『爆笑オンエアバトル』(22日24:40~)、トップバッターのパップコーンが401kbとまあまあの滑り出しだった以降、結局over500どころか400台すらラスト10組めの天竺鼠445kbまで出ずという、近来稀に見る“玉の転がりの渋い”回となりました。
フィギュアスケートや体操などと同じで、採点方式の競技には大体トップ効果と言うものがあります。
後の演順の組が素晴らしい演技をした場合、トップ順があまり高得点を出した後だと差のつく点を与えにくくなる、それを懸念してトップ順の組の点は(特に後の演順に有名組・人気組がひかえている場合)評価以上に抑えめになりがち。よく言われる“客席が温ったまり足りない”ということも早い演順にはつきまとう。
そこで評価する者がそれらを逆に懸念して「トップは不利だから、玉入れるか入れないかで迷うぐらいのレベルなら、とりあえず入れといてあげよう」と思うもの。
トップ順の組はこうして、点が抑えられる要因と高くなる要因とが相殺し合って、結局は高めに出ることが多い。
これを称して“トップ効果”と言うのです。
パップコーンの401kbで「これは実質360~370ということだな」と思って、以降の計量を見ていたら、アルコ&ピース253kb「これは確実にスベったんだな、期待の組だったけどパップの直後で150も下回るんじゃ仕方ないか」…しかしその後、前エントリー時スタッフミスのため棄権の後で同情票もあるかのハマカーン389kb、恋愛小説家397kb、えんにち381kb…客席も、待っている“何か”が何なのか、結局わからないまま、ラストの天竺鼠がまあまあだったので吐き出しちまうか、みたいな流れになったようです。
その吐き出されの受け皿になって1位?天竺鼠が、3連敗後の初オンエアでおもしろければ何の文句もなかったのですが、正直もうひとつだったなあ。タモリ風、大門団長(@『西部警察』)風のボケ店長、もう少しはじけてくれるかと思ったら結局客役のツッコミに持って行かれるオチはもったいない。ヘンな店のヘンなマスターネタなら、東京ダイナマイトのほうがキレがある。
逃げ粘りというより、取り残されるような感じで2位のパップコーンは、何度も何度もここで言っているように、5人いるということのメリットが依然感じられない。今回も結局、最後にステージ登場したサイババ頭の人の“顔出しオチ”。
3人での2つの石の投げ渡し合い押し付け合いがスラップスティックとしていちばんダイナミックな箇所なのに、ここの演じ方見せ方がせせこましく窮屈。もう少し舞台を広く使わないと。メガネ細身の芹沢「(霊が見えてるの)オレだけ…?」と表明してからの動きがお芝居としてはなかなか良かった。サイババ頭を定点にして、ほか4人の持ちキャラをもっと明確にするなど、とりあえずまだ向上の余地はあると思う。
初コントで4位389kbのハマカーンは、結局、ボケ浜谷に落研下地があるということをご披露しただけで終わった感。落語風味を取り入れたことでコントとしての広がりや、他組のコントにはない独自の味が出たかというと何とも言えない。神田が(今度ばかりは)ムダに(姉ゆずりに)長身なために、座位を通した浜谷との落差で絵ヅラとしても見辛かった。
むしろギリ5位でのオンエアとなったえんにち381kbのほうが珍しく素直に笑えました。今回はツッコミ望月の声の通りとテンポがいままでのオンエアでいちばん良かったと思う。チャンピオン大会経験もプラスになったか、表情も締まって愛嬌が出ていて、相乗効果でアイパーも光った。アイパーの顔芸とヤクザキャラを定点としてこれからも行くなら、どうやって、どこまで上昇できるかは望月のツッコミにぜんぶかかっていると言ってもいい。
計量ジャッジ時の、いちばん左端の天竺鼠との顔芸ガンタレ比べは結構会場が湧いていましたね。いつもこの人たち、どうってことないパフォのわりには玉が入るなあと思って見ているのですが、もう無傷の5連勝。TVを通してだけではわからない、現場でライヴで見てこその、客席を惹きつけるチャーミングな要素を何かしら持っているのでしょうね。こういう角度から認知度を高め地歩をかためていく方法ももちろん“アリ”です。
3位397kb恋愛小説家は、いつだったかいつもここからがフリップに描いていた“見送りの列車がなかなか発車しないときの車窓越しの間の悪さ”を採り上げ、着眼は悪くないのですがちょっと動きの多さ比で燃費が悪い。「ボクはええけど、オオグモさんこの電車で名古屋まで行くねんぞ」などツッコミ西野のごもっとも至極なとぼけたセリフで呼ぶ笑いを、もっと前面に出すほうがよかった。
個人的に残念だったのはアルコ&ピースのオフエア(253kbでヴィンテージ317kbに次ぐ7位)。惜しいオフエアには「好キャラだけどネタが弱い」「うまいんだけど古い」「良ネタだけど硬い」「高センスだけど粗い」などいろんな“Yes~,but…”がありますが、たぶんこの人たちの今回は、「おもしろいんだけどわかりにくい」。
わかりにくければ「おもしろい」ってこと自体わからないだろうと思われがちですが、なんかわからないんだけどおもしろいぞ、ってことがお笑いにはあり、評価して点数上下つける場面ではそれが有利にも不利にもなる。
この人たちは6:4で不利と出やすい芸風じゃないかなと前回の“ショップ店員と客”ネタでちょっと思ったのです。放送作家さんやディレクターさんたちにではなく、シロウトの観客に披露して喜ばれるのは「うーん、うまい!」と“唸らせる笑い”ではなく、“気分が高揚し開放される、お祭りの笑い”。そこらへんが調整されてくれば、最近ちょっと沈滞気味なコント勢の新勢力にもなれると思います。