イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

森あがっていきましょう

2014-05-13 21:24:53 | 再放送ドラマ

 旧聞どころかもう7年ぐらい前になります。NHKBS‐2(←このチャンネル自体すでに無くなってしまった!)で『怪奇大作戦 セカンド・ファイル』が放送されていた2007年春頃、シリーズ第3話『人喰い樹(じゅ)』を見ていて思い出した1985年のスペシャルドラマ『受胎の森』について、ここで1エントリ書いたことがありました。

 自分で自分のブログの記事を検索して確認するのも間抜けなので大体の記憶で言うと、「脚本の市川森一さんは最近はワイドショーのスタジオコメンテーター(←当然この番組も終了して久しい)としてのほうが顔と名を知られているが、月河はオリジナル『怪奇大作戦』の第8話“光る通り魔”と、この『受胎』と、2作の脚本をもって、市川さんの存在を正当としてあげてもいい」ぐらいのクソ生意気なことを吹いたんじゃないかと。なんかそんな気がします。違ったかな。

 

 その『受胎の森』が、BSCSのTBSチャンネルで今月22日(木)と来月6月14日(土)とに再放送されるとの情報がどこからともなく入ってきました。

 ともにPM9:00~の1時間50分枠なので前後編に分けてではなく、フル放送を2回やってくれるようです。

 きゃー贅沢。本放送は1985年の、確か新年度の歓送迎会・新プロジェクト立ち上げ壮行会ラッシュや、北国の遅いお花見などの“バブル期リーマン夜の生活”が一段落して、帰宅後ゆっくりTVを見られるようになった5月の、ちょうど今頃だったような記憶があるのですが、放送データを調べると6月だったようですね。

 再放送がかなうとなったら、当時のVHS録画、どうにかして保存しておきたかったなぁと、ますます切実に思います。いまのHDレコーダーのようにCMカット編集などはできない相談でしたが、当時はまだ元気だったSAISONグループの1社提供スペシャルでしたからCMの入れ方も纏まっていて、再生するたび早送りするのも簡単でした。

 最後のほうに新番組として桃井かおりさんと原田芳雄さん、名高達郎さんや佐藤友美さんらがご出演でバブリー感たっぷりな『夫婦生活』なんてドラマの番宣も入っていたのを覚えています。あぁ何故保存できなかったのだろう。

 しかもさらに悲しい事に、うちはCS環境にないので、TBSチャンネルが見られないのでした。30年近い歳月を超えて、やっと訪れた再視聴のチャンスなのになんということでしょう。

 前のエントリを書いてからの7年間に、ときたま“受胎の森”という検索ワードでうちのブログに飛んできてくれるかたもおられるようなので、可能なかたはぜひ忘れず視聴&録画してください。5月22日と6月14日ですぞ。保険として両方に録画セットしておくのだよ。天災、事件、訃報、TV放送界、何があるかわかりませんからね。

 前のエントリで記憶をたどってあらすじを書いてから、「VHSを処分してから年数がたっているので、妙な脳内リメイク・脳内編集をしている可能性もあるから、保存しているかたは“そうじゃなくてこうだよ”と遠慮なく指摘してください」と書いた記憶もあります。今般はさらにさらにご指摘のほどよろしく。

 とにかく本放送当時31歳の“元祖お嫁さんにしたい女優”竹下景子さんが美しい。“リケジョ”なんて言葉は当時はもちろんなかったのですが、「こんなに美しい人が独身で研究一筋なんて、絶対、相当なんかあっただろ」と登場即視聴者の心を揺らします。

 さらに同じく本放送当時36歳、1983年の『スチュワーデス物語』でプチブームを起こして以来バンドを率いて歌手活動もする絶好調、この85年にはNHK大河ドラマ『春の波濤』で準主役もつとめていた風間杜夫さんの、得意の“身勝手男”役ぶりも必見です。

 この二人の名前並びを見てピンときた、そう『ゲゲゲの女房』のイトツ&イカル夫妻贔屓のあなたも、絶対見なきゃ損しますよ。

 山岡久乃さん、緒形拳さん、故人となられた名優の、決して主役とテーマの邪魔をしない抑制のきいた助演ぶりも見どころです。この時代は本当にドラマがいろんな意味で本気でした。

 なんだかTBSとCSの回し者みたいな記事になってしまいましたが、これでこのドラマの視聴経験者が増えるかと思うと、自分が見られなくてもなんだか妙に嬉しくなったもので。市川森一さんも彼岸で喜んでくれていると思います。

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味噌をつける

2013-11-10 01:39:00 | 再放送ドラマ

 『ちりとてちん』の再放送がBSプレミアム715~の枠で先月から始まっているということは、4月から再放送されてきた『純情きらり』が終了したということで、遅きに失し過ぎですが一言いっとかなきゃいけませんな。本放送から7年も経っている作品にナンですがまーーーすがすがしいまでに尻すぼみなドラマでした。 

尻すぼみor右肩下がりというより焦点ボケ作とでも言ったほうが当たっているかな。あるいは羊頭狗肉。とにかく、音楽大好き少女(宮﨑あおいさん)の音楽苦学と開眼出世を前輪、味噌屋跡取り息子(福士誠治さん)との恋から発した女将(おかみ)業での成長を後輪に進んで行く物語として提示されたはずなのに、東京の下宿マロニエ荘が主舞台になった辺りから、音楽の話なんだか絵描きの話なんだか、めっきりわからなくなってきました。作中、音楽関係者に比して、絵描き仲間とその関連人物の数が多すぎ、出番も多すぎ、キャラも濃すぎる。これは脚本というより、明らかに物語世界の“設計ミス”です。

 

音楽学校入試1回目を、通りすがりのジャズサックス演奏に聞き入って遅刻して失敗とか、西園寺教授(長谷川初範さん)のピアノ教室にかよって来年を目指すものの高慢な金満令嬢に「貧乏人は音楽家にはなれないわ」とバッサリいかれたり、西園寺先生の即興演奏曲を「同じように弾いてみなさい」と言われて、るり子は「楽譜をいただけませんか」、達彦は「もう一度弾いていただければ」、桜子は速攻耳コピ、なんてところのくだりは、少女漫画的なベタの勢いがあってなかなか良かったのですけれどね。いつかお上品エリートピアニストになった令嬢岩見沢るり子(とっても嵌まった初音映莉子さん)を、スキルとともにジャズ魂もきわめた桜子が、才気煥発なアドリブ演奏でぎゃふんと言わせるようなリベンジ場面が来ると思ったのに、マロニエ荘と岡崎を行ったり来たりしているうちにるり子さんの存在などどこにも無くなってしまいました。

 

 味噌屋パートも、八丁赤味噌の沿革や由来、特有の製法や料理法を織り込んだエピソードがもっともっと出ると思ったのに、戦争たけなわの統制価格対策の逸話程度で、ベテラン俳優さんを揃えたわりにはなんだかふわふわしたまま、傾くでも潰れるでもなく操業が続きましたねえという感じ。

 

長丁場で話数の多い帯ドラマにありがちな、“走っているうちにゴールを見失った”典型例。第1話初っ端の、“味噌桶に落ちてしまうおてんば娘”、第2週冒頭の“新歓コーラス伴奏を即興ジャズアレンジで弾いて会場をノリノリにさせる女学生”という“羊頭”を、出したはいいけれどその後のメインストーリーにさっぱり活かせませんでした。実際、本題に入ってからの桜子はお転婆というより、無駄に人に気ぃ遣いで世話焼きたがりで、見守るほどにどうにも痛快さのない、ストレスのたまるキャラに堕しました。

 

そして焦点ボケの最大の原因は、マロニエ荘篇から参入してくる画家・杉冬吾(西島秀俊さん)という人物の、物語に占める比重がむやみに大きくなり過ぎたことでしょうね。これは言い切ってもいいと思う。ヒロインの心理に寄り添って視聴していると、音楽よりピアノより、味噌屋女将業より、なんともはや達彦より、トウゴさんに心を寄せている時間がいちばん長く、温度も高く、振幅も大きい。ヒロインが何を望んで、そのために何をどうするドラマだったかがさっぱりわからなくなったのは、大半、冬吾のせいです。

 

冬吾は東京でヒロインにダンスホールなど自由な表現の世界を啓蒙し、岡崎に現れては質実剛健な長姉(寺島しのぶさん)を奔放な言動で当惑させ立腹させ、のちに魅了する、現実離れしたキラキラした男性として、短期間存在感を強烈に放射して、さっと物語フロントから退くべきでした。

 

ヒロイン実父(三浦友和さん)が早期に事故死してしまったので、“ヒロインにとってのお父さんキャラ”をこの冬吾が担うのかと思っていたら、そうもなりませんでしたね。NHK朝ドラについてここで書くたびに何度も強調しているように、ヒロイン中心の天動説ワールドである朝ドラでは、ヒロインの物語の根っこに“親たちの物語”が骨太く据わっていないと話に心棒が無くなります。数字は別として高評価だった朝ドラ作品は、例外なく親たちのキャラに精彩があり、親たちの出自やクロニクルが陰にも陽にもヒロインの造形にしっかり寄与して、結果、ヒロインも精彩を持って動き、力のある物語を紡ぎ出しました。

  『純きら』は両親の物語を通り一遍の回想映像大恋愛結婚のみで済ませ、どんな人となりだったのか曖昧なまま母親(竹下景子さん)はドラマスタートからいきなり故人でナレーションにおさまっており、父親(三浦友和さん)は“娘を可愛がっている”以外何のキャラ立ちも発揮しないまま、“ヒロインと姉弟たちを経済的苦境におく”ことだけがドラマ上の役割だったかのように、あっさり事故死退場。親及び親世代の大人たちの現実的な重石が無いと、若いヒロインがどんなにきゃっきゃと躍動しても、すればするほど物語が薄っぺらくなってしまう。

 

ヒロイン相手役達彦のお父さん(村田雄浩さん)までが念の入ったことに早期に急死で、他方、ヒロインから見て“異性として意識できる”年代の男性人物が必要以上に多く、この辺も物語世界の設計ミス。結果、ヒロインが“うじうじなのに四六時恋愛体質”というヘンなキャラに見えてしまいました。

 

冬吾に関していえばこのドラマの原案本は文豪・太宰治の次女である津島佑子さんの、母方の一族をモデルにした小説で、冬吾のモデルは他ならぬ太宰その人ですから、扱いを軽くするわけにもいかず、結局、脚色が難儀過ぎて手に余ったということなのかもしれません。演じた西島さんはその場その場を無難にやりきっており、初期には桜子の頑固カミナリ祖父(もったいなかった八名信夫さん)に「あんた何かに似ていると思ったら、なまはげだぁ」と懐かしそうに歩み寄ったり、ツンデレ長姉・笛子さんとの婚約発表に、要らない接吻宣言をぶちかまして一同をドン引きさせたりなど浮世離れ系のコメディリリーフらしき場面もあって、あの路線のまま短話数で完全燃焼してくれれば・・と返す返すも惜しまれます。

 

味噌桶転落、次いでジャズ風ピアノで始まったのだから、最終話も、なんなら味噌桶の前で桜子がジャズ演奏をしながらこと切れて終了にしても良かったと思うのです。確かに無理やりかもしれませんが、首尾一貫感が出るでしょうに。いつの間にか代用教員で子供たちに音楽を教えることがライフワークになり、最後はなんと、病気をおして子供を産むのに命をかける話になってしまいました。何でこうなった。いつからこうなった。

 

長尺の連続帯ドラマ、せめてファーストシーンからラストシーンを透かし見ることができ、ラストシーンからファーストシーンを懐かしく振り返ってしっくり辻褄が合うような作りだけは心がけてほしいものです。でないと“連続して視聴する”甲斐がないではありませんか。 

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被ってる被ってない

2013-10-30 01:20:31 | 再放送ドラマ

 BSプレミアム朝715~の枠では、『ごちそうさん』に一週遅れで、『ちりとてちん』の再放送も始まっていますね。本放送が200710月~083月期。『瞳』の前作、『芋たこなんきん』の2作後。月河にとってはまるっと朝ドラ空白期にあたっていて、たぶん本放送では1話も見ていないはずです。 

いや、途中、もう後半戦に入った頃だったか、五木ひろしさんが本人役で出演されていた回だけはちらっと見たような。ヒロイン(貫地谷しほりさん)が高座で、五木さんが来場しているのに気づかず五木さんのモノマネ(似てない)を演っているという、それはそれは寒い場面。上方落語家を目指す落語好きヒロインという設定だけは知っていましたけれども「この程度か、浅っ」「笑えねっ」が正直な感想で、中途乗車でも続きが見たいとは思えませんでした。
 

月河よりはるかに朝ドラ歴が古い(何歴でも古い)高齢家族は、昭和43年放送で森村桂さん原作の『あしたこそ』でヒロイン(藤田弓子さん)の結婚相手役だった米倉斉加年さんを懐かしんで、序盤は本放送から結構見ていたようです。米倉さん『あした』当時は33歳、劇団民藝の気鋭の若手としてご活躍の頃。『ちりとて』本放送時には73歳だったはずですが、場面によって高校生の孫を持つ年相応のお祖父ちゃんにも、もっと仙人的な頑固職人にも、逆に青年のようにみずみずしい感性の落語ファンにも見える素敵なオールド俳優さんになられました。『鬼平犯科帳』の蛙の長助も哀愁と可笑し味にあふれていて良かった。しかし『ちりとて』では9歳の喜代美に「これからはぎょうさん笑え」と言い残して、1週で他界退場。
 

高齢家族も本放送のその後は、ほどなくチャンネルを合わせなくなっていました。「噺家に弟子入りするところ辺りまでは見てたけど、お弟子さんたちがみんな個性が強すぎて(見ていて)疲れる」と言っていたように思います。
 

今般の再放送で、真っ白な状態で改めてアタマから視聴してみると、貫地谷さんの若手(当時)離れした安定のコメディエンヌぶりと、母・糸子役の和久井映見さんの美声(地味ながら歌手活動歴長し)は秀でているものの、どうも、どのシーンにも“困りごと悩み事やトラブルの種を仕込み過ぎ”なきらいがあり、朝ドラとしては喉ごしスムーズさに欠けるかなと思えたのですが、喜代美が大阪に出てきた3週、転がり込んだ先の、伝説の噺家役で渡瀬恒彦さんが登場して地合いが一変しました。
 

なんだろう、このSP感。もといスペシャル感。有り難味指数の一挙ストップ高。俳優としての渡瀬さんが格段に贔屓なわけではないのですが、気がつけば、十津川警部でもなくおみやさんでもなく、世直し公証人でもタクシードライバーでもない、さらには警視庁捜査一課9係長でもない渡瀬さんを見るのはほとんど初めての月河がいるわけです。
 

気がつけば、ってどこまで何も気がついてなかったんだって話ですが、この10数年来、被り物をかぶるように、出来上がった“キャラ”に“扮して”いるのではなく、普通にドラマの“役”を普通に“演じる”渡瀬恒彦さんを、月河は一度も見たことがなかったという事実が、この『ちりとてちん』再放送で初めてわかったのです。こんなにキャリアの長い、主演作もヒット作も数々ありそのほとんどが豪華予算の超大作で、しかも兄上まで大物スター(=渡哲也さん)という強力な背景を持った、押しも押されもせぬ有名ベテラン俳優さんを、月河は申し訳ないほど長く放置してきたのです。放置と言って悪ければ、まともに芝居として鑑賞して所感を持ち論評することを忘れていた。平日昼間や土曜午後や民放BSの再放送で何十作も空気の様に慣れ親しんできた顔と声なのに、俳優としての渡瀬さんがどんな芸風なのか、演技は達者なのか大根なのか、明るいのか暗いのか、重厚なのか軽妙なのか、何も把握してないし、何のイメージも持っていなかった。
 

ですから第3週は草若師匠が何を言っても何をやっても、十津川警部もしくは鳥居警部もしくは夜明元警部補もしくは・・(以下略)がコスプレか、潜入捜査か何かしているように見えてしょうがありませんでした。
 

ヒロイン貫地谷さんの朝ドラ適性は文句ないし、屈折した暑苦しさと痛快な荒削り感とを兼ねそなえたヒロイン兄弟子にして運命のお相手役・青木崇高さんもすでに味を出していますが、月河にとってはこのドラマ、“演技者としての渡瀬恒彦さん”自分内デビュー作に決まり。

 現時点ではうらぶれやさぐれ酒浸り借金まみれの草若師匠も、いずれ噺家らしくちゃんと着物姿で高座で一席ぶつ場面も来るに違いありません。その頃はコスプレに見えなくなっていることを願いますが、となると“どう”見えるのでしょうか。多くの普通の俳優さんを見て普通に言うように「この役に嵌まってる、嵌まってない」を、渡瀬恒彦さんに言える時がもうすぐ来る。ある意味楽しみになってきました。
 

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福士政策

2013-06-08 01:38:48 | 再放送ドラマ

 『純情きらり』の味噌屋跡取り=達彦役の福士誠治さんが思いのほかいいのでちょっと驚いています。ピアノの才能に恵まれながら老舗味噌屋の家付き娘である母親に家業継承を強く迫られて悩み中の、ちょっと気弱な優等生お坊ちゃん。

 武者人形系の超・和風な端整フェイスで一見鉄仮面風に見えますが、設定からしてヒロイン桜子(宮﨑あおいさん)の直情さと対照的に、ガッツやパッションがおもてに出ないタイプに造形されているので、パッと見ほど鉄仮面でも大根でも棒読みでもなく(ずいぶん言ったな)、頃合いの間隔でとてもいい表情を見せる。ドラマ本体の好評に比して福士さん個人の人気大爆発とまでいかなかったのは、微細な表情の変化を画面釘付けで熟視する視聴者の少ない、忙しい時間帯のドラマだったからかもしれません。

 今年のお正月の『鬼平犯科帳SP ~泥鰌の和助始末~』での福士さんはオツムの中身まで青い青二才役で、酒井美紀さんの手管に鼻毛抜かれてまったく応援できるところのない、見てて終始イライラするだけの役でしたが、あれはある意味役の幅を広げたのかも。

 ウサギ顔宮﨑さんの桜子とこれだけナイスマッチ感があるなら、なおのこと序盤の斉藤先生は要らなかったのにね。何ゆえ達彦が初恋の相手ではいけなかったのか。人生チョロくなりすぎるからか。

 時制は昭和13年、ダンスホールが女性客立ち入り禁止になったり、西園寺先生(長谷川初範さん)が軍歌のオファーを受けて「曲想が柔弱」とクレーム付けられたり、戦争の足音が徐々に近づいて来ているので、達彦さんの将来も気が気じゃありませんな。お父さん(村田雄浩さん)が倒れてしまったので、達彦さんが若き家長になれば出征は免れたりしないかしら。戦争末期はそれどころじゃなく検査合格してれば勘助(@『カーネーション』)みたいのまで駆り出されたわけですが。

 入門一年めで早くも西園寺先生から欧州演奏旅行のお伴を求められるほどの才能ある達彦さんですが、もし桜子ちゃんが苦節のすえ見事ピアニストになる展開なら、バランス的に達彦さんにはどこかで挫折してもらわないと釣り合いが取れないような気も(どういう理屈だ)。二人で味噌屋を継いで、ピアノの音色で味噌の発酵をうながすみたいな万々歳過ぎる結末は無理か。いやその、牛舎でクラシック流してると乳の出がいいとか、あるらしいじゃないですか。とにかく戦争をはさむドラマは行く末が心配で心配で。

 福士さんも典型的ですが近年の朝ドラヒロイン相手役は"時代劇向き顔"がトレンドなのかも。 現在同じBSプレミアム19:00~の枠で再放送中の『てっぱん』駅伝くん役=長田成哉さんも同系統。『梅ちゃん先生』の松岡先生役=高橋光臣さん、『カーネーション』の周防さん役=綾野剛さん、『おひさま』の和さん役=高良健吾さんと、見事なまでに髷物顔です。

 実際問題ヅラ映え和装映えするかどうか(綾野さんのように現行絶賛和装中の人もいますが)より、"バリいま風からちょっと外れている"顔、というところにキーポイントがあるみたい。『梅ちゃん』で本命となった松坂桃李さんはCMなどでは絵にかいた様な長身小顔を利していま風の若者を演じていますが、ドラマデビュー作ではもろに"殿"だったので、やはりどことなく制作サイドに、時代ものっぽい役を演らせてみたいと思わせる何かを持っているのでしょう。

 現在絶賛放送中の『あまちゃん』の男子諸君はどうかな。アキちゃん(能年玲奈さん)に告白玉砕後もしぶとい努力を続けるストーブヒロシ役・小池徹平さんは、武者というより永遠の小姓ですな。三十路過ぎても森蘭丸、みたいな。

 滑走路の土台を掘りに東京に行ってしまった種市先輩役は・・・おぉ、またしても"福士"蒼汰さんですが、明るい硬派のイメージもあるし、もう少しキャリアを積んで役者汁がしみてきたら、若き日の織田信長なんか演らせてあげたいですね。坂本龍馬もいいかな。どっちも最期が残念だけど。

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訛りの兵隊トテチテタ

2013-05-25 00:03:53 | 再放送ドラマ

 ♪パローレパローレ のCM("大森 西島 缶 CM"で検索すると簡単に商品名判明)が印象鮮烈だったのは、このところ『八重の桜』と再放送の『純情きらり』を継続視聴してきて"訛ってない西島秀俊さん"を久しぶりに見たような気がしたからってのもあります。

 『八重』の兄んつぁまは当然会津弁。容保殿(綾野剛さん)の京都守護職に随行しての都詰めももうドラマ上5~6年になるはずですが、お仕事ひとすじで銃の買い付けに奔走するだけの覚馬さんは都の住人たちとほとんど交流している暇もなかったようでバリ会津弁のままです。手練れの武器商人と五分にわたり合ってプロイセン製最新式銃輸入にこぎつけた(でも実戦までに届かなかった。泣笑)ぐらいですから、ドイツ語のほうが訛らないかもしれない。

 『きらり』のちょっととっつきにくいけど根の優しい貧乏画家・冬吾さんのほうは、東北は東北でも、ドコ弁なんでしょアレ。設定聞き逃したな。原作では作家の太宰治がモデルと聞いたような記憶があるので津軽弁かしら。だったら方言はともかく、ヴィジュアルは美化するにもほどがあるな。国語の教科書の太宰近影は、もんのすごいアバウトな顔でしたぞ。顔見ただけで、作品に行く前に眠くなってくるという(月河はいまだに太宰作品を一作も、一行も読んだことがありません)。

 女性キャラで言えば、比丘尼さんになってからのほうが講演その他で儲かっているっぽい某・熟年女流作家さんの役を宮沢りえさんが演ったぐらい美化している。

 いずれも会津、津軽それぞれのネイティヴ住人からすると「あんなもんではない」と鼻で笑うレベルだそうで。そもそも「中はナジョナットル?」「モデルになってケネガ?」等と、「仮名に書き起こして字幕化できる時点で会津弁ではない、津軽弁ではない」とのこと。そりゃそうでしょうね。ドラマ内の方言セリフは、"どことなしの辺境感"の、香りだけ伝わればいいのであって。

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