これは、吉村昭の『羆嵐』で有名になった、大正4年(1915年)、当時の苫前村三毛別で起きたヒグマによる死亡7名、重傷3名という史上最悪の獣害事件について、生存者の貴重な証言をもとにした元林務官によるノンフィクションと、それ以外のヒグマ襲撃事件が主な内容である。
第一部が「慟哭の苫前三毛別事件」で、第二部が「ヒグマとの遭遇」で構成されている。第一部の方は、吉村昭の『羆嵐』を2回も読んでいるし、現場にも2回訪れていて、一昨年にはその前を通り、三毛別山にも藪こぎで登っている。その付近の地形等が頭に入っているので、より臨場感を感じながら読むことができた。
なお、ウィキペディアの「三毛別羆事件」は、木村氏のこの著書がもとに構成されている。
自分は、山でいつもヒグマの痕跡を目にし、6回の遭遇(クワウンナイ川、緑岳、三頭岳、知床硫黄岳、知床海岸トレッキング、南アルプス経ヶ岳)を経験している。それだけに衝撃的で、参考になったのは、第二部の方だった。
構成は、第1章「北千島の人食いヒグマ事件と私」、第2章「ヒグマとの対峙」、第3章「ヒグマが人を襲うとき」からなっている。第1章と第2章は、林務官だった著者の実際の経験談だけに、真に迫る恐怖心がある。
第3章は、「星野道夫氏の死」「林務官の殉職」「札幌簾舞大松寺羆事件」「カムエク福岡大学ワンゲル部員襲撃事件」が取り上げられ、その事件の顛末と検証が書かれている。これを読み進めたら、山に入るのは怖くなるし、ましてや単独行の多い自分だけに、ちょっとビビってしまった。
自分の遭遇場面は、知床硫黄岳以外は、すべて向こうから逃げて行ってくれたことが幸いだった。また、知床硫黄岳は3名と一緒だったし、人慣れしている感じで、声を掛けても全然動かず、こちらを見ていて襲う気配もないので12mくらい離れたところを静かに通過している。
たまたま運が良かっただけなのかもしれないが、対峙するとか、威嚇されるなどの恐怖心を感じるような場面には、まだ遭遇していない。そんなこともあり、あまり気にしないで山に入ってきた。しかし、これからは一層慎重に山に入ろうと思う。ただ、記載されているクマによる人身事故数は、年に2~3回と意外に少ないことも分かったので、少し安心した。
それにしても何ですよ。
sakagさんは、私の数十倍は山に入ってるのに6回の遭遇って少ないと思います。
私、15回まで数えてたけど、そこから何回遭ったか分からなくなりましたので・・・
なので更に慎重になってるんですけど、やっぱり持ってますね(汗)
しかも、あの爆音を立てて走るバイクでの林道での遭遇が多いのですよね。常識的に考えれば、バイクの音だけでクマは逃げるのではないかと思うのですが・・・?
それなのに、異常に多いのが不思議です。
普通、私の山仲間でも、遭遇確率は私のレベルだと思うのですが…。