イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

月と紅玉

2017-12-28 17:42:46 | 海外ドラマ

 一昨日(1226日)に『ルビーの指輪』(BSトゥエルビ)が終わって、軽くルビーロス状態です。軽い気持ちで「大好物の入れ替わり&成りすまし話っぽい」「イ・ソヨンさんとか知ってる人出てるし」と中途参入したら、思いのほか重い話で、録画再生して見入っている時間以外にも、気がつけばふとこのドラマの事を考えている自分がいました。

 こういうのはロスが来るのよ。もう十何年前になりますが、東海テレビ昼帯の荻野目慶子さん主演『女優・杏子』の時期なんかがそうだった。『仮面ライダー龍騎』や『特捜戦隊デカレンジャー』のラスト2~3話の間などは、仕事中も移動中もちょっと間ができるともう次回はどんなんなる?前回、前々回ああだったからこうだったから・・と頭の中に侵入してきて、振り払って集中するのが難儀なくらいでした。

 ロスにさせるぐらいの磁力の原因はやはり、ルナの“ルビーになりたい、ルビーでいたい”という歪んだ情熱の熱さ濃さゆえか。当初、ナメてかかって想像したように“不細工で僻んだ妹が、美しく人気者の姉をねたんで、成りすましでイケメン王子の婚約者を奪おうと・・”という、昭和の少女漫画にもよくあった単純な動機じゃなかった。もっと根深く“自分のなりたい自分”“いまここに居る自分ではない自分”を渇望し、足搔いて足搔いてどんどん不可能なほうにオーバードライブしていくルナが形成されたのは、実は女手一つで姉妹を育てた母親ギルジャの秘密に遠い原因がありました。

 ギルジャの夫は、身重の妻をよそに愛人をつくり出産時も帰ってこない男でした。そのためギルジャは産後鬱状態になり、せっかく元気に生まれた女の赤ちゃんを抱く気にもならずにいた矢先、夫の急死の報が。赤子を抱え未亡人になったギルジャのもとには、あろうことか夫が愛人に産ませたもうひとりの赤子が押しつけられました。

 何なのこれは!なぜ私に!?誰も育てたくない!パニックになったギルジャは二人の赤子を抱き、何度も施設の玄関前を往復しては一人置き去りにし、引き返してはもう一人のほうを・・でもその都度泣き声に連れ戻されて、「ごめんなさい」と赤子たちに謝って、結局二人とも双子の自分の子として受け入れ、タッカルビ店を切り盛りしながら育ててきたのです。

 この間のギルジャの心思うべし。“愛人の子なんか育てたくない、居なくなればいい”と首をもたげる自分の中の黒さと、常に闘う二十数年だったに違いない。ドラマの終盤で、「(愛人の子より)優秀になってほしいと願って、実子のアンタには厳しくした」とルナに告白する場面が出てきますが、それ以上に妾腹のルビーには“憎んではいけない、この子に罪はない、実子と差別せず愛してあげなきゃ・・”と、自分の内面の黒さから脅迫される様な思いで接してきたことでしょう。成長するにつれ母親の違う姉妹の資質や能力の差は明らかになってきます。己を抑えて抑えて、努力して優しく接してきたギルジャの思いを掬い取るように、ルビーは心優しく賢い子に育ち、秀でてほしいという願いゆえに厳しく当たられたルナには、ギルジャが「私に似たのよ」と寂しげに述懐する負けん気、反抗心以外、秀でたものは何もそなわりませんでした。

 しかも自分と姉との差が身にしみてきた年頃になって、ルナは母と叔母との会話から、自分が母の子ではなく、亡き父と他の女性との子・・との疑いを強く抱くようになってしまいました。これはギルジャが多くを語らないが故の叔母の勘違いから発生した会話なのですが、自分がそういう出生だから、母さんはルビー姉さんばかり可愛がって、私にはつらく当たるんだ・・とルナは答えを見つけた気持ちになってしまった。思春期には目に入るもの耳に入るものすべてが不合理に感じられますから、合理と思える答えには飛びついてしまう。

 受験、恋愛、人間関係、何をやっても思い通りにならない自分に比べて、願わしいもの何でも苦も無く手に入れられる姉ルビー。もう容姿が、才能が、恋人がという問題ではなくなりました。ルビーになれば、自分がルビーでさえあればすべてはうまくいく。やりたくてできなかったことが、何でもできるようになる。ルビーになりたい、皆からルビーと呼ばれ、ルビーとして処遇されたい、褒められもてはやされたい。あらかじめ負属性を抱いて生まれついたルナという存在でなくなりたいルナの不可能な願いは、ルビーのドレスと婚約指輪を奪い身に着けての、ルビーを巻き込んだ交通事故と顔面大損傷、そしてルビー昏睡中に自分が先に蘇生という、千載一遇の機会を得て、針の穴を通すように可能になってしまった。事故時のドレスと指輪を見て、分厚く顔に包帯をされた自分に「ルビー、ルビー」と話しかけるギルジャに気がついたとき、これからは私が可愛がられっ子ルビーだ!と、ルナは底知れない喜びと高揚感に息も止まる思いだったでしょう。

 TVのドラマですから、最初にルビー役で登場したイ・ソヨンさんが事故後のルナを、ルナ役だったイム・ジョンウンさんが同じくルビーを演じ分けているので、見ているほうとしては映画『転校生』やNHKドラマ『さよなら私』のように、“(=性格、才能、技能など)Aの身体からBの身体へ、Bの身体からAの身体へと入れ替わった”と錯覚しがちですが、実はこれは根本的な勘違いで、実はルビーの内面はルビーの身体の中に、ルナの内面はルナの身体にそのままあって、整形手術で外観だけ”を造り替えたという話なんですね。

 外観が変われば、ルビーの容姿にさえなれば、私はルビーとして愛される、ルビーとして大切にされる。ルビーが得ていた評判や名声も、セレブな婚約者も、結婚して得られる財閥御曹司夫人の座も私のものになる。私はルビーなんだから、ルナじゃないんだから・・

 ルナが切望し期待していた通りに、果たして世の中回ったのかどうか。願った幸せは手に入ったのか。やりたくてできなくて思い焦がれていた欲望はかなえられたのか。ドラマ内の交通事故後、第8話以降はそれを実地検証していく物語になります。

 ・・62話まで続いた(日本放送用のカット版です。本国での放送は93話)ことだけからもわかるように、すんなり満ち足りて終わりませんでした。ルナが通した一世一代の無理は道理を引っ込ませるだけでなく周りの人々を惑乱させ、思いもよらなかった方向に突き動かし、疑いや不信や恨みの連鎖を引き出して複雑にしてしまいました。

 ルナは“外観”に期待を持ちすぎたのです。外観が変われば、愛され好かれて幸せに生きている姉の外観を自分がまとえば、まるごと自分が愛され幸せになれる。しかし世界はそんなに甘いもんじゃなかった。ルビーならルビー、或る一人の人格として認識され受け入れられることに占める“外観”の割合は、ルナが夢見たほど大きくなかった。ルナはルビーの顔かたちになっても、ルナだったときと同様に嫌われ、高い地位を得た分腫れ物扱いされ、事故前のルビーとあまりに異なる言動から不信と疑いの目で見られ、そして何より自分が成りすましだという秘密の露見に怯えなければならず、少しも満ち足りた幸せを得られませんでした。

 (この項続きます)

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落下物キタコレ

2017-12-19 22:49:13 | ニュース

 先日、今年の感じ、じゃなくて漢字の発表がありましたが、“北”に決まりましたね。北だけに、来たーーー!と。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・“北”にふさわしくネットの辺境の一郭を地味ぃに寒ーくしてみました。

 個人的には、日本の中でもかなり“北”方に在住しているし、“南”や“西”に決まるよりはまだしも今年のトレンドに混じれた感があって悪い気はしませんが、最近のニュースを見てると“落”でもよかったんじゃないかと思うくらい、いろんな物が落ちてきてますよね。

 もちろんそれこそ北朝鮮発のミサイルも日本のEEZ(排他的経済水域)に落下しまくりですが、今月7日には宜野湾市の普天間基地にほど近い保育園のトタン屋根にガラス瓶みたいな円筒形の物体がガツンと落ちてきたし、13日午前中にも同じく普天間基地至近の小学校屋外運動場に、米軍輸送ヘリコプターの窓枠と思われる部品が落下しました。

 これ、児童生徒さんの安全が気遣われること、だから普天間基地言わんこっちゃないという問題以上に「大丈夫か、米軍」って話じゃないですか。飛行中に窓枠が外れて落ちるヘリなんて、『ミスター・ビーン』シリーズの世界ですよ。古くはバスター・キートンの映画にもありそうだし、いっそド、ド、ドリフの大爆笑か。「カアちゃーん」てドア開けたら蝶番からガスッと外れて加藤茶さんの頭にガン!当たるとか、隣の部屋で聞き耳立ててたら襖が倒れて全員ドーンみたいな。NHKの朝ドラでもいまだにしょっちゅうこの演出やってますね。

 今回は窓枠で済んだけど(済んだっつったって紙一重で大惨事ですが)、窓枠が落ちたってことはもっと重くてでっかいハッチの扉、昇降扉だって落ちるかもしれないし、尾翼、プロペラ、燃料タンク、絶対落ちないものはないということになります。

 月河が大人のTV番組をチラチラ見られる環境になった昭和40年代前半、確か毎週水曜日の夜8時から『コンバット!』というUS製TVシリーズが放送されていました。NHKしか映らない(しかもノイズ入りまくり)田舎から、まだましな都会に引っ越してやっと見られるようになった番組なので、たぶんNTVかTBS系の民放ネットでしょう。当時よく夕食時に遊びに来ていた親戚のおじさん、お兄さんたちが「アメリカの戦争映画は必ず勝つからいいよなア」と痛快がって見ていたのを思い出します。月河も従兄その他の男の悪ガキたちとセルロイドの筆箱を奪い合ってクチに当て「ちぇっくめいときんぐつー」なんてやってました。

 ノルマンディー上陸作戦とか歴史的な事はもちろんからっきしわかっていませんでしたが、出てくる機銃も手榴弾もバズーカも、なんてことない軍用ナイフまでみんなピカピカの高性能に見えたし、サンダース軍曹もギル・ヘンリー少尉も、リトルジョンもカービイも恐ろしく弾が当たらなかった。

 アメリカ軍の話なら必ず勝つからいい、とビール片手に笑って言った伯父のひとりは大陸からの引き揚げ組でした。

 その後1970年代に入るとベトナムが泥沼化し、80年代のアフガンもスカになり、敗戦ではない“介入不首尾”という形でアメリカ軍も汚濁にまみれましたが、それでも世界最強のミリタリーであることに変わりはなかった。沖縄基地のあちこちで米兵が一再ならず事故や事件を起こしその都度“米軍基地ゴーホーム”の声が上がったり下がったりしましたけれども、なんだかんだで「アメリカは強いから」「頼りになるから」という幻想が日本に米軍駐留を容認し続けました。幻想も抱きますわ。つい70年ちょっと前ケチョンケチョンに負かされたのが、ほかでもないウチら日本ですもの。強いんだから、強い相手だったんだから負けてもしょうがなかったんだよと信じ続けなければ救われません。

 世界一強い米軍が日本の端々で目を光らせていてくれるから安泰だ、少なくとも前回のようにケチョンケチョンにはやられないだろう、憲法九条もあることだし、ね?ね?・・と目を見かわして頷き合ってきたけれど、ここにきて、本当に大丈夫なのか、アメリカ軍。いつの間にかミスター・ビーンとバスター・キートンの集まりになっちゃったんじゃないのか。ハゲカツラの加藤茶さんやバカ殿メイクの志村けんさんみたいのが窓枠のビス締めたりしてんじゃないのか。鬼瓦権蔵みたいな現場監督が「冗談じゃないよ!?」と一升瓶持って喝入れに来てたりして。

 いや本当に、飛行してる間ぐらいはバラけないでもつような機体でお願いしますよ、サンダース軍曹の後輩諸君。そうでなくてもついご近所の半島から、いろいろ飛んできたり漂着してきたりするんだから。

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禍(わざわい)転じて鍋と為す

2017-12-18 14:28:12 | 芸能ネタ

 先日、離婚調停コンプリート大歓喜会見を開いた女優さん、“何が何でもカネカネ”な姿勢が強い印象を残し物議も醸しましたが、それよりアレ、その、何ちゅうの?野放しにして会見とかアナウンスとか生中継して可な物件なんでしょうか。

 もっとほかにすることはないのか。・・と言って貴乃花部屋郵便受け前中継を延々されてもそれはもっと不毛なのですが、あの女優さん、ここ半年ほどの間に何度かTV画面で見るたび思うに、必要なのは報道ではなく、医療ではないでしょうか。

 あの目つき、顔つき、話し方、所作、“双極性障害”という言葉が浮かんで離れません。「あの人は変わってていつもあんな調子だから」と薄笑いで通り過ぎていいレベルをとっくに超えていると思うんですが、カメラ回している人たち誰もそう思わないのかしら。

 少し前、引退するとか外国人男性と婚約するとかで久々話題を提供した重鎮落語家一家出身の女性歌手もそっくりな空気感ですが、あちらは生まれが生まれだけに“イタイけど笑えるからまだ可”との判断がギリ上回ったようです。

 今般の女優さんは、「とにかくカネにがめつい」という要約のされ方のせいで、“まじめに心配してあげる”というベクトルが一切向けられなくなっているようですが、所在地不明、謎のツイッター発信期間からだけでも、累積すると膨大な報道時間になっているので、視聴者の中には精神医療の関係者も幾らかいるのではないかと思うのですが、「ストップ!」の声は上がらないのかしら。

 どうも近年の動画投稿サイト全盛、あと公共・商業施設や街頭の防犯カメラ普及のせいで、皆さん“ヤバいものを見る”ってことに感覚が麻痺してませんか。最近はNHKのニュースでも、竜巻や水害といった異常気象、繁華街や住宅地火災などの速報で「撮影:視聴者」というテロップ付きのスマホ動画をオンエアするのが珍しくなくなりました。中には「撮って投稿してる場合じゃないだろ避難しろよ!」と焦るような臨場感あふれ返る作品もあり、撮影者はそれなりに使命感や達成感をおぼえているのかもしれませんが、遠く離れてTV画面を通して見ているこっちのほうがよっぽど気が気じゃないこともあります。

 あの女優さんも、エネルギーだけなら竜巻級でも人を傷害したり器物損壊したり、もしくは自傷したり等の“実害”がないから野放し閲覧に供して可とされているのかしら。

 数か月前亡くなられた、有名歌舞伎俳優夫人のがん闘病ブログも話題になりましたが、ご本人の覚悟や込めた思いなどとは別に、病んでいる人のいままさに病んでいるさまを小説や映画のように消費して「勇気をもらった」「立派だ、偉い」「ありがとう」とリアクションするのもコレどうなの?と折に触れ思っていました。今回の女優さんは肉体は丈夫そうですが、明らかに内面が普通じゃないと思える挙動を公開して、というかいちいち追尾して“面白がる”“興がる”ベクトルだけというのも別な意味でどうなんでしょう。さすがに「勇気をもらった」という視聴者はいないでしょうけど。

 離婚成立した元・旦那さんはやっとせいせいしたところでさすがに心配のベクトルはなくて当たり前ですが、女優さんご本人の、お母さんは生電話してたから健在なんじゃないのかな。本当に健在だとしても相当ご高齢でしょうけど。若い頃からこんな感じの娘だったから普通だと思っておられるのかしら。双極の“高い”ほうのピークは数年から十数年続くこともあるので、本人はもちろん、親しい人たちも病的な状態と認識しないため発見が遅れるケースが多いそうですよ。

 もっとも、じゃあ「“普通”に戻してあげる」のが最善の道として、その“普通”がどんな状態を指すのかも微妙ではあります。彼女の場合ああいう状態で本当に実用になる鍋とか棒(って何なんだ)とかを企画製作して商売として成立してるわけで、“実害”どころか多くの人に実“益”ももたらしてるから、「ストップ!」がかからないのかなあ。なんだ結局カネか。カネさえ入ればいいのか(投出)。

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感じの日

2017-12-12 12:00:09 | 世相

 恒例の『今年の漢字』が、今日(12日)の午後に発表されるそうです。

 なんで今日かというと、12月12日が“漢字の日”なんですって。これこそ誰が決めたんだ、と思いますけど、例によって京都・清水寺の住職さん、貫主(かんしゅ)さんっていうんですか、あのかたが掃除道具みたいな筆でドバーッ、バッサ、バッサと揮毫してくれるんでしょうね。

 今年の一字は、何になるんでしょう。月河は、“問”がいいんじゃないかと思うんですが。

 いろんなことが“問われた”年だった気がするんです。国会は野党がモリカケモリカケ言って、安倍さんがやたら「謙虚」「丁寧」って言って、お互いに言えば言うほど平行線の延長線になるだけだった印象ですが、結局解散総選挙で信を“問う”ことになった。

 証人喚“問”、トランプ大統領の日本~東南アジア訪“問”、大相撲暴力“問”題の問でもあり、天皇陛下の生前退位にパンダの赤ちゃんの名前、2020東京五輪のマスコットキャラクターなど、否応なく国民が“問”われなければならないクエスチョンやタスクやプロブレムが続きました。

 で、来年の漢字が“答”になればきれいです。解答の“解”のほうがいいかな。いやソレ困る!という声が一部野党から上がるかもしれませんが。

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どうして胸が痛いんだ

2017-12-11 21:52:04 | 海外ドラマ

 月河が『ルビーの指輪』(BSトゥエルビ月~金16:00~)が面白い、と言ったら、韓国ドラマ歴の長い知人が「“復讐系”好きだったんだー、だったら『カッコウの巣』ってDlifeでいまやってる(月~金13:30~)の見てみたら。長い(=話数多い)けど、復讐が単線でなく何本縒りもになってる複線だから退屈しないよ」と情報をくれました。

 イヤWヒロインが二人とも知ってる女優さんだったんで『ルビー~』見始めたのであって、復讐モノが特に好きってわけじゃないんだけど・・と言い訳しましたが、その昔高齢家族が楽しみにしていた『宮廷女官 チャングムの誓い』から入って行って、同じ監督の『ホジュン ~宮廷医官への道~』、NHKで放送中だった『イ・サン』『トンイ』『王女の男』など、どっちかというと歴史劇のほうを多く見てきた気はします。

 でも『赤と黒』とか『ジャイアント』『オールイン』なんかは這い上がり巻き返し劇なので広い意味でのリベンジモノだったし、まぁ韓国ドラマと名がついたら“報復感情”をどっかに入れないと話が成立しないくらいです。これが生理的に受け付けない、人を羨みも妬みも蔑みも生まれてこのかたしたことのない善良で高潔一辺倒の心情の人は、たぶんはなから韓ドラに興味持たないと思われます。

 で、見てみましたよ『カッコウの巣』。ただし、いま『ルビー~』のほかに韓国版朝ドラ『私の心は花の雨』(BS朝日 月~金8:30~)も継続視聴中なので、『カッコウ』を見始めるとまさに朝も昼も夕方もTVに拘束されることになりますから、帯で録画して、落ち着いたときに編集してブルーレイに入れ込んで一気に見ることにしました。Dlifeは自社放送番組のスポットがコマコマと入るのでものすごく編集に手間がかかるんですけど。

 そんなわけでまだ通して見てないのですが、編集しているだけでワクワクしますな、これ。まず、復讐される(ほぼ逆恨み)側のヒロイン=ヨニ役のチャン・ソヒさんの顔がいい。輪郭も目鼻のパーツもぜんぶ小づくりで、薄幸顔。怯えたり戸惑ったり涙をこらえたりする表情が途方もなく似合う。アメリカ映画でも、アワアワキャーッが似合う“ホラー映画御用達女優”っていますよね。ドラマ放送当時は42歳だったはずですが、公称身長163センチ以上に華奢で初々しく見え、ちょっと首から上のメイクが白浮きっぽいのが気にならないこともないですが、劇中でよく着る白珊瑚ピンク基調の衣装もお似合い。

 一方、貧しいフリーター娘がお金欲しさに財閥家の代理母を請け負う、復讐のダークヒロイン=ファヨン役のイ・チェヨンさんもいいですよ。いい具合にソヒさんと対照的。黒のアイラインが似合うアジアントロピカルな顔立ち、浅黒肌にダイナマイトボディ。編集してる中でホテルのプールで黒ワンピ水着のシーンが一か所出てきたんですが、見せつけられてる財閥御曹司ならずとも「おぉ~~」と息をのんじゃう爆乳。調べたら『千秋太后』の女真族のくノ一・サイルラ役でもう拝見済みでした。あの頃は堀ちえみさんを目パチにお直ししたような妖精風のお顔・・と思いましたが当時23歳、『カッコウ』放送時点で28歳。いつの間にこんなに全体的に熟れ倒したんだ。そういえば『千秋』でサイルラが護衛していた新羅族のキム・チヤン行首(へんす)が『ルビー~』の夫役ギョンミンさんだったな・・・・と、“この人あのドラマであの人の〇〇に当たる役やってた”って連想にはまると身動き取れなくなるので、とにかくこちらは編集終わってから一気に行こうと思っています。

 女優さん二人の復讐バトルもいいのですが、それを超えるくらい精彩を放っているのが、法学部卒のくせに司法試験に二度落ちてプータローしているファヨンの叔父役のチョン・ノミンさんです。この人にこんな引き出しがあったのかと、編集の手が思わず止まってしまう、目いっぱいのコメディリリーフっぷり。

 時代劇、近・現代もの問わず幅広く出演されていますが、初見は『善徳女王』のソルォン将軍役でした。「百戦錬磨の軍人つうよりマダムキラーの宝石商みたいだよねえ」と高齢家族と評していましたが、物語終盤になるとちゃんと生粋の武人っぽく見えてきたし、『馬医』の主人公の実父で、両班(やんばん)という貴族階級に属しながら人命を救いたいという志を抱いて、当時は身分の低かった医師を敢えて目指す役も良かった。

 王様とか君主役、大将役より、側近や参謀や官僚などナンバー2クラスの役がお得意と見受けましたが、『カッコウ』では「実は法官の次に料理人になりたかった」と突然レストランシェフに転身、本店長(=財閥家御曹司の叔母)とマネージャー(=『ルビー~』でギョンミン家の家政婦役の人)、二人のハイミスに惚れられて右往左往する、言わば罪悪感のない色悪で、カネにはセコい小市民でもあります。

 就職しても姉(=ファヨンの毒母。花札とカラオケと酒三昧で借家から追い出されかけたが財閥ビルの清掃員に就職)の家に寄食、末の姪(=ファヨンと年の離れた末妹ということになっているが?)を自分の子の様に可愛がり、ファヨンと財閥家(=代理母依頼主)との接触を心配しつつ、姉とは夫婦漫才の様にド突き合いを繰り広げる、“この人のターンの間は安心して笑ってよし”な安定感。編集するたびに、ノミンさんのシーンになるとつい休んで見入ってしまいます。

 本店長にベタ惚れの勘違い常連客(柄シャツに柄ジャケ、ファッションセンスのおかしい心理学教授)というライバル?も参戦、こちらはきいたふうな欧米流心理分析を披歴したり、ノミンさん扮するシェフも負けじと意味なく法律用語連射で反撃したり(「こう見えても司法試験の一次は二度も突破したんだ」が口癖)、リリーフし過ぎなくらいの惜しげのないコメディリリーフを展開してくれています。ひょっとしたら、メインの黒白ヒロイン二人のドロドロしい復讐バトルより、ドラマ監督はこちらのほうがノッて撮っているんじゃないかと思うくらい。

 韓国俳優さんの個人的演技力に引き込まれるのは『ホジュン ~宮廷医官への道~』主演、『朱蒙(チュモン)』助演でのチョン・グァンリョルさん以来か。グァンリョルさん1960年生まれ、ノミンさん66年生まれ、ともに30代後半からの遅咲きブレイクというところが共通しています。・・あぁ、韓国ドラマ個々タイトルには、視聴中は嵌まっても、俳優さん単体には面倒くさいので距離置いてきたんですが、だいぶ危険水域に入ってきたかな。

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