戦前は天皇への、戦後は国家への貢献の序列 第1回
序
私は勲章とはほど遠い世界に住み、貰ってくださいと頼みに来ることは間違ってもないのでどうでもいいのだが、持ち前の野次馬根性(好奇心)から買って読んでしまった。内容がないので読んでから読書ノートを作る熱が沸かない。しかしこんな馬鹿なことで税金を使って何かを意図している奴がいるかと思うと、ほっておくのも業腹なので筆をとる。そういう気を起こさせた本書にはそれだけの価値がある。毎年4月と11月、新聞の大きなスペースをつかって、受賞者の名前が羅列される。春秋叙勲の各4000人と各種叙勲を合計すると年間約2万人を超える。そしてそれにかかる費用は約40億円である。決して馬鹿にならない金額である。事業仕分けの対象としてもいいのではないかと思われる。だからそもそも勲章はいついかなる目的で生まれ、どんな変遷で現在も続いてきたのだろうかを考えるのは国民の義務かもしれない。人選や等級はどんな手順と基準によるのか、人間の序列化や官民尊卑の助長など批判の多い制度はどういう変遷を経たのかを考えるよい機会である。日本国憲法前文には「国政の権威は国民に由来し、その権力は国民の代表がこれを行使し、その福祉は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、これに反する一切の憲法、法令、及び詔勅を排除する」と厳かに主権在民がうたわれている。にもかかわらず勲章制度を運営する法律は存在しないし、現在運用されている準拠は明治以来の詔勅である。こんな奇妙なことが平気でおこなわれている日本は法治国家なのだろうか。(とはいうものの、刑法や民法も明治以来の法を受け継いでいる箇所が多い。)
勲章に興味を持って一書を著わした栗原俊雄氏とはどんな人だろう。プロフィールを紹介する。1967年東京都うまれ。早稲田大学政治経済学部修士課程卒業後、1996年毎日新聞社入社。現在東京本社学芸部記者である。著書に「戦艦大和ー生還者の証言」(岩波新書 2007)、「シベリア抑留-未完の悲劇」(岩波新書 2009)、「シベリア抑留は過去なのか」(岩波ブックレット 2011)がある。なかでもシベリア抑留に関する労作は、敗戦直後、旧満州の日本人兵士ら約六〇万人がソ連軍に連行され、長期間の収容所生活を送った「シベリア抑留」で極寒・飢餓・重労働の中で約六万人が死亡した・・・日本政府への補償要求と責任追及…「奴隷のままでは死ねない」と訴えてやまない。 この仕事により2009年第3回「疋田桂一郎賞」を受賞した。
序
私は勲章とはほど遠い世界に住み、貰ってくださいと頼みに来ることは間違ってもないのでどうでもいいのだが、持ち前の野次馬根性(好奇心)から買って読んでしまった。内容がないので読んでから読書ノートを作る熱が沸かない。しかしこんな馬鹿なことで税金を使って何かを意図している奴がいるかと思うと、ほっておくのも業腹なので筆をとる。そういう気を起こさせた本書にはそれだけの価値がある。毎年4月と11月、新聞の大きなスペースをつかって、受賞者の名前が羅列される。春秋叙勲の各4000人と各種叙勲を合計すると年間約2万人を超える。そしてそれにかかる費用は約40億円である。決して馬鹿にならない金額である。事業仕分けの対象としてもいいのではないかと思われる。だからそもそも勲章はいついかなる目的で生まれ、どんな変遷で現在も続いてきたのだろうかを考えるのは国民の義務かもしれない。人選や等級はどんな手順と基準によるのか、人間の序列化や官民尊卑の助長など批判の多い制度はどういう変遷を経たのかを考えるよい機会である。日本国憲法前文には「国政の権威は国民に由来し、その権力は国民の代表がこれを行使し、その福祉は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、これに反する一切の憲法、法令、及び詔勅を排除する」と厳かに主権在民がうたわれている。にもかかわらず勲章制度を運営する法律は存在しないし、現在運用されている準拠は明治以来の詔勅である。こんな奇妙なことが平気でおこなわれている日本は法治国家なのだろうか。(とはいうものの、刑法や民法も明治以来の法を受け継いでいる箇所が多い。)
勲章に興味を持って一書を著わした栗原俊雄氏とはどんな人だろう。プロフィールを紹介する。1967年東京都うまれ。早稲田大学政治経済学部修士課程卒業後、1996年毎日新聞社入社。現在東京本社学芸部記者である。著書に「戦艦大和ー生還者の証言」(岩波新書 2007)、「シベリア抑留-未完の悲劇」(岩波新書 2009)、「シベリア抑留は過去なのか」(岩波ブックレット 2011)がある。なかでもシベリア抑留に関する労作は、敗戦直後、旧満州の日本人兵士ら約六〇万人がソ連軍に連行され、長期間の収容所生活を送った「シベリア抑留」で極寒・飢餓・重労働の中で約六万人が死亡した・・・日本政府への補償要求と責任追及…「奴隷のままでは死ねない」と訴えてやまない。 この仕事により2009年第3回「疋田桂一郎賞」を受賞した。
(つづく)