上砂理佳のうぐいす日記

巨匠漫画家、楳図かずおさん逝去。あべのハルカスで私も見た「楳図展」は金沢21世紀美術館で9月に開催されていました★

あれは何だったのか

2006-12-11 | 06-07 コンペとショー
…今だから言えるけど、私はこの時「大阪へ帰ろう」と思ったのですね。
なんでやねん(笑)。いやもう、
「今日はたーのしかった♪大ちゃんもナマで見られたし、昨日も素晴しかったし、あとはもうエキシビション的に楽しんだらいいんだよね♪」
…と、50%くらいは思った。卑怯と言えば卑怯だが。
多分、そうやって必死に精神的均衡を保とうとしてたんだと思う。私なりに。
それくらい、のぶりんの得点は衝撃的だったのですわ。
でも、50%は「勝負をあきらめてはいけない!」とも思っていた。だから、葛藤が渦巻いて渦巻いて、突き抜けてハイになっていた。笑みさえこぼれていた。
だがここで、可愛い小塚君の精一杯の演技が、私の「一服の清涼剤」になる。
いやもう。なんという清々しさ。シンプルで決して感情過多にならないだけに、スケートの「素」の部分だけがキラキラ光って見えるという。それが彼の若いまっすぐさと相まって、まるでオアシスのような効果を私にもたらしたのだった。

と、スタオベして一服したら、控え室でうつむく若い男が映るではないか。
場内、笑いが。大ちゃんではないか。非常に緊迫してるというのに、なんだか間抜けた感もあるという、この突然のカメラ切り替え。バックステージの表情を挿入するなんてさ~、NHKも段々、民放的になってきたなあ(笑)。
…清らかな小塚君と、闘志をみなぎらせる大ちゃんを見て、私はだんだん「ハラが座った」状態になった。
もう帰らないよ。なるようになれ!
長光コーチの言葉じゃないけど、「たとえどんな結果になっても、必ず傍にいるわよ」みたいな。
いなくてどうする。今日まで精一杯やってきた成果なのだから、たとえ何が起ころうとも、応援するしかないじゃないか。3-3で無難にまとめても、4回転跳んできても、もうどちらでも構わない。大ちゃんの選択なんだから。

チェンジャンが4-2を決める。見事な高さとランディング。やっぱり、他にクワドを跳ぶ人がいるとゆーのはいいですね。テンション上がるよね。途中、失速してしまうけど、コンディションが悪い中を精一杯やってくれました。あっぱれチェンジャン(ええ。SPのパフスリーブは王子チックでした^^)。
リー君のキス&クラの最中、私はバナーを振る準備を整えていて、余り大ちゃんのウォームアップを見ていませんでしたが、多分ジャンプは跳んでいないのでは(見てた方は教えて)。大声援です。出ていきます。いつも通りの仕草ですが、今日は「パンパンパンッ(自分で自分に拍手)」はありません。
優勝のかかった最終滑走。しかもライバルは現時点で歴代2位の天井点。
これほど緊迫した状況があろうか。憤死しそうな。
いやない。ないよ。

オルゴールが鳴り出すと「あっちゅうまに」4回転なのでした。
いや、これね。決まった瞬間、場内は勿論、拍手と歓声上がったけど、正直言って「今の、3?4?」って思った人は多かったと思う(笑)。私もK嬢も「?」だったもん。(小声で)「4かなー?」「反応見てる限りは4じゃないー?」「4だよね。うん、4よ」みたいな。それぐらいアッサリしてたっちゅうことね(笑)。下の階は違うと思うけど、3階から見下ろしてたらジャンプの高さは余り解らないから。でも、チェンジャンは助走と踏み切りの大きさで「4」って解るのよね。大ちゃんは、前にも書いたけど余り助走が長くないので「せーえーの!4回転!」ではないのよね(去年のN杯でも、ナマでは3か4か解らなかった…)。
ともあれ、悩むヒマもなく次の3アクセルへ。これは綺麗。4T入った、ということは次は3アクセルでなく3ルッツにするかも…と思っていたら、2度目の3A跳んできた!後でTV見たら、やや前のめりになっていたのねー。でも上から見たら完全に成功だったわ。
私が「あ~綺麗だな~ウットリするなあ~」と思えた箇所は、唯一この前半のスローパート、4T終わって「All I ask of you」で優雅に踊るところのみ。他が感激しなかった、という意味ではないですよ。他の部分はね。もう、「ウットリ」ひたってる場合ではなかった(笑)。そんな余裕無い!
サーキュラーも「よし!行け!押して行け!」だし、スピンは「あれ?変更してる?速く!もっと速く!」だし、もうもう、後半のジャンプなんか。半狂乱というか。私が自分でマジックハンドで「えいっ!」と立たせてるというか(笑)。
記憶がウロ覚えなんだけど、バナーを掴みながら「フリップ!」「ルッツ!」「サルコゥ!」と叫びまくる(特に「3ルッツ+2トゥ+2ループ」が、お客さん湧きました。すごく速くて綺麗だった)。
ループの踏み切り前なんか、会場全体が硬直してたかのような(笑)。リプレイ見ても、ちょっと危なっかしかったのね。TVの印象では、やっぱり2個目のアクセルとこの3ループが危なかったけど、会場では「成功!」つう感じで湧きました。「終盤5連続ジャンプ!」「見せ場!」と銘打ってしまってるから、みんな「5!4!3!2!…1!」と、カウントダウン状態になるんだろなあ(^^:)。

最後のフリップを降りた瞬間(あ、ごめん、ここはサルコゥに変えたんだ)
「おおおおおおおりた…全部おりたっ」 
と、私はK嬢に叫んでいました。
大ちゃんが、4T入り、3A×2個入り、3連続入り(そしてレベル4ステップ入り?)…でジャンプを全て決めたフリーって、多分、人生で初めてだと思いますよ。だから、なんだかその瞬間、「ああもう、順位とか点とかどうでもいい!」と思ったな。「ここにおいて全てが昇華された」。そんな感じ。
ストレートラインはもう、会場全体が大ちゃんの背中を押してる感じで、この感覚は、昨年のGPFのラフマニのステップの時と同じ(多分、全日本をナマで見られた方も同じだったかも)。私はずーっと最後まで「頑張れ!」と叫ぶけど、最後の方は泣いていたので、声が出ない。

仮面をバッと剥ぎ取るポーズでFSが終わった。瞬間、バナーを持ってK譲と立ち上がる。悲鳴みたいな歓声で、花は降るしアリーナ席は大揺れだし、大変なことになっている。滑った。滑り切ったよ。
私はとにかく渾身の力でバナーを振る。あんまり激しく振ったせいか、左手の指にはめていた指輪の石が台座からハズれて、石だけ(ガラス細工なんだけど)前方の初老のご夫婦の席へブッ飛んでいってしまった。奥さんが拾って「何?これ?」としげしげと眺めているけど、今更言い出せるハズもなく。その余裕も無く。もー指輪なんてどーでもいーのよ。安もんだし(奥さん、驚かせてすみませんでしたあ)。

モロゾフも歌子ママも嬉しそう。大ちゃんは疲れてはいただろうけれど、余り「精も根も尽き果てました」な様子は無く、お辞儀もキチンと出来ていた。
「点を出せ!」の手拍子がまた起こるが、ここでもまた早く点が出る。TESが80点超えてる。つうことは4T認定されたか。深く考えるヒマもなくPCS。今日は8点出てもいーよね…とK嬢と言っていたが、7点台。確かにインタビューでも言ってたとおり、ちょっとジャンプ以外で雑になってしまったところも、あるにはありました。私は、見ていてスピンがやっぱり良くなかったかな。
それでもわずかにのぶりんを上回り、一番上にDAISUKE TAKAHASHIの名が点灯。
歓声鳴り止まず。
良い演技が続いた熱戦の時の、特有の空気が「わーん」とビッグハットに充満していました。
すごかった。とにかくすごかった。

ずっと泣いていたし、笑ってもいたし、無口になったりやたら喋ったり、いったい私はあの後、表彰式~EXと、どう過ごしていたんでしょうか(笑)。でも、嬉しくて泣くって、すごーくストレス解消になるというか、まさに「昇華」される感じ。
「オペラ座の怪人」の表現なんかは、帰ってTVで見たら「ああ、後半に入る前の目線なんか、鋭くってイイなあ~」とかなんとか、堪能できたりもしますが、あの時あの場では、そんな「芸術的にどうのこうの」なんて考えてる場合ではなくて。
ただひたすらに「頑張れー!」なのでした。
そして「頑張ってるよー!」と返してくれた。
もちろん、まだ完成形ではないのですが、いろいろ欠点もあるのですが、あの日のあのFSは「全身全霊で滑ってる高橋大輔」でした。
そういう「気」がナマでビンビン伝わってきたので、拍手を送らずにおれなかった。
4回転は、本番では精神集中がうまくいったのかな。きっと、練習では成功しているから大丈夫、という自信があったのかも。3アクセルのタイミングなんかを見ていると、スケカナの頃よりはるかにジャンプを調整してきてるなーと思いました。やっぱり「豊富な練習量+本番での集中力」が噛み合わないと駄目なんだろなあ。
長い長い間、ここぞ!で崩れてしまう大ちゃんの演技に歯がゆい思いはしてきたのですが、オリンピックの悔しかった経験が、今、大ちゃんを「本気」に向かわせている…と思わずにおれませんわ。この「オペラ座の怪人」は、とても大変なPGだけど、確かに「世界選手権でメダルを」狙っていますね。そういうPGですね。やっと全貌が見えてきた感じ。
今までの、応援していて苦しかった事や悲しかった事、全てがNHK杯で払拭された…!
大ちゃんの“全身全霊”が私を打ちのめしたのよ。
なんなんでしょね。一生忘れられないわ。
この先、また浮き沈みがもしあっても、このN杯は忘れられないわ。
喜びと感動で、やはりまだボーゼンとしています。大丈夫かなー(笑)。
(きっと年末までボーゼンとしたままでは…
コメント (11)
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