イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

ネジの開店

2012-06-24 20:24:56 | 朝ドラマ

いつも週終わりの土曜日に急展開がある『梅ちゃん先生』、先々週末(616日)はいきなり下村家お隣の安岡製作所に新入り工員くん参入。まぁノブ(松坂桃李さん)がアテにしていたネジ職人としてはドシロウト同然でまったく使えなかったのですが、この新入り・木下、ひょいっとどっかを向くと微妙な寄り目なのは何かで見たような…と思ったら、2008年の大河ドラマ『篤姫』以来久しぶりの竹財輝之助さんでした。

あのときは堀北真希さん扮する皇女和宮の許婚=有栖川熾仁親王役で、結ばれぬ両思いだったのに、今度は堀北さんのことノブに「カノジョっすか?」とかからかってますよ。ドラマデビューになった04年の『仮面ライダー剣(ブレイド)』の頃は中性的と言うか植物的にスレンダーな体型で、どう考えても着物での時代劇が似合いそうには見えなかったものですが、『篤姫』でお公家さんスタイルなら結構イケるなコレ、と見直してはや4年。お公家さん役なら今年は大河『平清盛』になんぼでもありそうなのに、昭和もの朝ドラのこっちに来ましたか。ネジ経験ゼロとわかって速攻クビかと思いきや、ノブと昼間っから酒飲んだり、ノブ旅立ち(?)後は親父さん(片岡鶴太郎さん)とも息子の契りを結んだり、結構なじんできているのでまだ出番ありそう。ここはひとつお銚子より、腰に手当ててビン牛乳の一気飲みしてほしいですね。

10週(64日~9日)の中盤、心中未遂で心を閉ざしていた患者・弓子(馬渕英俚可さん)が松岡医師(高橋光臣さん)への好意を梅子に打ち明けたのをきっかけに、生きる希望を取り戻してもらいたい…と及ばずながら(及ばなさ過ぎる)梅子が奔走しはじめた辺りから、『梅ちゃん』は驚くほど見やすくなりました。弓子「好みなの」梅子「ヘンな人ですよ?」弓子「人の自由でしょ」が良かったですね。馬渕さんの薄幸かつ控えめな色気の漂わせ方がナイス助演で、梅子の、翳りが無いにもほどがある天然さをツヤツヤと浮かび上がらせ、コッチが梅子に「いやアンタもヘンだし!」と思いっきりツッコめる機会をくれた。

よしそれじゃ弓子さんのためにと、結婚観を訊いて探りを入れた松岡が予想以上の朴念仁なので「この件はもう少しチョウキセンで行きます」、弓子に感触を訊かれて「いまいろいろとフセキウッテいるところです」、翌11週、教授から論文を要求されて「注射一本打つのもシクハックの状態で…」など、ここへ来て梅子が、“自分の図抜けたドジさトロさを客観視している”ような語法を使いはじめた。何と言うかね、“ドジでトロいコがこういうカタい物言いしたらおもしろいよな”とおおかたが思う物言いを、本当にしてくれちゃうようになったのです。「オトコってメンドくさいイキモノ」とかね。

視聴者へのサービスというより、これは梅子という架空のキャラを書く書き手の吹っ切れと見ていいでしょう。従来のNHK朝ドラ型の“誰からも好かれる、清純な努力家さん”ヒロインに若干筆が重かった作家さんが、自分で設定した“ドジ属性”を興がりながら書く余裕が出てきたと思う。それもこれも、松岡という触媒の投下が大きいのですが。松岡は、どうやら作家さんが、原稿用紙の上で(原稿用紙に書かないか、いまどきTVシナリオ)転がしているといくらでも勝手に動いて活きてくれるお気に入りキャラクターらしく、第9週での梅子との再会以降は、松岡が出てくるたび目に見えて画面が輝いている。

要するに『梅ちゃん』というドラマにおける梅子は、観客が新人医師・梅子の身になって「どうしよう」と困惑したり「くーっ」と悔しがったり泣いたりするタイプのヒロインじゃないんですね。梅子にそういう役割を求めると、万事ズレていたり寸足らずでイライラするだけ。

梅子は“ときどき親に連れられて訪ねて来ては、子供ならではのKY発言や、本人はオトナなこと言ってるつもりの言い間違い勘違いで大ウケを取る親戚の子なのです。「違うでしょッ!」と熱くなって怒ってもしょうがない。それは自宅へ帰ってからの親の仕事です。こっちは単なる、責任のない親戚なんだから、「○○ちゃんはいっつもおもしろいこと言うね~」と爆笑したり「そうかそうか、よしよしいいコだね」とナデナデしたりして、大人が自分を見て笑ってるもんだから子供もうふふキャハハと上機嫌。そんな頑是ない表情や仕草に癒されていればいいのです。

1話、昭和20年の終戦時に16歳だった梅子、放送中の昭和28年時制では推定24歳ぐらいでしょうが、このキャラが続く限り“永遠の幼稚園年少さん”で鑑賞してっていいのではないでしょうかね。朝ですもの、「とにかくカワイイものが見たい」「カワイイ可愛いとウケたい、目を細めたい」というニーズに全力でお応えする、そんな動画ソフトがあってもいいし、それがたまたまドラマ形式であってもいい。世界は梅子の天然発言、おっちょこドジにウケたくてウズウズしているのです。

…なんだか今日はカタカナオノマトペの多い記事になったような気がしますが、気のせいでしょう。気のせいということにしましょう。新装開店の安岡製作所ノブももっと頑張れ(記事タイトルを↑↑↑にしたかったから付け加えたわけではなくて)。今回はまさか跡取りの影武者ではなかろうし。

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お月さまの月河です

2012-06-16 23:57:20 | 朝ドラマ

NHK朝ドラのOPの、ヒロイン顔出し/顔出し無しから作品作風との相関性を考えてみようシリーズ」(シリーズだったのか)、続く続くでエントリを重ねてはや……はや……何回めだ。こんなに視聴済み作ごとに逐一書くつもりもなかったのですが、どこまで行きましたっけ?

そうそう、2011年上期の『おひさま』OPは堂々の井上真央さん顔出しフィーチャーでした。

…でしたが、しかし、白ドレスに髪を下ろして、眠りから醒めたような、天使っぽい、終始非地上的な表情で、役名の“須藤(丸山)陽子感”のあんまりないヴィジュアルだったせいか、放送まる1年未満のいま振り返っても、サウンドトラックCDのジャケなど手元になければ顔出しOPだったことを思い出せなかったりします。

そう言えば確かに“陽子”って「ワタシは太陽の陽子です!」と、名乗りは「海空花子です!」ばりに威勢が良かったわりに、女学生時代も教員時代も、そば屋嫁時代も、母親篇も、“この時代の、この境遇の女性でこの言動は有りか?”と微妙に首をかしげる、なんとなく地に足のついていない、綺麗に言えば天使的なヒロインではありました。

話題になった安曇野の野の花の押し花は文句なく美しく、背景色ともども朝の帯で毎日見るには最適でした。白トップス(下半身なし)で天使スマイルの井上真央さんも込みで、ヴィジュアルの目に優しいこととOP曲とのマッチングなら歴代屈指と言っていいでしょう。2000年代の熟年陽子(若尾文子さん)まで行ったから、“お花畑”も生花でなく、乾燥した押し花になったとも考えられます。

………いま、さりげなく失礼なことを言ったような気もしますが、気のせいでしょう。気のせいだということにしましょう。

放送途中、陽子が長女・日向子を授かって母親になった週から、OP曲に平原綾香さんによる歌唱つきヴァージョンが土曜限定で登場しましたが、正直コレは、無くてもよかった。太陽=母性、というメッセージを、後から取って付けてアンダーラインしたような作為性のほうをより強く感じてしまいました。

そもそもこのドラマで“母性押し”だったのは最序盤の陽子母=紘子さん(原田知世さん)の病没と、ときどき出てくる夢枕姿ぐらいのもので、まだ三つ編みセーラーの女学生姿のほうが嵌まる井上さんの妊婦姿や初産シーン、子育て物語からは、胸に来る母性賛歌は感じ取れませんでした。

3.11直後の、とにかく日本が落ち込んでいる時期の放送でもあったし、是が非でもメッセージ性を入れたい気持ちもわからぬではないけれど、ならば新曲の挿入歌を作って劇中で流したほうがよかった。渡辺俊幸さんによるOP曲が、懐かしさとフレッシュさを兼ねそなえて“朝ドラの玄関”として完成度抜群だったし、ドラマ本編の尺を極力削らないようにとOP総体45秒に圧縮するという控えめさも好ましかったので、歌詞とか歌唱で“混ぜ物”しないでほしかった。月河はいまだにCDプレーヤーのおめざめタイマーに、サントラCD1曲めのこのOP曲を使っています。

……よしっ、今日も1作分析し終わった(分析だったのか)。先週(=第10週~69日)〆の「日替り定食おいしいし~」の思い切り良い脳天気曝けっぷり以来、意外にもめきめき精彩が出てきた『梅ちゃん先生』に思いを馳せつつ本エントリはここまで。この項さらに続く。

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総理に愛称提案「のだだ」

2012-06-11 00:57:25 | 朝ドラマ

前の記事「続く」で〆といて、いきなり脱線転覆。

『てっぱん』OPの、“一般人多数を巻き込んで絵に出すことで、広く盛り上がってるかのような錯覚を起こさせる”手法って、先週、列島を席捲したAKB48総選挙にもあい通ずる、と言うか基本的に同根だと思います。

いや、彼女たちは“一般人”じゃなくまぁ芸能プロの息のかかったクロウトには違いないけれど、とにかくアタマカズ。圧倒的なアタマカズ。TV画面や紙面誌面の占有面積、媒体への累積露出量の総和で勝負するという行き方はまぁ、あきれるほど徹底していますな。先週だったかNHKの『MJ』でユニットごとにスカイツリー周辺食べ歩いたりしてるところを偶然見ましたが、スタジオに終結して歌い踊り出したらえらいことになるのな。人のカタマリ。ミニスカ女の子のゼリー寄せ、隙間なしぷるんぷるん状態。

しかも、総選挙はCD1枚買えば1票の投票権が与えられるという、なりふり構わぬ“数とりに行ってる”システムですから、贔屓の子をセンターにしたい“客”の熱に押し上げられて自然とオリコン上位独占する道理で、いやがうえにも媒体言及数ウナギのぼり。活字媒体のwebでも、見出しの10項目中5項目までAKBがらみ、という日もあったような。

スポーツ新聞も週刊誌もwebも彼女ら一色、TV映れば画面から溢れんばかりの顔顔顔、脚脚脚、となれば「こりゃあ世間で誰ひとり知らない者のいない、大変なブームが起こってるに違いない」と錯覚させるにはじゅうぶんです。

“質、内容はともかく数を集める”ことによるヴィジュアル迫力、情報迫力って相当にあなどれないものです。小沢一郎さんをどうこうは言えないわけです。

あと、10年以上前のモーニング娘。全盛期にも思ったのですが、女の子グループのメンバーや編成を“客”の投票で決めていくシステムというのは、宝塚歌劇団とファンの関係性ともかなり似ているような気がしますね。パッと見誰が見てもかわいい、アイドルスペックの高い子は相応の票をやはり集めるのですが、逆に、“アイドルとしては微妙”な子が、“それよりはもう少しアイドルらしい”子を上回る票をとったりする。判官贔屓と言うか、穴狙いと言うか、「人の行く裏に道あり花の山」みたいな、ここでも錯覚が生じて「ボクが投票しないと落とされちゃうかも」「ボクのチカラでメンバーにしてあげる!」と妙に熱い錯覚票を引き寄せるのですね。

ヅカファンの皆さんも、初舞台生の口上やラインダンスで、“衆目の一致する未来のトップスターさん”チェックはまず怠りないでしょうが、それとは別に「口上の順番は公演の最後のほうだったけど、ときどきとてもいい表情をしていた」生徒さんを見つけて、自分だけの贔屓にし、新人公演の配役を待ちわびて「路線に乗れるかも」とワクワクする楽しみがあるのではないでしょうか。よく知らないで書いてますが。

「あっちゃん」「ともちん」「まゆゆ」「たかみな」なんつって、やたらニックネームで言及されるのもヅカくさいですよ。あっちゃんは脱退したのか。「さしこ」とかさ。倒れるね。何か隠語っぽくというか、“わかってる者だけに通じる、わかってない人に対しちょっと優越感持てる世界”にしたい心理がはたらくんでしょうね。

昭和50年頃、長いことドリフの番組のお飾りだったキャンディーズがやっとブレイクした頃、「3人女の子がいれば、誰でもどれか1人ぐらい好みのタイプがいるから、トリオっちゅうのもいいもんだな」「だったらゴールデンハーフのほうがよかったじゃん」「でもあれよあれよって間に3人になっちゃったしな」なんて会話していたのが嘘のよう。ラン、スー、ミキとあちらもずいぶん愛称押しだった。

あれから30有余年が過ぎ、いまや女の子アイドルは、3人から1人でなく64人から選ぶ時代になったのです。この“物量でドーン”感。贅沢になったのか、薄まったのか。

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したいんですか?

2012-06-08 00:57:40 | 朝ドラマ

アニメと言えば、続く2010年上期の『ゲゲゲの女房』のOPは、現在BSプレミアムで絶賛再放送中なので毎朝再確認できますが、“客呼び込み係”としてはちょっこしズルい。て言うかズルいにもほどがある。

しげる(向井理さん)らしき古セーターの右手が描いたヒロイン布美枝(松下奈緒さん)の横顔が自転車をこぐリアル布美枝の全身になり、やがて生涯のパートナーとなるしげると夫唱婦随、ふるさとの野道を縦列並んで走りぬけて行く…という、字に書けば古典的な“ヒロイン顔出し、相手役つき”OPなのですが、リアル水木しげる先生と水木プロが、おなじみのオリジナル漫画キャラを気前よく“派遣”してくれたため、ヒロインカップルの周りに鬼太郎もいれば目玉親父もいる、河童の三平もいる、ねずみ男も寝そべってTV見たりしている、悪魔くんとメフィストフェレスもいる、一反木綿も猫娘もいて、額をあつめて布美枝たちの歳月が描かれているとおぼしき漫画本を読みふけっている。

昭和40年代~50年代頃の少年漫画やアニメに親しんだ世代なら、こんだけ懐かしく印象鮮烈なキャラが寄ってたかってOPで躍動して呼び込んでくれれば、そりゃもう生涯一度も朝ドラを観たことがなくたって“小屋”に足を布美……いやさ踏み入れてみますって。この作品が人気を得たことで、NHK以外の各局、各ドラマ制作も「持ちキャラ持ってる漫画家さんでドラマの題材にできる人いないか?」と2匹め3匹めのドジョウ狙いを考えたに違いありませんが、ダテに戦後の紙芝居時代から描いていまだ現役張ってる水木先生じゃありません。版元、放映権、TV局の垣根を超えてキャラ総結集させてくれるだけのチカラと心の広さを、クリエイターご本人も、その奥様もお子さんたちも揃ってふんだんに持っている稀有な例はこの先そうは出ないでしょう。本当にズルい。そして美味しい。

2010年下期の『てっぱん』は、てっぱんダンスで“一般人参加型”というOP新ジャンルを開拓しました(2010年以前は視聴してないので未知)。食、それも大勢でわいわい焼いて楽しむ“お好み焼き”というモチーフからの発想でしょうね。こういう全国の素人さん多数を巻き込んだ映像を出されると、“全国的に支持されてる、人気ドラマ”であるかのような錯覚が生じる。作戦としては悪くありません。応募して、自分たちの踊りをオンエアしてもらえた一般人の皆さんとそのご家族やご親戚、ご近所友人知人一同は首を長くして放送日を待ったでしょうから、延べ何千人かの『てっぱん』ウォッチャーを増やし視聴率をも若干押し上げたかも。

ヒロイン顔出しはなし…と思いきや、曲の最初で先頭で踊ってましたな。ロングショットで瀧本美織さんとわかるかわからないかギリギリのサイズ。「あれ、いま先頭にいたのあかりちゃんだよね?」「見逃した、明日確かめよう」「録画して静止画にしてみよう」と、これも地味に継続視聴の動機を与えてくれた。葉加瀬太郎さん作曲のふんわか優しいOPテーマに乗せて、結構したたかなプレゼンテーターでした。この項さらにさらに続く。

…と、続くで〆る前にひとこと。もう梅子(堀北真希さん)より松岡(高橋光臣さん)が“ヒロイン”でいいんじゃないか(@『梅ちゃん先生』)。

「聞きませんか?」「聞きませんよ」って。トロくさくて勘ニブでじれったい、そのくせ妙にせっかちなため、ひと粒で二度頼りない梅子が、今日ばかりは一瞬、ほとんどしっかり者の常識人に見えてしまいました。それほど松岡のピュアさが突き抜けている。ピュアさで突き抜ける、周囲を照射する、これすなわち“朝ドラヒロイン”の任そのものです。

脚本尾崎将也さんは、民放の連続ドラマですでにかなり当ててる人らしいですが、梅子のような少女ラブコメタイプのヒロインより、“浮いてる男”を書くのが得意で、書いてても楽しいのではないでしょうか。

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