あを雲の涯

「 二、二六事件て何や 」
親友・長野が問う
「 世直しや 」
私はそう答えた

澁川善助發西田税宛 〔昭和十年六月三日〕

2021年11月02日 13時10分39秒 | 澁川善助

澁川善助  →   西田税 
粛啓仕候
初夏溌剌之候 弥弥御雄健に被爲人候御事と奉恐察候、
過日は過分の御差入を賜り 又 荊妻儀色々御厄介に相成候由 有難く御礼申上候、
以御蔭 私儀相変らず頑健に罷在候、
檢事の取調は先月下旬約一週間にて終了、本日一日より予審開始せられ候、
檢事の調は本件に關する部分は極く僅にて大部分は從來の經歴其他にて候ひき。
豫審には裁判所迄出廷仕候爲め久しぶりにて、俗界の風光を眺め申候。
豫審には勧持品を色讀せしめられ居り候、
佛神照覧炳乎、
何とぞ御安心被成下度願上候。」

太平には見舞を出し置き候が最早全快と存候。
小生何としてかチブス菌となりて彼を悩ましに罷まかり候べき、
冤罪慨嘆に不堪候阿々。
勇士佳人をして結婚の半歳を味はしむべき天意とこそ被存申候。
少し萬葉集の相聞歌でも讀ませ度ものに御座候 」

高橋亀吉著 經濟論の革命時代 ( 千倉書房 ) は、
國家理想追及の見地よりは未だ到らざるものに候へども
經濟界の實情に即して現在及將來の動向を指摘せるものとして、
確に情勢の理解に資し得べき明快なる一書と存候、
未だ旧時代の観念を脱し得ずある人には一讀せしめ度ものに御座候 」

先は御礼旁旁近況御報告申上度如斯御座候
何とぞ皆々様に宜しく御鳳聲の程奉懇願候    恐々頓首
六月三日認

〔 ペン書。封緘葉書。表、渋谷区千駄ヶ谷四八三  西田税様侍史  裏、中野区新井町三三六  澁川善助
六月三日認。郵便消印 10 ・6 ・10 〕

現代史資料23  国家主義運動3  から


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