あを雲の涯

「 二、二六事件て何や 」
親友・長野が問う
「 世直しや 」
私はそう答えた

澁川善助 『 赤子ノ心情ハ奸閥ニ塞ガレテ上聽に達セズ 』

2020年04月16日 15時06分19秒 | 澁川善助


澁川善助
「 本事件ニ參加スルニ至リシ事情竝ニ爾後ノ所感念願 」
豫審中の昭和11年4月8日付で提出した手記
本事件の意義
國ノ亂ルゝヤ匹夫猶責アリ。
況ンヤ至尊ノ股肱トシテ力ヲ國家ノ保護ニ盡シ、我國ノ創生ヲシテ永ク太平ノ福ヲ受ケシメ、
我國ノ威烈ヲシテ大ニ世界ノ光華タラシムベキ重責アル軍人ニ於テヲヤ。
『 朕カ國家ヲ保護シテ上天ノ惠ニ應シ祖宗ノ恩ニ報ヒマイラスル事ヲ得ルモ得サルモ
 汝等軍人カ其職を盡スト盡サ ゝルト由ルソカシ 』
ト深クモ望ませ給ふ 大御心ニ副ヒ奉ルベキモノヲ、奸臣下情ヲ上達セシメズ、
赤子萬民永ク特權閥族ノ政治的、經濟的、法制的、權力的桎梏下ニ呻吟スル現實ヲモ、
國威ニ失墜セントシツツアル危機ヲモ、「 大命ナクバ動カズ 」 ト傍観シテ何ノ忠節ゾヤ。
古來諫爭ヲ求メ給ヒシ御詔勅アリ。
大御心ハ萬世一貫ナリト雖モ、今日下赤子ノ心情ハ奸閥ニ塞ガレテ、上聞に達セズ、如何トモスベカラズ。
此ノ奸臣閥族ヲサン除シテ 大御稜威ヲ内外ニ普カラシムル 是レ股肱ノ本分ニアラズシテ何ゾヤ。
實ニ是レ現役軍人ニシテ始メテ可能ナルニ、今日ノ如キ内外ノ危機ニ臨ミテモ、頭首ノ命令ナクバ動キ得ザル股肱、
危険ニ際シテモ反射運動ヲ營ミ得ズ 一々頭脳ノ判断ヲ仰ガザルベカラザル手脚ハ、
身體ヲ保護スベク健全ナル手脚ニ非ズ。
此ノ故コソ、『 一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ 』 ト詔イシナレ。
億兆を安撫シテ國威ヲ宣揚セントシ給フハ古今不易ノ 大御心ナリ。
股肱タルモノ、此ノ大御心ヲ奉戴シテ國家ヲ保護スベキ絶對ノ責任アリ。
今ヤ未曾有ノ危局ニ直面シツツ、大御心ハ奸臣閥族ニ蔽ワレテ通達セズ。
意見具申モ中途ニ阻マレテ通ゼズ。
萬策効無ク、唯ダ挺身出撃、万惡ノ根元斬除スルノ一途アルノミ。
須ラク以テ中外ニ 大御心ヲ徹底シ、億兆安堵、國威宣揚ノ道ヲ開カザルベカラズト。
今回ノ事件ハ實ニ斯ノ如クニシテ發起シタルモノナリト信ズ。
叙土世界ノ大勢、國内ノ情勢ヲ明察セラレアレバ、本事件ノ原因動機ハ自ラ明カニシテ、
「 蹶起趣意書 」 モ亦自ラ理解セラル ゝ所ナルベシ。
吾人ガ本事件ニ参加シタル原因動機モ亦、以上述ベシ所ニ他ナラズ。
臣子ノ道ヲ同ウシ、報國ノ大義相協ヒタル同志ト共ニ、御維新ノ翼賛ニ微力ヲ致サントシタルモノニシテ、
斷ジテ檢察官ノ豫審請求理由ノ如キモノニハ非ザルナリ。
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・・・挿入・・・

『 豫審請求 』
昭和11年3月8日、
檢察官陸軍法務官匂坂春平が陸軍大臣川島義之に対し 『 捜査報告書進達 』 を為し、

豫審を請求するべきものと思料するとした。
同日、匂坂春平から豫審官に対して 『 豫審請求 』 が提出された。
犯罪事實
被告人等は我國現下の情勢を目して重臣、軍閥、財閥、官僚、政黨等が國體の本義を忘れ
私權自恣、苟且とう安を事とし國政を紊り 國威を失墜せしめ、
爲に内外共に眞に重大危局に直面せるものと斷じて、速に政治竝經濟機構を變革し 庶政を更新せんことを企圖し、
屢々各所に會合して之が實行に關する計畫を進め 相團結して私に兵力を用い
内閣總理大臣邸等を襲撃し 内閣總理大臣岡田啓介、其の他の重臣、顯官を殺害し、
武力を以て枢要中央官廳等を占拠し、公然國權に反抗すると共に、
帝都を動亂化せしめて之を戒嚴令下に導き、其の意圖せんことを謀り、
昭和十一年二月二十六日午前五時を期して事を擧ぐるに決し、各自の任務部署を定めたり。
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世界ノ大勢ト皇國ノ使命、當面ノ急務
今日人類文明ノ進展ハ、東西兩洋ノ文化ガ融合棄揚セラレテ、
世界的新文明ノ樹立セラルベキ機運ニ際會シ、而シテ之ガ根幹中核ヲ爲スベキ使命ハ嚴トシテ皇國ニ存ス。
即チ遠ク肇國ノ神勅、建國ノ大詔ニ因由アリ、
歴史ノ進展ト伴ニ東洋文化ノ眞髄ヲ培養シ、幕末以来西洋文化ノ精粋ヲ輸入吸収シ、機縁漸ク成熟シ來レルモノ、
今ヤ一切ノ残滓ヲ清掃シ、世界的新文明ヲ建立シ、
建國ノ大理想實現ノ一段階ヲ進ムベク、既ニ其序幕ハ、満州建國、國際連盟脱退、軍縮條約廢棄等ニ終レリ。
『 世界新文明ノ内容ハ茲ニ細論セズ。
 維新セラレタル皇國ノ法爾自然ノ發展ニヨリ建立セラルベキモノ、
宗教・哲學・倫理・諸科學ヲ一貫セル指導原理、
政治・經濟・文教・軍事・外交・諸制百般ヲ一貫セル國体原理ヲ基調トスル
齊世度世ノ方策ノ世界的開展ニ随ツテ精華ヲ聞クベシ。』
而モ、列強ハ弱肉強食ノ個人主義、自由主義、資本主義的世界制覇乃至ハ
同ジク利己小我ニ發スル權力主義、獨裁主義、共産主義的世界統一ノ方策ニ基キテ、
日本ノ國是ヲ破砕阻止スベク萬般ノ準備ニ汲々タリ。
皇國ノ當面ノ急務ハ、國内ニ充塞シテ國体ヲ埋没シ、大御心ヲ歪曲シ奉リ、民生ヲ残賊シ、
以テ皇運ヲ式微セシメツアル旧弊陋廃ヲ一掃シ、
建國ノ大國是、明治維新ノ大精神ヲ奉ジテ上下一心、世界的破邪顕正ノ聖戰ヲ戰イ捷チ、
四海ノ億兆ヲ安撫スベク、有形無形一切ノ態勢ヲ整備スルニアリ。
現代ニ生ヲ享ケタル皇國々民ハ須ラク、茲ニ粛絶荘厳ナル世界的使命ニ奮起セザルベカラズ。
此ノ使命ニ立チテノミ行動モ生活モ意義アリ。
私欲ヲ放下シテ古今東西ヲ通観セバ自ラ茲ニ覺醒承當スベキナリ。

國内ノ情勢
顧レバ國内ハ欧米輸入文化ノ餘弊―個人主義、自由主義ニ立脚セル制度機構ノ餘弊漸ク累積シ、
此ノ制度機構ヲ渇仰導入シ之ニ依存シテ其權勢ヲ扶植シ來リ、
其地位ヲ維持シツアル階層ハ恰モ横雲ノ如ク、仁慈ノ 大御心ヲ遮リテ下萬民ニ徹底セシメズ、
下赤子ノ實情ヲ 御上ニ通達セシメズシテ、内ハ國民其堵ニ安ンズル能ハズ、
往々不逞ノ徒輩ヲスラ生ジ、外ハ欧米ニ追随シテ屡々國威ヲ失墜セントス。
『 六合ヲ兼ネテ都ヲ開キハ紘ヲ掩イテ宇ト爲サン 』
 ト宣シ給エル建國ノ大詔モ、
『 萬里ノ波濤ヲ拓開シ四海ノ億兆ヲ安撫セン 』
 ト詔イシ維新ノ 御宸翰モ、
『 天下一人其所ヲ得ザルモノアラバ是朕ガ罪ナレバ 』
 ト仰セヒシモ、
『 罪シアラバ、我ヲ咎メヨ 天津神民ハ我身ノ生ミシ子ナレバ 』
 トノ 御製モ、殆ド形容詞視セラレタルカ。
殊ニ軍人ニハ、
『 汝等皆其職ヲ守リ朕ト一心ナリテ力ヲ國家ノ保護ニ盡サバ
 我國ノ蒼生ハ永ク太平ノ福ヲ受ケ我國ノ威烈ハ大ニ世界ノ光華トモナリヌベシ 』
 ト望マセ給ヒシモ、現に我國ノ蒼生ハ窮苦ニ喘ギ、我國ノ威烈ハ亜細亜ノ民ヲスラ怨嗟セシメツ ゝアリ。
是レ軍人亦宇内ノ大勢ニ鑑ミズ時世ノ進運ニ伴ハズ、
政治ノ云爲ニ拘泥シ、世論ノ是非ニ迷惑シ、報國盡忠ノ大義ヲ忽苟ニシアルガ故ニ他ナラズ。
斯ノ如キハ皆是レ畏クモ 至尊ノ御式微ナリ。
蒼生を困窮セシメテ何ゾ宝祚ノ御隆昌アランヤ。
内ニ奉戴ノ至誠ナキ外形ノミノ尊崇ハ斷ジテ忠節ニ非ズ。
君臣父子ノ如キ至情ヲ没却セル尊厳ハ實ニ是レ非常ノ危険ヲ胚胎セシメ奉ルモノナリ。
政治ノ腐敗、經濟ノ不均衡、文教ノ弛緩、外交ノ失敗、軍備ノ不整等其事ヨリモ、
斯ノ如キ情態ヲ危機ト覺ラザル、知リテ奮起セザルコソ、更ニ危險ナリ。
現ニ蘇・英・米・支・其他列國ガ、如何カシテ日本ノ方圖ヲ覆滅セント、孜々トシテ準備畫策ニ努メツ ゝアルトキ、
我國ガ現狀ノ趨く儘ニ推移センカ、建國ノ大理想モ國史ノ成跡モ忽チニシテ一空ニ歸シ去ルベシ。
・・・以上、手記から
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『 我國ノ軍隊ハ、世々 天皇ノ統率シ給フ所ニソアル。
昔 神武天皇、躬ツカラ大伴物部ノ兵トモヲ率キ、

中國
( ナカツクニ ) ノ マツロハヌモノトモヲ討チ平ゲ給ヒ 
高御座ニ即カセラレテ天下シロシメシ給ヒシヨリ、二千五百有餘年ヲ經ス。

此間世ノ様ノ移リ換ルニ随ヒテ、兵制ノ沿革モ亦屢々ナリキ。
古ハ 天皇躬ツカラ軍隊ヲ率ヒ給フ御制ニテ、時アリテハ、皇后皇太子ノ代ラセ給フコトモアリツレト、
大凡兵權ヲ臣下ニ委ネ給フコトナカリキ 』
『 夫れ兵馬ノ 大權ハ、 朕カ統フル所ナレハ、其司々ヲコソ臣下ニ任スナレ、
其ノ大綱ハ朕親之を攬り、肯テ臣下ニ委ヌヘキモノニアラス 』
『 朕ハ汝等軍人ノ 大元帥ナルソ、
サレハ 朕ハ汝等ヲ股肱ト頼ミ、汝等ハ 朕ヲ頭首ト仰キテソ、其親ハ特ニ深カルヘキ。
朕カ國家ヲ保護シテ、上天ノ惠ニ應シ、 祖宗ノ恩ニ報ヒマキラスル事ヲ得ルモ得サルモ、
汝等軍人カ 其職ヲ盡スト盡サルトニ由ルソカシ。
我國ノ稜威振ハサレコトアラハ、汝等能ク 朕ト其憂ヲ共ニセヨ、
我武維揚リテ、其榮ヲ耀サハ、 朕汝等ト其誉ヲ偕ニスヘシ。
汝等皆其職ヲ守リ、 朕ト一心ニナリテ、力ヲ國家ノ保護ニ盡サハ、
我國ノ創生ハ永ク太平ノ福ヲ受ケ、我國ノ威烈ハ、大ニ世界ノ光輝トモナリヌヘシ 』
皇軍の本義
「 陸海軍々人ニ賜リタル御勅諭 」  明治十五年一月四日

即ち 『天皇親率ノ下』 「朕ト一心ニナリテ」 『皇基を恢弘シ國威ヲ宣揚スル』 こと、之皇軍の本たり。
処でここに注意を喚起しておかなければならぬことは、
皇軍が 『 天皇親率ノ下 』 に在るの大權は、
斷じて憲法第十一條の 『 天皇ハ陸海軍ヲ統帥ス 』 なる 統帥大權の定めあるに基けるに非ず。
憲法十一條の該規定は、却って皇軍の在るべき本義を法的に御宣示し給へるに過ぎざるものなり。
皇軍は憲法にその規定があらうがなからうが來的に 「 天皇親率ノ下」 に在るの軍隊である、
といふことを明確に理解すべきことである。
何となれば、皇軍は、その本質を根本的に究きつめれば、
畏こくも 「 修理個成 」 な御実践、御まつらひ給ふ 陛下の御稜威そのものなればなり。
「 朕ト一心ニナリテ 」 が不動絶對皇國軍人の根本精神で、
「 一將一兵の進止は、即ち 「 股肱 」 おのもおのもがそれぞれの地位立場より 
大元帥陛下にまつろひ志嚮歸一する 「 朕ト一心ニナリテ 」 であり、
あらねばならぬを本義するは、別言を以てせば一將一兵の進止そのものが即 大元帥陛下の御進止、
御稜威であり、あらねばならぬを本義とするは、實に然るが故の必然事である。
而して、ここに 「 上官ノ命ヲ承ルコト實ニ直ニ 朕か命ヲ承ルナリト心得ヨ 」 との大御論の大生命である。
かくて又ここに皇軍の 「 上元帥ヨリ下一卒ニ至ルマテ其間に官職ノ階級アリテ従属スル 」 
は、威壓支配のためのものに非ずして 「 股肱 」 おのもおのもの。
大元帥陛下に まつろひ 志嚮歸一し奉るの體制であり、命令服從は、
その實、即ち 「 國民はひとつ心にまもりけり遠つみおやの神のをしへを 」 なる 「 一ノ誠心 」
上下一体の まつろひ のものたるの所似があるのである。
* 以上の義よりにして、「 軍制學教程 」 第四章--統帥權の條章中に述べられてゐる。
「 天皇に直隷スル指揮官ノ部下ニ在ル各級ノ指揮官ハ各々其部下ヲ統率シ間接ニ、
大元帥ニ隷属ス、統帥權作用ノ系統右ノ如クナルヲ以テ上官ノ命令ハ即チ
大命ヲ代表スル モノニシテ絶對服従ヲ 要求 ス 」 といふ点は最だ不徹底、
特に傍点を附した點の表現は、寧ろ皇軍の本義を歪曲せるものといふべきなり。
之を要するに皇軍の生命は、 天皇の御親帥 「 天皇ハ陸海軍ヲ統帥ス 」 そのものである。
故に従ってこの大義の--世上伝ふる偕上民主幕府的統帥大權の非議は、即皇軍そのものの否認であり、
この大義に徹せず皇軍の統帥を謂ふは、恐懼皇軍の統制を私にする 御親帥本義の冒瀆である。
以上以て職るべし、現人神にして天下億兆の 大御親にまします 「 天皇親率ノ下 」
「 皇基ヲ恢弘シ國威ヲ宣揚スルヲ本義トス 」 る、
即ち皇國體の眞姿--一君萬民、君民一體の大家族體國家上大御親、絶對、下萬民赤子、平等、
其処には一物一民も私有支配する私なく、從って天下億兆皆其処を得、
萬民一魂一體只管に 君が御稜威の弥榮を仰ぎまつろひ志嚮歸一する皇國体の本義を愈々明徴にし、
皇國を在るべき本來の世界民生の 「 光華 」 「 國といふふくのかがみ 」 世界の 御父帥表國たらしめ、
八紘一宇、世界修理固成の神業に直進するを、その本分となす皇軍は、正に之れ神軍たり。
* 斷じて皇軍は、かの共産主義共の云ふ、
或る階級的支配のための階級軍に非らざるは勿論、「 國民の軍隊 」 ともいふべきものに非ずして、
絶對に天下億兆の大御親にまします全體者 「 天皇の軍隊 」 である。
故に又皇國には、「 武士トモノ棟梁 」、「 軍閥 」 の在る可からざるは勿論、
嚴密には今日一般に謂はれてゐる 「 軍部 」 なるものの在ることなし。
皇軍の本義、本質たるや即ち斯の如しである。

・・・
皇魂 2


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