goo blog サービス終了のお知らせ 

なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

壊死性筋膜炎

2020年08月14日 | Weblog

 内科の若い先生が水曜日に当直だった時に、83歳男性が救急搬入された。その2日前に草刈りをしていた時に転倒して、右足(足関節部)に擦過傷を来した。

 右足の痛みで水曜日に整形外科クリニックを受診して、捻挫といわれた(本人の話)。クリニックから帰宅の途中に対向車と衝突した。相手の車はそのまま立ち去った。

 救急要請して当院に搬入されたが、右頬に擦過傷程度だった。右足関節部にびらん・滲出液があり、下腿に熱感・腫脹があった。白血球13400・CRP6.6と炎症反応の上昇があり、血小板1.5万と低下して、D-ダイマーが20.4と上昇していた。発熱39℃と高熱だった。

 胸部X線・CTで右胸水があり、浸潤影はわかりにくいが、心不全ではない。地域の基幹病院に右胸水と血小板減少で入院歴があり、詳細は不明だった。夜間なので、翌日に問い合わせることにしたそうだ。

 

 翌日相談された。右胸水のフォローはクリニックに紹介されて、利尿薬が継続されていた。胸腔穿刺をしないとわからないが、これは呼吸器科外来に来てもらっている先生と相談することにした。

 右足の蜂窩織炎といわれたので、そこは直接病棟で患者さんを診ることにした。病室で診察したが、右足関節部のびらん・滲出液は確かにあり、膝から下の下腿が腫脹していた。発赤は強くない。触診すると、握雪感というのかグシャという感じで組織が緩くなっている。

 蜂窩織炎ではさほどの自発痛が訴えないが、自発痛が強く、把握痛のかなりある。前夜よりも範囲が明らかに広がっている。蜂窩織炎というより、壊死性筋膜炎が疑われた。

 テキストに載っている壊死性筋膜炎の画像は、紫黒色が腫れあがっていて表面に水泡形成しているが、あれは終末期像で最終的に死亡した症例のものだ。そこまで変化すれば確定だが、待っていられない(MRIで確認する余裕もない)。

 整形外科がない当院では到底診られないので、(以前の受診歴もあり)地域の基幹病院に救急搬送することにした。若い先生に電話での搬送依頼をしてもらっていると、病棟看護師さんから血圧が70に低下したという報告がきた。患者さんは会話可能だったが、ほんやりしている。

 急いでリンゲル液(ソルラクト)を全開で開始した(入院時から点滴はしていた)。500ml入ったところで、血圧が100まで戻ってきたが、そのまま前回で続けた。

 若い先生は形成外科に連絡しようとしたが、担当医は手が離せないので連絡がつかず、保留になっているという。壊死性筋膜炎・敗血症性ショックなので、救急科に連絡するよう伝えた。幸いに受け入れ可能となり、救急搬送した。

 最初若い先生は事の重大性・緊急性にピンときていなかったが、ショックになったことでわかったらしい。昨夜の段階では判断が難しい。時間経過を追って、病変の進行の速さで診るしかない。

 それにしても交通外傷で病院を受診したので、かえってよかった。そのまま自宅にいたら危なかった。

 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 神奈川から来て発熱 | トップ | 脳梗塞と出血 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。

Weblog」カテゴリの最新記事