写真:石毛博道『草矢射る』と坂口弘『常しへの道』
長い成田闘争を強いられた芝山町の石毛博道氏。熱田派の元の事務局長。過日、成田の共生委員会の建物で彼と話しあう機会を持てたこともあって、このところ、その句集『草矢射る』を少しづつ読み進んでいます。
寒風の中ゆく時も顔をあげ
人間がいっとう怖い木の実落つ
草薙(くさなぎ)という敵がくる虫達に
土地収用の強制執行が行われ、それへの激しい抵抗を展開している頃の作品でしょうか。その句風はどれも大地を感じさせ、言い知れぬ安堵感を味わわせるようです。しかしこの句集から、ふと連合赤軍の坂口弘死刑囚の歌が想起されてくるのは不思議です。坂口弘歌集『常しへの道』にはこんな歌があります。
これが最後
これが最後と思ひつつ
面会の母は八十五になる
牢のわが消息を知り
まだ生きてゐるかと思ふ
人のあるべし
共に時代の苛烈さを背負っていることが、この二人の作品イメージを結びつけるのかも知れません。あるいは己や社会を透徹するかのような哀しさが、共通して感じられるためかも分かりません。それにしても同世代人に成田と連合赤軍は、過去でなく、いつまでも同じ時間帯にあることを痛感させられるというものです。