清水博子さん、『vanity』

 『vanity ヴァニティ』、清水博子を読みました。

 “芦屋川と芦屋のちがい、西宮北口と西ノ宮と西宮のちがい、宝塚と宝塚南口のちがい、甲子園と甲東園を甲陽園と香枦園のちがいを、電鉄会社のちがいとしてしかまだ把握できない。” 35頁

 ひょんなことから恋人の実家に住むことになった主人公の画子。一応婚約者候補としての居候なのだが、その恋人の母親は“マダム”としか呼びようがない人物である。対する画子は、上流の奥様なんぞに飼い慣らされるまい…としているかのように見せかけて、実は飼い慣らされるだけの素質さえ持ち合わせてはいない。自分の稼いだお金で気ままな買い物をすることが大好きな、東京の外資系のOLさんである。他愛もない。
 関東の直截な感覚と、関西の澱んだ美意識。平行線を辿りながらも一緒に暮していくうちに、時々妙なところで波長が合っていく二人のやりとりが可笑しかった。バトルをしていても時に頓珍漢で、高飛車なマダムさえだんだん憎めなくなっていく。そうだよなぁ、本物のマダムが相手じゃあ、揶揄する気力も萎えるわいなぁ…。

 虚栄心は誰にでもある訳だけれど、退きかえしどころはわきまえておきたいものだ。とりわけ富む者とそうでない者とが蔑みあうことは、あまりにも安易でありましょう。…とは言え、「いかり」スーパーでお買い物をすると必ず5桁以内に収まらない(二人分なのに!)なんて話には、私も鼻を鳴らしたくなりましたが。あいや、「いかり」スーパーは好きです。お惣菜とか美味しい。  

 この作品は、表紙がすっごく好き。草間彌生さんの水玉ハイヒール、いとかわゆし。
 (2007.5.22)

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