3月11日

 アン・ラドクリフ/三馬志伸訳『ユドルフォの怪奇 下』を読んだ。
 
 頗る面白かった。“ゴシック小説を読んだ!”という満足感にどっぷり。

 ピラネージの装画のイメージも相俟っておどろおどろしい内容を期待したが、存外それほど満遍なく怪奇…という訳でもなく(ユドルフォ城は充分に不気味でよい)、非の打ちどころのないヒロイン・エミリーが恋をしたり非現実的な苦境を乗り越えていく展開は痛快だった。
 とりわけ、何かと気絶してしまうエミリーが実は気骨ある女性で、己を利用しようとする輩に屈しないところが好きで感嘆した。当時このような女性を描いたということに、とても意義があったのではないか…と。
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