癌春(がんばる)日記 by 花sakag

2008年と2011年の2回の大腸癌手術
   ・・・克服の先に広がる新たな春を生きがいに・・・

『ルポ 車上生活~駐車場の片隅で』

2020年10月05日 | 読書・映画

 この本は、NHKスペシャルで2020年2月に放映された番組が書籍化されたものである。残念ながら、その番組は視ていない。もし、再放送されるなら、そのときはぜひ視てみたい。

 自分の日帰りの以外の旅は、夏冬に関わらず、すべて車中泊で、一番多く利用するのは道の駅である。道の駅のほとんどの利用者は旅行者だが、その道の駅の陰の部分に、このような人々が存在していたということは、非常にショックだった。

 読んでみて、確かに該当しそうな車があったことは記憶にある。古くて汚れたままの軽自動車、目隠しはしてあるが、それが、新聞紙だったり、汚れた布であったり、雑然とした荷物がたくさん詰め込まれている車、服装や身なりが薄汚れている運転者、人目を避けるように暗い隅の方にひっそりと停まっている車・・・それらが全てそうだとは言い切れないが、車をねぐらにしているホームレス状態の人々が存在していたことは否定できない。

 この本は、全国に1160ある「道の駅」すべてを初調査し、現場を駆けずり回って取材を重ねたディレクター、記者、カメラマンたちが書き下ろした渾身のルポルタージュである。

 老い、病気、失業、肉親からの虐待、配偶者との死別、人間関係のつまずき・・・。それぞれの事情を抱えて、車しか行き場がなかった人々。貧困だけではない“漂流の理由”とは?

 「年金だけでは家賃が払えない」、「DVから逃れるため」、「他人との関わりが煩わしい」「車を持っていると生活保護が受けられない」・・・それぞれの理由、それぞれの事情を抱え、社会から距離を置き、一種の漂流生活を送る「車上で生活する人々」・・・彼らはなぜ、“車中の人”となったのか? その存在は、日本社会の「いかなる現実」を反映しているのか?という視点から、その実態が生々しく綴られている。

 番組では取り上げられることのなかった、"車中の人々"の数多くの人生、数多くの思いをレポートするとともに、取材者たちの葛藤や迷い、苦悩についても、独自の視点で語られている。

 下記は、最後の結びの一文だが、今度から道の駅に泊まるときに、そのような車を探してしまいそうな自分が怖い…。

 「私たちが出会った車中の人々。孤立、貧困、無関心。

      車の中には、社会が積み残してきたものが溜まり込んでいる。

  今後も駐車場の片隅で、人知れず生きる人たちがいる。」



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