丹生誠忠 栗原安秀
前頁 憲兵報告・公判状況 6 『 香田清貞、丹生誠忠 』 の続き
第八回公判公判狀況
一、日時
五月十日 午前九時開廷。
午前十一三十分---午後一時 休憩。
午後二時五十分---午後三時三十五分 休憩
午後五時五十五分閉廷
二、場所
代々木練兵場仮兵舎内第一公判廷。
三、進捗狀況
開廷ヨリ午前十一時三十分迄 丹生誠忠ノ訊問ヲ爲シ、
午後ハ栗原安秀ノ訊問ニ移リ、二月二十九日ノ行動迄ノ訊問ヲ終了セリ
四、被告ノ陳述中重要ト認ムル點
1、丹生誠忠
(イ) 二月二十八日小藤大佐ヨリ奉勅命令ハ小藤大佐ノ手許ニ握ツテ居ルコトヲ聽キタリ。
(ロ) 二月二十七日山王ホテルニ宿營スルトキ、
香田大尉ヨリ山王ホテルハ將來組閣本部トナルヤモ知レズト言ハレタリ。
2、栗原安秀
(イ) 我々ガ下士官以下を同志ト稱スル意味ハ、
軍人各個人ハ上元帥ヨリ下一卒ニ至ル迄 陛下ノ直属デ忠節ヲ盡ス上ニ於テハ
其ノ間ニ甲乙アルベキニアラズトノ氣持ナリ。
故ニ、之ヲ指揮シテ獨斷専行ヲ行ヒタル指揮官ニ在ルヲ以テ、
下士官以下若イ將校等ニハ責任ヲ負ハスベキモノニアラズ。
自分ノ部下トシテ行動シタル者ニ對スル全責任ハ自分ガ負フベキモノト思料ス。
兵ニハ責任ナク 下士官ニハ責任アリト云フガ如キハ不合理ナリ。
(ロ) 奉勅命令ガ出ソウデアルト云フコトヲ屢々聞イタガ、最後迄正式ニ達セラレナカツタ。
元來、奉勅ナルモノハ絶對ノモノデ、
之ヲ受ケタナラバ直ニ達セラルベキモノダト信ジテ居ル。
苟クモ 奉勅命令ヲ豫メ出シテ貰ツテ
何時迄モ達セズニ持ツテ居ルナゾト云フコトハアリ得ベキモノデナイ。
奉勅命令ヲ達セズニ置イテ、陸軍ノ汚名ヲ負ハサレタノハ殘念デアル。
下士官以下ガ將校ニダマサレタト言フタトスレバ、
ソレハ賊軍ノ汚名ヲ負ハサレタ爲デアルト信ズル。
( 以上 )
憲兵報告・公判状況 8 『 林八郎、池田俊彦 』 に続く
二 ・二六事件秘録 ( 三 ) から