ドニ・ディドロ、『運命論者ジャックとその主人』

 読書会、今月の課題本である(て、決めたのはあたし)。『運命論者ジャックとその主人』の感想を少しばかり。

 え、なになに? この物語の楽しみどころは脱線につぐ脱線とな…? 
 “ひとは自分がどこへ行くのかなんてことを知ってるものでしょうか?”、“――また質問ですか! あなたはジャックに恋の物語を続けてほしくないのですか?”…とまあ、こんな調子で始まるこの人を喰って愉快な物語、18世紀のフランス文学である。作者のディドロは、啓蒙思想家とな。それはさぞや読み難かろう…といささか身構えていたのに、蓋を開ければ意外や意外!な読み易さで、面白かったのですよ。

  これ、運命論者ジャックとその主人の珍おしゃべり道中…なのでもある。確かに評判通りに脱線は多いのだけれど、この二人の主従が行き先も判然とさせないままさすらっていく様が何だか長閑で、どんな脱線にも大らかな気分で付き合っていけたような気がする。何だかんだ言ってまだまだ馬で旅をしていた時代だから、話の方もそうそう目まぐるしい運びにはならない…ということなのかも知れない。ジャックと主人のゆるい主従関係と言い、おしゃべり三昧な脱線っぷりと言い、何処となく暢気な雰囲気なのがとても可笑しかった。
 「運命論者とはなんぞや…?」と、実際に読んでみるまで首を傾げていた。自分の身に降りかかる善いことも悪いことも、始めっから天上にそう書かれていたのだ(から仕方がない)…という、繰り返し出てくるジャックの決め台詞は、一見達観のようにも諦念のようにも聞こえるのだが、果たして本当はどうなのだろう? 実は、自分の身に降りかかる事全てを大人しく受け入れる為に、自らそう言い聞かせて慰めていただけだったのかな…?と思うと、本当にこのジャックと言うおしゃべり好きな人物は憎めない。憎めないなぁ…。 
 
 驚嘆に値する意志の強さで、自分を裏切った男への周到かつ風変わりな復讐を謀るド・ラ・ポムレー夫人の話(ある意味、天晴れ…)、表の顔と裏の顔を巧妙に使い分けて敵の一枚上手を行った好色なユドソン神父に、初心な男を弄んだ詐欺師ド・サントゥアンの話…。と、冷静に考えてみたら人でなしの出てくる醜悪で残酷なエピソードばかり!なはずなのに、ジャックとその主人(さらに時々口をはさむ語り手)の手に(口に?)かかってしまえば、どれもこれも結局は滑稽譚でしかないのだ…とでも言わんばかりの出来栄え。ふふふ。笑い飛ばすことこそ、最強ですね! …いやはや、面白かった。
 
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1月6日(木)のつぶやき

06:47 from web
おはようございます。こーしーなう。今日は一日中雪の予報、出かけずに済むだろうか…。
08:24 from web
カサーレスの『パウリーナの思い出に』は、本当に出るのでしょうか…。
08:29 from web (Re: @catscradle80
@catscradle80 マコーマックは私も買う予定です。楽しみ過ぎます~♪ あ、それでバラード、海外文学セレクションなのですね。バラードの単行本…むむむ、迷うあたりですわん。むー。
19:22 from 読書メーター
【運命論者ジャックとその主人】を読んだ本に追加 http://book.akahoshitakuya.com/b/4560027587 #bookmeter
20:08 from 読書メーター
【ナジャ (岩波文庫)】を読んだ本に追加 http://book.akahoshitakuya.com/b/4003259025 #bookmeter
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