9月10日(読んだ本、『抽斗のなかの海』)

 @rinakko
 雪割草咲く野に少女を攫いたく夕暮るるまで風を集めぬ──永田和宏
 青葉闇陶の足ゆび拾い捨つ──安井浩司
 #詩歌蠱術函






 @rinakko
 【抽斗のなかの海 (単行本)/朝吹 真理子】
 
 朝吹さんの清透な佇まいの文章が好きで、エッセイを読むのは多分初めてだがとてもよかった。勿体ないようにも思いつつ、気付けばぐびぐび読み耽っていた。文学のこと、小説を読むよろこびについて語る箇所には身を乗りだすほどに惹かれたし、それ以外の思い出や日常を綴るエッセイも堪能した。
 とりわけ印象深いのは、古井由吉の小説をとり上げて、時制や“無事”という時間の流れについて思惟を巡らせていく「背表紙が卒塔婆にみえていた頃」や、ああここにもガール・ミーツ・シブサワ…と嬉しくなった「昼休みのドラコニア」、金井美恵子に触れている「ともぶれするよろこび」とか。

 素敵だな…と見惚れた装幀は、国際信号旗K(通信を求める。交信したい)の色遣いなのだと知った。

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