マヌエル・プイグ、『天使の恥部』

 プイグを読むのは3作目。『天使の恥部』の感想を少しばかり。

 とても好きな作品。映画のように美しくも煽情的な場面の数々が、“世界一の美女”の顔とともに心に残る。愛の不毛ややり切れない孤独感、人と人とがわかり合うことの困難を描きつつも、べたついたところが全くない作風も好きな理由の一つである。
 虚実並べて語り進めていく手法に、ほどよく揺さぶられ続けながら堪能した。プロット自体はわかり易く追いやすいのだが、日常からかけ離れた設定の物語(官能的でもありドラマティックでもあり)と、内省的な日記や会話文が交互に現れるスタイルが、行きつ戻りつの奥行きを生み出していて面白いと思う。
 そしてロマンス小説、スパイもの、SF…と、様々な要素を盛り込んだパロディ形式も、プイグならではである。例えば物語の中盤、不意にやってきた若者と女優が一目で惹かれあい、銀の湖の畔で逢瀬をする箇所などでは、これはもしや巷に聞くハーレクインか…と一瞬戸惑ったけれど、流麗に連なっていく言葉が描き出す美しい情景の魅力に、ついついうっとりしてしまった。

 月の光が潜りこむ豪奢な部屋、世界一の美女と称えられた女優が新婚初夜のまどろみから目覚めると、そこには誰もいない。目覚め間際に見た悪夢。さり気なく仄めかされる不安の翳りですら美しく、物語は始まり、他人の思考を読む能力を与えられた女優(ヘディ・ラマー)とメキシコシティで入院治療中のアナ、未来都市で性的治療を受ける男性患者に奉仕する勤めの若い女・W218と、過去と現在と未来に生きる三人の女たちの物語が繰り広げられる。昼間の現実と夜ごとの夢…。やがて苦悩をくぐり抜けた彼女たちが、背中合わせのまま迎えるそれぞれのラストは、とてもよかった。しみじみと沁み渡るものがあった。

 
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7月20日(水)のつぶやき

06:37 from web
おはようございます。あいすこーしーなう。そろそろ腰を上げてあれこれ片してくるよ…(あーよっこら)。
18:50 from twicca
枝豆ビールにゃう。ゴーヤチャンプル(今季初)は下ごしらえ済み。ゆるゆる呑む夏の宵、仕上げに一雨あってもいいなぁ。
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