イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

嗚呼武錠(ああむじょう)

2013-11-25 02:16:10 | 特撮・ヒーロー

 内容鑑賞に入る前に、絵柄でテンション微妙になると言えば『天国の恋』だけじゃありません。 

これも今期期待の『仮面ライダー鎧武(ガイム)』も大概なモンです。いやー、『七色仮面』の昔から特撮をお友達にして育ってきた月河も、空からオレンジだのバナナだの、葉っぱ付いたパイナップルだのが降ってきてキー、パカッ!と割れてシャカラカラン!と肩胸に着いてアーマーになったときは、一瞬(一瞬ですよ))『あまちゃん』のアキちゃんじゃありませんが「・・帰りたい」と思ってしまった。どこに帰るんだ。家なんだけど。TVの前なんだけど。
 

何が悲しくて果物が仮面ライダーにならなきゃならなくなったんでしょう。小さいお友達の偏食矯正に一役買おうと言う狙いなら、ピーマンアームズとかほうれん草アームズとか、セロリアームズのほうがお母さんたちに歓迎されるような気もしますが。
 

人参アームズとか。色め的にもTV映えしそうですよ。一本でも二ンジン。二本で二ンジン二ンジン。僕は大好きニンジンライダー。最近、夜、あるいは朝、元気のないお父さんたちは「どうせなら朝鮮人参アームズがいい」と言うかも。
 

ブロッコリーアームズなんか、造形的に強そうじゃないですか。モッコリモリモリしていて。カリフラワーアームズとタッグを組むと画面がモッコリモッコリモリモリモリモリになる。そこへ水茄子アームズ大和イモアームズが加わったら、全体的に、その、あの、ものすごく凸な、男性的造形集団になる。
 

牛蒡アームズも逆ベクトルで強そうでしょう。シュッとしています。カリフラワー&ブロッコリーが格闘型のライダーなら、こちらは剣使いライダーでしょうね。黒い閃光ササガキスラスト。煌めく火花スパーキングキンピラー。切れ味がシャープ。細身のルックスに似ず野武士の様なタタキあげ感にみちている。
 

対する(対するのか)大根アームズは辛口噴射オロシガネスラッシュ。激熱波フロフキフーフービーム。技が重いね。横綱白鵬関のように、ツヤ肌にみっちり身が詰まっている。折しも煮込み系の美味しい季節。しかもセルフナビ機能搭載。大根引き大根で道を教えけり。しかし大根って。役者さんのなり手がない。誰にオファーしても「死んでもヤだ」「一生“これが本当の大根役者”と言われる」と断られる。
 

そういえば『仮面ライダー555(ファイズ)』には、敵怪人でオクラ、キノコ、ツクシなど農産品系モチーフのヤツらが結構出てました。敵だと思えば、ライダーと一緒に戦ってるんだと思えば、お子さんたちもエイッと食べてくれるかもしれないから、ピーマン怪人とかほうれん草怪人を出す方がいいかもしれませんね。
 

そう考えると(そう考えなくても)お子さんたちの大好きフルーツをヒーローにするというのは案外、子供番組として正攻法(どこが!)なのかもしれない。皮があって、剥いてはじめて実(み)に到達するという、期せずして防御性・隠蔽性に富んだ構造も、確かに“仮面”ライダーと相性がいいかもしれない。かもしれないったらかもしれない。そういうことにしときましょう。深く考えるとまた帰りたくなる。
 

思い起こせば『仮面ライダー龍騎』初見の頃も、「何でドラゴンのモンスターがクワーッ、ウニュウニュシュバシュバウィーンつってバイクになって、人が乗っちゃうんだ?」とあっけにとられたものです。あの頃はまだ実写の中のCGアニメが、脳内でなんとなくこなれきっておらず、同じモンスターでも二足歩行で着ぐるみの中にスーツアクターさんが入って動くやつは“仮面ライダーの敵怪人”としてすんなり入ってくるのですが、サバイブ強化で変形するドラグレッダーとダークウィングを筆頭に、ベノスネーカーだのエビルダイバーだの、まるわかりCGで空中に現れて飛んでくる類いのそれはどうも“ここだけ低年齢向け作品”に見えて、かなり違和感がありました。
 

しかしドラマはやはり、究極はストーリーです。ストーリーと人物、キャラクターです。『龍騎』の場合は複雑かつ形而上学的ともいえるお話に引き込まれ、入り乱れるライダーたち、と言うよりライダーという異形のパワーゲームに巻き込まれた男たちの思考と情動に気持ちが沿うていくと、見せ方がCGか人間入りの着ぐるみかなんてことはあっという間にどうでもよくなったのです。
 

『鎧武』もストーリー的にはこれからです。キー、パカッでドン引きしているとつかみ損ねる。コータもカイトもミッチもカッコかわいいし。『龍騎』の吾郎ちゃんも『幻星神ジャスティライザー』のデモンナイトも出てるし。
 

スーパーのフルーツ売り場に行くたびに「コレがアームズだったら」といちいち手に取って考えるのも一興です。キウィアームズとかラフランスアームズ。時節柄、樽柿アームズなんて美味しそう・・いやおもしろそう。放置するとジュクジュクに熟して、敵が触るとたちまちジュクジュク汁にまみれるジューシーアタック。強いんだか弱いんだか。 

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女を亡くすと書いて

2013-11-19 14:13:46 | 昼ドラマ

 『天国の恋』は第2週(114日~)初頭であきらめました。前作『潔子爛漫』が小粒ながらしっとりといい出来だったし、今作は昼帯を知り尽くした中島丈博さん、昨年の『赤い糸の女』以来、満を持しての新作オリジナル脚本とあって、放送前からかなり期待していたのですけれどね。 

とにかく絵柄が汚い。汚すぎる。
 

汚いと言って悪ければ殺伐とし過ぎる。当方、ドラマは月~土のNHK朝ドラと日曜のスーパーヒーロータイム以外はまず99パーセント、リアルタイム向き合い視聴は無理ですから録画セットしておいて、暇を見てCMカット編集してから観るわけですが、消音で早送り、止まって戻って消去開始指定、消去終了指定、あっ送り過ぎたまたちょっと戻って・・と編集作業していくと、映る絵柄があまりに殺伐なため、早く編集終えて音声付きで視聴したい!という意欲がどんどん後退するわけです。
 

45話分続けて、絵だけ進めて止めて戻って止めての作業をしている途中で、「あっ!いまの場面すぐ音声聞いてみたい!」と編集完了を待ちきれなくなることが一度もないというのは、ほかでもない、絵自体に魅力が無いからだと思います。ストーリーや台詞の責任ではありません。消音でやってての話ですから。
 

テーマ(アラフォー主婦が目覚めた本能の恋と修羅)からいってキャストが全般的に中高年シフトになるのは仕方がありませんが、若いほう担当の、ヒロインの恋愛相手男子やヒロイン高校生時代版とその友人たちも含めて、どうにもわざわざ“より醜悪に見える”撮り方見せ方を選んでいるとしか思えない。ヒロイン斎(いつき)役の床嶋佳子さんは言わずと知れた安定の演技派だしお顔立ちもそれは端整な人なのに、肌の色ムラや凸凹がいやでも目につく接写距離がやたら多いのです。斎の高校生時代を演じる小宮有紗さんも、特命戦隊イエローバスター=ヨーコの頃はあんなに可愛かったのに何で?いつからこんなに?と思うくらいくすんだ表情ばかり。少女期斎の、くすまざるを得ないドラマ上の境遇を考慮するにしてもです。
 

斎(いつき)高校生篇は弟役や同性異性の友人たち役も、小宮さんと同系の、古風め寄りの端整な子を選んでキャスティングしているので、ますます“見せ方”のイビツさが目立ちます。“死んでも綺麗に撮らないぞ”ぐらいの覚悟すら感じるほど。
 

男性中年俳優さんたちの顔面アップに至ってはもう言わずもがな。制作意図はたぶんゴヤの風刺版画集『ロス・ディスパラテス(妄)』の実写版的な世界醸成を狙っているのでしょうが、そういうひねったダークさ、ねじれた哄笑、いま見たい世界ではないんですよね。

  要するに当方の視聴バイオリズムと噛み合っていないだけかもしれない。中島丈博さん作のこの枠のドラマも、大正時代の実在の伯爵夫人心中未遂事件を核に翻案した
2006年『偽りの花園』辺りまでは、洒落にならない人の業(ごう)のせめぎ合うブラックさをうまいこと夢々しさの衣にくるんでいたのですけれどね。たぶん翌年の『麗わしき鬼』を境に、ダークなエグみ剥き出し直球でくるようになってきた。昨年の『赤い糸の女』も2ヶ月9週だったから勢いで特につかえることもなく完走できましたが、あと1ヶ月長かったら自家中毒を起こしていたかもしれません。
 

個人的なタイミング、地合いの不都合さだと思えば、中島さん作品にもこの枠にもそう深く失望はしませんが。何と言っても今年2013年に入ってから、完走した連続ドラマは『あまちゃん』と『夫婦善哉』『実験刑事トトリ2、『雲霧仁左衛門』のみという状況です。先行放送、再放送で拾う機会が盤石にある『八重の桜』さえザイルを手放しました。
 

『梅ちゃん先生』とか『おひさま』のような、ふわっと甘口のドラマに耳まで浸かった直後なら、中島さん印の、あけすけかつ沈殿物の多いエグみも快適だったでしょうし、ゴヤ風の汚しの入った絵柄にも食いついたかもしれません。何事もご縁とタイミング。次作以降に期待しましょう。
 

・・そうは言ってもお昼~午後のTV編成は激変の予感。贔屓のこのドラマ枠も来年からはどうなるのでしょうね。いっそ過去作の再放送枠になるなら大歓迎ですが。 

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味噌をつける

2013-11-10 01:39:00 | 再放送ドラマ

 『ちりとてちん』の再放送がBSプレミアム715~の枠で先月から始まっているということは、4月から再放送されてきた『純情きらり』が終了したということで、遅きに失し過ぎですが一言いっとかなきゃいけませんな。本放送から7年も経っている作品にナンですがまーーーすがすがしいまでに尻すぼみなドラマでした。 

尻すぼみor右肩下がりというより焦点ボケ作とでも言ったほうが当たっているかな。あるいは羊頭狗肉。とにかく、音楽大好き少女(宮﨑あおいさん)の音楽苦学と開眼出世を前輪、味噌屋跡取り息子(福士誠治さん)との恋から発した女将(おかみ)業での成長を後輪に進んで行く物語として提示されたはずなのに、東京の下宿マロニエ荘が主舞台になった辺りから、音楽の話なんだか絵描きの話なんだか、めっきりわからなくなってきました。作中、音楽関係者に比して、絵描き仲間とその関連人物の数が多すぎ、出番も多すぎ、キャラも濃すぎる。これは脚本というより、明らかに物語世界の“設計ミス”です。

 

音楽学校入試1回目を、通りすがりのジャズサックス演奏に聞き入って遅刻して失敗とか、西園寺教授(長谷川初範さん)のピアノ教室にかよって来年を目指すものの高慢な金満令嬢に「貧乏人は音楽家にはなれないわ」とバッサリいかれたり、西園寺先生の即興演奏曲を「同じように弾いてみなさい」と言われて、るり子は「楽譜をいただけませんか」、達彦は「もう一度弾いていただければ」、桜子は速攻耳コピ、なんてところのくだりは、少女漫画的なベタの勢いがあってなかなか良かったのですけれどね。いつかお上品エリートピアニストになった令嬢岩見沢るり子(とっても嵌まった初音映莉子さん)を、スキルとともにジャズ魂もきわめた桜子が、才気煥発なアドリブ演奏でぎゃふんと言わせるようなリベンジ場面が来ると思ったのに、マロニエ荘と岡崎を行ったり来たりしているうちにるり子さんの存在などどこにも無くなってしまいました。

 

 味噌屋パートも、八丁赤味噌の沿革や由来、特有の製法や料理法を織り込んだエピソードがもっともっと出ると思ったのに、戦争たけなわの統制価格対策の逸話程度で、ベテラン俳優さんを揃えたわりにはなんだかふわふわしたまま、傾くでも潰れるでもなく操業が続きましたねえという感じ。

 

長丁場で話数の多い帯ドラマにありがちな、“走っているうちにゴールを見失った”典型例。第1話初っ端の、“味噌桶に落ちてしまうおてんば娘”、第2週冒頭の“新歓コーラス伴奏を即興ジャズアレンジで弾いて会場をノリノリにさせる女学生”という“羊頭”を、出したはいいけれどその後のメインストーリーにさっぱり活かせませんでした。実際、本題に入ってからの桜子はお転婆というより、無駄に人に気ぃ遣いで世話焼きたがりで、見守るほどにどうにも痛快さのない、ストレスのたまるキャラに堕しました。

 

そして焦点ボケの最大の原因は、マロニエ荘篇から参入してくる画家・杉冬吾(西島秀俊さん)という人物の、物語に占める比重がむやみに大きくなり過ぎたことでしょうね。これは言い切ってもいいと思う。ヒロインの心理に寄り添って視聴していると、音楽よりピアノより、味噌屋女将業より、なんともはや達彦より、トウゴさんに心を寄せている時間がいちばん長く、温度も高く、振幅も大きい。ヒロインが何を望んで、そのために何をどうするドラマだったかがさっぱりわからなくなったのは、大半、冬吾のせいです。

 

冬吾は東京でヒロインにダンスホールなど自由な表現の世界を啓蒙し、岡崎に現れては質実剛健な長姉(寺島しのぶさん)を奔放な言動で当惑させ立腹させ、のちに魅了する、現実離れしたキラキラした男性として、短期間存在感を強烈に放射して、さっと物語フロントから退くべきでした。

 

ヒロイン実父(三浦友和さん)が早期に事故死してしまったので、“ヒロインにとってのお父さんキャラ”をこの冬吾が担うのかと思っていたら、そうもなりませんでしたね。NHK朝ドラについてここで書くたびに何度も強調しているように、ヒロイン中心の天動説ワールドである朝ドラでは、ヒロインの物語の根っこに“親たちの物語”が骨太く据わっていないと話に心棒が無くなります。数字は別として高評価だった朝ドラ作品は、例外なく親たちのキャラに精彩があり、親たちの出自やクロニクルが陰にも陽にもヒロインの造形にしっかり寄与して、結果、ヒロインも精彩を持って動き、力のある物語を紡ぎ出しました。

  『純きら』は両親の物語を通り一遍の回想映像大恋愛結婚のみで済ませ、どんな人となりだったのか曖昧なまま母親(竹下景子さん)はドラマスタートからいきなり故人でナレーションにおさまっており、父親(三浦友和さん)は“娘を可愛がっている”以外何のキャラ立ちも発揮しないまま、“ヒロインと姉弟たちを経済的苦境におく”ことだけがドラマ上の役割だったかのように、あっさり事故死退場。親及び親世代の大人たちの現実的な重石が無いと、若いヒロインがどんなにきゃっきゃと躍動しても、すればするほど物語が薄っぺらくなってしまう。

 

ヒロイン相手役達彦のお父さん(村田雄浩さん)までが念の入ったことに早期に急死で、他方、ヒロインから見て“異性として意識できる”年代の男性人物が必要以上に多く、この辺も物語世界の設計ミス。結果、ヒロインが“うじうじなのに四六時恋愛体質”というヘンなキャラに見えてしまいました。

 

冬吾に関していえばこのドラマの原案本は文豪・太宰治の次女である津島佑子さんの、母方の一族をモデルにした小説で、冬吾のモデルは他ならぬ太宰その人ですから、扱いを軽くするわけにもいかず、結局、脚色が難儀過ぎて手に余ったということなのかもしれません。演じた西島さんはその場その場を無難にやりきっており、初期には桜子の頑固カミナリ祖父(もったいなかった八名信夫さん)に「あんた何かに似ていると思ったら、なまはげだぁ」と懐かしそうに歩み寄ったり、ツンデレ長姉・笛子さんとの婚約発表に、要らない接吻宣言をぶちかまして一同をドン引きさせたりなど浮世離れ系のコメディリリーフらしき場面もあって、あの路線のまま短話数で完全燃焼してくれれば・・と返す返すも惜しまれます。

 

味噌桶転落、次いでジャズ風ピアノで始まったのだから、最終話も、なんなら味噌桶の前で桜子がジャズ演奏をしながらこと切れて終了にしても良かったと思うのです。確かに無理やりかもしれませんが、首尾一貫感が出るでしょうに。いつの間にか代用教員で子供たちに音楽を教えることがライフワークになり、最後はなんと、病気をおして子供を産むのに命をかける話になってしまいました。何でこうなった。いつからこうなった。

 

長尺の連続帯ドラマ、せめてファーストシーンからラストシーンを透かし見ることができ、ラストシーンからファーストシーンを懐かしく振り返ってしっくり辻褄が合うような作りだけは心がけてほしいものです。でないと“連続して視聴する”甲斐がないではありませんか。 

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紳士だったら知っている

2013-11-04 00:39:54 | アニメ・コミック・ゲーム

 打撃の神様・川上哲治さん死去。 

・・と聞いても、赤バットの現役選手時代のイメージがマッタク無いのは、なにぶん当方が生まれるかなーり前に引退しておられたかたですからしょうがないとして、V9を達成した巨人軍監督時代のお姿も、気がつけばあんまり記憶が無いのですな。
 

背番号が77だったか88だったか、重くてゾロ目で縁起のいい感じの数字だったはずです。昭和389年には当時住んでいた地域でも読売系列のTV放送が視聴可能な環境になっていたし、長嶋さん王さんファンの男子諸君も周囲には多かったのですが、当時の野球中継には監督をアップで映したり、ピンのインタヴューを流したりする機会があまりなかったように思う。月河が川上さんを“野球界の凄い人”としてヴィジュアルを認識したのは、“現物”じゃなくて漫画『巨人の星』作中でした。
 

設定としては確か飛雄馬パパ・星一徹さんと、第二次大戦出征前はともに読売巨人軍選手として同じ釜の飯を食った元・戦友で、一徹さん家族が長く住んだ下町のボロ長屋におしのびで訪ねてくる場面も一度ならずあったような。月河の初見は昭和434年頃刊の単行本で、画像引用するのはこのブログの任ではないので省略しますが、結構でっぷりして、顔にも笑いジワとも渋面ジワともつかないヒダヒダの多い、なんだか叩き上げのブルーカラーの社長みたいな絵柄でした。“巨人”の星というタイトルの作品における“巨人”の大監督ですから、流れ上は主人公が仰ぎ見る立場でありやがて味方になり上司になるわけで“偉くて頼れる人”ポジションの描かれ方とはいえ、あの絵柄はご本人サイドからクレーム来なかったのかな。
 

“現物”のほうを初めて見たのは日曜朝の『ミユキ野球教室』で、たぶんシーズンオフの放送回です。漫画と似ているようで全然似てないので、「コレがカワカミ監督?」と驚いた記憶があります。衝立っぽいいかつい体型ではあったけれども、結構、締まっていて、地方出身の元・野球少年らしい青臭さや素朴さを残した“軍隊系で農耕民族な体育会おじさま”だったように思います。『巨人の星』での絵柄は返す返すも老けさせ過ぎで、漫画の単行本は雑誌連載に遅れて刊行されますから、あの絵柄に描かれた当時の川上さんはまだ40代前半~半ばぐらいだったはずですけどね。
 

川上監督の他にも、ユニホにベースボールキャップもしくはメット姿でない、スーツ等の私服姿を見たのはこの『野球教室』でが初めてだったプロ野球選手は数多く、月河が当時から、及び現在でも、野球選手に所謂「萌え~」を感じたことがないのはそのせいかもしれません。何せ、キャップ無しだと、大抵の選手が刈り上げもしくはスポーツ刈りなんですよ。そしてスーツの横幅がやたらでかい。幼稚園坊主の頃から背伸びして、少フレ週マ別マになかよし、りぼんの類いを愛読していた小学生女子月河には、到底“憧れ琴線”に触れないヴィジュアルの人たちばっかりでした。
 

ただ、スタープレイヤーと呼ばれるような主力選手たちは、さすがに私服にスポ刈りでも独特の、旬のオーラとでも呼ぶべきものは画面から伝わってきていて、昭和何年のオフシーズンの放送だったか忘れましたが、長嶋茂雄選手がちびっ子ファンからの「今年は4割打ちますか?」の質問に「打ちますよ!もちろん打ちます!」と笑顔で、バットを持つ手の形をしてみせて即答していたのが印象的でした。実際の長嶋さんは、ビックリするほどの高打率を続けたタイプの選手ではなく、4割を窺うどころか通算3割オーバーだったシーズンは17年間のプロ生活中9回か10回ぐらいだったはず(それでもたいしたもの)ですが、月河は長嶋さんと言えば、「『野球教室』でちびっ子からああいう質問が出て、ああいう答えを速攻出す人」というイメージで今日までも記憶しています。
 

川上さんは、良くも悪しくも“戦前”の匂いをまとった最後の世代のプロ野球人のおひとりだったのではないかと思います。彼が指揮を執った時代の巨人軍は、前出の様な漫画の題材になったり、ONなど個人の人気選手たちとは別に、黙々と勝ちに行って本当に勝つみたいな色気も艶気もない戦いぶりが、少なからぬ“アンチ巨人”を生みもしました。しかし軍隊従軍経験者からすると、勝負は勝つことがすべてで、とにかく勝たなければ物も言えないしごはんも食べられないし、明日も明後日も来年もないのです。どんな接戦でも僅差でも、過程が名勝負でも、結果負けならそこでぜんぶ終わりです。
 

勝つこと、ただ勝つことに集中し徹底する川上さんのスタイルが、別の一角にアンチ層を育てつつ一時代を築いたという事実は、日本のプロ野球史にとっては大きな宝ではないでしょうか。いろんなタイプの指揮官がいていいし、いろんなカラーのチームが存在していいけれど、「どこよりも長く頂点に君臨していたのが川上さんの率いるジャイアンツだった」という史実は、ひとつの原点として長く記憶にとどめておいていいと思うのです。
 

人生がジャイアンツの歴史の一部でもあった川上さん、訃報の伝えられた1030日は日本シリーズ第4戦で、vs東北楽天イーグルス対戦成績12敗から起死回生の逆転勝ちをプレゼントしてくれましたが、名将の弔い合戦も第6戦で今季無敗田中マー君に土をつけたところまででツキを使い果たしたような結果に終わりましたな。彼岸で川上さんが「勝ちに不思議な勝ちあり、負けに不思議な負けなし」とゲキを飛ばしているかも・・・ってこれは野村克也監督のほうの名言だったかな。
 

とにかく93歳、一代に時代を二つも三つも経験され見聞された人生だったと思います。漫画の中でまで監督やってたのですからね。お疲れ様でした。ご冥福をお祈りいたします。ちなみに来年はうちの日本ハムファイターズが巻き返して東京ドームに乗り込みますので天国からの解説とゲキはお手やわらかに。 

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