イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

フーテンのたびびとさん

2009-05-31 00:49:32 | 昼ドラマ

『エゴイスト egoist~』の久保田邦夫さんによるサウンドトラックCD、未だ購入検討中です。放送開始後ほどなく音楽通販サイトに挙がって予約を受け付けていたので、むしろ楽しみにしていたのですが、内容がアップされると、OP主題曲『誰カノタメニ』と挿入曲『ワスレナグサ』のインストヴァージョン込み16曲、演奏時間42分少々のヴォリュームで税込2,625円。今クールはドラマ本体が全40話でしたから、曲数が少ないのは当然とは言え、ちょっと食い足りません。

試聴できるサイトを探してみると、概ね“甘美に切ない曲”と“切迫感サスペンス風味”と、あとは芸能界というかショービズ的な雰囲気を意識したスケルツォ風のユーモラスな曲、この3種類に尽き、意外性や奥行きもこのお値段ならばもうひとつ。

 全体的に、“音で再現するドラマ”としてのサウンドトラックというより、“BGM集”といった感じの軽い仕上がり。1曲めに入っている“エゴイストのテーマ”の、お洒落な中にも、明里たちが最終話まで住んでいた古い日本家屋を思い出させる湿り気ある情緒など、好感持てる曲も多いのですけれどね。

←←左柱←←にもあげてある『愛の迷宮』のように、放送終了後1年以上経ってからそういえばあのドラマの、あんなシーンに流れていたあの曲、あの音色が…とむらむらと購買意欲がUターンして、買ってしまったタイトルもあるので、『エゴイスト』に関してもいずれそんな経路をたどるかも。当面、次クール『夏の秘密』の、岩本正樹さんによるサウンドトラックが、30曲収録で812日に発売予定との事で、そちらに資金を確保しておきたい気持ちのほうが勝っちゃってますね。『エゴイスト』音楽スタッフの皆さん、どうもすみません。今度は3ヶ月60話クラスのヴォリューム作でお会いできれば。

NHK『つばさ』、今日(30日)放送の、優花ちゃんママ千波さん原作・つばさ補作オリジナル童話『おはなしの木』はよかったですね。まさかNHK朝ドラで泣く日が自分にも来るとは思ってもみなかった。

真瀬(宅間孝行さん)と優花ちゃん(畠山彩奈さん)父子の絆回復劇より何より、急遽変更したつばさの読み聞かせ作品のために、ロナウ二郎(脇知弘さん)「いまから新しい効果音仕込むワケ?」とか不満そうにしながら、いざ本番始まるとソロバン丸山(松本明子さん)・隼人くん(下山葵さん)親子も浪岡(ROLLYさん)も、総出で手作り音効。この場面で“来て”しまいました。

「物語は、ベタでもハッピーエンドがいい。」とラジオマン(イッセー尾形さん)のナレーションがあったけれど、境遇や履歴や年齢性別や、シロウト玄人の力量差や、“ラジオぽてと体温”の微妙な差も一瞬越えた、ああいう戦隊的チームワークが、家族愛やらほのかな恋愛話なんかより、月河が好きなベタなんだよなぁ。

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松子デラックス

2009-05-29 23:56:54 | 昼ドラマ

『エゴイスト egoist~』を最後にまとめておかないと、次の作品に進めませんね。全8週の第4週からは、体当たり新人スタイリストだったはずの明里(吉井怜さん)が、実母で落日大女優の玲子(川島なお美さん)の引きでまさかの女優デビュー、物語の地合いが一変しました。

スタイリスト時代から滑舌もっちゃり加減が気になった吉井さん演じる明里が、人気ナンバーワン若手女優としてもてはやされる展開には、さすがに違和感を覚えた視聴者が多かったのではないでしょうか。世界的名声を誇る朝倉監督(森次晃嗣さん)からの劇場映画主演指名を受け、レストランで食事かたがた面接オーディションを受けた辺りから「ワタシは女優よ」スイッチが入っていったのはなんとなくわかりましたが、まぁ、地味に暮らしていたそこらへんのポッと出の若い娘が、何かで俄かに有名になって、行く先々でちやほやされるようになったら、多かれ少なかれ年中テンパって様子様子して、あんな感じになっちゃうかもと想像できなくもない。

芸能界ではない一般人の世界でも、物心つくころからずっと「美人」「可愛い」と言われ慣れて育った女の子は、いい年になればちやほやに対処するすべを身につけていますから、逆に物腰もファッションもさっぱりと自然体なことが多いですが、ずっと地味で来て、進学・転校や就職転職、あるいは人為的なお直し、ダイエットなどを機に突然“モテデビュー”してしまった子だと、“可愛くしていることに目的があって、それが露呈している”ため、明里ほどではなくても何かにつけスタックアップして、年中鎧兜まとって痛々しいもの。明里のキャラクターはそこらへんをカリカチュアライズしていたのかもしれません。

ただ、明里が振りかざす“女優のプライド”は、女優としての名声と引き替えに、実娘の自分を乳飲み子のうちに捨てた玲子への面当てにほかならず、演技のプロとしての自負や誇りではないので、大きな声を出してツンケン高飛車に振る舞えば振る舞うほど虚勢が透けて見えなければなりませんが、そこらへんの描写がちょっと物足りなかった。とにかく明里と玲子と香里改めKAORI(宮地真緒さん)、あとイノセントスフィア出身のトモ美(一青妙さん)以外女優がいないような芸能界ですからね。

 多少難があってもこのドラマを視聴続けようと決めた最大の動機は、2ヶ月クールに短縮したことの是非を見届けたいと思ったからですが、この点、残念ながらもろ手を挙げて是と言える出来ではなかったように思います。46ぐらいで非が上回った気がする。

ひとつは放送期間中にも書いた通り、テンポ感や見逃せなさを追求するあまり、短い期間、少ない話数にエピソードやイベントや見せ場を隙間なく詰め配置し過ぎ、たとえば前述のように明里が“女優たること”に異常に執着し出した動機や過程など、人物の重要な心理のあやが駆け足になってしまったこと。

特に、スペシャルドラマ大ヒット以降の明里の“女優の現場”での階段の上がり方、成長と図に乗り方のプロセスを、劇中劇や共演者たちとの衝突などで描き込めなかったのは、予算の関係(劇中劇用のセットやロケ現場を構成する手間と費用)もあるでしょうが、やはり話数、時間の少なさの弊と言わざるを得ない。序盤の西条玲子主演『シングルウーマン』やスペシャルドラマ『絆』にはちゃんと劇中劇シーンがあったのに。

これに付随してもうひとつ、昼帯ドラマに無くてはならない“障害の多い恋愛”要素がきわめて希薄になってしまった。玲子亡夫の連れ子・俊介(林剛史さん)と明里が、TVのこっち側から見て“結ばれてほしいお似合いのカップル”になかなか見えなかったのです。俊介が、禁断の関係が続いた継母玲子と明里、どちらをより切実に愛しているのか、ドラマ的に長いことはっきりしなかった上、玲子の俊介に向ける気持ちも“継母としての親心”を原点に、社会的にはタブーであっても決して醜悪に否定的に描かれていたわけではないので、一層明里⇔俊介のベクトルは薄くなった。

「自分が玲子の娘」と偽って玲子のもとに入り込んだ香里の「兄ちゃんじゃヤだ、恋人になりたい」というストレートな求愛のほうが、見ていて「感心しないけど、このコ一生懸命だよな」と気持ちを沿わせられました。最初はワイドショー野次馬的好奇心、そのうち“セレブ御曹司”という合コン的リスペクト、やがて「明里のことが好きなのね、私負けない、奪ってやる」と競争心にも火がついて、気がつけばマジ惚れ…という過程は、香里と俊介じゃファッションセンスや立ち居からしてお似合いとは到底言えない、ひとり相撲な分、一層説得力のある片思いぶりだったと思う。

明里の場合、俊介との一夜きりで終盤は妊娠してしまったので、気持ちが俊介よりお腹の子に行ってしまったこともあります。“子を捨てない”は実母玲子を越えるために、明里としてはどうしても譲れない項目。よって男としての俊介のほうも蚊帳の外気味になった。

明里に先んじて、玲子のほうが先に俊介の子を身ごもり、産む決心をした矢先に、俊介の身を案じるあまりの事故で流産の悲しみに耐えていることも、明里の影を薄くしました。全体的に、玲子が“ヒロインの親世代”扱いでおさめるにはあまりにヒロイン性を持ちすぎている(公式トップや宣材写真でも明里・香里との3ショット)ためにぼやけた箇所が多い。2世代にまたがる3人ヒロインをコントロールし切るについても、840話では容量不足だったかもしれない。

俊介役・林剛史さんについては、月河は本当にほとんど『デカレンジャー』のホージーだけの印象だったので、大企業御曹司で大半スーツ姿になってみると、こんなに身体の線の細い人だったとは思わなかった。身体だけではなく、顔もホージー時代より細くコケてませんか。『デカレン』ボーイズ写真集での個別インタビューで、子供の頃はお腹が弱くP(ピー)ちゃんと呼ばれていた…との話も読んだ記憶があり、2ヶ月放映とは言え昼帯の過密収録もこたえたのではないかと思いますが、ヒロインを救い幸せにしてあげてほしい王子さまというより、“強いエゴイスト女性たちの被害者”なイメージのほうが終始強い役になってしまいました。関西人の林さん、ホージー的な“スカしすぎて可笑しい”味がもう少し出て、ユニークな相手役になるかと思っていたのに、昼帯のプロデューサー陣は、ヒーロー俳優さんをキャスティングしても、当のヒーロー作品を観て演技や持ち味のチェックなどしないのかな。

 もうひとつは、話数ゆえに“物語世界を広げられなかった”ことがあります。女優が3人か4人しかいないような昼ドラサイズのフィクション芸能界でも、“芸能界と縁のない世界”の存在や呼吸を合い間に入れ込むことで、ドラマ世界にパースペクティヴが生まれ、立体感ができる。

同じ小森名津さんメイン脚本の『女優・杏子』01年)では、杏子が活躍したり干されたりする芸能界の対極として、杏子の俄か付き人となった介護ヘルパー受験勉強中の智子と、マル暴刑事のその兄、という世界を提示しました。

杏子が暴力団関係の店にイベント出演していたことで事情聴取される際、智子の頼みで兄が助言を与えたり、智子のヘルプ先の老夫婦が往年の人気女優と駆け落ちしたカメラマンだったり…と、智子世界絡みのエピは、杏子さんの活躍浮き沈みに比べれば概して地味で退屈なくらいだったたけれど、この世界が描出されたおかげで、杏子とライバルの神崎かすみ以外ドラマ主役級の女優いないみたいな昼ドラサイズの芸能界でも、それなりのリアリティを持ち得た。現実味のあるフィクションのためには、冴えないエピも退屈も、中だるみも必要なのです。

今作『エゴイスト』は、出てくる人物が全員芸能人か、芸能界関係者・経験者。ひとりでも智子兄妹のような“過去も未来も芸能界と関わったことも、関わるつもりもない”人物を配し、生息させ、主要人物に接触させ、“一般人が垣間見た芸能界・芸能人”という視点を入れると、物語世界の奥行きがずいぶん違ったはず。840話ではそういう世界構築が無理だった。

しかし非ばかりではなく、是ももちろんあります。裏方役・Zプロの善場社長(藤堂新二さん)、Zプロ所属の社員マネージャーで、玲子担当から袂を分かって明里につく近松寿美子マネ(蘭香レアさん)がともに、世話する女優たちに忠実で、世間知をわきまえた常識人であり、ときに苦言を呈したり泣きを入れたりしながらも、テメエひとりの欲のために寝返ったり裏切ったりはしない“アンチエゴイスト”で一貫していたことが、物語をどれだけ観やすくしたかわからない。

この2人がこれだけ魅力のあるキャラになったのは、藤堂さん蘭香さんの演技力の貢献も大でしょう。善場社長は玲子の独立話でいったんは事務所をたたむ気だったのですが、たぶん近松の尽力でオフィスZ&Cとして社長に残留。最終話、近松が電話で「社長お久しぶりです!…えッ結婚するんですか!」との台詞があったのは、ここまで人物として血肉を持ち得た社長を、消息不明でフェードアウトさせるわけにはいかなくなったのでしょう。フィクションの人物というのは、こんなふうに予想外の膨らみを持つことがあるものです。

過去の罪と挫折に悶々として、暗くくたびれていた主婦から、いろいろあってすっかり働く女性の顔になって、マネージャーとして居場所を見つけた綾女(山本みどりさん)がクチパクで「だ・れ・と?」と近松に訊いたところでカット。惜しい。知りたい。たぶん脚本家さんも、書き進むうち、「この社長、きっと視聴者に愛されるはず」との手応えがあったのではないでしょうか。

 今日放送された最終話、出生にかかわる積年の疑問と謝罪を、自伝ドラマのアドリブ台詞でとり交わし、OK出ても「台詞の切り返しが弱い」「あそこは言葉より、一粒の涙のほうが視聴者の胸を打つ」とダメ出しし合う女優母娘…という可笑し皮肉さはなかなかよかったと思います。「あなたはなるわ、女優に」と明里に断言した玲子の目は、産みの実母ゆえか大女優の職業的勘か、結局慧眼だったことになりました。

 終盤になって全員なぜか“いい人”化、さんざんやりあってきた恩讐をあっさり越えちゃう、というのはよくあるパターンですが、今作は、最終回前までに、“恩讐・愛憎、越えてもおかしくない”きっかけが、まあまあちゃんと描かれていたほうでしょう。

 挙げたコブシの下ろしどころ、下ろしどきがわからない女性軍に代わって、香里実父でもあった世界の朝倉が、「他人を妬んだり恨んだり、陥れようとしたりせず、まず自分を磨き、自分を輝かせることだ」と、“エゴイスト”の対極の人生訓を垂れてかっこよく逝きました。森次さん、『仮面ライダー剣(ブレイド)』でも、終盤彗星のように登場して、みるみる役柄的重要度を増し、美味しいところを掻っさらって逝った記憶が。こういうポジションの俳優さんになっていたのだなぁ。

 劇団をたたんで明里の座付き脚本家になった榊(西森英行さん)もディレクターデビューしてるし、もういっそ俊介坊ちゃま命の、郷田家家政婦松子さん(川口節子さん)も、家政婦紹介所の所長ぐらいになってそうな勢い。あの女性軍なら、今度は明里と俊介の愛娘・愛ちゃんの奪い合いを始めそうな気もしますが、それはまた別の話、ということなんでしょうね。 

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ボスの機嫌のいい時に

2009-05-28 00:05:51 | 本と雑誌

本日発売のTV Bros530日号、掲載番組表は5.30>>6.12.)、表紙の追悼・忌野清志郎さんは本当にいい顔をしておられますね。

この顔を全面に載せるために、いつもの同誌表紙の、ごちゃごちゃおもしろカオスレイアウトな特集リードとか見出しはいっさい無し。TV、ラジオでも追悼特集組んだ媒体は数多かったけれど、音楽専門誌でもないのにこれだけドアタマから表敬した雑誌は他にないんじゃないでしょうか。

…こういうことをブログで書くときは画像ぐらい載せるもんだよとブチブチ言ってるそこのアナタ、そうアナタ!今日発売ですから、いまからでも遅くはない、直近のコンビニに飛び込んで、手に取って有難く拝みたまえ。そして特集記事熟読用、番組表チェック用、友人知人に布教用、永久保存家宝用と、最低4冊は買うよろし。1210円、4冊買ったって840円、向こう1ヶ月“週一はビール禁”を貫けば浮く金額ではないか。

月河は“向こう4ヶ月、月一禁”で浮かせようと思ってるわけですが。繰り延べ繰り延べ。

いや、別に東京ニュース通信社の回し者ではないんですけど、追悼アピールこんなに直球だと、ものすごくスペシャル感があるんですね。念を押すようだけど、音楽・ロック専門誌ではないのだし。

清志郎さんの御尊顔アップを改めて眺めるに、顔のあの位置にヒゲ立ててあんだけ似合う人も稀有ですね。成人男性なら、生やし伸ばせばヒゲは必ず生えるし伸びますが、ヒゲの伴う顔のパーツ数ある中で、ほかは剃ってアソコだけ伸ばそう、立てよう、保とう、と考える人は少ないと思います。

考えて、かつ実行する人はさらに少ないし、実行して、かつ似合う、絵になるサマになる人はさらに少ないと思う。そこらの一般人がアレ、やってごらんなさいな。怪しいチャイニーズマフィアにしかなんないから。

媒体で訃報に接して、「忌野清志郎(本名・栗原清志)さん(58歳)」に、あぁ本名も、年齢もあったんだ、と不思議な感覚さえ持ちました。ナチュラルヘアメイクの近影だと、普通に日本人の、50代にしては若々しい男性なのに、なぜか国籍も出生地も不詳に見える。

ひょっとしたら清志郎さん、報道では、法的にも、亡くなったことになっていますが、「ちょっと、いままでとは違うどこかに行ってみてる」だけかもしれない。“この世”も“日本”も、彼にとっては同じ地平の部分集合なのではないかと。

彼が“ちょっと”どこへ行って留守にしようと、彼の音楽は不滅に残されています。

歌い続けていれば、我々も、“ちょっと”彼のいる場所に行けるかもしれません。

ところでそのTV Bros今号、裏表紙、編集上言うところの4ね。これも「おぉ!」でした。もちろん、広告なんですけどね。具体的に言えば、保健機能食品のガムです。プロ野球チームも持ってるあの会社の広告です。

1の清志郎さんに釣り合うように、コレ持ってきたのかな。あるいは広告のご本人が「表1がソレなら俺、表4出たいんだけど、そこんとこヨロシク、OK、ビッグ」とか“逆オファー”して……なんてことは…

島崎俊郎さんたち、ヒップホップのひょうきん族時代のネタでは共演してますしね……いや、自分がそう思いたいだけか。

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裸のボン‐ジョヴィ

2009-05-27 00:07:23 | お笑い

『爆笑オンエアバトル』22日放送回は、むしろオンエア8組中、下位の組により精彩があったように思います。

8385kbでみずから「ギリギリGEESE」とB’zの曲のような自虐りかたをしていたTHE GEESEで、実は今回いちばん笑かしてもらいました。

町工場の機械部品名や、製品名として、洋・邦楽のアーティスト名が続々出てくるというナンセンスきわまりないネタなのですが、新入工員として来た高佐が、出会いがしらなんだかさっぱりわけがわからないながらも、尾関に言われるままちゃんと対応できているというトボけた可笑しさがなんとも。

「“オレンジレンジ”って、あのバンドと関係あるんですか」「バンド?そんなのいるのか、関係ねぇだろ」「“ダ・パンプ”ってのもいるんですよね」「“制御レバー”ってのもいるのか」「それはさすがにいないですけど」「だったらただの偶然だろ」…ツカみのこのやりとりで完全に軌道に乗せて、観客を「“ただの偶然”…これはなんでもアリだぞ」「どこまでアリか見せてもらいたい」前のめりにさせた。

しかも要所要所で“TMレボリューション”=ものっすごい風が来る、“globe”を「出しちゃいけないやつ」、「スティービー・ワンダーの中にジェロが混じってんだろ、間違いやすいから気をつけろ」、あるいは「インジョン?」「インスタントジョンソンだよ、ジャンルが違うんだから、向こうに放っとけ」など、「あるある!」「そりゃそうだろ」と思わせる“無意味の中の意味”を織り交ぜるバランス感覚も抜群。

今回、似たような地合いのツィンテルがあまり笑えず、THE GEESEで笑えたのは、前述したように高佐の“巻き込まれ・なし崩し対応”演技に一日の長があったこともあるし、全面べたっと無意味と見せて、意味整合性ある要素を微量混ぜ、間隔をおいて配置する、このセンスの差だと思います。うまく言えないんだけどツィンテル、たとえば「きれいな夕焼け空…ゴルゴンゾラだなぁ」で、かりにゴルゴンゾラチーズが夕焼け空を思わせる橙色のチーズだったとしたら、ここは意味整合性のスパイスとして効いてくるのです。意味に踏み込まず、ただ語呂が似ているものを羅列しているだけだから、「結局駄洒落じゃん」と盛り下がってしまう。

ただTHE GEESE、惜しむらくは「この工場明日閉鎖なんだわ」~オチ、までの流れが激しく低調だった。結局やっぱり音楽かい!という反転の図式は正解なのですが、「のちのコブクロである。」より、高佐が「じゃあバンド名“制御レバー”にしましょう」でよかったんじゃないかな。事務所後輩(←前所属事務所での芸歴も入れると先輩らしい)の夙川アトムに、何か義理でもあって、声だけ出番作ったのかな。

7393kbブロードキャスト、前年度末に連続over 500で勢いづいて臨んだセミファイナルが、地元愛知収録だったわりには凡退(10組中7位)、年度替わりでどう出てくるかと思っていたら、豊川悦司さん似の、目が笑わないボケ吉村が暴走重ねて、黒縁眼鏡茫洋いい人キャラのツッコミ房野が振り回されるいつもの流れ。

「かていにえんまんまいもどる」のオチもきれいに決まっていたと思うんですが、300台にとどまった理由を無理くり探すとすれば、子供と遊ぶネタから浮気発覚ネタに切り替えた直後の「縄文式!」があまりに寒かったのが、後々微量尾を引いたか。「ウ○コ投げる、オ○ッコひっかける」のくだりもちょっと、下品と言うより雑に過ぎたかも。

07年後半以降、出来に凹凸はありながら連勝が続いていますが、前半でツカみ損なう(観客からすれば“ツカまれ損なう”)と徹底的に空回って終わる傾向は変わっていません。月河、個人的には、笑わない目でホスト風光りものスーツで(←これでも前より地味になったほう)、ドスをのんだようにボケ続ける吉村の“ノリつつ醒めてる”感じ、一応実年齢・学年先輩な吉村に「~でしょう」「~ませんよ」と丁寧語でツッコむ房野のまったり感、腰引け感、かなり好きなんですが。

同点6417kb朝倉小松崎ヒカリゴケ2組並びました。前者はギター合いの手つき刑事ドラマコント漫才、後者は叔父甥の振りから合コンネタと、ともに“いつもの感じ”でしたが、定番“カッコいい”甥のツッコミ国沢と、“かわいそう”な叔父のボケ片山、国沢が「オレもボケたい。ボケのほうが目立つやん」と振って、“合コンにおける立場を入れ替えてみる”という設定に持ち込んだヒカリゴケのほうがより笑えました。納得し合ってスタートした設定なのに、いつも自分が言っている「カッコいいでしょ?こいつカッコいいと思って調子乗ってるんですよ」を国沢から言われリアルにうろたえたり、こそばゆがったりの片山がキュートでした。

朝倉小松崎は、ギターボケの朝倉が髪型を変えて“大物感のないムッシュかまやつの末裔”みたいになってた。小松崎の身体的キレは相変わらず上々でしたが、他組と差別化する売りであるはずの、朝倉のギターの音のアピール力が、今回もうひとつだったように思います。音響の技術的な問題かもしれない。

ネタOA前の小松宏司アナの紹介フレーズ「コード(高度)な笑いはメジャーかな?」が地味に頑張ってましたね。山手線・京浜東北線と乗り継いだ犯人追跡の後半は、ななめ45°岡安が乱入してきそうだった。

今回、『爆笑トライアウト』(2日放送)勝ち上がり3組、プリンセス金魚クロンモロン山陽ピッツァがいずれも300台前半~200台の低評価でオフエアだったのはちょっと残念でした。敗者コメントではそれぞれ「やはり(トライアウトやライブとは)勝手が違う」「空気が違う」「すごい緊張した」と感想をもらしており、『トライアウト』で高評価された勢いで『オンバト』突破とはなかなかいかないものなんだなと、視聴者としても認識を新たにしました。

何より今年度から採用された言わば“小選挙区制”により、ある意味「会場1位以外はみな敗者」という厳格さが加わったことは確実に収録前や楽屋での空気を変えでしょう。

今回マシンガンズのトークを交えてあらためて解説された視聴者投票1位バトルも、早い話が1年度通じてやってみなければ、どの程度『オンバト』全体に貢献するかわかりませんね。ちなみに今回は、会場審査4位のが視聴者投票1位。

いつかここで書いたように、会場現場では「見慣れた常連さんの、見慣れたお約束持ちギャグがナマで見れた」という高揚感で玉が入る“顔玉”“名前玉”が一定率必ずあるのですが、もし視聴者投票バトルからの年間チャンピオン誕生なんてことになったら、「TVで観てた人の感覚がいちばん正解だった」ということになり、ちょっと嬉しいですけれどね。

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バスガス爆発

2009-05-26 00:31:35 | お笑い

22日放送の『爆笑オンエアバトル』での、前週視聴者投票バトル勝ち上がり・マシンガンズのトークで、彼らが「“オンバトの客のジャッジペーパーが腹立つ”というネタをやったにもかかわらず、まだ悪口書いてくる客がいる」とカメラ前でビラビラさせていたのが懐かしかった。2001年に地元収録で会場審査員をやったとき、収録入り前の要領説明で「こうやって1組分ずつ(短冊状に)切って、それぞれの芸人さんにぜんぶ渡しますから、心をこめて、忌憚無く書いてください」と、総合構成の井上頌一さんから教わった記憶が。

そうか手渡しされるのか、じゃあひょっとしたら、まだいまいちなポジションにいる贔屓のあの芸人さんが「01年○月のアノ会場のジャジペのひと言が刺激になって、ひと皮剥けた」なんてこともあるかも…と、次演順の組のネタ時間に食い込む勢いで一生懸命鉛筆走らせたものです。

あれから8年、まだこういう、手書き→出場芸人ごとに切り分けて→芸人ごとに束ねて→手渡す、というアナログな方法を続けているんですね。多士済々、群雄割拠盛り上がっている時期と、顔触れ内容レベルともにやや低調な時期、波はありつつも『オンバト』がネタ番組としていまだ魅力を失わないのは、この頑固ともいえるアナログ感かもしれません。

 それにしてもこの回、ノンスモーキン1505kbにはびっくりしましたね。07年・08年ともに、秋ぐらいまでは“もうひと押しあればチャンピオン大会”圏にいたのに、押さなかったのか押せなかったのか、進出メンバーが絞れてくるとアレ?なぜかいないという年が続いたので、各回会場1位のみ一発で進出決定のこの方式のほうが有利かな、と思ってはいたのですが、新方式2回めでこうもあっさり決まるとは。

 ネタそのものは、アバンタイトルで中尾が黒髪になっていたことにびっくりした以上のインパクトは、正直ありませんでした。この組、既視聴のネタは、ぶっぱじけたバカバカしさの“ジャンケン大王”“伯爵の館”か、飄々すっとぼけた指漫才かどっちかで、今回は中間を行ったか、終盤までは可もなく不可もなし。しかし「まだ終われねぇだろ」の後の蒲田行進曲で強烈に盛り返した。ここで会場の空気がきれいに解放されたのが、録画視聴でも伝わってきました。

 「脚本三谷幸喜」のオチもさほどの切れはなかったけど、ネタ中しつこく“野球部5人”を出し続けてきたことが「校長と教頭」のナンセンスさに活きたし、何より今回、彼らのネタ見せ演順が出場15組中11番手で、前の組が7番手プラスマイナス10番手クロンモロンまで、4組連続200kb300kb台前半でオフエアだったんですね。かなり会場に“いい加減笑かしてほしい”ガスが貯留していたはず。ここに点火燃焼させることができたのは、ご本人たち、特に中尾が回顧しているように「ラッキー」だった。彼らのネタの中ではさほどの破壊力と思えない、あのネタで505まで飛距離出たんだから、量として相当なガスだったはずですよ。一昨年だったか、5位オンエアの組が辞退し繰り上げオンエアということもあったし、地味に“持ってる”人たちなのかも。ここでツキを使い果たしてはほしくないですね。

菊池「チャンピオン大会ではトータル(テンボス)さんに重い風邪をひいていただいて…」は新型インフル騒動中にちょこっと不謹慎かなと思いましたが、収録時はまだ日本上陸してなかったのだろうな。

 演順効果と言えばトップバッターのアイデンティティ445kb2位。ネタとしてはボケの数もじゅうぶんだし、悪くなかったけど、2人ともそこはかとなく顔が怖いし暗いんだな。微笑ましくて当たり前の幼稚園先生と園児ネタを、ブラックに転じて笑いと成すほどの強力な磁場もない。

 以前のオンエアでも思ったのですが、もっと2人のキャラの違いを鮮明にしていったほうがいい。あと、ボケ田嶋の声、ところどころ“張らないにもほどがある”。ここを改善しただけで、たとえばツカみの「やなわらぱー」「得意中の6位」など、同じ単打でも、“球速”がかなり出るはず。「チョコチョコペンペンペン」の突如な意味のなさは、流れ星ちゅうえいの“突然一発ギャグ”「オッチョコチョコチョイチョイチョイ」を髣髴させるキレ、ヌケがあった。あの声をもっと使ってほしい。

3429kbツィンテルは、イタリア語と韓国語の料理名で台詞をかためた、知的に人をくったコントでしたが、気がつけば「要するにぜんぶ駄洒落じゃん」。

イタリアから韓国に行った段階で「料理名の情報がない国に行ってオチだな」と読めてしまった。イタリア篇での「丸ゲリータ!」韓国篇での「ユッケ~!」の挟み方タイミング、「この短時間で腕を上げたな」、イタリア篇での「ゴッドファーザー」が韓国篇ではすんなり「オモニ」になるなど、コント師らしいリズム感、言語神経も感じられたので、次回はこういう平面的羅列のネタでなく、もっと局面展開のあるネタを見たいところ。

それはそうと、この組のコンビ名を聞くと、脳内で自然に「…入っテル」と補完してしまいますね。

 4425kbは、ちょっとアンタッチャブルのM1でのネタに似すぎで損したかな。演りとしては最近のこの組の中ではうまくいっていたと思いますが、ここまでアンタッチャブルに似ていると、逆に“結局顔芸”という狭さが目立ってしまう。同じ“巨体系”でも、タイムマシーン3号関太は見かけるようになって4年ぐらいで慣れ拒否感が抜けたけど、長友は巨体プラス“キモカワ系”も入っているせいか、どうもいまだに、ネタ単体で楽しめないのです。

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