ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

文芸散歩 「孫 子」 金谷治訳注 岩波文庫

2012年08月07日 | 書評
中国最古の兵書は戦わずして勝つことを教える 第3回

序(3)
 「孫子」の内容は13篇に分かれる。第1篇は序論にあたり、第2篇は作戦篇で、第3篇は謀慮による攻撃を示し、以上の3篇が「戦争総説」(戦略論)にあたる。第4篇攻守の態勢について、第5篇は軍の勢いについて、第6篇の戦いの虚実について、以上の3篇が「戦争の基本」を説くものである。以上の6篇をあわせて前編が「戦争原論」というべき総論である。続いて第7篇から第13篇の後編が「戦争各論」(戦術論)である。次に各篇の述べている論点をまとめておく。

第1篇 「計 篇」: 計とははかり考えることで、開戦のまえによく熟慮すべきことを述べる。
第2篇 「作戦篇」: 軍を起こすこと、主として軍費の事を述べる。
第3篇 「謀攻篇」: 謀によって攻める、すなわち戦わずして勝つの要道を述べる。
第4篇 「形 篇」: 軍の態勢について、自らは不敗の位置において敵の敗れに乗じることを述べる。
第5篇 「勢 篇」: 勢とは勢いの事、形から発動する戦いの勢いについて述べる。
第6篇 「虚実篇」: 虚は備えなくすきのある事、実は充実し準備を整えることで、実によって虚を討つべきことを述べる。
第7篇 「軍争篇」: 実戦中に敵の機先を制して、利益を収めるために争うことを述べる。
第8篇 「九変篇」: 変とは定法に拘らず事変に臨んでとるべき九つの変った戦法を述べる。
第9篇 「行軍篇」: 軍を押し進めること、軍隊を止める場所や敵情視察の重要性について述べる。
第10篇 「地形篇」: 戦場の地形について述べる。
第11篇 「九地篇」: 9通りの土地の形勢と戦い方について述べる。
第12篇 「火攻篇」: 火を使って攻める際の注意点を述べる。
第13篇 「用間篇」: 間諜を使って敵情を窺うことの重要性について述べる。
(つづく)

読書ノート 荒畑寒村著 「寒村自伝」 岩波文庫

2012年08月07日 | 書評
老兵が語る、日本労働運動・社会主義革命運動の誤謬と失敗の歴史  第4回

2)週刊平民新聞時代ー伝道行商と社会民主党活動(1)
 1903年(明治36年)11月幸徳秋水、堺利彦両氏によって週刊「平民新聞」が創刊され、大衆的・政治的な意味で日本の社会主義運動が始まった記念すべき事業であった。創刊号には自由(平民主義)、平等(社会主義)、博愛(平和主義)の3大主義を掲げた。幸徳氏が社説を書く主筆格で堺氏は編集長と経営者であった。片山潜氏の「社会主義協会」は1904年平民社に吸収され、片山氏はアメリカに去った。1901年春(明治34年)に創立された社会民主党は伊藤内閣によって即日禁止された。寒村氏は1904年(明治37年)1月に社会主義協会に入会した。これが寒村氏の革命的洗礼となった。1904年2月ついに日露戦争が勃発した。戦争の熱気が日本を覆うとき内村鑑三氏はキリスト教の立場から戦争反対を説き、「二六新報」は桂内閣の戦争政策を批判し、与謝野晶子は「君死にたもうことなかれ」という詩を発表した。平民新聞は当時は雑居的な思想集団で、国法の許す範囲で社会主義を目指す議会的・合法的社会主義運動を含んでいた。安倍磯雄氏は「絶対無抵抗主義」で、木下尚江氏は「共和主義」で、石川三四郎氏は「キリスト社会主義」で、片山氏は「改良主義」で、西川光次郎氏は「無原則的現実主義」であったという。幸徳秋水氏は中江兆民門下の自由民権論者で社会民主主義の範疇内にあった。氏を後年アナーキズムに改宗させたのは政府の弾圧政策にあった。平民社は創立当時は素朴な社会民主主義を共通点とする多様な立場の連携にあった。社会主義運動にたいする当局の弾圧は次第に苛烈となり、1904年(明治37年)11月平民新聞の社説が朝憲紊乱に当たるとして、幸徳氏、西川氏が逮捕され、平民新聞は発刊禁止・印刷機械の没収処分を受けた。ついに1905年1月平民新聞は廃刊を宣言した。1905年1月「血の日曜日事件」が起きてロシアに革命の烽火が上がった。第2インターは日本政府の社会民主党弾圧にたいして抗議の声明をだした。
(つづく)

筑波子 月次絶句集 「連日旱天」

2012年08月07日 | 漢詩・自由詩
如湯午熱欝情窮     湯の如き午日 欝情窮まり

瞬時清涼一扇中     瞬時の清涼 一扇の中

大地生霊憂旱意     大地生霊 憂旱の意

不成霖雨起炎風     霖雨成らず 炎風起る


○○●●●○◎
●●○○●●◎
●●○○○●●
●○○●●○◎
(韻:一東 七言絶句平起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)
(平仄規則は2・4不同、2・6対、1・3・5不論、4字目孤平不許、下三連不許、同字相侵)