イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

刑事コロンボ『黒のエチュード』 ~指揮即是空~

2020-06-27 01:32:37 | 海外ドラマ

 外出自粛推奨で良かったことのひとつに、テレビ、FMラジオや雑誌など、最近流し気味だった媒体ソフトを改めてまじめに見だしたことがあります。

 久しぶりに新聞ラテ欄のテレビ番組表をちゃんと見ると、おぉ、NHKBSプレミアムで『刑事コロンボ』がまた放送されているではないか。一昨年と違って、今度は人気投票上位だけでなく旧シリーズの45エピソードを一挙に放送中らしい。

 6月3日『黒のエチュード』。これも調べると日本国内初放送は1973年で、以降少なくとも2回は見ているはずですが、改めてアタマからちゃんと見ると、忘れていたパートのほうが多い。

 ショパンの有名曲『黒鍵のエチュード』を思い出させるサブタイでもあって、てっきりピアニストが犯人の話だったと間違えて覚えていました。

 冒頭、犯人が殺人の計画をまとめるかのように自邸のピアノを乱れ弾くシーンから始まるので勘違いしていたかもしれません。犯人アレックス・ベネディクトはクラシックオーケストラの指揮者で、ピアニストは殺されるほう、アレックスの不倫の愛人。

 アレックス役ジョン・カサヴェテスは『グロリア』のジーナ・ローランズの夫で、俳優よりはインディペンデント映画の雄として知られ、ピーター・フォークとも長い親交があったとのこと。日本で言えば、松尾スズキさん主演の芝居に宮藤官九郎さんが客演するようなものでしょうかね。ちょっと違うか(だいぶ違うか)。

 例によって倒叙で最初に描写される殺人シークエンスを見ていて、忘れていた理由がなんとなくわかりました。出合いがしらや思いつきではなく一応計画殺人なんだけど、手口がえらく粗くて、シロウトが見てても完全犯罪になりそうもないんです。

 犯行のために自分がナマ身で移動しなければならない動線が長いし、真っ昼間グラサンだけで裏口を抜け出し修理工場のガレージに忍び込んで、預けておいた自動車をみずから運転。シャッターも自分でガラガラ引き上げ引き下ろす。殺し方も彼女の演奏中を背後から、2サスみたいな灰皿で頭部に一撃というアラワザで、トリックらしいトリックと言えば、自分の車を「アイドリング不調」と口実作って工場に預けておいて“コンサートの前で楽屋にこもっていたから外出はできない”との偽のアリバイと、キッチンのガス全開にして椅子から転落しオーブン扉のカドに頭を打って死んだように見せかける自殺偽装ぐらい。おまけに遺体をピアノからキッチンに運ぶ際に衿に挿していた花を床に落としてしまい、指揮中に気がついて、警官だらけの現場に自分で駆けつけ拾って挿し直しているところをコロンボに見られる始末。わかりやすく怪しすぎ、コロンボを手こずらせる互角の勝負とはほど遠い。

 しかもコロンボはアレックスが来る(そして花を挿すのを見とがめる)前から、ジェニファーのスクラップブックを閲覧し、「こんな美人で、才能があって前途洋洋の若い娘が自殺するはずはない、何かある」「男だよ男」とほぼお見通し。初放送の1973年当時、この辺で集中力を失って流し見になったから、犯人はピアニストだったとか記憶が怪しくなったのかもしれません。

 しかし、今回改めて、夫の不倫に事件後に気がつくアレックスの妻ジャニスのほうに注目して視聴すると、コロンボのアリバイ崩しや犯人との駆け引きとは別の味が、このエピソードにはあります。

 ジャニスは金持ちの娘です。見たところジェニファーよりうんと年が行っているわけでもなくせいぜいアラサー、金髪に空色の目、テニスウエアも似合うすらりとした容姿で客観的にはそれこそアンジャッシュ渡部じゃないけど「何の不満があって浮気なんか」と思う申し分ない美人妻(ちなみに演じるブライス・ダナーはグウィネス・パルトローの母)。

 彼女の母親リジーは資産家で、アレックスが専属を務める南カリフォルニア交響楽団の理事長である。当然アレックスのいまの地位は娘婿だからこそ。リジーはアレックスの指揮者としての手腕は評価しているが、人間性には全幅の信頼を置いていない。金持ちの母親からは、娘の男はみなカネ目当てに映るものだ。この婿は自信家で派手好みで、油断がならないと思ってときどきチクリと釘を刺したりネジを巻いたりしている。アレックスも承知のうえで愛想良くし、リジーのご機嫌を取り結ぶのに余念がない。万が一不倫が知られたらいまの地位も、優雅な生活も失うことはわかっている。ジェニファーに「隠れた愛人はイヤ、奥様に話して」「話してくれないなら私が関係を公表する」と迫られて進退窮まり犯行に及んだのだ。

 開演時間が迫り「ウェルズが来ない、自宅電話も話し中のまま連絡がつかない」との報が楽屋に届く。受話器がはずれているのかもしれないと、アレックスは激怒して(見せ)、すぐに電話局を呼び出してジェニファーの番号を伝え調べさせる。秘書にも尋ねず電話帳もメモも見ないで七ケタの番号をすらすら言った。聞いていたジャニスはハッとする。夫はジェニファーと親密だったのではないか。

 ジェニファー宅から深夜に戻った夫に、ジャニスは「どんな関係だったの」と詰問するがアレックスは取り合わない。仕事仲間には深入りしない、わかっているだろう。「私に我慢してるってこと?」「あなたはなぜ私と結婚したのかしら」。ジャニスは少し前に睡眠薬を服用しようやく効いてきたところで、潜在的に抱えて来た不安がおもてにこぼれて来ている。ジェニファーは若く、才能にあふれていた。夫は惹かれていたかもしれない。ひるがえって自分はどうだろう。日頃は夫は優しく、よく冗談や猥談もし自分を楽しませてくれ、愛し合っていると信じて疑わなかったが、ジェニファーに比べたら温室育ちの自分は退屈で凡庸な女なのではないか。ジェニファーに無くて自分に間違いなくあるものと言っては金だけ、それも自分のカネではなく母親の財産だ。夫が魅力を感じているのは自分が相続するはずの財産だけではないのか。

 持てるものがあまりに多いと、自分に“付いている価値”に比べて、自分が“持っている価値”が低いように思われて落ち着かなくなるのです。ジャニスもおそらくは名門寄宿学校から名門女子大に進み、欧州遊学などもして箔を付けただろうし、指揮者夫人となったいまも週一のテニスレッスンなどしてシェイプアップにつとめているが、理事長としてオケを差配する母親と、夫との間で日頃からひそかに神経をすり減らしている。

 コロンボは「カミさんが先生の熱狂的なファンで」とアレックスの自尊心をくすぐりながら、「サインがもらえたら」を口実に豪邸を訪ね、固定資産税や使用人の話から年収を割り出し、自動車修理工場にも高価なスポーツカーを褒めながら自分の(おなじみの)ボロ車で押しかけて、アレックスの暮らしぶりを探る。工場の車の保管場所、侵入できる窓、犯行現場への往復は可能だ。往復した距離だけ走行メーターも歴然と上がっている。

 アレックスに致命傷を与えたのは、やはり現場に落とした花でした。犯行帰りで指揮台に立ったときの録画のビデオでは、アレックスのタキシードに花はありません。しかし指揮を終えて楽屋でジェニファー自殺の報を聞き現場に駆けつけ、出て来たところをテレビ局のインタビュアーに囲まれて答える映像では、なぜか花をつけている。「現場のピアノの下に、犯行の時に落としたのを拾ってつけた、その時しかない」とコロンボは問い詰める。アレックスは「違う、演奏が終わったあとでつけたんだ、あのときは混乱していたから」「妻がいつも新しいのを届けてくれるから」と、あろうことかいちばん夫の不倫を信じたくないであろう妻に意味ありげな視線を送り下駄を預ける。

 そして「奥さん、奥さんのご記憶もそうですか、終わったあとにお付けになりましたか」と、コロンボもジャニスにボールを投げるのです。

 ジャニスの答えは「いいえ、・・あとからはつけなかったわ」「アレックス、ほかのことならあなたのために何でもしたけれど、でも、これだけは・・」

 ・・コロンボはジャニスをテニスコートに訪ねたとき、あの花はジャニスが庭師の手を借りずに作った花壇で、コンサートで夫の胸を飾るために栽培していると、彼女が誇らしげに語るのを聴取しています。ジェニファーに愛人がいたようだと話すと、急に表情を険しくし「夫はお役に立てないと思います」「演奏家と個人的なお付き合いはしません」と憤然と立ち去った様子から、彼女がひそかに抱く夫への疑念も察した。

 アレックスは土壇場で妻が自分を庇ってくれるほうに、コロンボは愛が本物だからこそ裏切りを許さないであろうほうに賭けた。アレックスの負けでした。

 浮気はしたけれど、君を失いたくないから彼女のほうを排除しようとしたんだよ、僕は君を選んだんだよと、アレックスは伝えたくて目配せしたのかもしれない。しかしジャニスは“私に付いている価値”しか見ていない夫の一面を、すでに察してしまった。水が盆からこぼれていなかった時間に戻ることはもうできないのです。

 気休めのように夫は「僕は有罪だ・・でも君を愛していた、いまわかった」「証言のときそれを思い出してくれ、いいね」と言い置いて警官に連行されていきました。

 心ならずも、自分がとどめを刺す役回りとなりしばし茫然としているジャニスにコロンボは「・・お察しします」と声をかけ、もうひとりの警官に「お宅までお送りして」と指示します。

 部屋を出るジャニスの胸には、「夫の言う通りです、あとで付けたんです、見ました」と答えれば、夫を救えただろうか?との自問自答が去来していたに違いありません。共犯同然となるが、夫は感謝してくれるでしょう。しかし、その夫と、この先もずっと、水のこぼれた世界で、嘘を共有しながら生きていく未来を、ジャニスは描けませんでした。

 あるいは、せめて妻の手でとどめを刺されたくて、アレックスはコロンボの詰問に「話しなさい」と下駄を預けて来たのかもしれない。そう考えるほうが、ジャニスは救われるかもしれません。

 オープニングクレジットで、Special Guest Star扱いになっているリジー役のマーナ・ロイが、さすがの貫録でドラマを引き締めます。戦前は謎の女的な役を得意としていましたが、戦後はシリアスな作品で賢い女性、誠実な人妻役を多く演じ、このエピがアメリカで放送された1972年には60代後半だったと思いますが、サテンのイブニングドレスも、都知事並みのあざやかなグリーンの、マリン風スーツもよくお似合い。

 リジーはひとり娘ジャニスに、随所で支配的な言動も垣間見せつつ、ジェニファーの自殺が三面記事で報じられると、財団理事の一人で新聞社の主筆らしいエヴァレットが配信社の幹部と昼食をとるクラブで待ち伏せ、「いい所でお会いできたわ」と偶然を装って、今朝秘書に作らせたというジェニファーの名を冠した奨学金の議案を見せ、記事に書くよう促します。「有名人ですからゴシップは仕方がないけれど、出ないに越したことはないでしょう」「あの人はうちのオーケストラには来たばかりで、身内というわけではなかったわ」と、言葉巧みにオケのイメージが悪くなる報道を封じます。

 このあと、ジェニファーの隣家に住む少女の目撃証言でジェニファーの前彼=オケのトランペット奏者ポールが聴取を受ける羽目となり、理事会で彼の処分が取り沙汰されたときのリジーの対応もお見事。

 「オーケストラは娘のジャニスと同じ私の宝、どちらかでも傷つける者は容赦しません、例外は認めません」と断言するリジーにコロンボは舌を巻き「ベネディクト先生でも?」と尋ねます。リジー「それこそ許せませんね」。コロンボはこれで、アレックスの危うい立場が改めてわかり、鍵を握るのがジャニスであることも確かめたはずです。

 音楽家とその世界が主役となるエピですが、劇中音楽はオケの演奏場面より、むしろポールが副業で演奏するジャズクラブの音、隣家の少女が習うバレエ教室の曲への切り返しがいちばん印象に残りました。これも今回の視聴での新発見。

 あと、アレックスの豪邸の使用人役で『ベスト・キッド』シリーズのミヤギ師匠でおなじみパット・モリタの顔が見えました。

 未確認なのですがリジーにクラブで待ち伏せされる理事エヴァレット役は『ポリス・アカデミー』シリーズの金魚鉢校長でおなじみジョージ・ゲインズだったような気がする。アレックスにジェニファーの遅刻や、自殺で発見されたことを知らせる秘書兼マネージャーのビリー(ウィリアム)役は、シリーズ後半のエピでこのブログでも一昨年の放送時に書いた『秒読みの殺人』のフィルム映写技師役だった人のように見えましたがどんなもんでしょう。正しい情報をご存知のかたはぜひ指摘してください。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

すみッコで済まないミゼラブル ~散財のアーム情~

2020-06-20 19:44:58 | 本と雑誌

 先日そんなわけでリラックマストアに一緒に行くことになった非高齢家族の知人若年女性は、すみッコぐらしの定番商品=てのりぬいぐるみの全キャラコンプリートを志しているらしく、「コレとコレは持ってる、親の家にある、コレとコレは持ってない」と、店がすいてるのを幸い、選びながらかなーり丹念に月河にキャラ別プロフィールを解説してくれました。

 ご存じの通り食べ物キャラ偏愛の月河も、ついつい食べ残されチームの“とんかつ”さんと“えびふらいのしっぽ”ちゃん、“あじふらいのしっぽ”ちゃんを買ってしまった。プチサイズのぬいぐるみにしては、それぞれのコロモの質感、色調の再現っぷりがこまやかです。

 4月からうちにいるサンリオ組こぎみゅん(←こちらはピュアに小麦粉そのものの妖精)の、ほわほわ感とは違う、パン粉由来のツブザラ感がなかなかリアル。「おにく1パーセント、しぼう99パーセント、あぶらっぽいので残されてしまった・・」とんかつの端っこさんは、お肉の中まで火が通るようにじっくり揚げられた結果、脂肪がにじみ出たのか、えびちゃんあじちゃんよりちょっと浅黒め。このへんもリアル。

 若年の連れがぬいぐるみとぶらさげマスコットを物色しているあいだに、当方は文房具の棚でA4の、いい感じに総イラストで透けないクリアファイルを見つけ、たまたま“すみッコたちがなぜかみんなで恐竜や古生物の着ぐるみを着て遊んでいる”絵柄のがいたく気に入りました。

 「キョウリュウジャーおもしろかったなあ・・リュウソウジャーは途中下車したけど」等とツボりながら絵柄を見ていて何の気なしに連れに「このさ、“とかげ”って、本当は恐竜なんだよね?」と話しかけたら「そう!そう!!すっごくかわいそうなのっっ!!」と怒涛の勢いで食いついてきて、物色中だったマスコットの“とかげ”と“とかげ(本物)”のタグを見せながらまたまたひとしきり熱く解説。なんだか、二十年ほど前の、平成ライダーの沼に沈み中だった自分を見るようで微笑ましくなりました。こうやって“世界観”を作って、贔屓キャラひとつできればそこからズブズブ、全ワールドすみずみまで掌握したい欲にとり憑かせていくシステムなんですよねぇ、キャラビジネスっちゅうものは。

 月河はライダーの後もスーパー戦隊をフォローしていたので、“”の心理はとてもよくわかります。いちキャラ個体だけに興味があって、同じグループ、ユニットの他メンはどうでもいい、とはなりません。今年のレッドかっこいいわ、斬新だわとなったら、ブルーにもイエローにもピンクにも、追加戦士にも敵キャラにも活躍場面がたくさんあってほしいし、キャラが立って、人気が出てほしいと思う。ひとりだけいつも冴えないキャラや、足引っ張りイラつかせ担当みたいのはできてほしくない。

 だから、サンリオのはぴだんぶいのように、ちょっと懐かしめになってきた中堅キャラを数個体あつめて、仮想バンド組ませてユニットでプレゼンしなおすというのは、古い様で、結構ツボを突いた商法だと思うんです。

 それからキャラ商法で要注意なのは、今般の連れの若年女性を見ててもわかるように、無用に“コンプリート志向”が芽生えてくることね。贔屓キャラ関連商品の“すべてをゲット”したくなるという。同時期に、ぐでたまならぐでたまの或るアイテムが4色とか5パターン売り出されると、最初にいちばん好みのカラーで好みのポージングのバージョンを買うのは当たり前なんですが、「ほかにもあんな色のも、こんなデザインのもあったな」と思うと、どうも落ち着かない。

 結局後日ショップを再訪して、前回買わなかったやつを買い足したりする。んで、たまたま、そのバージョンがソールドアウトで棚のスペースがそこだけ空いてたりすると「自分が気に入ったやつより、あれのほうが人気あって先に売れたんだ、クッソー」とかさらに無用に焦燥にかられたりなんかして、路線の反対方向の駅地下の別ショップまで探しに行ったり、そこにも無かったらネット検索して送料かけて取り寄せたりする。

 んで、次のアイテムからはネットであらかじめ発売スケから調べて全パターン予約入れたりなんかして。「絵柄違いばっかり4個もあったってどうすんだ」「好きな絵柄1個だけ買って、3個分の予算は次リリースの商品にとっておいたほうが絶対賢明」と百も自覚しているのに、絞って買った1個を目の前にして「あと3パターンあるんだよなぁ・・・」とモンモンとする。

 ・・・「買わなかった3パターンが売れ残って、次の商品開発のときは最初っから1パターンしか制作されなくなるかも」「全パターン完売した別のキャラに比べて人気がないとラクインおされて、来年度から予算減らされるかも」「アイテム数もロットも小さくなったら、当地みたいな田舎のショップや書店のミニコーナーには回ってこなくなるかも」・・・・等々とネガティヴな方向に妄想がエスカレートして、結局有りガネ数えて足りると確認したら「いけるいける」「推ししか勝たん」とかなんとか自分に言い訳してショップにかけつけることになる。

 こうなるともはや“買い物”“ショッピング”の域ではなく、限りなく推し活、オタ活、いっそ“貢ぎ”に近いですね。そこまでこのキャラ好きかァ自分?推したってキャラは自分に何も報いてくれないぞ?と醒めることも、大人ですからどこかの段階で毎度あるんですけど、「いま買っておかないと、他の誰かが買うか、売れ残って不人気のデータになるだけ」「いま買える自分がここに居るんだから、いまを謳歌しようがたいてい勝つ。

 ・・・どんだけ深いんだ、沼。

 ・・・・まだ沼の深度を自覚していない天衣無縫な若年の連れは、リラックマショップからの帰りがけ「コレいいよ、設定わかるし」「エモいよ」と、『すみッコぐらし キャラクターブック ここがおちつくんです』という書籍を教えてくれました。そうか、エモいか。人が肉声で言うのを初めて聞いたわ、その形容詞。

 税込964円。ソフトカバー110ページほどにしてはお高めですが、紙の地色がクリーム色、4コマの枠線がブラウンで目に優しいし、絵もみんなアースがかったパステルで柔らかく優しい。描線が柔らかめのエンピツっぽいのも見やすい。キャラがみんな物語をしょっていて、ここを突かれたらツラいという弱点がそれぞれ明示されているのがわかりやすい。スーパー戦隊同様、キャラモノの王道。

 キャラではないけど、“アーム”ってのが曲者、この世界観のキーパーソンと見ました。すみっこでホッとくつろいでいると、いきなりどこからともなく現れてすみッコをつかんで持ち上げ、すみっこから連れ出して行くクレーンゲームのアーム。あれは何のシンボルなんだろう。神の手かな。すみッコがすみっこに滞留して安らぎを得ていることを良しとしない何者か。でも、ぺんぎん?(←“?”が重要)さんが自分探しの冒険に出てガケから落ちそうになると、いきなり青天井から降りてきてガシッとつかんで着地させてくれたりもする。お母んか。

 エモいし、深いね。あぁ、月河がスーパー戦隊からやっと暫し距離を置いて関連散財から解放されると、こうして次なるキラーコンテンツがツメを研いでくる。

 世間では、「新型コロナは抑え込めている、緊急事態は解除した、外に出てよし経済回せ、回せったら回せ」と余計なお節介でうるさいですが、人の財布を懐から引きずり出してこじ開けておカネを出させよう、消費させようというタクラミが、世の中そこらじゅうに地雷のように埋まっているのだなあ。

 こうして、この記事を書いている間、傍らから、ぐでたまのもっちりマスコットがニラッとこちらを見ておるし。はいはいムニュムニュ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

キャラの修羅 ~売るも買うも沼~

2020-06-18 22:11:36 | グッズ

 今年、久しぶりに横目でなく高体温で“サンリオキャラクター大賞”の要綱を見ていて改めて思いました。

 キャラ抱え過ぎじゃね?サンリオ。

 前回のエントリで、またまたどこからも何の要請もなくはたまた何の根拠もなく、サンリオの社長交代後を心配するというお節介を焼いてしまいましたが、いやさキャラビジネスも一種の芸者置屋・・で語弊があれば、ある種芸能プロダクションみたいなものですから、抱えるタレントが多いに越した事はないし、水もの人気のひとりふたりに頼るより、二の線俳優からお笑い芸人まで、渋い重鎮からきゃぴきゃぴアイドルまで取り揃えて多方面のニーズにこたえられるほうが、浮き沈みの激しい業界でのリスクヘッジにもなるのはわかります。

 でもねぇ、キャラクター業界って、ファンタジー、コメディ、ライトSFぐらいはあっても、エロやグロやアングラまではカバーしてないじゃないですか。基本、概ね、「カワイイ(←カタカナ)(←はぁと)」でくくられ塗りつぶされるワールドです。客層、テイストが決まっているわけだから、そこまで要るだろうか、数が。この世の中に需要あるかしら。

 今回のキャラクター大賞にエントリーしただけでも80組です。

 キャラグッズ適齢期ピークが1980年代~90年代序盤までだった月河から見ると、さすがに上位一桁順位くらいはマイメロ、キキ&ララ、クロミ・・と、テレビでいう“ゴールデンタイム常連感”“キャストクレジット役名付きレギュラー感”があるし、それよりちょっと下でもおさるのもんきち、みんなのたあ坊、マロンクリーム、コロコロクリリン辺りは「あぁコレも居た居た、まだ現役なんだ、懐かしいな」と鮮明に思い出すことができます。探せばタンスやデスクの引き出しの奥深くに、何かしらのグッズがまだ眠ってるかもしれない。特に個人的に夢中になって集めているわけではなくても、プレゼントのお返しや粗品がわりにもらったりあげたりする中にさらっと入っちゃうような、出回りざかりの時期のあるキャラでした。“はぴだんぶい”の男の子諸君も昨年まではこんなポジションだったと思います。すたれたわけじゃないけど、新人・若手が続々前面に出てくる中、主軸のクリーンナップではなくなったかな、という。

 しかし、下位の60位以下ぐらいになると、さすがに「こんなのもサンリオのキャラだったのか、知らなかったわ」ってのがぞろぞろ。5年前にぐでたまにはまってから、年末年始のダイアリー・カレンダー展開シーズンの文具事務用品店や、進学卒業&お返しギフト期の雑貨・おもちゃ売場、百均のキャラコーナー等には結構親しいほうな月河がこの程度の認知度なら、もっと知らない人はますます知らないでしょう。

 これだけ居ると、すべてのキャラに、似つかわしく輝ける仕事=グッズ企画展開がしきれないと思うんです。シナモンプリンキティマイメロクラスの上位人気キャラは何を作っても、市場に置いとくだけである程度さばけて行くから別格としても、特に10位台後半~30位くらいまでの中堅どころに、予算やアイディア・デザインのマンパワー、店舗での棚ワゴンスペースの回りが薄いんじゃないでしょうか。月河ハコ推しはぴだんぶいも、ピンのキャラクターとしてまだ稼げる余力があるのに、いや、あるからこそ「まだテコ入れしなくてもダイジョーブだろう」と先頭集団から“置かれ気味”になり、こりゃまずいわと流れを変えるためにユニット展開してアイテムやイベント本数を増やしてみたら(コロナ自粛で空振り・渋滞も多かったとはいえ)、ポチャッコ3位躍進を筆頭に全員差を詰めて番手を上げました。

 こういう、角度変えの戦略を繰り出してもらえないばっかりに休眠しかかっているキャラが、いまのサンリオには相当いると思うんですがどんなもんでしょう。大賞結果の画面を見ていると、「このコのグッズあったら買うのにな、売れそうなのにな」と思えるキャラが少なからずいてもったいない。

 なんでこんなことを考えたかというと、先週、当地でも大型商業施設が通常営業復活してきたのを機に、うちの非高齢組の知人若年女性とリラックマストアに行ったんですね。こちらは同業ライバル=サンエックスのキャラクターグッズショップです。90年代のたれぱんだ以降、リラックマを筆頭に広範な年齢層にウケるヒットキャラを輩出していますが、店の構成が実にわかりやすい。

 三分の一はリラックマ&キイロイトリにころころコロニャ。残り三分の二のうち半分はすみッコぐらし、半分をじんべえさん、まめゴマ、センチメンタルサーカスはみぱ、昨秋デビューの“新人”=ココロアライグマたちが分け合っている。

 サンエックスも、古株のたれぱんだやこげぱん、アフロ犬等を皮切りにいまや総計100組以上のキャラを抱えているはずですが、実店舗で展開するキャラは見たところ完全に絞っています。絞っているから、キャラ1組当たりのアイテム数、バリエーションがとてつもなく多い。深い。同行した女の子がすみッコファンだったので付き合って小一時間見ましたが、定番のぬいぐるみ、マスコット、ステーショナリーにTシャツのほか、季節商品の雨傘、日傘、アウトドアレジャーグッズ、救急絆創膏や保湿スキンクリームなど、キャラグッズにし得る日用品を、思いつく限りすみッコにしましたという感じで、展開力に圧倒されそう。

 でも、キャラグッズって、これがおもしろいんですよ。たとえばボールペンが欲しくて、あるいはプチタオルが欲しくて、そのためにキャラクターショップに行くわけじゃない。「こんなモノにもすみッコがついてる」「すみッコの顔したこんなモノもあった」と、その都度発見して、さらに嵌まっていく。普通のナショナルブランドのモノでじゅうぶん用が足りるはずの、ハンドクリームや消しゴムや弁当箱まで贔屓キャラで揃えていくのがキャラ推しの楽しみです。

 そのためには、1組のキャラ当たりの持ちアイテム数はなるべく多く、広範で、バリエ豊富な方がいい。

 サンリオさんにも、これぐらいやってほしいんですよね。「この棚の何段目はぜんぶぐでたま」「こっち側の壁面の、ここからここまではぜんぶはぴだんぶい」みたいな、イベントやフェアの期間だけでない、奥の深い定番ワールドを作ってくれたら、ショップに行って「何かないかな」と物色する楽しみが倍増すると思う。

・・もちろん、それをやると、或るキャラのラインナップの中で“ハズレ”“要らなかった”アイテムが出来てくるでしょうし、何より、“深さ”を可能にするためには、キャラ数を絞る必要がどうしてもある。

 “切られる”キャラのファンにとっては、これがせつないですよねぇ。だからやりにくいんだろうなあ。今回、歯ぐるまんすたいるのあわやツイッター休止か!?辞令に思いがけずドキドキしてみて、月河もちょっとはわかりました。

 そんなこんなですから社長交代で新体制になるサンリオからは目が離せません。方針が変わって古めのキャラに冷たい方向に行かないうちに、買える推しグッズは買っておいたほうがいいかな?なんてね。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

キャラたちは何処へ向かう ~推してもダメなら引いて見な~

2020-06-16 22:18:49 | アニメ・コミック・ゲーム

 6月1日のエントリを書いてからパソコンが不調をきたし、思いがけずしばしのネットアクセス隔離期間となったためお気に入りの行きつけサイトともご無沙汰していました。

 情報源は紙の新聞と紙の雑誌、テレビ、ラジオと、久々の純アナログライフへの回帰も悪い事ばかりではなかったんですが、先週末にめでたくリカバリー成って帰還。

 この間に2020サンリオキャラクター大賞結果が発表になってました。

 1位シナモロールくん。白肌に青い目、魔性(?)の笑顔。やっぱり強いですね。あの、空も飛べちゃうたっぷりお耳も強さのモトかな?いつかツイッターで、“シナモンお風呂でアイス食べ中”の画像があったんですが、お湯に浸からないよう頭の上で右左、キュイッと交差させてまとめて入るのね。ターバンみたいで可愛いのなんの。男の子(=オス犬)という設定なのにとても乙女っぽい。

 2位のポムポムプリンくんが、プリンとカラメル色の甘めカラーリングで“ゴールデンレトリーバーの男の子”という設定にもかかわらず、ぽっちゃり体形で食べ過ぎを気にして(気にしても食べる)、ウォーキングや体操につとめていたりなど微妙にオジさんぽいのと好対照。ここらへん、月河の分析通り、“人間が人間を好きだから”こういうキャラクターが愛されるのよね・・という好見本を提示してくれています。

 のほほん系のプリンにはジャーマネのような、お母んのようなマフィンくん(=ハムスター)がいつもついてて、無尽の食欲にブレーキかけたりジョギングのペースメーカーしたりしてくれてるし、天使シナモンにはライバル?をもって自任する、ちょいワル小悪魔キャラ・ルロロマニック(=ベリーとチェリー)がいる。持ち味を際立たせてくれる、脇役も配置してもらっているわけです。もう、かつての五社協定時代の映画会社お抱えスターか、宝塚各組のトップさんの域。

 気になっていた歯ぐるまんすたいるは「ココに到達しなかったら翌日からツイッター休止」と宣言したデッドライン=33位は達成できませんでした。あちゃー。・・でも、昨年51位から目標にあと一歩の34位まで急上昇した功績を認められて、ツイッターはめでたく存続決定したようです。

 なんか、伸び悩みタレントの事務所仕込みの炎上商法っちゅうか、“休止するする詐欺”みたいでもあるけど、彼のツイッターはサンリオのキャラ内ではちょっと異色な、昭和な粘っこい描線でおもしろいので、まずは存続で良かった。

 人気投票と言っても、稼ぐのはグッズ、それも大賞投票期間に何弾にも分けてリリースされるスペシャル期間限定モノの売り上げなのに、今年は全国のショップが期間の大半営業自粛中で、しかも我らが(誰らがだ)歯ぐるまんはそもそもグッズの点数が少ないので、ファンのオンライン投票に多くを頼ったわりには大健闘と言っていいでしょう。いや言ってあげましょう。

 月河の推しでは、ぐでたま12位。妥当ですがチョット物足りないかな。ベスト10内は確保してほしかった。同じ“非動物・食べ物系”のKIRIMIちゃん17位、こぎみゅん13位、動物由来ではあるけれど同じ“おうちでだら~系”の後発・まるもふびよりモップくん21位辺りには、もっと突き放して差をつけてもいい風格があるんですけど、ぐでちゃん。でもイギリスでは2位なんですよね(1位クロミ、3位シナモロール)。イギリス人って、フランス人やイタリア人ほど食にこだわりがなくて粗食そうな分、たまご料理はめっちゃ好きそうだしね。ポーチドエッグとかスコッチエッグとか。

 月河ハコ推しの“はぴだんぶい”ではポチャッコが最高位3位。ここ数年の、ポチャのじわじわ右肩上がりっぷりは侮れないですよ。2017年10位から、18年6位、19年5位ときて、今年ははぴだんぶい効果も貢献してついに表彰台。1位シナモン2位プリンとともに“犬キャラ”の金銀銅独占となりました。

 他メンはこの“犬トレンド”のワリを食ったか若干水があいてタキシードサム10位、けろけろけろっぴ11位、バッドばつ丸14位、ハンギョドン15位、あひるのペックル16位と爆発しきれなかった感じですが、これだけクツワを接したのはやっぱりユニット効果ですな。特に、香港では3年連続1位の盤石さを誇りながら国内総合では20位台半ば程度に甘んじてきたペックルくんの躍進には、ファンのはぴだんぶい愛を感じます。やっぱり、ユニットとなると、どのメンバーにも“お客さん”“お荷物”になってほしくないもの。今年に入ってからのユニット展開で、久しぶりにそれぞれの可愛さに気がついたオールドファンも少なくなかったと思います。ユニットデビューイベントやショップでのスポット推しが自粛期間にぶつかる不運が無かったら、ポチャくん以外の諸君も全員、もう二つ三つランクを上げたのではないでしょうか。

 ・・・結果ランキング表を眺めながらそんなよしなし事を考えていたら、サンリオ本体にも大きなニュースが飛び込んできました。1960年創業時からの社長・辻信太郎氏が会長に退いて、孫の辻朋邦(ともなり)専務が社長に就任されるそうです。創業60年目にして、初の社長交代。

 信太郎氏92歳、朋邦氏31歳、アレ?一世代飛び越えて孫が後継ぎ?と誰もが思うでしょうが、信太郎氏長男で朋邦氏の父である辻邦彦氏は、1987年に常務、90年に専務、2002年には副社長となっておもに海外ライセンス事業展開で大いに社勢を高めておられたのですが、2012年にアメリカの出張先で急死されたんですね。まだ61歳でした。

 邦彦氏の死後は海外事業をめぐって方針転換や模索が続き業績も低迷していました。トップ交代で流れを変えることができるか、キャラ大賞史に“犬の時代”を刻んだシナモン、プリン、ポチャッコの諸君にも、キャラビジネスの新時代を盛り上げるべくがんばってもらいたいものです。

 ちなみに、新社長となる朋邦さん31歳、ネット上では「ポムポムプリンにそっくり!」と、早くもじわり人気キャ・・いや人気社長になりかかっているらしいですよ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

たまたまぐでたま ~おいしいごはんの上がいい~

2020-06-14 21:52:01 | アニメ・コミック・ゲーム

 先日、「人は何故キャラクターにはまるのか」という、目下のコロナ禍の世間のどこからも何の需要もない、不要不急きわまりない考察をこのブログ内で展開し、「人間が、人間を好きだからだ」という、これまた何の、えーと、何だっけ?そうだエビデンスもない結論で締めたばかりですが、我が身を振り返ると、「なんで最初にはまったのがぐでたまだったんだろう」と、いまだにふと思うことがあります。

 デイトブックを出先のセブンイレブンの雑誌スタンドで見つけて、あまりの脱力っぷりに思わず買い帰ってしまったのが2015年の秋で、以来、ダイアリーなりカレンダーなり、毎年、何かしらのぐでたまステーショナリーがデスク周りで三百六十五日伴走する日常になっている。初めてのデイトブックには“何これ”モードだった家族ももう怪しみません。

 決めゼリフのひとつ「どーせ食われるだけだし~」が良かったのかなと思います。当方のアンテナ周波数にしっくり来る。なんか、悟っているというか、醒めているというか、いっそ爽快じゃないですか。食べられちゃったら無くなるんだけど、食べてもらえないまま何週間も何か月も過ぎたら、いずれグレたまさんになっちゃうので、彼(=ぐでたま)本人(?)としては限りなく、絶え間なく、食べてもらえることを志向している。

 醤油かけてほしいとか、寒いからベーコンの下に潜り込むとかいろいろ我儘勝手言ってますが、すべては“美味しく食べられたい”という一途な願いの然りあらしむるところ。

 ずいぶん昔から、イヌとかネコとかウサギとかネズミとか、動物由来のキャラクターはどうも苦手というか、身近に置いて眺めたり触れたりして可愛がりたい気持ちになれないのですが、根底に“生命あって知覚を備えた生き物を自分の生活空間で支配下におく”のが憂鬱だという思いがあります。

 飼育、愛玩のためだけに傍らにいる生き物って、彼らの身になるとどうしても幸せと思えない。人間なんかの住環境よりずっと彼ら自身に適した世界、時間があるはずなのに、人間の趣味嗜好で捻じ曲げて連れて来られている気がする。

 生き物の生を、継続的に自分の生活環境内に置いて、水や食物を補給して生かすということは、日々刻々、じりじりと死に近づいて行く時間をともにし見守るということでもありますから、そういう作業を引き受ける対象は家族だけでもうじゅうぶんだという思いもあります。

 そこ行くと潔いじゃありませんか、ぐでちゃんは。どーせ食われるだけだし。でも食われてナンボだし。あまりにもぐでっと無抵抗なので、食べようとして思わず固まって「・・あとでいいか」となるくらい。

 食べても食べても、タマゴと名の付くものあるところ、茶わん蒸しはもちろん、カステラにもドーナツにも、プリンにもぐでたまはいる。イクラの軍艦巻きにも、からし明太子にもいる。錦糸卵になってちらし寿司の上にのっていたり、マヨネーズとしてポテサラから出現したりする。

 “食われて終了”な潔さ“食っても食ってもそこらへんから何度でも現れる”不滅さ。これぞ、凡百のキャラクターにはない、月河が愛してやまぬぐでたまエッセンシャル、ぐでたまレーゾンデートル(←言ってみたかっただけ)です。

 人間でない生き物を無理くり人間の環境、人間の価値観ワールドに入れ込んで適応させて、人間より短い寿命なのにいたずらに可愛いカワイイと愛玩いじくり倒しているバツの悪さが微塵もありません。

 ぐでたまに続いてなんとなく自然とグッズが身の周りに増えてきつつあるKIRIMIちゃんも決めゼリフは「おいしく食べてね」「こんやのおかずはワタシに決めてね!」、小麦粉の妖精“コギムーナ”の女の子、という設定のこぎみゅんに至っては、“将来なりたいもの”が「おにぎりになりたいみゅん」・・小麦粉なのに。美味しくなりたい、食べてほしい気持ちがあり余って、自分の実態が見えなくなっているという。

 「人間は、人間を好きだから、キャラクターにはまるのだ」という根拠のない結論を出したその舌の根もかわかないうちにこういうのもなんですが、“生きてない無生物”のキャラ化だからこそホッとできる、癒される、ってのもまた真実なのではあります。

 生きていること、生きているもの、生命を持つ存在って、愛玩するには重すぎるんです。“死”に近づいて行く過程に付き合うんですからね。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする