ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

読書ノート 鈴木宗徳 編 「リスク化する日本社会ーウイルリッヒ・ベックとの対話」 岩波書店

2012年08月26日 | 書評
グローバル化社会で生きる道  理論社会学の視点 第4回

序(4)
 ところで社会学って何だろう。卑近な例ではアンケートによる意識調査から始まって、幸福の哲学に及ぶ学問体系かもしれない。学術的な結論は人と人の関係を学問することだろうと思う。アトミックな人ではなく、あくまで組織と人の関係を巡る理論である。数学的には人を変数とする多変数関数論といってもいいかもしれない。本書はさかんに「個人化」というけれど、第2の近代化で個人は恐ろしく搾取され、管理され、誘導され、統制を受ける存在である。第2の近代でなぜ「個人化」がクローズアップされるのか。それはこの世を動かす行為者が近代のテクノジーを駆使して、個人を直接支配する術を身につけたからである。古代では伝統的な氏族代表が個人を支配しており、皇帝や大王は氏族代表の王を介して人民を支配したに過ぎない。中世の封建社会では将軍や皇帝は藩主や侯を支配するのみであった。第1の近代でも政府や財界は、企業や地域社会や労働組合を介して勤労人民を動かした。ところが第2の近代化というグローバル時代になると、国家組織や専門家集団・官僚組織やメデァの力学を身につけた行為者(それは誰か? グローバル金融資本か)が直接大衆をコントロールする技術を獲得するほど知恵を持ったのである。すると中間に存在する組織やシステムが恐ろしく非効率に見え規制緩和・市場自由化を叫んだのである。「小さな政府」とは政府をなくすることではなく、福祉予算を切るに過ぎない。日本では第1の近代化時代の政権を担当した自由民主党さえ恐ろしく無能で頽廃しており、とりあえず民主党に政権を渡した。この民主党に能力があるからではなく自民党よりましに見えたからである。さてこのような「個人化」を歓迎すべきなのか、当然の成り行きと受け入れてそのなかで権力の再配置を志すべきというのがベックの社会学理論である。社会学とは昔から民衆のものであったためしは無い。権力の管理手法を提供する学問であった。
(つづく)

読書ノート 高谷清著 「重い障害を生きるということ」 岩波新書

2012年08月26日 | 書評
重症心身障害者が生きるということ 第4回

1)重い心身障害とは、どのような存在か (3)
 「寝たきり」の状態にある人が見える(感じる)世界は2次元的であるという。動物にとって「寝たきり」は、循環器、呼吸器、運動器(骨格・筋肉)にとってよくないことはいうまでも無い。人は空間の存在と状態を、その空間内を自分が移動することによって認知するものである。また重力を頭から足の方向に感じない状態では、体の発達にとってよくない。程度に応じて極力移動したり、座位・立位姿勢を取らせるように努める。時間感覚は人生を豊かにし、自己を形成する上で必須のものである。記憶、感覚、期待は過去、現在、未来に関係するので、重症障害児には移動と係って生きる喜びとしての時間感覚を味わえるような取り組みも必要である。「意識」というものは外界の刺激に対する「反応」と定義され、「日本昏睡スケール」で段階つけられる。意識が無いというのは、刺戟をしても覚醒がなく、痛み刺激で顔をしかめたり手足を動かす程度の反応である。では反応が無ければ意識がないといえるのだろうか。外に表れる意識に対して、「内在感覚」という気持ち・気分で表現される領域があり、重症障害者への取り組みは、基本的には「生命体の維持」と本人が「気持ちいい」状態におくことが重要で、それが「生きがい」につながるのである。「髄膜炎」で脳が破壊された子では、親が話しかけることで気分がよくなり落ち着くことが多い。本人が安心して自分を表現できることは、「人間の関係的存在」を分かっていることであり、それが人という存在ではないだろうか。外的反応はなくとも人間的関係は本能として知っているのである。意識はなくとも「自己」は育っているのだ。重い障害のある人が「人間」として存在していることを感じ、ともに人間として生きてゆくという気持ちが育つのである。それは施設に関係する人々が「この子らから光を受けている」のであると、「びわこ学園」の創始者糸賀一雄氏はいう。「協力・分配・共感」という基盤があってこそ「人間」が形成され、「からだ」も「こころ」も、そして脳もふくめて「いのち」であり、人間全体なのだ。
(つづく)

筑波子 月次絶句集 「湖 上」

2012年08月26日 | 漢詩・自由詩
悠悠湖水色蒼蒼     悠悠たる湖水 色蒼蒼

月照漁家夜未央     月は漁家を照らし 夜未だ央ならず

岸送荷風炎熱散     岸は荷風を送って 炎熱散じ
 
憑欄払面一船涼     欄に憑れば面を払って 一船涼し


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(韻:七陽 七言絶句平起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)
(平仄規則は2・4不同、2・6対、1・3・5不論、4字目孤平不許、下三連不許、同字相侵)

CD 今日の一枚 寺内タケシとブルージーンズ

2012年08月26日 | 音楽
寺内タケシとブルージーンズ ベストアルバム
ADD 2001 キングレコード

①津軽じょんがら節 ②ノーエ節 ③ひえつき節 ④運命 ⑤剣の舞 ⑥ペルシャの市場にて ⑦十番街の殺人 ⑧キャラバン ⑨ウヲーク・ドント・ラン ⑩太陽の彼方に ⑪パイプライン ⑫ダイヤモンドヘッド ⑬熊蜂の飛行 ⑭アパッチ ⑮さすらいのギター ⑯ブルースター