あを雲の涯

「 二、二六事件て何や 」
親友・長野が問う
「 世直しや 」
私はそう答えた

暗黒裁判 ・ 幕僚の謀略 1 西田税と北一輝 『 はじめから死刑に決めていた 』

2022年11月21日 05時13分50秒 | 暗黒裁判・幕僚の謀略1 西田税と北一輝

陸軍首脳部は蹶起将校等が、
蹶起目的の本義を統帥権者である天皇に帷幄上奏を企てた事、
さらには皇族を巻き込んだ上部工作が進められた事、
これらを陸軍首脳が隠蔽しようとしている真実を
軍事法廷で国民に向けてアピールする事を危惧した。
相澤事件公判がそうであったように、公判闘争が繰り広げられたなら、軍は国民の信頼を失い、国民皆兵の土台さえ揺るがしかねない。
だから、こうした危惧を払拭するために
筋書を拵えたのである。
拵えられた筋書
・事件は憂国の念に駆られた将校達が起こした。
・あくまで計画性はない。
・要求項目にも 畏れ多くも陛下の大権私議を侵すものはなかった。
・純粋な将校達は、ひたすら昭和維新の捨石になろうとした。
・事件の収拾過程で北一輝や西田税に引きずられたに過ぎない。
・悪いのは陸軍ではない。無為無策な政治家と仮面を被った社会主義者だ。
・・・鬼頭春樹 著  『 禁断 二・二六事件 』 から


「 血気にはやる青年将校が不逞の思想家に吹き込まれて暴走した 」
という形で世に公表された。
・・・幕僚の筋書き 「 純眞な靑年將校は、北一輝と西田税に躍らされた 」


両人は極刑にすべきである。
両人は証拠の有無にかかわらず、黒幕である。
 ・・・寺内陸相
二・二六事件を引き起こした青年将校は 荒木とか眞崎といった一部の将軍と結びつき、
それを 北一輝とか磯部とかが煽動したんです。・・・片倉衷

陸軍当局は、事件勃発直後から北一輝と西田税をその黒幕と断じ、電話盗聴その他の内定を怠らなかった。
二月二八日午後、憲兵の一隊が北邸を襲い、北を検束した。
西田は間一髪逃れたが、三月四日早朝警視庁係官によって検挙された。
陸軍が、司法当局の反対を押し切って東京陸軍軍法会議の管轄権を民間人にまで及ぼした最大の狙いは、
北 ・西田の断罪と抹殺にあったと推測される。
三月一日付の陸軍大臣通達
( 陸密第一四〇号 「 事件関係者ノ摘発捜査ニ関スル件 」 )
は、次のように述べる。
この通達が、予審も始まっていない段階のものであることに注目する必要がある。
北 ・西田を張本人とする路線は、最初から敷かれていたのである。
「 叛乱軍幹部及其一味ノ思想系統ハ、
 過激ナル赤色的國體変革陰謀ヲ機関説ニ基ク君主制ヲ以テ儀装シタル北一輝ノ社會改造法案、
順逆不二ノ法門等ニ基クモノニシテ、我ガ國體ト全然相容レザル不逞思想ナリトス 」
検察官は、このシナリオに則って、
論告の中で、事件の動機 ・目的として次のように述べる。
「 本叛乱首謀者ハ、日本改造法案大綱ヲ信奉シ、之ニ基キ国家改造ヲ爲スヲ以テ其ノ理想トスルモノニシテ、
 其企図スルトコロハ民主的革命ニアリ・・・・集団的武力ニ依リ 現支配階級ヲ打倒シ、
帝都を擾乱化シ、且帝都枢要地域ヲ占拠シ、戒厳令下ニ導キ 軍事内閣ヲ樹立シ、
以テ日本改造法案大綱ノ方針ニ則リ政治経済等各般ノ機構ニ一大変革ヲ加ヘ、
民主的革命ノ遂行ヲ期シタルモノナリ 」 ・・・ニ ・二六事件行動隊裁判研究 (ニ)  松本一郎

東京陸軍軍法会議
「 法律ニ定メタル裁判官 」 によることなく、非公開、かつ、弁護人抜きで行われた本裁判は、
少なくとも北一輝などの民間人に関する限り、
明治憲法の保障する 「 臣民の権利 」を蹂躙した違法のものであったということ、
本裁判には、通常の裁判では考えられないような、訴訟手続規定を無視した違法が数多く存在したということ、
北一輝 ・西田税を反乱の首魁として極刑に処した判決は、証拠によらないでっち上げであった
・・・松本一郎
陸軍軍法会議が 非常に滅茶苦茶な裁判であったこと、結論的に言うと、指揮権発動 もされている。
北一輝、西田税に矛先が向け られている。
北については、叛乱幇助罪で3年くらいのところ、また、西田については、もっと軽くてよいところ、
強引に寺内陸軍大臣が指揮権発動して死刑にするような裁判の構造を作ってしまった。
これは歴史的事実である。 これは匂坂資料の中にも出てくる。
・・・中田整
一  ( 元 NHK プロデューサー) 講演  『 二・二六事件・・・71年目の真実 』  ・・・拵えられた憲兵調書 


暗黒裁判
幕僚の謀略 1  西田税と北一輝
『 はじめから死刑に決めていた 
目次
クリック して頁を開く

・ 暗黒裁判 ・幕僚の謀略 3 磯部淺一の闘爭  『北、西田両氏を助けてあげて下さい』
・ 西田税、北一輝 ・ 捜査経過
西田税、事件後ノ心境ヲ語ル
・ 暗黒裁判と大御心 
はじめから死刑に決めていた 
暗黒裁判 ・ 既定の方針 『 北一輝と西田税は死刑 』
・ 
暗黒裁判 (五) 西田税 「 その行為は首魁幇助の利敵行為でしかない 」
拵えられた裁判記録 
・  北一輝、西田税 論告 求刑 
・ 北一輝、西田税 判決 ・首魁 死刑


私モ結論ハ北ト同様、死ノ宣告ヲ御願ヒ致シマス。
私ノ事件ニ對スル關係ハ、
單ニ蹶起シタ彼等ノ人情ニ引カレ、彼等ヲ助ケルベク行動シタノデアツテ、
或型ニ入レテ彼等ヲ引イタノデモ、指導シタノデモアリマセヌガ、
私等ガ全部ノ責任ヲ負ハネバナラヌノハ時勢デ、致方ナク、之ハ運命デアリマス。
私ハ、世ノ中ハ既ニ動イテ居ルノデ、新シイ時代ニ入ツタモノト観察シテ居リマス。
今後ト雖、起ツテハナラナヌコトガ起ルト思ハレマスノデ、
此度今回ノ事件ハ私等ノ指導方針ト違フ、自分等ノ主義方針ハ斯々デアルト
天下ニ宣明シテ置キ度イト念願シテ居リマシタガ、此特設軍法会議デハ夫レモ叶ヒマセヌ。
若シ今回ノ事件ガ私ノ指導方針ニ合致シテ居ルモノナラバ、
最初ヨリ抑止スル筈ナク、北ト相談ノ上実際指導致シマスガ、
方針ガ異レバコソ之ヲ抑止シタノデアリマシテ、
之ヨリ観テモ私ガ主宰的地位ニ在ツテ行動シタモノデナイコトハ明瞭ダト思ヒマスケレド、
何事モ勢デアリ、勢ノ前ニハ小サイ運命ノ如キ何ノ力モアリマセヌ。
私ハ検察官ノ 言ハレタ不逞の思想、行動ノ如何ナルモノカ存ジマセヌガ、
蹶起シタ青年将校ハ 去七月十二日君ケ代ヲ合唱シ、天皇陛下万歳ヲ三唱シテ死ニ就キマシタ。
私ハ彼等ノ此聲ヲ聞キ、半身ヲモギ取ラレタ様ニ感ジマシタ。
私ハ彼等ト別ナ途ヲ辿リ度クモナク、此様ナ苦シイ人生ハ續ケ度クアリマセヌ。
七生報国ト云フ言葉ガアリマスガ、私ハ再ビ此世ニ生レテ來タイトハ思ヒマセヌ。
顧レバ、實ニ苦シイ一生デアリマシタ。懲役ニシテ頂イテモ、此身体ガ續キマセヌ。
茲ニ、謹ンデ死刑ノ御論告ヲ御請ケ致シマス。
・・・西田税の最終陳述

次項暗黒裁判 ・ 幕僚の謀略 2 『 純眞な靑年將校は、北一輝と西田税に躍らされた 』 に 続く


この記事についてブログを書く
« 暗黒裁判 ・ 幕僚の謀略 2 ... | トップ | 安藤輝三 『 万斛の恨み 』 »