イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

撞け。

2010-09-30 21:12:36 | 朝ドラマ

まだ4話ですが(930日)、結構いけるんじゃないですか『てっぱん』

アロハの持ちネタ「一瞬一瞬を全力で!海空花子です!」そのものの、大阪発朝ドラヒロインのテンプレ的“全方位明朗で、意味なく常にポジティヴの大安売り”“元気前向きであらゆる人物のあらゆるトラブルに善意介入、なぜか一挙解決”みたいなのだったらイヤだなあと思っていたのですが、意外と、周りに気ぃ遣いで、溜め込んでは放射、溜め込んでは放射の、素朴な不器用ちゃんみたいなんです、あかり(瀧本美織さん)。

 造船下請け鉄工所経営の、陽性な職人気質お父さん(遠藤憲一さん)、美人で天然風味なお母さん(かつて降板騒動を起こしたNHK同枠に仰天復帰の安田成美さん)、ちょっと頼りないけどまじめが取りえの地元信金マン長兄(遠藤要さん)、高校留年二度めの3年生で妹あかりと同学年になっちゃった、明るさが取りえの次兄(森田直幸さん)、あかりを含めて、全員、学校の偏差値はお世辞にも高そうじゃない家族に、降ってわいた様な初音さん(富司純子さん)来襲で、算段あって必死に隠してたわけじゃないけどなんとなく言い出しかねて17年過ぎてしまったあかりの出生の秘密が露見。本当のお母さんてどんな人だったの?なぜウチに居たの?トランペット吹く人だったん?それより何より、お父さんは誰なん?と質問攻めにしたい、説明言い訳いろいろしたいところを全員グッとおさえて「びっくりやったねぇ」「ほんまびっくりやったわー」と、無理に決まっているのに懸命にほんわかやり過ごそうとする風情がいいですね。

家族って、“いつもと変わらない”を死守せんとするシステムなのですね。家族の誰かが血縁のない他人とわかっても、誰かが不治の病の告知を受けても、誰かが道ならぬ恋愛をしていると全員の知るところとなっても、新聞に載る級の犯罪に加担していても、“昨日と何も変わらない”を何としても維持しようとする。

実際には、平穏な家庭でも、子供は日々成長して、進学し就職し、彼氏彼女を作って家を離れて行くし、親は日々老いて、衰え、死に近づいて行く。“永遠に変わらない”家族なんて存在しないのですが、良きにつけ悪しきにつけ、或る日、或る出来事を境に一変してしまうということを認めたくない。とにかく“連続性”“一貫性”が確保されていてこそくつろげる家族だ、安らかで満ち足りた家庭だにこだわる。全員こだわる。

あかりちゃんも、亡き実母千春さんの遺品であるトランペットをベッチャー祖母ちゃんに返しに大阪へ行こうとなって「けじめや」なんて言わずに、「もう一度あのベッチャーとちゃんと向き合って話がしたい」「育てのお母さん、お父さんお兄ちゃんに訊いても、答えてくれそうもないし、答えてくれたらくれたでいろんなことが一気に崩壊しそうで怖いことどもを、ベッチャーからなら聞けそう、聞きに行きたい」と、正直に言ったらいいのです。あかりは普段なら、ずばっと言ってしまうキャラの女の子なのだと思う。

でも、こればっかりは言えない。自分が17年育ってきた村上の家族、お父さんお母さん兄ちゃんたちを、どれだけかけがえのない、壊れてほしくないものと思っていたか、この状況になってあかりは初めて自覚したのでしょう。大阪発朝ドラ好みの、陽性、前向き少女ではあるけれど、こらえるところはぐっとこらえ、取り繕うところは、稚拙でも健気に取り繕う。結構、奥行きのある、深読みのし甲斐のあるヒロインですよ。見守ろうじゃありませんか。

ロケ地尾道とゆかりの深い尾美としのりさんのナマグサ住職・隆円さんがいいですね。“ペット吹いたら千春さんのDNA、村上の子じゃなくなってしまう”との思いに襲われ、練習を飛び出して鐘の中で「うわぁあああーー!」叫ぶあかりに「…煩悩じゃのぉー」。

事情を承知していた者としてのあかりへの親ごころ、そりゃもう実の親並みに親身なんだけど、「それじゃあ俗人と変わらんじゃん、オレ一応出家してるし」と、無理やり混入させた悟り風味がなんともいい味で。“可笑し味”のブレンド具合が抜群なんですね。これで、村上家が多少ぎくしゃくしていても、今後も隆円さんが出てくればホッとできる、安心感が持てます。

最後まで口角にマヨついてるし。

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金を失う

2010-09-28 15:13:01 | 朝ドラマ

27日(月)から始まった新しいNHK朝の連続テレビ小説『てっぱん』はどげでしょうか。いやどうでしょうか。同枠の“一期先輩”『ゲゲゲの女房』で、久しぶりに“平日帯ドラマの、帯ならではのチカラ”を見せてもらったばかりなので、否応なしハードルがちょっこし、いやだいぶ、上がってしまいますね。

 第1話を録画視聴したところでは、OP曲が近来稀に見る佳曲ですよ。葉加瀬太郎さん。クライズラー&カンパニーでのセリーヌ・ディオンとの共演曲(ドラマタイトル失念。鈴木京香さんが出ていましたっけ)以降、TV劇伴では耳にとまる機会がありませんでしたが、朝に聴くヴァイオリンも良いものだなぁ。今作は、お好み焼きとともに、音楽を愛しブラバンのトランペットで身を立てようかという少女のお話ということもあって、劇中音楽の役割はいちだんと大きいと思う。

 一般公募?の生徒さんや商店街などチームの民族舞踊風不思議なダンスにこの佳曲がかぶる独特なOP絵も、見ようによってはフォークロア紀行ルポ的で、回り回ってナイスマッチと言えなくもない。

ただ、大画面TVなら何の問題もないのだろうけれど、小ぶりの画面、特にアナログの上下黒帯で視聴すると、お好み焼きをかたどっているらしい、中央にまるく繰り抜かれた中で、大勢が入れ替わり立ちかわりちゃかちゃか踊ってるので、なんだか覗き部屋みたいでせせこましいですな。せっかくたっぷりと、広がり感のある曲なのだから、ここは尾道の海浜や、坂の多い街中の風情を、フレームいっぱい、ゆったり見せて欲しかった。

…いろんな解説を見ると、わりと早めにヒロインが尾道を出て大阪に出ばるらしいので、これは仕方がないか。

……脇道にそれますが、葉加瀬太郎さんの名前をクライズラー関連で活字媒体で初めて目にしたとき、葉と加と瀬で「ハカセ」で名字、というイメージがまったくわかず、「はが・せたろう?」「よう・かせたろう?」と首をかしげていた時期が、少しの間ありました。八反安未果さん、安良城紅さん、にわみきほさん(←ゴセイイエロー@『天装戦隊ゴセイジャー』)につながる、“どこで切れるか悩む系”の名前の元祖ですね(元祖って)。

葉加瀬さんの場合、“東京藝術大学出身で名字が「ハカセ」”という微妙な“出来過ぎ感”が、葉と加と瀬でハカセという、いちばん素直で何てことはない読みへの直行に、どこかでブレーキかけるんでしょうな。

それプラス、1960年代後半頃生まれの男子に、啓太郎賢太郎信太郎のたぐい“○太郎くん”はたまさか居たけど、単体の“太郎くん”はついぞ見かけなかったという先入観も入ってきて、結果、どこで切れるんだの迷路にはまってしまう。

名刺や名簿でルビなしで初見の際、「何と読むのだろう」と悩む字並びの名字の半分以上は、「実は、パッと見で最初に読んだ、その読みの通りでいい」場合が多い。

下の名前、ファーストネームとなると、コレもう最近は「読めるほうがアタマおかしい」みたいな例がそこらじゅうにゴロゴロしてますけど。

……さて脇道にそれ過ぎてしまった。お話のほうはまだ設定説明段階ですが、どうなんでしょう、第1話アバンタイトル、ブラバン応援団でトランペットを担当するヒロインあかり(瀧本美織さん)、自軍010でコールド負けまであとアウト1つという絶体絶命の劣勢に「ウチらががっかりしてどうするんよ、次は4番じゃ!」同バンドの友達(朝倉あきさん)「でもあかり、あの子今日全然当たっとらんのよ」あかり「じゃったらウチらが応援せにゃ!」とひとりでたーっと最前列に出て「4番らしゅう決めて見せんかいぃ!」とどーん仁王立ちでペットを吹きはじめる、ネクストバッターズサークルでスタンドを見上げた4番打者の子が、グッと拳を突き上げて見せ打席へ………と来れば、「コレ絶対あかりとあの4番、好き合っていて、その淡い恋心をベースにした物語がこれから展開されるんだな」と思うじゃないですか。高校野球と応援団女子というと、どうしてもそっちメインのほうが自然な気がしてしまう。汗と涙の青春。アルプスから仰ぐ青空、響きわたるコンバット・マーチ、「かっ飛ばせー○○」のエール。夕陽の部室でそっと渡すお守り。古いのかな、月河が。

ところがどうもお話はそっちに行かず、17年も隠蔽されていた出生の秘密、存在さえ知らなかった祖母(富司純子さん)とのバッタリ遭遇、お好み焼きが好きか嫌いか、どんなお好みを焼くか焼かないかとか、何かえらくこしらえ物っぽい方向に入っていくらしい。“若者らしく、少女らしく、光に満ちて健康的なほう”をわざわざ避けるかのように。

同枠前作が、国民的に有名な大御所漫画家とその奥様の半生の歩みという、恣意的にいじくり回すわけにはいかない実話ベースの作品だったので、今作『てっぱん』には、反対に“完全オリジナルストーリーの自由さ、可能性”を期待したいところですが、少女の無垢で闊達な夢より、親世代の大人の欲やしがらみのドロドロのほうに関心深い(当然ながら)大人の脚本家、Pたち製作スタッフが「おもしろくしようとしてやたらめったら捏ね上げました」見え見えみたいなドラマにならなければいいですけどね。

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糸が逢うと書いて

2010-09-26 19:59:37 | 朝ドラマ

25日放送の『ゲゲゲの女房』最終話、源兵衛さん(大杉漣さん)葬儀後の一族近親者勢揃いの昼食に、不慮の事故で早世した貴司さん(星野源さん)の妻・満智子さん(長澤奈央さん)が、布美枝さん(松下奈緒さん)ほか飯田家女性陣と席を並べて故人をしのぶ列に加わっていたのは、何とはなしホッとしましたね。

貴司さんは満智子さんの及川家に婿養子の形で入って結婚、及川姓になってから亡くなったので、及川家のお墓に入り位牌もあちらにあるのでしょうけれど、貴司さんをとりわけ可愛がり、一時は家督を継がせようとまで考えていた父親・源兵衛さんのお葬式には、満智子さんは駆けつけてくる。再婚相手らしい人の姿は見えなかったので、ひとりで家業のミシン店とお子さんたちを守っておられるのでしょう。生前、貴司さんが村井家を訪れたとき「子供やち」と複数形で言及されていたところからすると子宝には恵まれたようで、お子さんたちの成長が心の支えになったか。

磯釣りの帰途波にさらわれての災難で、あれからドラマ時制でざっと14年ぐらい。お子さんたちもすでに成人されたか、大学生ぐらいになっているかもしれませんが、優しいお父さんが帰らぬ人になってしまってから、しばらくは好物の岩海苔が食べられなかったのではないかな。

ミシン店と言えば、月河の地元には有名な、昭和初期に誕生した老舗ミシン専門店が、中心街の一等地でいまだ盛業中です。設定昭和7年生まれの布美枝さんよりもだいぶ“お姉さん”。創業時はオリジナルのミシン製造と卸・小売一貫体制だったそうですが、現在は家庭用・業務用、国内全メーカーのミシン販売・修理専門に特化。お店の近くには服地店、釦・ファスナー・縫い糸など洋裁手芸用品専門店もあり、月河の同世代で家政学科や被服生活科、服飾デザイン専門学校などに進学した友人たちには“聖地”みたいな一画になっていました。

月河は小学校時代から授業の家庭科で宿題が出るともっぱら実家母に出動要請していたクチなので、あまり縁がありませんでしたが、「縫って何か作ろうと思ったら、あのお店に行けば何とかなる、何でも揃う」という、地域での長年の専業にもとづく信頼感は格別のものがあるようで。

劇中、貴司さんの東京出張来訪は確か昭和47年、「最近は安い既製服が出回って、家庭用ミシンが売れなくなった」と貴司さんも嘆いていた通り、布美枝さん世代が戦後、花嫁修業し、主婦になり母親になった頃の洋裁熱が一巡するとたちまち頭打ちになった業界ではあるのです。とにかく昔のミシンはモノが頑丈なので、一度買ったらなかなか、次を買わなければならないほどの壊れ方をしない。本格的に壊れた頃にはシャツもブラウスもスカートも、“お母さんが夜なべして縫うより、既製品を買ったほうが安いし速いしナウい(←死語)”が常識の、大量生産の時代になっていた。

しかし逆転の発想。パイが縮小すれば同業他店が次々廃業、転業するのは当然の流れですから、そこで孤塁を守って専業を死守すれば、逆に“地域でたった一軒”“この地域で○○と言えば、あそこにしか置いてない”“○○が欲しい人は全員あの店へ行く”貴重な存在になることもできる。上述の当地老舗も、近隣の生地屋さんやオーダーサロン、百貨店のお直しサービスはもちろん、カルチャーセンター・文化教室にも営業しているそうで、当地中心街でも有数の高額地価と思われるロケーションで、しっかり自社ビルを持ち盛業中。

時代の先端と思える業界、たとえばTV番組制作会社や映画撮影所の衣装さん、美術さん、スタイリストさんなんかも、意外とミシン、活躍させているらしいですね。手っ取り早い例で言えば『ゲゲゲ』自体でも、ヒロイン布美枝さん、夫役しげるさん(向井理さん)の劇中衣裳は、協力店のレディメードの借り受けではなくスタッフさんの手縫い、手編み、手洗い、手干しで“昭和感”“生活感”を出していたそうです。

…まあ主役おふたりの身長と裄の長さなどをイメージすると、確かに、既成じゃ間に合わないのは歴然。

アクションが多く、ひとつのコーディネートで何シーンも撮る特撮ヒーロー番組でも、予期せぬ綻びや損傷に備えて、衣装さんは現場でポータブルミシン常備でスタンバっているという話も聞きました。

人間が服を着て生活する限り、縫ってモノを作る機械がこの世から要らなくなることはありません。好き合って一緒になったお婿さんに逝かれてしまったのは残念でしたが、満智子さん実家も荒波を乗り越えて、「安来でミシンなら」と言われる地域一番店として踏ん張ってほしいものです。

………虚構のお宅の家業に何を熱くなってるんだか。

最終話、「村井さん、私は布美ちゃんとの結婚、反対しとったんですよ、すみませんでしたね」と輝子叔母さん(有森也実さん)の、もう時効みたいなカミングアウトをしおにユキエ姉ちゃん(星野真里さん)の「私ら(=飯田姉妹)みな、お父さんに婿さん決められたようなもんだったけど、こうして幸せにやっとる」は、そのお父さんの反対を押し切って貴司さんを婿に取り、不本意にも未亡人になってしまった満智子さんを隣に置いてちょっとキツいのでは…と思いましたが、逆に考えれば、それだけ気のおけない会話のできる交流が続いているということでもあるか。

子供をもうけると、夫に万一の事態があっても女性は強いし、他家に婿に出したとは言え、貴司さんの子たちなら源兵衛さんも分け隔てなく、会う機会があれば満智子さんともども可愛がってくれたことでしょう。脳梗塞を発症する直前まで、『ゲゲゲの鬼太郎』の三度めのアニメ化放送開始を「及川さんの所(←すでに貴司さんは亡い)にも連絡したか?」と気づかっておられましたしね。

………穿ちすぎな見かたをあえてすれば、及川家への連絡に思い及んだとき“昔、喜子に頼まれて鬼太郎の家を作って送ってやっていたぐらいだから、貴司がどんなに喜んだか”“見せてやりたかったのに”の無念が一瞬、脳裏をよぎり、発作を誘発した…なんてことも、なくはなかったりして。

気丈な源兵衛さんは倒れられてからも病床でラッパを吹きながら1年頑張りましたからね。あちらで貴司さんに再会しても「おまえに呼ばれて来たわけではなぁぞ」と意気軒高でしょうな。

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そこで一反木綿ですよ

2010-09-25 23:13:45 | 朝ドラマ

ああ、終わってしまいましたねえ『ゲゲゲの女房』

ここで、最終回放送&再生視聴のあと「ああ…」と間投詞つけて書いた連続モノは『炎神戦隊ゴーオンジャー』20082月~092月)以来な気がします。あちらは初期メンバーがスカウトされてゴーオンジャー結成してから放送クールも物語時制でも1年間、ほぼ1話完結しながら徐々にテンション上げて行って、最後のほうはヒーロー側も、敵組織も大好きに。

一方『ゲゲゲ』は昭和7年生まれヒロインの、戦中小学生時代から、バブル前夜の昭和61年初秋まで40数年を、半年の放送期間、伴走させていただきました。いやー、長かったような短かったような。

2週前、イトツ父さん(風間杜夫さん)さよならウィークで、亡くなる数日前に執筆しながら眠りにおちて見た夢の中、自分の青年時代を映画館で観て、見回すと喝采の観客席は自分の亡き両親、尊敬する叔父さん、恩人の活弁士さんなど懐かしい人たちがいっぱい、「みんな一緒におったのか」の場面と、今日のラストシーン、故郷の森でしげる(向井理さん)布美枝(松下奈緒さん)がなじみの妖怪たちに出会ってつぶやいた「なんだ、みんなおったのか」「ずーっと、一緒だったんですね」が見事に呼応。

しげるが描き続けた妖怪たちは、バケモノではなく、この世からは去ったけれど心の中で見守り支えてくれる、大切な人たちの存在、魂そのものだったのですね。

結婚後の初自転車デートで深大寺を訪れ、「取っておきの場所」と新妻布美枝さんを墓地に案内して、「死んで長年月がたつと、人間もおだやかに、まるくなるらしい」「だから古い墓はいい」と言っていたしげるさん。鬼籍に入った懐かしい親兄弟や祖父母、親しかった旧友、戦友たちだけではなく、顔も知らぬご先祖様たち、神代の昔からその地に眠る名もなき魂たち、“見えんけど、おる”神秘なものたちに守られ、ときに力を吹き込まれ、支えられて、私たちは確かに“生かされている”のかもしれません。

最終回、アバンタイトルのほとんどを、イカル母さん(竹下景子さん)の、夫・イトツさん仏前への語りかけ「源兵衛さん(大杉漣さん)と仲良うやってごしなさいね」「私もいずれお邪魔しますけん」が持って行ったのも象徴的でした。しげる&布美枝夫婦善哉物語は、単なる清貧夫婦愛、辛抱してサクセスの狭いお話ではなかった。ふたりの人生の先輩たち、恩人たちとの“見えんけど、ある”絆(きずな)賛歌にほかならなかったのです。

安来の布美枝実家での、源兵衛さん遺影前での親族一同の思い出話には、亡き貴司さんの幼い頃の玩具のラッパが出てきたり、碁打ちの客の接待にミヤコさん(古手川祐子さん)も登志おばば(野際陽子さん)も忙殺されたこと。そしてしげるさんにお酒が禁物なのは、ユキエ姉ちゃんの旦那様・横山さん(中村哲人さん)がいちばんよく知っていて、輝子叔母さん(有森也実さん)も「タイヘンなことになりますけん」と逆太鼓判。

子供たちにせがまれて漫画を描いてやるしげるさん、布美枝さんを目で指して、「ほれ、一反木綿に似とるだろう」、「お父さん、みんな笑って暮らしとるよ」と遺影に語りかける布美枝さん。一夜明けると、「お母ちゃんたち、お見合いから5日で結婚したってホント?」と興味津々で訊く藍子(青谷優衣さん)喜子(荒井萌さん)お年頃姉妹にミヤコお祖母ちゃんは「あんまり早手回しでびっくりしたわ」と懐かしい話ができて嬉しそう。

ドラマ時制で10年、20年、数十年前のあの場面、あの言葉が、いまになって、あのときとは違ったこんなニュアンス、こんな意味を持ってよみがえって来る。長尺多話数、長年月時制で半年間の放送という、平日帯ドラマならではの“持ち時間”の豊富さを、週一ペースのドラマにはない圧倒的な魅力に変えた作品、それが『ゲゲゲ』でした。

平日の昼帯ドラマがほとんど全滅状態(唯一残ったフジテレビ・東海テレビ枠で現行放送中の『天使の代理人』も脚本家リレー競作による週替わりエピソードオムニバス形式、かつ、たったの8週放送)の現状で、“帯のチカラ”を本当に久しぶりに再認識させてくれました。

今日の続きが、明日また観られる。必ず観られる。丹念に作りさえすれば、帯ドラマは生活そのものをライトアップ活性化するぐらいのパワーがある。豪華でもその場限りのぶち抜き枠単発スペシャルドラマや大作ドラマにはないチカラです。

『ゲゲゲ』が“住む人のいなくなった荒地に、久しぶりに来たパイオニア”となって、もう一度、帯ドラマというジャンルが見直されてくれないものか。長尺多話数に「見逃せない」「明日が楽しみ」というテンションをみなぎらせることのできるドラマ作家が育つきっかけになってほしい。そんなことも思った9月最後の土曜でした。

……そしてそれもそのはず、オビと言えば(↑↑↑記事タイトルへ)。

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お気楽

2010-09-24 20:47:36 | 

SAPPOROクリーミーホワイトの発売に気をとられて、大幅に出遅れてしまいました。今年も出たSUNTORYの秋季限定醸造シリーズ、今年は旨味たっぷり秋楽。先月24日リリースされていたはずですが、SUNTORYの限定ものは、コンビニでもかなり酒類を厚く揃えている店舗でないと、なかなか見つからないのです。

 “あきらく”とは、なんか噺家さんの芸名みたいですが、要するに昨年の同時期の発泡酒・秋生(あきなま)と同じ路線。“旨味たっぷり”というカンムリも、缶パケデザインもほぼ同じ。今年の“楽”のほうが、いくらか紅葉の色づきが濃いめか。

 ロースト麦芽“全麦芽の20%以上使用”。昨年の“生”は15パーセント以上でしたから、いくぶんロースト率アップ。その分液色も濃くなったかな?と、注いでから目を皿の様にして光に透かして見ましたが、昨年の“生”がどんなんだったか忘れてしまったし。とりあえず、普通の新ジャンル、昨日ここで書いたSAPPOROクリーミーホワイトや、同じSUNTORYの定番・金麦辺りよりは明らかに濃いです。色だけで言えば、プリンにかけるカラメルソースに近いぐらい濃い。

 ただ、味のほうは色ほどの濃厚感はありません。ロースト麦芽率アップと聞くとちょっと焦げっぽい苦味が前面に出てくるのかな?と思いがちですが、やはりSUNTORYのビール系らしい、水の味が秀でたソフト&マイルドベース。むしろこっくり系の香ばし甘みのほうが優勢のような気も。

アルコール分6%と、定番の新ジャンル諸ラベルより高めでもありますが、ドライ感、辛くち感もさほどありません。強いて言えば、こころもち炭酸チックな舌ピリ感が強いか。

秋向きと言えば言えるし、味バランスとしても、新ジャンル然とした酸味・甘酸っぱ味が気にならないのは好感が持てます。“コク”や“飲みごたえ”“旨さ”などを謳うラベルって、決まって余計なねっちょり後味があったりするのに、それもない。

昨年までの“生”は発泡酒ジャンルでしたが、リキュール類新ジャンルに“ウェイトを下げて”きたのも、攻めてるなあという感じ。かつてはビール系の牽引車だった発泡酒も、ここのところ値頃感がなくなって活気がないですからね。限定醸造で短期間に押して行くならやはり新ジャンルにして正解。

ただ、やはり人事を尽くしてお天気を待つ業界。この長引いた暑さがどう出たか。飲むものでも食べるものでも、“秋らしさ”が恋しくなる時期が、大幅に後送りになりましたからねぇ。

日本列島の中ではいちばん先に秋らしくなるはずの当地住人月河でさえ、冷蔵ケース内の紅葉柄に目が止まらずに、気がつけば限定製造が終了して品切れになる寸前でした。

秋から冬にかけて、SUNTORYは限定ラベルをいろいろリリースするのですが、通年定番化されるものが出てきませんね。限定は限定で、ひとときの輝き(?)を楽しんで下さいということか。秋深まってからの“贅沢”シリーズは今年はどうなるのかな。

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