とぎれとぎれの物語

瀬本あきらのHP「風の言葉」をここで復活させました。小説・エッセイをとぎれとぎれに連載します。

お金の話

2010-08-11 09:59:45 | 日記
お金の話




「金は天下の回り物」とも言うし、「金は片行き」とも言う。ことわざは単純には割り切れぬ世の複雑さを物語っている。
先日、初めての確定申告をした。多少緊張気味であらかじめ指定された相談会場に入ると、名札を付けた係員がてきぱきと書類を処理し、即座に手続きが完了した。「○○円戻ってきます」との返事を聞いて、私は思わぬ臨時収入に大喜びをした。そしてお世話をいただいた係員のお方にお礼を言った。
 これもまた先日のこと。日本テレビのドラマ「87%―私の5年生存率―」を見ていてどきっとした。保険の外交員をしている女性主人公は初期の乳がんに罹っていた。信頼できる医者に巡りあえて、自分の命を預けようと決意する。しかし、最先端の医療を受けるには相当のお金が要ることを知り、お金持ちは助かる可能性が高いと考える。そこで医者に言う。「それって不公平じゃないですか」。医者は言う。「もちろん不公平です。でも、与えられた環境の中で最良の方法を考えるしかないのです」。私はこの言葉を素直に納得すべきかしばらく思案していた。
退職後いつも頭から離れない不安は、やはりお金のことである。何百億というお金を自由に動かすことのできる人。私のようにわずかの還付金でも喜ぶ者。この差は埋めようがない。しかし、命が金に左右されるという事実は是認したくない。また、「金は三欠くに溜まる」ということわざにも嫌悪を感じる。その三つとは「義理・人情・交際」である。
(2005投稿)
 

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