さて、そろそろ本気で「光市母子殺害事件」に関する個人的総括を書くとしますか。
とは言え、そんなに大したものは書けませんけどね (^^;)
今回、死刑判決が出た要因として、以下の様なモノが遠因として考えられます。
と言うか、以下の要素のどれ一つが欠けても、おそらく判決は“過去の例に則り”無期懲役どまりだったでしょう。
1.被害者遺族の頑張り
これは今更挙げるまでも無く、殆どの方が報道などを通じてご存じでしょう。
特に最も印象的だったのが
「死刑判決が出ないのならば、私がこの手で犯人を殺す」
と言う言葉。
殺人事件の被害者遺族の方の中には、こう思っていた方も多かったとは思いますが、報道陣の前であそこまで堂々と言いきったのは、おそらく本件の本村氏が初めてだったのではないでしょうか。
そうでなければ、ここまで世間を震撼させたりはしなかったでしょうから。
そして、その言葉が最高裁の判決を覆させた、との意見もあります。
「国家が死刑にしないなら、私が殺す」と宣言した本村洋さんの声を最高裁が受け止めた
概ね、私もこの意見に賛成です。
更に本村氏の言動は、被害者遺族への救済を積極的に行う事を盛り込んだ「犯罪被害者等基本法」の設立に大きな影響を与え、又、弁護士の岡村勲氏らと共に「犯罪被害者の会」の設立にも関与し、それまで「被害者よりも加害者の権利が優先」だった日本の司法に一石を投じる事となりました。
この事だけでも、本村氏は高く評価されるべきだと思います。
とはいえ、ご本人はそんな事を言われても嬉しくは無いでしょうけど。
2.弁護士
この事件で、世間の「弁護士」を見る目が大きく変わった事は間違い無いでしょう。
この事件以前までは、アメリカ映画などによる“刷り込み”のせいだとは思いますが、「弁護士は正義の味方」と思っていた人も多かったハズ。
はい、私の事ですが(^^;)
しかし、裁判がマスコミに取り上げられる度に、弁護士の奇妙な主張や異様な弁護などがドンドン目立つようになり、世間から「弁護士ってこんなバカな事を平気で言うんだ」と、段々胡散臭く見られるようになってきました。
そして、そこへ満を持して安田好弘と20人の盗賊弁護団が登場!
この安田好弘と言う弁護士は、過去にもとにかく胡散臭い事で有名だったのですが、この事件の弁護で胡散臭さを通り越して
「あのオッサン、頭おかしいんじゃ無いか?」
とまで言われる様になってしまいましたが(苦笑)
ま、冷静に捉えると、安田氏が弁護を引き受けた時点で、既に「殺人罪」は確定していたので、それをひっくり返す為には、「精神が18再未満の未熟児である」とか「殺人では無く、殺す気のなかった傷害致死である」と主張をするしかなかった、と言う事情があることはあったんですよね。
しかし、この主張をする為、安田弁護団は最も“やってはいけない”事を堂々とやってしまいました。
それは被害者を侮辱する事!
「死者にも尊厳や名誉がある」と考える日本人相手には、これだけは絶対にやってはいけない事でした。
しかし安田弁護団は臆する事なく、それどころかむしろまるで自分達のやっている事が正しいかのような顔をして、報道陣の前で堂々と被害者を侮辱するような行為を行ってまで主張しました。
これには、多くの日本人の怒りが爆発!
当時、2ちゃんねるでこの事件の関連スレッドがわずか2~3分で消費されると言う、もの凄い事態となりました。
今でも不思議なのですが、あの弁護団はあんな事をして世間の賛同が得られると、本当に思っていたのでしょうか?
それとも世間の評判などどうでも良く、とにかく被告の罪を軽くする事だけを目的とし、それ故、あんな奇妙奇天烈な主張をしたのでしょうか?
どちらにしても、その戦略は大失敗だった、と言わざるを得ないでしょう。
むしろ、思いっきり世間の反韓・・・じゃなかった反感を買っただけでした。
というか、被告が本当に言ったかどうかは定かではありませんが、「あんな主張したら世間の反感を買う」って事位、普通なら気づきそうなものなんですけどねえ。
逆に、「魔界転生」やら「復活の儀式」やら「どらえモン」やら「ちょうちょ結びをしただけ」ってのを聞いて、
「なるほど、犯人は精神的に幼かったんだから仕方無いよな」
と思う日本人がいたら、是非とも見てみたいものですが・・・・・・。
何にしても、この弁護団が「止めを刺した」事だけは間違いないでしょう。
3.犯人とその周辺
これも敢えて取り上げますけど、被告・福田孝行の言動の異常さもマスコミに度々取り上げられました。
特に有名なのは
「ある日犬がカワイイ犬とあってやっちゃった。それは罪でしょうか」
などが書かれている手紙ですが、他にも
・「弥生さんと夕夏ちゃんと僕は仲良く暮らせると思う。洋さんと四人で仲良い家庭を作れるんじゃないかと思う」
・「僕は死刑になって仕方ない」
・「(本村さんよりも)先に弥生さんと夕夏ちゃんに来世で会う」
・「再会した時に、先に弥生さんの夫になる可能性がある。洋さんに申し訳ない」
・「弥生さんは、洋さんが今のように怒っているのを喜んでいないと思う」
(精神科医・野田正彰氏による発言)
たとえ当時の状態、あわい思いがあったとは
いえ、僕のやってしまった行為は、許されないもの
であることを 僕 は 知っている。知りつつある。
あの時、僕のかかえるさみしさを弥生さんに
うちあけていたら、 もしかすると相談にのっていて
くれたかもしれない… そう思うと 僕は 何で
君のような やさしい女性を、僕のことを 信じてくれて
いた 女性 を 手にかけてしまったのか、いたたまらない思いです。
本当にすみませんでした。 君を愛した人を僕も愛します。
(福田孝行による謝罪の手紙の一部抜粋)
などと、まるで被害者が自分の恋人であるかのように、且つ、自分を許してくれるかの様な物言いをしています。
弁護側はこれらを取り上げて「母性に飢えていた」みたいな主張をしていましたが、それはさすがに無理があるんじゃないか、と。
そもそも、被害者と犯人の間には接点が全く無かった事は証明されている上、犯人は水道の点検を装って、作業服を着て侵入しているのですから、母性に飢えていた云々以前の問題。
でも、地裁も高裁もなぜかこの「水道工事屋を装って侵入した」事実を無視して、「犯人には計画性が無かった」って判決下してましたっけ。
そういう所が世間の意識と乖離しすぎている、と言われる所以なのでしょう。
又、犯人の言動の異様さが際立つようになったのは安田弁護団に変わってからでした。
弁護団側は「ドラえもんとかは最初から主張していたけど、皆に笑われたのでその後は言わなくなっただけ」と言ってますが、ドラえもんはともかく、犯人が読んだ事すら無い「魔界転生」に関する矛盾はどうするんでしょうね?
あ、「犯人が読んだ事は無い」と言うのは、公判で裁判長の質問に犯人が全てまともに答えられなかった事から明らかになってます。
結局、この「ドラえもん」「魔界転生」「復活の儀式」が裁判官の印象を相当悪くした事だけは間違い無いでしょう。
普通、いい歳した若者がそんな主張したなら、どんなヤツでもドン引きするわ!
今更ですけど、これ以外の攻め方っていくらでもあった様な気がするのですけど、なぜよりにもよって「常識人」が最も呆れるどころか聞いてるだけで腹が立ってくるような主張をし、犯人にもさせたのでしょうね?
この点も、私には理解不能ですが。
又、例の「犬が~」の手紙に関しても、どうして弁護士が自重させなかったのか、それも不思議なんですよね。
「無期懲役はほぼ確実」と思って、油断したのかな?
まあ、この手紙に関しては
「犯人側の全く反省していない態度に怒った検察側が、一生懸命関係者を当たった結果見つけた」
と言う説と、
「本村さんの記者会見を見て、感動した“手紙の受け取り主”が検察側に提出した」
って説がありますが。
どちらにしても、この手紙が最高裁を動かした遠因の一つと言う事だけは間違いないでしょう。
ああ後、犯人の父親の言動も、我々の怒りを買いましたっけ。
あれは本当に“火に油”だったよなあ・・・。
4.マスコミ
マスコミ嫌いな私ですが、この事件に関してだけはマスコミも大きく貢献した、と思っています。
当初は本村氏の事も「珍しく色々と主張する被害者遺族」程度にしか見ていなかったマスコミが俄然注目する様になったのは、やはり本村氏の
「犯人を自分の手で殺す!」
発言でしょう。
これは当時、各ワイドショーでそれこそ毎日のように取り上げられ、これに関するコメントも賛否両論で、ネットでも意見がかなり割れていました。
但し、当時から「肯定派」の方が多かったようですが。
更に、3.犯人とその周辺の部分で挙げた手紙なども紹介され、日頃からサヨク的な発言をしているコメンテーター連中も、さすがに絶句してましたっけ。
そしてこの頃から、本村氏がTVに出演する事も増えだしましたが、司会者やコメンテーターにどんなに煽られてもひるむことなく、そして憎々しげに言うワケでもなく、怒鳴り散らすワケでもなく、それでも“怒り”だけは伝わってくる様な雰囲気で整然と「死刑以外にあり得ない」と主張する姿に、皆感動したものです。
もしあの時、本村氏が“泣きながら”訴えていたら、おそらくここまで世間の支持は得られなかったのでは無いかと、私は今でも思っています。
しかしマスコミがこの事件を大々的に取り上げていたのも、最高裁差し戻しによる高裁判決で「死刑」が出た頃まででした。
その後は全くと言って良い程取り上げる事もなくなり、ようやく最高裁判決が出た20日の日には、特番が組まれるワケでもなく、取り扱いもワイドショーによってバラバラ。
むしろ、なぜか「この件に関しては、あまり騒ぎ立てたくない」と思っているのがバレバレの番組作りでした。
特にフジなんか、練炭殺人のネーチャンよりも取り上げた時間が短いんだもんなあ。
ビックリしましたわ!
逆に今回、一番多く時間を割いていたのがTBSだったのには、ちょっと驚きましたが(^^;)
更に今回の報道で目に付いたのが、「死刑判決は可哀想」と言う論調。
数日前にも書きましたが、今まで出てきた事も無いような「同級生」や「中学時代の教師」とかを引っ張り出してきて「あんなに大人しくて良い子だったのがなぜ?」とか「母親が自殺してからおかしくなり始めた」などと、
「元々は良い子だったのに、環境が悪かったからああなった」
と言う方向に“持っていこう”とする“番組作り”が多いのなんの!
確かに環境ってのは人格を形成する上で大きく影響を与えますし、その人の人生を後に左右する事も多々ありますが、それでも環境だけが全てではないハズ。
全てを「環境のせい」にしていいなら、私や私の知り合いなんか「犯罪し放題」になりますがね!
それに、いくら環境が悪かったからと言っても、「それを理由に殺人を犯しても良いと言うワケでは無い」のは皆さんもご承知の通りでしょう。
そもそもそんな事を許していたら、社会が成り立ちませんから。
それと
「親の愛情の薄さが“こういう結果”になった」
と言う論調に持ち込む輩も多かったですが、これもなにをか況んやって所でしょう。
「親の愛情が薄かったから強盗して、たまたま殺人まで犯してしまった」なんて言い訳、誰も聞く耳持ちませんよ。
後は「精神的に幼い」とかもありますが、これも立証のしようがありませんからね、
それに今回の犯人は、手紙の内容からして「善悪の判断」がちゃんと付いている時点で「アウト!」でしょう。
・・・・・・とまあ、かなり大雑把に徒然なるままに 日ぐらし 硯ならぬパソコンの前に座って書き付けましたが、最初に書いた通り、おそらくこれらの要素のどれか一つでも欠けていたら、今回の「死刑判決」は出なかったでしょう。
そういうのを考えると、やっぱり「見えない力」ってのはあるんじゃないかなあ、と思う今日この頃。
昔から人はそれを「奇跡」と呼びますが。