、一般列車を観光仕立てにしただけで、そういった弊害もなかったんですけどね。
特集は学園都市線電化をキーにした札幌の通勤電車。
近代的な高架複線を51型客車くずれのPDCが闊歩するという奇景も6月から電化され、10月には完全電車化で終了するのですが、この機会を逃せば特集されるかどうかも怪しい学園都市線(札沼線)がメインと言う、これもある意味異色な特集です。
(PDCが闊歩する:新琴似にて。2011年)
札幌近郊の各駅探訪と合わせて、普段あまり取り上げられない視点での特集なので読みごたえがありました。ただ、強いて言えばJRがメインなので地下鉄などへの言及が薄く、決して軽くはないバス交通が事実上オミットでは地域の交通と言う意味では一部をなぞったにすぎません。
「通勤電車」ということでやはりロングシート礼賛がお約束ですが、仙台地区での701系からE721系へのクロスシート回帰を踏まえたらどう評価すべきか。混雑を考えると、ロングシートで詰め込みの対応になびきたくなるのでしょうが、快速「エアメ[ト」でも混雑が著しいという現状は、輸送力不足そのものであり、それを詰め込みで対応するというのは数年前の留萌本線での「濡れ衣」積み残し事件とその後の対応と相似形です。
ロングシートを正当化する基準もどんどん甘くなっており、今号ではロングシートでも構わない乗車時間が30分を超えてきました。
札樽間のように観光需要が少なくないところに詰め込み主義では、本来定時性、速達性とも劣る高速バスに一定のシェアを残すことになるでしょう。
要は混雑時の遅延対策と言う意味ではデッキ付と言う問題「だけ」をまず除去すればよかったのであり、721系8次車のようにデッキ無し転クロという選択肢がなぜ取れないんでしょうね。
(721系8次車。2011年)
近郊駅乗り歩きについては、銭函で張碓海岸の断崖を越えたここまでが小樽市と言う「怪」も解説してほしかったですし、銭函とセットでほしみ止まりへの言及も、ほしみ開業前は星置発着(ただし銭函中線折り返し)と、銭函で折り返すが制約上1つ手前まで、と言う機械的延長をもっと強調して見てはどうだったか。
江別の寂れっぷりにしても、元急行停車駅と言いながら、そもそも「かむい」と夜行急行だけ停車という中途半端な状態でした。
あとは新千歳空港の観察はよく見ている印象ですが、Kitakaを前面に押し出すのはステマっぽいですね。東京から取材できたんだったらSuicaを持ってるでしょうから、わざわざカードを購入せずとも、手持ちのSuicaで乗れますから。
吉見氏の「札幌都市圏の交通」は地元北大大学院の教授らしい視点ですが、やはりというか軌道系への過度の評価もあるわけで、LRT構想への過分な期待と、道路整備へのネガティブ評価はいただけません。それと、新千歳のハブ化については、トランジット需要だけで賄えない限り、新千歳発着の国際線、それもビジネスクラス以上の需要がしっかり根付いていないといけませんが、観光需要だけでは話になりません。
ちなみに紹介事例の中の地下鉄福住駅の交通広場設置計画ですが、同駅にはもともと立派なバスターミナルがあり、地域・気候上の問題から内地のような交通広場でなく、密閉型のバスターミナルでの対応が主流の札幌都市圏において、何をしたいのでしょうか。
(地下鉄駅直結の福住バスターミナル。2011年)
そして結論での一極集中への反論ですが、北海道だけでなく北東アジア全体で見よ、と言うのは開き直りでしょう。その伝で行くと、東京だって世界全体で見たら、と一極集中のさらなる進行を肯定できますし。
特集以外はまずお馴染みの曽根教授による「鉄道技術のあり方を問う」ですが、技術論もさることながら、サービスの画一化、高速性能の追求低下への厳しい批判が目立ちます。
要は経営第一の「安全運転」と技術進歩、サービス向上が二律背反の関係にあることに他ならないのですが、鉄道が使われているとはいえ、通勤や用務利用がメインで積極的選択に見えないことに危機感を感じているわけです。
新幹線については経済性を重視した700系批判がメインですが、500系に押し付けた座席数の縛りにしても、300系以降の新しいルールに他ならないわけで、こうした一時点を基準にするということは、それ以降のイノベーションの放棄に容易につながるわけで、ホームドアの導入が下手をしたら1944年の63系のドア位置で将来も固定化してしまうようなものでしょう。
次いでのと鉄道能登線。2005年の廃止区間の訪問ですが、個々の列車を見たら2連、3連としっかり利用がついていたのに廃線の憂き目と言うまさかの結末を迎えた路線です。
(縄文真脇駅。2004年)
結局、七尾線区間も含めて金沢からのアプローチが乗り換えてさらにフィーダーにと言う面唐ュささが先に立つことと、地道に侵食している北鉄バスの特急バスがそれなりに整備されていることも理由にあるはずですが、そう言った考察はしていないようです。
(帰りは宇出津・真脇特急バスで金沢まで2時間20分。2004年)
最後に、悪文で読む気もしない「日本縦断ローカル線」ですが、観光列車「いさぶろう」「しんぺい」の紹介も良いんですが、「普通列車」ですから地元利用も少ないですがあるはずです。文中では「時たまある」と言う乗務員の弁を紹介していましたが、指定券がないと木のベンチシートにご案内、ということに何の疑問も抱いていないのはどうなんでしょうね。
(簡易お座敷車になっていた「いさぶろう」 1999年)
これってJR九州の観光列車施策の一番の歪みが出ているシーンだと思うんですが。
同名の列車がキハ31で設定されていた時は、一般列車を観光仕立てにしただけで、そういった弊害もなかったんですけどね。