イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

愛は欲しいわ

2012-11-26 00:49:11 | 昼ドラマ

『梅ちゃん先生』の心配ばかりしているうちにも時代はどんどん移り変わっていくのでありまして、この秋は久しぶりに昼帯ドラマも元気です。

 (それにしても、むし返すようですが『ぼくの夏休み』というのはいったい何だったんでしょうな。この枠をどうしたかったんでしょう。制作局内で「夏休みで在宅の小中学生を固定客の主婦、ママさん視聴者に巻き込んで、人気子役フィーチャーのジュヴナイルSFもので」派と、「いや暑い季節こそこってり韓流風味の生き別れ再会テーマを特撮イケメン美少女キャストで」派とが争って決着つかず、延長十万二十八回ウラ時間切れドローみたいな。月河もこの枠を贔屓にして10有余年になりますが、これほど“大真面目に放っぽり投げた”作品も見たことがありません。企画迷走もしくは出演者のスキャンダル等アクシデントで途中から珍作怪作化した連ドラには、多少なりとも「ゴメンちゃい、テヘペロ」なご愛嬌感があるものです。コイツは愛嬌のカケラもなかったねえ。「そうだよ迷走だよだから何?」的涼しい顔でぶっちぎり、伏線埋めっぱなし白骨化も何のその。この野郎に比べれば現行放送ドラマ中断トツの唯我独尊帝王『純と愛』なんか無邪気なくらい)

 まずは今月アタマ絶賛フィナーレを飾った『赤い糸の女』が久々のクリーンヒットでした。脚本中島丈博さんと言えばこの枠ではすでに大御所的存在で御年すでに70代後半戦のはずですが、「間然するところがない」という表現がぴったりの連続ドラマをまだ10本は余裕で書けそうな剛腕ぶり。

容姿差別といじめという、少女漫画的古典モチーフから端を発して、全身整形、買物依存症と多重債務、上場企業OL売春、仲間うちのいたずら落とし穴で過失致死…と、ちょっと前の三面記事を思い出す生臭いネタを精力的に織り込み、最後は母と娘、親友と仇敵、“女は結局、いちばん憎んでいる(つもりの)同性を自分と同化し内面化して生きて行く”という、中島ブランドの愛憎ドラマ普遍の地平にまんまと落とし込む巧妙さ。

 NHK朝ドラ育ちの清純派にして“そっくり双子ちゃんの、顔が(まだしも)アイドルっぽいほう”としてしか存在価値を評価されてこなかった三倉茉奈さんが、ベッドシーンありの汚れヒロインに挑戦!と放送前はしきりに宣伝されていましたが、脱ぎ方面はともかく、地顔が“笑ってるのに困り顔、当惑顔”という点が、このドラマに実にマッチしていました。実際、TVで顔を見るたびに何がそんなに可笑しいのかってくらい目いっぱいニコニコしているのに、まったく幸せそうに見えない、微笑ましい気分にならない女優さんってそうはいません。

父は大繁盛の美容整形外科医(石田純一さん)、お嬢様女子大に学ぶ裕福な境遇なのに、地方旧家の令嬢でイケメンエリート(ちょっと苦しかったが最終的に嵌まり役瀬川亮さん)をフィアンセに持つ女子寮ルームメイト(上野なつひさん)にひそかに嫉妬、合コンでも司法試験浪人で童貞の冴えない彼氏(酒井扇治郎さん)しかゲットできない自分を残念に思っているヒロイン唯美(ゆみ)。

 “足る”を知らず、礼も節も知らず、ひたすら隣の芝生の青さばかりを気にかけてセコセコがつがつ貧乏臭く生きねばならぬ人間一般の醜怪さが、明るく前向きで誰からも好かれるヒロインを専らやってきた三倉茉奈さん起用で活きた。醜怪な役を醜怪な人が演じても面白くもなんともないのでありまして、唯美にとりつく整形同化魔・芹亜(せりあ)に扮した奥村佳恵(かえ)さんの、ザラッとしながらヌメッとしている、水蛇のような、毒のある蔓植物のような美しさとともにドラマの世界観を支えました。

同じ中島さんオリジナル脚本作でも『牡丹と薔薇』の大河内奈々子さんと小沢真珠さん、『偽りの花園』の遠山景織子さんと上原さくらさんのような、パッと見わかりやすい“薄幸系と驕慢系”でない、ひと捻りもふた捻りもしたこのキャスティングで、快作誕生はほぼ約束されたも同然。神保悟志さん升毅さん山﨑樹範さんと、枠&制作局ゆかりの大物脇役さんを1話限りのゲスト投入で微妙な贅沢感も付加して、久しぶりに痛快にねじくれた、ゴリッと噛み応えのある昼帯ドラマを堪能させてもらいました。

ついでに、この秋は村松崇継さんの劇伴音楽も当たりシーズンで、NHK土曜ドラマ『負けて、勝つ ~戦後を創った男・吉田茂』で大河ドラマチックなスケール感と歴史観を堂々展開してくれた一方、この『赤い糸の女』でしっかり昼帯の地平にも帰ってきてくれました。“甘美であることにためらいがない”のと、“艶(つや)のある大袈裟さ”が村松さんの昼帯音楽の最大の魅力です。こういう音楽が似合ってこそ昼帯じゃないかと思えるほど。次回はどんなキャストの、どんな作品で村松節(ぶし)が聴けるか、鶴首して待つとしましょう。

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第一作が『娘と私』

2012-11-01 23:35:22 | 朝ドラマ

『梅ちゃん先生』の、なんだかんだの安定感は、ステレオタイプとファンタジーとのほどほどなバランスもありますが、やはり基本、梅子が“お父さん大好き娘”だったことに尽きると思います。最終話まで、さらには最終話後のスペシャルまで、ここだけはぶれることがなかった。

朝ドラにおいて、ヒロインと父親の関係が、どれだけ物語世界の軸として必要不可欠で、責任重大か…と言うより責任重大“だったか”を、期せずして『梅ちゃん』の後作品『純と愛』が、遠慮会釈なく、これでもかと見せてくれる仕儀となりました。

…また話が広がってしまうなあ。当然さらに続く。

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