イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

機っ械至極

2013-07-29 00:37:05 | 朝ドラマ

 ちょっと前に『あまちゃん』の宮藤官九郎さん脚本の魅力を“思い込み”と書きましたが、汲めども尽きぬ無敵の厨房(ちゅうぼう)思い込みパワーで宮藤脚本、思いがけないところでどえらい遊撃砲炸裂しますな。聞いてるだけで、オイッ各方面大丈夫か!?と緊張感が走ったりする。 

26日(金)放送の101話では、太巻こと荒巻太一(古田新太さん)が1985年録音の、『潮騒のメモリー』鈴鹿ひろ美オリジナルヴァージョンのカセットをダダーと流して、ミズタク(松田龍平さん)を七転八倒させた挙句「いまなら機械でどうとでもなるが、25年前だ。どうにもならん」・・・。

うひゃー言っちゃった。太巻は女の子アイドルプロデューサーで振付とともに作詞作曲もこなす、プロダクション社長でもあります。「機械」って言っちゃった~。アイドルの歌は、普通に、たまさか、少なからず、「機械でどうにかしてる」ものなんだ、とカミングアウトしちゃったようなものじゃないですか。いいのか、業界的に。アメ女的な、限りなくアメ女的なアイドルグループを手がけているアノ事務所、アノ業界人から「寝た子を起こすな」ってクレーム来たりしないのか。寝た子を起こすなってことはないか。

 

しかもなんと言うか、「機械」って言葉の使い方がもんのすごく短兵急で、鈍器のようなそのものズバリで、嬉しくなっちゃいますね。宮藤さん、演劇・エッセイ活動の傍らバンドで音楽活動もしていて、CDも多数出し紅白歌合戦にも出場していますから、外れた音程を外れてないように聞かせる録音技術なんかとっくに承知だと思うんです。そういうときに活躍する機械の名前(なんとかライザーとかなんとかタイザーとか言うんでしょうな)や、技術・技法の名称を、音楽で付き合いのあるお仲間に訊くとかしてセリフに入れ込まず、生粋の音楽畑出身設定の太巻にあえて「機械」というチョーざっくりした表現をさせました。

 

このセリフの中の「機械」というワードの無骨なパワーはすごい。『轟轟戦隊ボウケンジャー』における大神官ガジャ様の金字塔的セリフ「ワシにいまどきの機械のことを訊くなー!」を想起させるものがあります。「機械」に“文明”“洗練”“便利”とか“叡智”“進歩発展”といったプラスの要素、輝かしい要素を何ひとつ見ていない。プラス要素を全部剥ぎ取った、身もフタもない“人工の、わけわからんこしらえもの”という、まるはだかのイメージの「機械」。

 

 逆に言えば、音楽畑人でありながらこういう、洗練と真逆の言葉づかいで自虐回顧トークをする太巻が、ちょっといい人かもと思えて来ないこともない。いまのところやってること真っ黒、ピュアブラックですけどね。平成芸能界版の山椒大夫かという。早く言っちゃえ「あの頃、本当は春ちゃん(有村架純さん)が好きだったんだ、売り出してやりたいアイドルの卵以上の感情を持ってしまったんだ」って。「でもドル箱になった鈴鹿ひろ美に迫られて、君を切るしかなくなってしまったんだ。」違う?え?違うのか。いくらなんでも春ちゃんモテ過ぎか。

 

 しかし、劇中25年前=1985年時点で「どうにもならん」ものだったとしたら、それよりさらに10年以上前に、ホレ、ああいう破壊力抜群の感じでレコードを出していた、ホレ、銭湯を舞台にした国民的ドラマでデビューした人とか、同時期水着メーカーのイメギャルから男性誌人気ダントツだった、いまは大河ドラマにお母さん役で出ているあの人とか、少女子役出身で童顔と豊満バストが売りで“プリン”のCMで認知度を高めたあの人などは、実は、イメージよりは“結構歌えてた”部類だったのかもしれませんね。「どうにもならん」低機械力の時代に、アノ程度ですんでいたのですからね。 

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なんじゃーこりゃー

2013-07-27 00:46:49 | 朝ドラマ

 しかし鈴鹿ひろ美さん(薬師丸ひろ子さん)(@『あまちゃん』のスタッフも、社運を賭けた新人ならボイトレの基礎ぐらい仕込んだはずだし、“致命的な音痴”“デビューまでに矯正できそうもない”と判明した段階で、デビュー映画主題歌の“本人歌唱”リリースをあきらめようとは思わなかったのかな。ずいぶんと危ない橋を渡った、というか普通に事前計画がラフでワイルドですな。どうにかなるさと一同開き直っていたのかな。

ここで思い出しておきたいのは鈴鹿さんの年齢設定。若き太巻さん(古田新太さん)(ちなみに若くなくなっても古田新太さん)の言う通り、天野春ちゃん(有村架純さん)より“一つか二つ上”だとすると、1985年当時20歳かちょい出たところ。月河も似た近辺だからだいたいわかるのですが、この年代は感性純粋な幼少年期~自意識ピリピリな青春期が、どっぷり昭和、特に40年代仕立てです。

 

当時の女性アイドルスターは、大先輩の吉永小百合さんを筆頭に、映画やドラマに主演すれば何の恩着せもなく主題歌や挿入歌を歌っていました。青春路線後発の和泉雅子さん、内藤洋子さんもしかり。スターは歌うものだったのです。40年代後半のTV出身アイドル天地真理さん、浅田美代子さん、山口百恵さんなどむしろ歌が本業で、歌で記憶されている向きのほうが多いでしょう。強調する様で悪いですが、浅田美代子さんですら歌っていたのですよ。しかも売れていた。

 

中でも昭和48年デビューの山口百恵さんの存在感は一頭地を抜いていました。歌で惹きつけ、芝居で泣かせ、しかも溢れるアイドル性がある。芸能界はプロ集団ですから、歌がうまい歌手、演技の優れた女優なんかいくらでもいます。もっと言えば、美人さんで大根の女優だっていっぱいいた。それでも、それだけではなれないのがアイドルっちゅうものなのです。百恵さんより色白肌の子もいたし、脚がすらっとした子も、胴がきゅっとくびれた子も、澄んだ声質で高音の出せる子もたくさんいました。それでも不世出のアイドルになったのはちょっと浅黒めで日本人体形で、低めの深い声の百恵さんのほうでした。

 

鈴鹿ひろ美さんは、百恵さんデビューの年に小学校2年生です。大映テレビ赤いシリーズの頃は4年生~5年生。そしてあの三島由紀夫の同名小説を原作にした映画『潮騒』も4年生の頃、たぶん親と一緒に観たはずです。主題歌『少年の海』はもちろん百恵さんが歌っています。

 

芸能界を夢見はじめた鈴鹿さんの原風景に「スターは自分の映画では歌うもの」という刷り込みが出来たことは想像に難くない。この点、1986年の正月映画として『潮騒のメモリー』を企画したスタッフのおじさんたちの感覚も似たようなもので、「新進アイドル主演のアイドル映画だからアイドル歌謡で」と簡単にセットで考えていたのでしょう。「主題歌も歌ってもらうからね」のラフでワイルドなオファーに、「当然です、私アイドルスターになるんですから」とけなげにキラキラ瞳で答えた20歳の鈴鹿さんがいたのでしょう。

 

鈴鹿さんもねぇ。しかし、歌ってるうちに「なんか、お芝居しているときのようなシッカとした手ごたえが、あれれ?ないかも?」という感触ぐらいはなかったものかな。コンソールルームのガラスの向こうの凍りついた気配とか。そもそも、歌だけで客を呼べるほどではなくても、俳優さんって耳が良くて、かつ発声が出来ていなければできない職業ですから、ミズタク(松田龍平さん)のような絶対音感持ちがおびえて逃げ回るほどの超絶音痴で“演技力だけ抜群”というのもイメージしにくいのだがな。音痴自体演技、期待の新人たる自分を盛り立てるためにスタッフがどこまでやってくれるか見つめつつ「気がついていない」演技、ってことはないのかな。 

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だいじょゆうマイ・フレンド

2013-07-18 00:46:05 | 朝ドラマ

 「大女優」「ダイ女優」と記号のように劇中、名前を言われるたびカンムリつけられている鈴鹿ひろ美さん(薬師丸ひろ子さん)(@『あまちゃん』)ですが、BS時代劇で主役を張る一方、『おめでた弁護士』なんてツッコみカモンなタイトルの民放ワイドドラマシリーズも持っている(しかもpart14までいっている。年2~3作としても6年から7年は続いている)辺り、さほど圧倒的な“大”女優感もなかったりしますね。

 認知度、お茶の間好感度は日本現役女優界最上位クラスなんだけどハイグレード神秘感は薄い。きれいに言えば、お高くない。

 吉永小百合さんや富司純子さんよりは、ひと頃の池上季実子さんとか故・坂口良子さん的でしょうか。デビューがアイドルで、「そこからトントントンみたいな」(by GMT入間しおり)敷居の低いスタートだった芸歴が然らしむるところかもしれない。

 BS時代劇主演で民放SPシリーズ持ちといえば、仲間由紀恵さんなんかイメージすると近いかもしれませんね。仲間さんも振り返れば芸歴20年近いし、初期は女子アイドルグループに所属していたし、かなりメジャーどころからシーデー、もといCDも出していました。

 我らがダイジョユウ鈴鹿ひろ美さんは1986年に映画『潮騒のメモリー』で主演デビュー、その前からアイドル活動はしていたらしいので、仲間さんのいまから5年後、なんならちょっと片平なぎささん色も帯びてきたようなのをイメージすると、ちょうどいいかもしれない。

 仲間さんは沖縄県浦添出身ですが、我らが(だから誰らがだ)GMTの癒し担当:喜屋武エレンちゃん(蔵下穂波さん)も浦添。なんとなく“アイドルの郷(さと)”というイメージがあるのかもしれません。“浦”も“添”も水=サンズイが付くし。

 (まぁ比嘉愛未さんとか黒木メイサさん、満島ひかりさん、新垣結衣さん、あるいは安室奈美恵さん、遡ると南沙織さんなど、沖縄全体的に普通に美人女優、女子アイドルを量産していますが)

 我らが鈴鹿ひろ美さん、劇中現在(=2010年)のようなツッコみ歓迎フレンドリーなダイジョユウポジションに行くまでに、当然国営放送の朝ドラヒロインも経験済みでしょうな。もちろんオーディションではなく、井上真央さんや堀北真希さんのようなオファーキャスティング。

 地上波大河ドラマ単独主演もやったかもしれない。『皇女・和宮』とか。『細川ガラシヤ』とか。通年大河にするにはちょっと活躍期間が短い人物過ぎるか。アイドル女優向きの女性歴史人物ってそういうのが多いのですよ。『茶々』ならバブル期っぽく『CHA?』と表記したりなんかして。

 一度劇中で鈴鹿ひろ美フィルモグラフィー、フラッシュでいいから見たいですね。

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根氣です

2013-07-13 01:16:37 | 朝ドラマ

 我らがGMT47(@『あまちゃん』)のリーダー=ネギむすめ入間しおりちゃんを演じる松岡茉優さんは、かなり前から思っていたんだけど、ひとりだけ芝居が別格ですね。

 いやいや他メンも、ヒロイン能年玲奈さんを含めて全員、決してヘタというわけではないけれど、わりと“持ち前のキャラ”で、地でこなしているほうが多いと思うんです。そんな中、松岡さんのしおりちゃんだけが、若いながらしっかり“ドラマ”“芝居”をしている。

 東京篇になって若い女子の登場人物が大挙参入、絵ヅラは華やかになったものの、北三陸組の重鎮演技派が後退して、“ドラマらしさ”の求心力がちょっと薄くなったかなと思ったところでした。88話~89話(11日~12日)のアメ女総選挙発表→解雇決定を奈落でひとり見届け→水口(松田龍平さん)に連れ戻され→アユミ(山下リオさん)の辞退と経緯を知って→キレる、の二日がかりのくだりは本当に松岡さんのひとり芝居と言ってもいいくらい見ごたえがあった。彼女の芝居がしっかりしていたおかげで、いささか危機感不足に見えるアキのおかれた立場、ドツボっぷりがくっきりと浮かび上がった。

 厳しいんですよね、アイドルって。しかもユニットって。メンバーひとりが芸能人的にどんずべったりヨゴレになったりすれば、他メンがいくら無傷でも全体としてのテンションが沈んでしまう。一蓮タクオなんです。もといタクロウなんです。いやタクシーなんです。むしろタクアンなんです。かえってタクサンなんです。まあ何でもいいわ。

 アユミちゃんに「あんたが辞めて繰り上がりで(40位に)入るなんてそういうのイヤだから!」とキレたあと、「私こういうウザいキャラだから落ちたんだよね」と自虐。喜屋武ちゃん(蔵下穂波さん)が38位に入って「あと2人は絶対しおりとアーキーだから」と言い残して奈落を去ってから、その2席のひとつが発表され“自分でもアキでもなかった”とわかったときの顔の演技は特に素晴らしかった。泣いても笑ってもあと1席。良くてもアキか自分かどちらかは落ちることになる。「自分が入れますように」と祈ることは「アキが落ちますように」と祈るのと一緒になる。付き人として大女優(薬師丸ひろ子さん)に同行したり、ドラマでセリフ有りの役をもらったりで、本来なら緊張のピークで迎えなければならない路上お披露目ライブの最中でもあからさまに浮足立つアキを、本気でたしなめてきたしおりにとって、それは耐え難いことだったはずです。

 だから合宿所を後にし「短い間でしたけどお世話になりました」と水口に一礼したときは、ある意味解放された表情でした。アキか自分か、どちらか1人が残る結末でなくて良かった。アイドルを目指す以上、「自分が自分が」「前へ前へ」の姿勢でなければ明日はありませんが、自分はどうやらそうはなれないみたい。“夢”や“元気”なら人に負けないからアイドルになれる、天下取れると思っていたけれど、本当はアイドルに必須の資質って、自分と真逆のところにあるらしいと気がついた。後先考えずにアユミにキレることができたのは、アユミもまた“アイドルと真逆”の価値観の人だとわかったからかもしれません。

 ところでしおりちゃんが推してやまない埼玉は深谷名物=ネギ、よもやと思って花言葉を調べてみると“愛嬌”“笑顔”“くじけない心”ですって。なんとお誂え向きに、いまのリーダーに贈るにふさわしい花であることか。海がないくらい何だというのだ。海なら北三陸に売るほどある。ウニも売るほどある。

 大女優に「女優は無理、向いてない」とふんにゃり笑って引導を渡されたアキちゃん同様、「自分はこの仕事向いてないかも」と自覚したところから新たに始まるスタートラインも確かにあるはずです。憧れて、選んで、意気揚々と飛び込む職業より、「気がついたらそこに押しやられていた、抜けるに抜けられなくなっていた」それのほうがはるかに成功確率が高かったりもする。

 ネギの“ギ”“気”で、気とはあの独特の匂いを指すのだとのこと。“根”の部分を食べる“気”の強い植物だから“ネギ”。しおりちゃんぐらい“ネギ娘”の資格のある子は埼玉以外も全国探しても居ないと思う。

 松岡茉優さんはきっと今作のヒロインオーディションも受けていたに違いない。素朴なところもあるけどカンが良さそうで、男子っぽくビシッとして見えるところが“天野アキ”役にはちょっとね・・ということで、天然ふんわかな能年さんに主役を譲り、東京篇から参入のこの役に回ったのだろうと、月河はかなりの確信をもって妄想しています(妄想かよ)。

 今後の展開で、主役のアキちゃんが奈落から輝き出られるかどうか、半分は松岡さんのしおりちゃん次第なところがあると思う。いろいろあった年の大晦日で89話では埼玉の実家に帰省しましたが、年明け時制からのしおりちゃん合流がいまから楽しみです。再来週=17週(22日~)ぐらいになるのかな。

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ぬんすん四か月

2013-07-06 00:40:49 | 昼ドラマ

 しかし種市先輩(福士蒼汰さん)(@『あまちゃん』)、また、なして転職するに事欠いて寿司屋とな。

 花の南部ダイバーが東京スカイツリー現場に配置替えされて重度の高所恐怖症発覚→退社まではわかるけど、東京なら高卒潜水士資格持ち、南部もぐりを生かせるクチがいくらでもありそうなんですけどね。

 寿司→海産物→潜り、と連想がはたらいたか。アキちゃん(能年玲奈さん)から「ちっちぇー男!」とカツ入れられた現場が寿司屋だったこともあり、あるいは「天野が頑張ってる職場(=東京EDOシアター)の近くにいて、これからもちょくちょく叱ってほしい」との潜在意識が頭をもたげたか。本命ユイちゃん(橋本愛さん)への告白もリアスの前でキレられた流れのときだったし、ひょっとしたら先輩、“叱られたい男”“叱ってもらわないと本気出ない男”なのかもしれませんぞ。恋愛感情はいまだ地元のユイにあるにしても、先輩にとって別ベクトルから天野はなくてはならない存在になりつつあるのかも。いいぞアキ。目指せ男女の友情。

 それにしてもアキちゃん、アイドルとしてはいまだシャドウもかなわない下積みではありますが、憧れの大女優鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子さん)の付き人に指名されて、多忙ながらも行動をともにできるし、反省会ではタメグチで本音トーク。夜はGMTの仲間と晴れの舞台を夢見つつレッスンでいい汗をかき、大女優からは高級寿司の差し入れ。しかもその配達は再会した初恋の人。結構、贅沢な上京青春ライフではありませんか。

 それに対して地元に居残ったユイちゃんはいまどん底です。やっとお父さん(平泉成さん)がリハビリ退院、上京してアキと合流し全国区アイドルへのスタートラインに立てると思ったら、今度は介護疲れ?でお母さん(八木亜希子さん)が失踪。ここまで来るとユイちゃん、“妖怪・東京いけず”に取り憑かれてるとしか言いようがない。

 あるいはこちらも潜在意識的に“東京でのまだ見ぬ高レベルライバルたちとの、アイドルスペックガチバトル”を恐れ避ける心理が奥底にあって、それがコンマ1秒の上京ベストタイミングを逸せしめているのかもしれません。極端な話、親が倒れたって、いつかのように家出で飛び出すことだって、やる気になればできるのですからね。 天下の県会議員先生、お母さんも“根っからのサブレ(セレブともいう)”で実家にお金ありそうだし、介護ならカネで人にいくらでも依頼できるでしょうし。

 結局ユイは東京に出て、ワンオブゼムからアイドル戦線を勝ち上がることより、なんだかんだでいい人揃いで裕福でもある家族と、かわいいかわいいとちやほやしてもらえる地元の居心地よさのほうが、深層では好きなのだと思う。根っからの“持てる者”なんですね。

 でもまた、化けるに事欠いてメッシュに眉毛剃り込みにマンボズボンみたいの履いたヤンキーとは。アイドルを志すだけあって、ユイちゃんは本当に秘めたる自己顕示欲の人なのね。目立つ存在でいたい、注目されたい、別格でいたい。アイドルが“かわいがられる、愛される、好感度、憧れの対象”としての目立ち方チャンピオンなら、メッシュ剃り込みヤンキーはその対極のチャンピオン。

 ?上京してアイドル志願という、誰がやっても本来無謀な、勢いで一気に行かないとダメな行動を、親のアクシデントで立ち止まって客観的に考える時間ができてしまった。

 ?何によらず地元では同年代の他の女子に負けたことがないユイとしては、アイドル能力は自分よりずっと下と思っていたアキより遅れを取ってのスタートになるのも気が進まない。

 そして、これは伏線になる場面がひとつしかないのでユイ自身も気がついていないかもしれませんが、

 ?“お母さんのような人生(=若くしてキャリアを捨て田舎で家事に明け暮れる)は嫌”と殊更に否定していた母親が、自分が夢を掴みに行く直前を見計らったように失踪。“仇を取られた”とのショック。ユイも母親の愛娘として、“結婚し子を持つことを選んだためにあきらめざるを得なかった夢が、お母さんにもあったはず”との思いはあるのです。母の秘めた悔しさを蹂躙して手前勝手に夢。夢と言いつのってきた自分に、苦い一抹がないわけがない。 

 かつて自分も親の都合で夢が途切れそうになり、こちらは力ずくでおん出た経験のある春子さん(小泉今日子さん)のカラダを張っての(←服はともかくわざわざあばずれメイク)一喝で、ユイちゃんはもう一度本気を見せてくれるでしょうか。

 しかしまあ、鈴鹿ひろ美さんは退屈しないね。アキに言わせれば「芝居だけやってればいいと思う」、芝居以外見事に何もないおばちゃんですが、月河史上最高の昼帯ドラマ『女優・杏子』の杏子さんのふんわかヴァージョンみたい。 
 鈴鹿さんと、香月杏子さんと、西条玲子さん(@『エゴイスト』)の豪華三大女優競演スペシャルドラマとかあったら楽しそうだな。杏子さんが本妻、玲子さんが愛人、鈴鹿さんが・・・そうね、調停代理人の弁護士で(おめでたはナシで)。

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