ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

読書ノート 大山礼子著 「日本の国会」 岩波新書

2012年01月31日 | 書評
国会審議の空洞化の原因は、国会制度そのものにある 第6回

1) 戦後新憲法での国会運営 (1)

 いまさら帝国議会を持ち出すまでもないのだが、国会という観点で帝国憲法を見てゆくと、立法権は天皇にあるといいながら帝国議会の同意を必要とし、帝国議会は法案提出権も持っていた。1924年から1932年まで存在した日本の政党内閣はイギリスなどにおける議院内閣制と同じ発展を示すものであった。政友会と民政党の政権交代も実現した。しかし議院内閣制を保障する憲法上の記述がなく、内閣主導の政策決定を阻む勢力も多く存在して昭和の初めに軍部の台頭とテロであっけなく崩壊した。太平洋日中戦争で破れポッツダム宣言を受諾した日本に進駐した連合軍司令部(GHQ)は日本の民主主義的傾向の復活強化を目指した。GHQ民政局は帝国憲法での弱い議会が軍国主義の台頭を招いたという認識から、新憲法は議会の権限を大幅に強化するものとなった。1946年11月に制定された日本国憲法は国民主権を謳い、国会を「国権の最高機関であって、唯一の立法機関である」とした。新憲法は議院内閣制を明文で保障し、内閣総理大臣は国会議員の中から国会の議決で指名される。新憲法は連合軍民政局で議論され、三権分立のアメリカ型より、立法府が最高の地位を占めるイギリス型に傾き、イギリス型の議会優位の仕組みにアメリカ流の解釈を施すことで決められた。1947年4月に制定された国会法では、アメリカ連邦議会をモデルとした常任委員会制度、立法補佐機構の充実が取り入れられた。アメリカ流に国会の権限が著しく強化された。法案などの審議は本会議中心主義から委員会中心主義へ導かれた。常任委員会には強力な権限が与えられ、公聴会、国政調査権の主体となり、法案提出してもよい事になった。欧州型の議院内閣制の議会にはないほど委員会の権限は強力である。
(つづく)

読書ノート 佐藤文隆著 「職業としての科学」 岩波新書

2012年01月31日 | 書評
科学技術政策の中での「科学」は常人の職業として持続可能か 第7回

1) 知的自由としての科学 啓蒙・ロマン・専門 (2)

 著者が第Ⅱ期「ロマン主義」という19世紀前後の動きは、分類項目としてあまりに文学的で私には意味がよく分らない。政治的には市民革命と王権の復活を繰り返した混沌期であり、経済的には産業革命期である。私は「市民国家形成期」というほうが科学の歴史と繋がりやすいと思うがどうだろう。それはさておき、19世紀に入ってドイツ化学に遅れを取った英国は工科を含む新興大学(オックスブリッジに対抗するブリックス)の設立を急ぎ、科学の専門職を養成した。その中心がヒューエルであった。ヒューエルは科学専門職を旧来の「自然哲学者」から「サイエンティスト」と呼び換えた。科学者の協会・学会には産業界から桁違いの寄付金が入り、王侯貴族の保護から自立の道を歩むことになった。1867年のパリ万国博で劣勢を自覚した英国では、プレイフェアーにより科学教育改革が始まり、科学教育の動きと連動して科学研究を政府が支援すべしという運動が、ストレンジとロキャーにより推進され、1970年「デボンシャー委員会」が発足した。ロキャーは週刊学術誌「ネイチャー」を立ち上げ、科学情報誌によりデボンシャー委員会活動を盛り上げた。デボンシャー委員会活動には官僚組織内にいる研究者(王立天文台など)から既得権を侵すものとして反対があった。電気学のケルヴィン卿らはベンチャー企業の収益で儲けていたので、政府の支援には頼らなかった。
(つづく)

文芸散歩  池田亀鑑校訂 「枕草子」 岩波文庫

2012年01月31日 | 書評
藤原道隆と中宮定子の全盛時代を回想する清少納言 第119回

[310] 「をかしと思う歌を・・・」 第3類
よく出来たと思う歌を草子に書いておけば、いうのも憚る下の者等が唄っているのを聞くと不愉快なのね。

[311] 「よろしき男を下衆女などのほめて・・・」 第3類
身分のちゃんとした男を下衆階層の女らが「たへんおやさしくいっらいしゃいます」といえば、すぐに評判が落ちてしまいそう。謗られた方がまだましね。下衆階層の人にほめられるのは女の場合も迷惑なのよ。誉めているときに言い間違っているからね。

[312] 「左右の衛門の尉を・・・」 第3類
左右の衛門の尉を判官(検非違使 警察の長)と言って、たいそうえらそうで怖い者に思いなしている。夜回りして細殿などに入って寝ているのは見苦しい。白袴を几帳に掛け、上着の長いところを丸めて掛けてあるのはみっともないのね。むしろ太刀の後に引っ掛けて見回りをしているほうがいいの。青い狩衣(五位以上)を常に着ていたらどれだけ素敵に見えることでしょうに。
(つづく)

筑波子 月次絶句集 「厳冬霜夜」

2012年01月31日 | 漢詩・自由詩
繙帙移時玉漏沈     帙を繙けば時を移し 玉漏沈み

残燈欲滅苦寒侵     残燈滅せんと欲して 苦寒侵す

烈風凛凛飛霜満     烈風凛凛と 飛霜満ち

眼界粉粉積雪深     眼界粉粉と 積雪深し


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○○●●●○◎
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(韻:十二侵 七言絶句仄起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)
(平仄規則は2・4不同、2・6対、1・3・5不論、4字目孤平不許、下三連不許、同字相侵)

CD 今日の一枚 カリッシミ 「三声のミサ曲 モテット集」

2012年01月31日 | 音楽
カリッシミ 「三声のミサ曲 モテット集」
①三声のミサ曲 ②6つのモテット曲
コンソルティウム・カリッシミ  オルガン:ヴィットリオ・ザノン
DDD 1999-2000 NAXOS


カリッシミ(1605-1674年)はイタリアのバロック初期の作曲家。オラトリオに秀でたが小曲の宗教曲にも優れたものが多いといわれる。