イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

そうね大体ね

2008-05-21 19:33:03 | テレビ番組

サザンオールスターズの無期限活動休止発表、何が驚いたって、聞いても全然驚かない自分に驚きました。

コンスタントに整理入れ替えはしているけど、いちばん多い時期はフルアルバム4タイトルぐらいと、桑田佳祐さんのソロやKUWATA BAND名義も含めればシングル8枚ぐらい持っていたのに。……って、少ないか。でも自分の中では、邦楽でいちばんシンパシーのあるアーティストのひと組に違いはありません。少なくとも、「もう飽きた、つまらなくなった」「なんでこんなのが好きだったんだろう」と思ったことは一度もない。こういう体温で接し続けられているアーティストは洋・邦を通じて、と言うより、広く芸能人自体が他にいないかもしれない。

自分が1人暮らしを始めて、実家の家族に気を遣わずに好きな音楽を身近におく、流しておくことにこだわりを持ちはじめた“元年”がまさに『勝手にシンドバット』での♪ ラーラララララ ラーララー …衝撃デビュー78年だったことも「一緒に歩いてきた」感を強めています。

でもま、ご当人たちの身になってみれば、30年ですよ。一緒にやってて「そろそろ潮時」感が全員の胸に去来して当然でしょう。桑田佳祐さんと原由子さんはご夫婦も兼行だからそうもいかないだろうけど、あとのメンバーは他人だし。

それはともかく、自分がサザン休止の報にこんなにクールでいられるのは、やはり音楽、音楽家というものの特性だと思う。ご本人たちがバンド活動をやめても、かりに音楽活動自体を休止したとしても、30年間にリリースされレコード化CD化され、FMAMラジオで流れ続けている曲はそのまま流れ続け、聴き続けることができる。むしろ今般の休止の報で、各局が特番の企画を大車輪で立てて、ここしばらくはサザンの曲を耳にする機会が、むしろ増えるかもしれません。バンド、演奏者の活動に関係なく、すでに発表された楽曲は独立してひとり歩きしているのです。

こう考えるとやはり“音楽”の力は偉大だなぁと思わざるを得ません。“無期限活動休止”発表したのがミュージシャンでなく、俳優さんだったとして、デビューから30年シンパシーを持ち続け欠かさず出演作をチェックしているような人だったら、たとえ過去作をビデオやDVDでほぼ完走していたとしても「もう新作が観られないのか」というショックは大きかったと思います。映画やドラマの過去作は、出ずっぱりの主演だったとしても“役者誰某さんのもの”ではないし、それに役者さんのファンはやはり“作品”ではなく、芸風などで差はあってもたぶん73かそれ以上の比率で“人”につくものではないでしょうか。

ばりばりメジャーなまま休止するバンドの話題からいきなり失礼な連想ですが、「演歌や歌謡曲の歌手は、売れなくなっても一発屋でも、人口に膾炙したヒット曲持ち歌が12曲あれば、それをひっさげての地方回りで、声が続く限り食い詰めることはない」「昭和ベスト盤やコンピ盤に収録されればそのたび印税も入る」という話を思い出しました。

「…それに比べて役者(俳優)は、どんなに演技力があって過去作で名演技を披露していても、いまオファーがなければ収入はゼロ」と続きます。

サザンの場合、いままでのヒット曲のほとんどがメンバーの自作・自編曲で、バンドうちそろって顔を出しパフォーマンスし続けなくても“実入り”は途絶えないということも、きっぱりあっさりの休止決断を促したのかもしれません。

それにしても、休止報道の翌日いきなり所属レコード会社の株価が暴落、なんて聞くと苦笑を禁じ得ませんな。喩えは悪いけど「…小判ザメ」とか連想してしまう。やはり“サザンオールスターズ”のラベルで“新製品”を無期限発売できなくなったという“経済損失”は大きいのでしょう。市場経済、音楽も商品、アーティストも、アーティストの名前も商品。

『花衣夢衣』38話。今日は何が笑ったって澪(吉田真由子さん)の「成仏しちゃったら晃ちゃんもう産まれて来ないじゃないの!」。……もう、しっかり妊娠していることはわかっているんだから、「赤ちゃんができたのよ、天国の晃一が私たちにもう一度幸せをと授けてくれたのかもしれないわ」ってさっくり将士に言えばいいのに澪。

“(将士が跡取りとして溺愛していた)晃一さえ還ってきてくれれば、壊れた夫婦の絆も回復でき、いちばん幸せな時代が戻って来る”との妄念に取り憑かれて正常な判断力がなくなったと見ました。過去の幸せを象徴する“何か”にすべてを仮託して、その奪回に血眼になり、新規に別なものを構築するほうに気が行かなくなる。もちろん“何か”は不可逆的に失われたものなので、奪回できるはずもなく、挫折感と徒労感、閉塞感がいや増すばかり。不幸の拡大再生産、デススパイラルですな。笑ったあと、そこはかとなくコワ寒い。

澪が「晃ちゃんをもう一度産む」という狂信的なレトリックまで使って晃一にこだわるのは、角度をかえれば将士(眞島秀和さん)の、自分の妻としての価値の評価が“跡取りになる男児を産み育ててくれている”という、一点にかかっていたからとも言えます。少女時代から、才気でも色気でも姉に後れを取り評価が低いと感じていた澪にとって、“結婚して子をなし夫に喜ばれた”ということだけが姉に勝てた項目だから。

「晃ちゃんを事故に遭わせてしまったから、将士さんにとって私は価値がなくなり、真帆に奪われてしまった」「晃ちゃんをもう一度産みさえすれば将士さんも私を見直し帰って来てくれる」という妄想が、いまの澪を衝き動かしています。

第一子の莉花(伊倉愛美さん)が生まれたときは跡取りにならない女児ゆえに、さほどの関心も親バカぶりも見せなかったという将士。将士も“家系の継承”という呪縛にとらわれ人生を誤った哀れな男です。これまた失礼な連想ですが、現在の日本皇室、特に東宮ご一家のことも思い出されました。

コメント (2)
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