
宮崎駿監督が引退を表明しました。惜しまれる声がテレビで流れますが、しかし最新作「風立ちぬ」を見終わった多くの人は、たぶん私同様にその気配を感じ取っていたのではないでしょうか。
もののけ姫、千と千尋の神隠し、天空の城ラピュタ等など。確かにこれら作品はいずれも大空のように雄大で爽快で、他方で常に闇のおどろおどろしさを並存させていました。
しかし「風立ちぬ」は爽やか過ぎました。いつも味わうゴツゴツ感がなかったのです。「あっ、こじんまりと“完成”させてしまった」と思わず口走ってしまったものです。こだわりの強い宮崎監督。こだわりを貫くには72歳という年齢は些か重かったのでしょう。
こだわりの宮崎駿と言えばこんなことを都庁の折に経験しました。
ある時、多摩モノレールの車体のデザインを、宮崎作品の「猫バス」にしようと交渉に行ったのです。しかし監督からははっきりNOとの返事でした。「猫バスは子供たちにとっては無限に柔らかいメージでなくてはなりません。しかしモノレールの車体の金属感は、どうしてもその柔らかさを維持できません」。
そのこだわりに舌を巻きつつも、一人の芸術家の姿勢の貫きを見せられ、大いに納得したというものです。それにしてもこだわり貫くというのは、やはりなかなかシンドイもののようです。