Straphangers’ Room2022

旧Straphangers' Eyeや習志野原の掲示板の管理人の書きなぐりです

見返りも解決も無い譲歩

2012-07-14 00:11:00 | 時事
政府が尖閣諸島の国有化を打ち出しましたが、これで我が国固有の領土と言う意思がはっきりする、ということになるかというとそんなことはないわけです。
結局中国に遠慮して「棚上げ」を狙う姿勢が見え見えなわけで、これまで所有者から賃借して賃借人の権利として他人の立ち入りを排除する、つまり、我が国の領土でありながら日本国民の立ち入りを所属自治体であっても認めない、という姿勢が継続するばかりか、所有者として絶対の権力を握って「棚上げ」に邁進することは火を見るより明らかです。

その懸念が的中したのが13日の朝日の報道で、都知事側に対してどうせ国有化するのだから、と、所有者からの購入のための調査等の上陸を認めない、と政府が打ち出したとのことです。
政府はそんなことを言った覚えはない、としらばっくれていますが、これまでの姿勢を見ればさもありなん、というわけで、「大家」が変わるのに際しての調査を「賃借人」が拒むというのも立場をわきまえない話ですが、いよいよ棚上げ目的の国有化と言う感じが強まります。

そもそも賃借人が所有者の権利を阻害することがありえるのかどうか。政府のやり口が通用するのなら、賃借人が大家の処分権を支配することになりますから。

こういう流れを見ると、一部メディアが、国有化で一件落着という雰囲気作りを図っているのもうなづけます。国が所有するから文句はないだろ、ざまみろ都知事、といわんばかりの紙面が目立つ朝日もその一つですが、我が国固有の領土である、と言った天声人語をたしなめて、棚上げすべし、と社論を統制している主筆が前面に出て来ています。

呆れかえったのが11日のオピニオン欄に掲載された「耕論」で、「尖閣国有化でどうなる」と論者2人の意見を掲載していますが、結局は領土主権を殊更に主張するな、棚上げせよ、と言っているわけです。
特にひどいのが元外務省国際情報局長で、「棚上げは日本に有利」としたうえで、「係争地」だとしています。

確かに日中の「係争地」ではありますが、戦争その他で領土主権が変更された領土ではなく、中国が1970年代に海底資源目当てに勝手に、一方的に言いだしてきた話です。
それを向こうにも理があるというか、我が国の主張を相対化したら中国の思うつぼであり、さらに酷いのが、1895年の領土編入が根拠であり、100年そこそこの領有を「我が国固有」と言えるのか、尖閣が台湾に属していた時代もあるのだから中国の物とも言える、と言いたい放題で、こんな人物が外務省の国際情報局長として我が国の情報収集に当たっていたとは、中国の第五列を抱えていたのか、と言いたくなります。

こんな杜撰な言い分が認められるのであれば、同じく領有宣言から100年程度の小笠原もどこぞの国が「中世に我が国が...」と言い出したら相対化して係争地になってしまいます。
いや、沖縄や北海道だって中国に柵封していた琉球王国領だ、ロシアがあれこれ来ていた、と言えますが。

元職であっても、政府の責任ある地位(局長)にあった人物の発言としては、甚だしく見識を欠く不適切なものであり、我が国の立場を危うくしかねない論外の発言です。

こうした領土問題は中国側の対応を見ても分かるように、主権国家の根幹の問題であり、自ら譲るなんてありえない話です。もちろん戦略的に譲渡することがないとは言えませんが、それに見合う見返りが必要です。
そしてそれは安全保障が絡むことが大半であり、経済的見返りで手放すことがあったとしても、帝政ロシアから米国がアラスカを購入したように、見返りが確定していることが大半です。

日中の経済関係を主権問題より優先させたい人が我が国の中国大使をはじめとして少なくないですが、見返りを期待して譲歩して、期待通りになるような国かよく考えたいものです。
譲ればその分つけあがる国です。契約を順守しない、法律を順守しない国です。経済的見返りを「約束」したとしても、まず「空手形」になることは間違いない国ですし、過去何度も痛い目にあっている国です。

実際に中国ビジネスをしている人に話を聞けば、譲歩なんてありえないことはいくらでも聞けます。
相手がまくし立てれば、それに負けないくらいの心構えでないと位負けします。尖閣の問題もそうでしょう。我が国固有の領土であることを明快に、明確に示して譲る姿勢などみじんもないことを示すことで、つけあがる余地がないと思わせないといけません。そしてそうなれば、自然とこの問題は収束しますし、何事もなかったのように淡々と経済関係その他は進むのです。

そういう意味でも、棚上げは愚策であり、じわじわと位負けして行く懸念があります。