イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

女は良いものだと書いて

2011-12-31 01:02:58 | 朝ドラマ

『カーネーション』の糸子(尾野真千子さん)のどこが好きって、リアクションがもろオヤジなところですね。優等生ヒロインがよくやるように、指を揃えて両掌をクチに当ててまんまるおメメになったりはしない。びっくりとか感嘆したときにはクチO字に全開して「おぁ~!」。呆れたり、嫌悪感を持ったら前歯を見せてクチを歪め、同じ角度で眉も目尻も捩じらせて“うへぇ”顔。

もともと小原糸子という人物が、かわいいキレイの二の線キャラではないように設定されている(←糸子とは別角度で毒舌な元同級生・奈津からは「アホアホ不細工!」「ブタ!」「どんだけ肥えとんよ!」と言われ放題)のですが、それにしても素では普通に和風美人な尾野真千子さん、ここまでヘン系の顔芸を隅々披露するのは若手女優として結構覚悟が要ったと思う。悲しいシーンでは絶妙のタイミングで両眼から大粒の涙を、絶妙のリズムでポロハラ流すし、尾野さんなら顔アップ命の韓国ドラマ俳優さんたちに混じっても顔面表現力において一歩も引けをとらないでしょう。

 顔リアクションより月河がいたく気に入っているのは、糸子が“いまそれどころじゃないよ”という状況で話振られたときのリアクション「あぁ!?」

紳士服店でのサエ(黒谷友香さん)との採寸室バトル中、大事な上客の機嫌をそこねてはと気が気じゃない店主(団時朗さん)が「…小原っ」とカーテン外から声をかけたときも「あぁ!?」。心配ごとありげでうわの空な八重子さん(田丸麻紀さん)を案じた千代さん(麻生祐未さん)が「糸子、八重子さんなぁ…」とミシン台にスリスリかがんで内緒話しかけたときも「あぁ!?」。

微量「んがっ!?」とも聞こえるこの「あぁ!?」、特別良家令嬢でなくても普通の育ちの女子なら、やれば必ずお母さんや幼稚園小学校の先生から「オンナノコはそうゆうお返事しちゃイケマセン」と叱られる、悪いお手本の筆頭のようなリアクションです。

「女は女として生まれるのではない、女として育てられるから女になるのだ」とか何とか(とか何とかって)言ったのはシモーヌ・ボーヴォワール女史で、「女はちやほやされ続けていないと、年齢に関係なくおばさんになる」と言ったのはウチの非高齢家族の知り合いですが、従ってどうでもいいのですが、女性は男性に比べて現実主義で即物的である一方、外見・見てくれとかイメージ、いわゆる“らしさ”に、非常に弱いのもまた事実でありまして、およそ一人前の女性になるまでに、“女らしさ”“オンナノコらしさ”という言葉の重さやわずらわしさに悩んだり苛立ったりした経験のない女性はこの世に存在しないと言ってもいい。男性が“男らしさ”を意識し、「男らしくあるべき、ありたい」と脳裏をよぎる何十倍も、女性は「女らしくあらねば」と念じたり、「女らしさなんてクソクラエだ」と憤ったりしているものです。

そこで我らが糸ちゃんです。糸ちゃんの「あぁ!?」リアクションを見ていると、男・女に関係なく、人間の原初型は「オヤジ」「おっさん」なんじゃないかという気がしてくる。アナタはお嬢さんですよ、嫁入り前のムスメなのよと誰かがしつこくしつこく手取り足とり、夜と言わず昼と言わず吹き込んで洗脳教育しない限り、人間はどこまでも、性根においてオヤジ。おっさん。

めでたく教育仕上がってムスメやお嬢さまになっても、そのまま終生行くのは女性の全体の2割くらいで、あと8割は、しばらく気を抜くとじわじわおっさんにリバウンドしていく。

糸子の場合、豪放と卑小、痛快とチンケの振幅のでかさがいちばんの魅力な善作お父ちゃん(小林薫さん)の、“おっさん言動”ノンストップショーケースを身近でリスペクト摂取してきたことが大きいし、他方では女親の千代さん(麻生祐未さん)が超天然おっとり、祖母のハルさん(正司照枝さん)もどっちかと言うとオヤジ肌のばあちゃんで、“ムスメ化”教育にあまり熱心ではなかった様子。同年代のオンナノコ友達がミス毒舌の奈津(栗山千明さん)以外皆無に近く、だんじりごっこも山崩しももっぱら男の子相手だったのも影響甚大だったのでしょうが、とにかく、何やかやとしぶとくねちっこく女性たちにまとわりつく“女らしさ呪縛”からの、糸子のきれいさっぱり自由っぷりは見ていて胸がすく。

それでいて糸子が、潤いも品もないバッサバサのカッサカサに見えないのは、ひとつには「女はおしゃれをしてこそ元気が出るもんや」という、ほとんど本能的な服飾センス。そして、「あんたの図太さは(戦争で精神が傷んだ)勘助には毒や」と玉枝おばちゃん(濱田マリさん)にばっさりいかれたりはしつつも、暮れに挨拶の品を近隣に配るときには縫い子たちに「目立たんように、外で(籠の被いを)開けんと、中に入れてもうてから開けんよ」と指示して送り出す、さりげなくきめこまやかな他者への目配りです。商人として客の身になってみるセンスでもあるし、むしろ侠気とか、スジを通す、義理人情といった言葉が糸子には似合う

“女らしさ”から自由であることが、そのまま“小原糸子らしさ”になっている。糸子はそのままの自分に惚れてくれた勝さん(駿河太郎さん)に入り婿になってもらい、残念ながらその勝さんが今週戦死してしまったので、“小原糸子”というフルネームのまま仕事も人生も全うしていくことになりますが、夫を持っても、失っても、子を持ち母となっても“名前が変わらない一生”という簡裁さもまた糸子に似合っています。

ところで、月河の実家母は、戦前も戦中も知る年代ですが、つねづね「子供は“子供らしい”、学生は“学生らしい”、娘は“娘らしい”のがいちばん」「すごい美人には誰でもはなれないけれど、学生なら学生らしくしていれば、誰でも感じよく見えるし、見苦しくない」と、自分に言い聞かせるように言っていたものです。当時は「自分らしさ」「自分らしく」という表現や広報宣伝はまだ存在しなかった。

“らしさ”は人を安心させもするし、ラクにもするし、窮屈にもやりきれなくもする。輝かせもする。

「あぁ!?」の糸子のオヤジっぷり、オトコ前っぷりは、いろんな“らしさ”に取り囲まれている自分を再認識させてもくれる。時代がどうであれ、社会の大勢や趨勢がどうであれ、“○△らしく”なければならないわけではないし、逆に、“○△らしからぬ”でないといけないわけでもない。言わば、抜け出してもいいし、抜けてからまた戻っても、とどまってもいい、“柔らかい鉄格子”のようなものではないかと思うのです。

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さらば糸しき女

2011-12-25 01:14:40 | 朝ドラマ

善作お父ちゃん(小林薫さん)、享年五十九。若死にすぎ(@『カーネーション』)。

 ヒロイン(糸子=尾野真千子さん)の父親役という、“必要だから配置する”ポジションに安住せず、柔と剛、頑と脆、尊と卑、義と情、人間の両面、“面”と言うより無限のグラデーションを展開して、「人間ってほんっとにこういうもんだよなぁ」の思いを登場場面の隅々で刻印、最後は、華麗なくらいあっさり退場してしまいました。ひたすら人格高潔で立派な“だけ”のお父さんも、ただただダメでクズな“だけ”のオヤジも、ドラマに要らないもんです。

高所にワレモノ壊れ物、引火物近辺に火鉢燃えさし、飲酒酩酊で温泉入湯。晩年と言っちゃお気の毒な若さでしたが、死去までの最後の数ヶ月は『生活“べからず”集』みたいでしたな。糸子手製の高級純毛国民服に内緒のお酒まで餞別に持たせてもらって、気の合う商店主仲間と満面の笑みで手を振ったのが今生の見納め。さすがに急すぎて申し訳ないと思ったのか、まさかの危篤の電報が届いた夜半、糸子の前にだけ現われたまぼろしのお父ちゃんは「すまんかったなぁ」とでも言いたげな、いくらかバツ悪そうなテレ笑顔でした。

祭り好きの善作さんがだんじり前梃子姿の上機嫌な遺影になって、長女の優子ちゃん(花田優里音さん)散髪事件を通じ糸子に洋装店が戦時を生き延びるヒント(=軍服縫製下請)を与えてくれたり、一抹寂しくも心強く見守ってくれている一方で、今週は、元気を取り戻してくれているに違いないと信じていた勘助(尾上寛之さん)が再出征、1ヶ月後にあっけなく葬列の遺影になってしまいました。大正2年=1913年生まれの糸子と同級生ですから、昭和19年=1944年の戦没時は31歳のはず。誕生日がまだだったら満30歳かもしれない。嗚呼いたわしや。

勘助の人生って、いったい何だったのでしょう。兄貴の泰蔵(須賀貴匡さん)は町内の花形=だんじりの大工方なのに対し、さっぱり似てない弟の勘助は女子の糸子にまで顔さえ見ればヘタレ呼ばわりされていましたが、それでも稀代のお転婆ゆえに糸やんがみずから窮地を招けば、不器用なりにフォローしようと一生懸命だった。悪い級友から万引き強要されているところに敢然と割って入った糸子が、さすがに身体能力の差で野郎2人がかりでボコられそうになると、決死の覚悟で吠えまくって撃退、傷ついた糸子をおぶって送り届けてくれる男気もありました。

中学でいじめられ就職先でも上司にしばかれのヘタレ体質ながら、鋼鉄の根性の糸子にはない繊細な思いやりがあり、奈津(栗山千明さん)が父親に急逝されて沈んでいるのではないかと案じた糸子が「饅頭でも持ってって元気つけちゃろ」と菓子店に買い物に来たときには「いつも張り合うてた糸やんが行ったら、哀れまれたと思ってかえってへこむ」と、へこみ慣れしている人らしい的確なブレーキをかけてくれたり。百貨店制服突貫製作、朝駆け納品の際も、いつの間にか現場支援、糸くず取りや納品運びに手を貸してくれる謙虚な気配りの人でした。

ドラマで普通、勘助のような“気弱でぱっとしないが心やさしい善人”キャラが出てくると、気弱ゆえカッコよくないがゆえに生活苦や、異性には片思いなどの寂しさも味わうが、最終的には身の丈なりの、心根にふさわしい小さな幸せをつかんでエンドになるものです。気の進まぬ出征だったけれどもまだ戦局浅く、誰もが勝ち戦を信じることができた昭和12年、善作ら父親代わりのような近所の大将たちにアゲアゲで見送られた戦場。地獄を見た4年の後、抜け殻と化して帰郷、糸子の善意の励ましにもこたえられないほど精神が損なわれてしまった。髪結ひの玉枝さん(濱田マリさん)に手ひどく拒否されてからも糸子は陰に陽に気にかけ、顧客からの現物支払いで得た野菜や食材を縫い子に届けさせて、パーマ機供出で結髪業がいよいよ立ち行かなくなる頃には、泰蔵の女房で勘助には義姉になる八重子さん(田丸麻紀さん)を洋装店に雇い入れてまで生活を助けてあげていました。強気の糸子も、最初の励まし撃沈が身にしみていますから、たぶん静かな橋架け役となってくれた八重子さんに、勘助のその後の様子など根掘り葉掘りは訊ねなかったはず。勘助も兄嫁さんの、洋装店への通勤姿から、「糸やんは相変わらず頑張って、頑張った分結果も出して、頼りにする人らの暮らしを支えているんだな」と頼もしく思い、そしてそうはなれない自分を結局侘しく感じていたに違いない。

勘助のような何の落ち度もない人物に、相応の幸せ結末を用意しない『カーネーション』の“ぬるいお約束徹底拒否”ぶりはいっそすさまじいほどです。無名の一般市民の生命を、落ち度の有無関係なくズタボロ蹂躙してやまないのが戦争というものですから、リアルといえばこれほどリアルな戦争惨禍描写はない。いまのところ、この時代設定のドラマにつきもののスタジオ撮影まるわかりな空襲場面や防空壕場面は一度もないのに、“負け戦まっしぐらの戦中日本には、空襲のないときも確かにこんなやりきれない空気が立ちこめていたに違いない”とずっしり思わせる。勘助が「赤紙来ちゃった」と糸子に告げる第8週最後の河原のシーン辺りから、全体的にいつも微量、西日のような色合いの画面になっている。照明さんのグッジョブです。ときどき昼1245~の再放送を出先の大画面TVで見てもやはりそんな色調なので、うちのTVが黄ばんできてるわけでもなさそう。

賑やかだった初出征時とは比べるべくもない孤独な再出征の直前、縫い子らをてきぱき叱咤する糸子の姿を物陰から見やって微笑み、胸に焼き付けて旅立った勘助の心情を“思いを寄せていた”と表現するのは行き過ぎでしょうか。同級生女子、可憐で守ってあげたい妹タイプではないし、さりとて高嶺の花のマドンナでもない。温かく優しくつつんでくれる母性愛型でもなく、炊事洗濯育児全般任しときな世話女房型でもない。もちろんお色気むんむんの性的要員なわけもない。大正生まれの男子が同じ年頃の異性を“翻訳咀嚼”し得るタームの、どこにも糸子はあてはまってくれない。

勘助が思春期男子らしくダンスホール踊り子に入れあげて家に給金を入れなくなると、糸子が客前で馬乗りになってしばくような仲でしたが、糸子の縁談と聞けば興味津々で様子を見に来て、祝言ではつい酒を過ごしてできもしない隠し芸を披露するなど“幸せでいてほしい”“糸やんは糸やんらしくいてほしい”と願う気持ちは、糸子が勘助に対して思う以上のものだったような気がする。男の自分より肝っ玉がふとく、物を恐れず馬力ばりばり、男だったらもうひとりの兄貴に欲しいような糸子に「でも、前に進む力が強い分、ちょぼちょぼの俺より抵抗がきついはず」と、助けにならないのはわかっていてもなぜか“見守り応援視線”になっていた瞬間が、きっとたくさんあったことでしょう。

自他ともにヘタレと認める男子が、男まさり女子に抱く気持ち、アニメやゲームなどキャラ萌えソフト繚乱の現代ならいくらでも表現のしようがありますが、“男は嫁を娶って養い守るもの”“女は夫に守られ従うもの”が社会通念だった時代に、言葉や行動であらわし伝達し、受信され受け入れてもらうのは途方もなく難しかったと思う。

若い男が、若い女へ好意を伝える最大最高の言葉は「嫁さんになってほしい」以外許されない時代知力体力、経済力すべて、相手の女性より歴然と上回っている自信がなければ言ってはならない言葉でした。それは違うなと思ったら、もう黙っているしかなかった。あのひとを好きだという感情は存在しないことにしなければならなかった。

だから勘助は最後に糸子に会わず、会話も、挨拶ひとつもせず去ったのです。幼い頃からあんなに打ち解け合った糸やんに、何で軍隊式の敬礼などして行けましょうか。

勘助は勘助なりのやり方で、糸子を思っていたのです。愛していたのです。そう思ってあげないと浮かばれない。勘助、誰より糸子を愛する資格のあるのは君だったんだよ。

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小火ボヤしてたら

2011-12-11 00:27:51 | 朝ドラマ

……引火性液体と暖房器具の過剰近距離はげに怖ろしや。めっきり冷え込んで空気も乾燥している師走日本の各家庭、各事業所に警鐘をも鳴らした今朝の『カーネーション』。小憎たらしいくらいタイムリーだなぁ。

ここ3週ばかりの間に、洋裁店から洋装店へと看板二度架け替えて店主になり、人妻になり、一児の母から二児の母になり、すでに三児めがお腹の中にいる糸ちゃん(尾野真千子さん)、一昨日(128日)はもう大将・勝さん(駿河太郎さん)に召集令状が来たと思ったら大陸出征で、ヘタすりゃ二、三日うちにも戦争未亡人になりかねない勢いです。

ちょっと目を離すと階段3段跳びどころか、瞬きする間にも踊り場回って次の階ぐらいの勢いで上昇しているので、意地でも目が離せない。瞬き禁止。帯ドラマはやはりこの速度感、テンポ感が命ですね。昨日の続きが今日、今日の続きが明日、二十四時間後には観られるのが帯の特徴であり最大の強みですから、何日も何話も同じ話題、同じ状況を引っ張っていると、みるみる生彩が薄れて行く。全国のお茶の間の視聴意欲の、潮のひく音がずぉーんざぉーんと聞こえてくる。過去にこうして右肩下がりにくすんで行った帯ドラマを、何作、何十作見せられたことか。

ひとつの件、ひとつの場面で視聴琴線をピリッとふるわせたら、念を押すでもなく説明するでもなく、水のようにさらりと次の場面、次の局面へ入って行く。水は低きに流るですから、このドラマの場合、“温まった気流のように”上昇して行くと言ったほうがいいか。ここはこれこれこうだからこんな感動なんですよ、こんな切なさなんですよと、ねちょねちょ恩に着せない。糸やんと一緒で、自己完結しているんですね。人に感謝されよう、ちやほやされようと思って汗かいているわけじゃない。あくまで自分の得心がいくように、自分の探究心、達成感が満たされるように働いていたい。料簡に邪念がなく、ヨソ見、脇見せず、真っすぐなドラマなんです。

ただ、上昇気流によどみがなさすぎて、レヴュー書いてるヒマがガチで無い。贅沢な悩み。このドラマの場合、いっそ、“ラクに伴走して同時進行でレヴュれるようになったら、スランプ、沈滞”とみていいのかもしれない。追いつけないことが快作の証し。帯ドラマとして贅沢にもほどがありますね。

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暮れ増す賃

2011-12-04 22:03:21 | 健康・病気

ルルアタックEX作戦はどうやら当たりだった様で、まる13回と翌朝1回几帳面に服用した後、めでたく鼻←→喉間のジャリジャリ、ガスガス感とはお別れできました。

「服むか服まないか迷ったら、迷うということは服みたいくらい調子が悪いということだから、とりあえず服んどけ」という非高齢家族のご高説に従って結果オーライ。月河本人も、熱が2日先にいきなり出てとっとと自然下熱した後から時間差で出てきた鼻喉症状でなければ、ぐずぐずしないで速攻行ったんですが。

同じイブプロフェン主配合の他の風邪薬ですでに試した銘柄=パイロンMKエスタックイブに比べると、12錠で済む分、錠サイズがかなりラージで“呑みごたえ”と言うか呑み込みごたえがありますが、やはり“対腫れ赤み”要員のトラネキサム酸と、“対鼻”要員のクレマスチンフマル酸塩とが“勝因”でしょうかね。この2成分が一緒に配合されているイブプロフェン製剤は他には無いのではないかな。

ただしもちろんオトシアナもありまして、まずはこの暮れますチンが、個人差はあるにせよ激しく眠くなります。花粉症持ちの人には親しい、アネトンカプセルとか、耳鼻科や皮膚科で処方されるタベジール、そのジェネリックのテルギンなどはコイツ製剤ですから、毎シーズンおなじみの感覚だと思いますがまーーーーーーー眠い。服用後1時間~1時間半ぐらいで、身体の芯から脳髄に向かって、津波のような、総てを包み込み押し潰すがごとき眠気が襲ってきます。もう、息吸っても、吐いても眠い。手を上げても下げても、横向いても後ろ向いても眠い。自分の脳神経のどこかから眠けが来るというより、果てしなき眠けの中に自分がいて、地球があって、宇宙があるかのよう。

クルマの運転、船舶の操縦、機械の操作は当然もってのほか。火の気、電気ガス、刃物、ハサミ包丁鉛筆削り、爪切り、一切合財言語道断。最初に服んだときあまりの殺人的眠さに死ぬかと思ったので、次の機会にはスーパーストロングなコーヒーをまず飲んでから服用してみたんですが、どうしてどうして、コーヒー1杯や2杯ぶんのカフェインじゃ、暮れます朕とは十両と横綱ぐらいの差があって秒殺の電車道。これを覚悟しないと、軽々とは服めません。

まぁ、眠け“発症”してから、たかだか30分から小一時間くらいで峠は越えますし、13回服用の2回めくらいからは、うっしゃーこれから眠け来るぞ、惨敗だけはすまいぞという戦闘体制がカラダにできる分乗り越えやすくもなる。

以前、耳鼻咽喉科のドクターに聞いた話ですが、このクレマスチンのほか、“ザジテン”という名で処方薬としても市販薬でもおなじみのフマル酸ケトチフェンも同様で、脳のドコだかにフマル酸に対する受容体っちゅうか、まぁその、アンテナの様なモノのある人は、いつ服んでも、少量でも眠くなり、受容体の無い人はいくら服んでもしかとは眠けが出ないものなのだとか。月河周辺だと、高齢家族のうちひとりと、非高齢組はアンテナレスです。もうひとりの高齢組は、服めば反応はあるようですが、「クスリでボーッとしてるんだか、鼻炎でボーッとしてるんだかよくわからん」と実に高齢者らしい感想。アンテナも錆びてんのかもしれない。

ルルアタックEXもうひとつの要注意点は、コレはまったく月河限定かもしれないんですが、♪クシャミ3回ルル3錠~のCMの頃の、トマトオレンジ色したルルゴールド錠の昔から、ルルブランドの風邪薬を服むと、翌日決まって盛大に便秘するんです。効いても効かなくても。嗚呼ううううう。

エスタックイブ他銘柄風邪薬や、ザジテン、イブA錠などでもこういうことはないし、トラネキサム酸も、暮れます賃も配合されてない、伊東ゆかりさん(『おひさま』の大人版杏子ちゃんで久々拝見しました)や由美かおるさんがCMキャラをやっていた頃のルルからの話ですから、主成分の問題ではなく、何かルルシリーズに固有の添加物的なモノが、大腸内の水分を腸壁に吸収せしめるのかもしれない。それでその、うううう、固化するのかも。

…ビフィズス菌とかLG21入りのヨーグルトでもしこたま食べてヌルッとさせて乗り切るか。あと、とろろ芋とかオクラとか、もずくなんかもいいらしい。ヌルッ。

……シモっぽい話ついでにもうひとつ。ルルアタックEX、鼻喉の粘膜をリカバリーするというビタミンB2=リボフラビンも配合されているので、錠剤の外観は白色にもかかわらず、かなり濃厚鮮烈に尿が黄色になります。チョコラBBなどB2製剤の滋養強壮剤やサプリメントを愛用している人なら見慣れた現象でしょうが、こちらは見た目真っ白で、しかも、熱があるときにお世話になる薬を服んでの鮮黄色なので、風邪じゃなくもっとワルい病気!?…と一瞬焦る人もいるかも。

……記事の終盤になって、まさかこんなに排泄がらみの話でかたまるとは。

……………(気を取りなおして)めでたく効いても、こんな案配で、困ったことは必ず三つや四つ付いてきます。できれば頼りたくないのが風邪薬ですが、やはり、シーズンには症状別に何銘柄かストックして、いよいよキツくなってから寒い中、遅くまで開いてる薬局を探して遠回りしなくてもいいようにはしておきませんと。

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鼻白む恋人

2011-12-01 00:31:28 | 健康・病気

原因不明の発熱は原因不明のまま予想通り月曜朝に終息。『カーネーション』BSプレミアムで始まる1時間前にスポン!と目が覚め、そうだ糸ちゃん(尾野真千子さん)一児めの母になったし…とごそごそ活動開始してから、「あ、そうだ熱あるかもしれないんだった」と思いなおして測定したらめでたく36.1℃。

なんだか20年前に時間が戻ったよう。せっかくの土日にドッと発症して、まる一昼夜“月曜朝の会議どうするよ…”と悩みながら、(いまは無き)『サンデープロジェクト』や『噂の!東京マガジン』の音声聞きつつ陰々滅滅と寝込み、さて月曜朝となると一本早いバスに間に合う時間にきっちり覚醒さっぱり解熱という、まじめな勤め人が年に何回か決まってわずらう貧乏性熱を、まじめな勤め人じゃなくなって久しいにもかかわらず、わずらってしまったの巻。

ところが熱の後退と前後して、強烈に鼻と喉に来てしまいました。鼻と喉、というより、“鼻と喉の中間地帯”が火傷して火ぶくれになって狭くなったかのように、鼻から息を吸うと、スッと入ってこない。喉まで息が下がってくる途中でジャリジャリ、ガスガスする。しかも、クシャミを何回かすれば払拭できるような、なまやさしいジャリガス感ではない。

よくやる扁桃腺炎の、唾のんでも水飲んでも、卵酒飲んでも痛い喉痛とはだいぶ違う。それに何ゆえ、熱が下がってから痛み出すか。

非高齢家族がここでばっさり「それは、加齢のせいだ」。

ヤッコさんの言うには「年食ってから、突然慣れないスポーツや遠出をして、ふだん使わない筋肉使うと、翌日じゃなく、二日め三日めに筋肉痛が来る、アレと一緒だ」。

…なんかね、表現がえらく失礼千万な上に、無理やり話を単純化しようとしてわかりにくくしてる感じなのですが、非高齢組の説は要するにですよ、たとえば鼻と喉と熱を一度にひき起こすウイルスが身体に侵入して来たとしても、ピュアな幼子のように、鼻のセンサーも喉のセンサーも、熱のそれも常時フル全開なわけではない。最初に熱のセンサーだけが反応して、鼻喉のセンサーはそのとき休眠していて、遅れて反応するということもトシとるとあるんじゃないかと、そういうことを言わんとしているようなのです。

んじゃ、鼻喉に来た現在、熱が下がっちまってるのはどういうことよ?と訊いたら、「センサーが作動しても、反応を長続きさせる体力がないから、次に鼻喉方面のセンサーが働き出した時には、熱のほうはガス欠になってしまうのだ」と身もフタもない学説。

反応は遅くなる、反応したら反応したで長続きしない。どんだけ体力低下した高齢人なんだ月河は。

で、非高齢組の結論はというと、「熱と鼻喉、バラ売りで来ただけで、普通に熱と鼻炎と喉痛をともなう風邪のクスリをのめばいいのだ」。

こういうときヤッコさんはうらやましいくらい合目的的で、痛みには痛み止め、熱には解熱剤、鼻には抗ヒスタミン薬、お腹がゆるくなったら下痢止めと、いま消したい症状“専業”のクスリを迷いなく選んでパッパと服みます。服む前に、服んでいいのかよくないのか、服むにしてもコレでいいのか、アッチのほうがいいんじゃないのかとあれこれ考えてしまう月河とは対照的。

月河はつい、効いても効かなくても副作用どうなのと怖れがちですが、かつてクスリ関係の仕事(←シャブとかハッパの類いじゃないですよ)をしていたこともある非高齢組は、「副作用の皆無なクスリなんかない」「“副”作用ってぐらいだから、“本丸”であるところの効能のほうがずっと強く出て“副”作用はかすんでしまうはず」と割り切っているのです。

それにしても、熱と鼻喉の時間差攻撃の原因が加齢だと認めるのはいささか面白くないな。面白くない恋人だな。とにかくこの鼻←→喉間のジャリジャリガスガス感はとっとと追っぱらいたいので、“炎症のもと=プラスミンを抑え喉の腫れをしずめるトラネキサム酸”と“痛みのもと=プロスタグランジンにはたらき喉の痛みと熱に効くイブプロフェン”と“鼻水くしゃみのアレルギー症状を持続的に抑えるクレマスチンフマル酸塩”の輝ける三位一体・ルルアタックEX錠で華麗に粉砕。

プラス、これは月河の独断で“ニンニクの力SUPER”も豪快合体。ノンカフェインで睡眠にもウェルカム。さぁどうだ。…おぉ、服用1時間ほどで“ジャリジャリガスガス”が“シャリ、カス”ぐらいになってきたではないか。

このまま消滅退散してくれればいいのですが。

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