東京裁判でA級戦犯無罪を主張したインド代表パル判事の評伝 第3回
序(3)
ラグビノド・パルは東京裁判でインド代表判事を務め、A級戦犯の被告全員が無罪であるとする反対意見書を提出した人として知られる。日本は敗戦後60年以上たっても、ドイツと違って主体的に侵略戦争を反省せず、未だに歴史認識問題を引き摺ったままである。村山談話・河野談話が日本政府の公式見解だとしつつも、裏では日本憲法はアメリカの押し付けられた憲法だといい、アジア太平洋戦争は侵略戦争ではなく自衛戦争だとする「大東亜戦争肯定論もしくは免罪論」を言い続けているのが、日本保守本流勢力の認識である。小泉元首相は公然とA級戦犯が祀られる靖国神社を参拝して中国・韓国外交関係を破壊して反省がなく、岸信介元首相の孫にああたる安倍元首相は2007年訪印しパル判事の孫に面会した。安倍は「戦後レジームからの脱却」を唱える自民党最右翼の政治家である。戦後を卒業して、もっと古い戦前に戻りたいとする日本旧支配層の生き残りである。安倍が持ち上げようとしたパル判事はインドではすっかり忘れられた存在であったという。現地カルカッタではパルの研究者もいないので誰も安倍元首相の行動に言及する人間はいなかった。日本では異様な「評判を得ている」パル判事の全貌を明らかにし、「パル」シンドロームの本質を明らかにしたいという動機が中里氏に本書を書かせた。日本の研究者でパル意見書をきちんと読んだ歴史家は「教科書裁判」で有名な家永三郎氏である。家永氏は「パルは日中戦争の引き金となった盧溝橋事件を全く誤認している。全編を貫くパル判事の強烈なイデオロギー的偏向には唖然とせざるを得ない」という。パル意見書を批判する学者達の主張は「パル意見書は裁判の意見書の形式で書かれているが、実は政治性の強い文書だといって差し支えない」という。政治性とは反共、民族主義、汎アジア主義、反人種主義なのか意見は一致していないが。著者はパルの実像を追及したいという。
(つづく)
序(3)
ラグビノド・パルは東京裁判でインド代表判事を務め、A級戦犯の被告全員が無罪であるとする反対意見書を提出した人として知られる。日本は敗戦後60年以上たっても、ドイツと違って主体的に侵略戦争を反省せず、未だに歴史認識問題を引き摺ったままである。村山談話・河野談話が日本政府の公式見解だとしつつも、裏では日本憲法はアメリカの押し付けられた憲法だといい、アジア太平洋戦争は侵略戦争ではなく自衛戦争だとする「大東亜戦争肯定論もしくは免罪論」を言い続けているのが、日本保守本流勢力の認識である。小泉元首相は公然とA級戦犯が祀られる靖国神社を参拝して中国・韓国外交関係を破壊して反省がなく、岸信介元首相の孫にああたる安倍元首相は2007年訪印しパル判事の孫に面会した。安倍は「戦後レジームからの脱却」を唱える自民党最右翼の政治家である。戦後を卒業して、もっと古い戦前に戻りたいとする日本旧支配層の生き残りである。安倍が持ち上げようとしたパル判事はインドではすっかり忘れられた存在であったという。現地カルカッタではパルの研究者もいないので誰も安倍元首相の行動に言及する人間はいなかった。日本では異様な「評判を得ている」パル判事の全貌を明らかにし、「パル」シンドロームの本質を明らかにしたいという動機が中里氏に本書を書かせた。日本の研究者でパル意見書をきちんと読んだ歴史家は「教科書裁判」で有名な家永三郎氏である。家永氏は「パルは日中戦争の引き金となった盧溝橋事件を全く誤認している。全編を貫くパル判事の強烈なイデオロギー的偏向には唖然とせざるを得ない」という。パル意見書を批判する学者達の主張は「パル意見書は裁判の意見書の形式で書かれているが、実は政治性の強い文書だといって差し支えない」という。政治性とは反共、民族主義、汎アジア主義、反人種主義なのか意見は一致していないが。著者はパルの実像を追及したいという。
(つづく)